スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

黒い蓮の花。3

もし、望み通りになる薬があるとしたら。
それはとても素晴らしい事だ。
何故ならずっと欲しかった宝石を手に出来るのだから。
政宗は欲に惑わされ薬を飲み、そうして一際強かった欲に飲まれて情欲の司祭へと堕ちた。


胸の乳首をクリクリと弄られ、反対の乳首も口に含まれて転がされ、時折噛まれるとイってしまいそうな程の快感に悶える。
開きっぱなしの口端からは唾液が溢れ、見開いた紅い瞳は瞳孔を開かせて焦点を無くしていた。
思考すらままならない中、四肢をベッドに拘束されて政宗からの一方的な愛撫に溺れる国永。その意識は、チカチカと瞬く視界に政宗と会った時の事をフラッシュバックさせていた。

「おお、国永! 本当にトモダチを連れてきたのかよ」
「? 君、酒でも飲んでるのか? こっちは親友の黒葉、まあ訳ありだ」
「ヒ、ヒヒヒヒヒ! 訳ありなぁ? こっちとしては人数が増えるのは構わないぜぇ?」
「……こやつ、信用出来るのか?」

政宗のいつにも増してハイな様子にため息を吐いて肩をすくめる。
少なくとも普段はそう思っているが、この状態ではまともな会話が出来るとは思わない。
何より飲み過ぎた時に絡んでくると、国永でもうざいと感じるほどだ。

「日時と場所を指定したのは君だったと思うんだが……酒じゃ無いならクスリか? 何にせよ、日を改めた方が良さそうだな」
「まあまあ待てよ、国永くん。君たちに試薬をさせるんだから、害が無いか先に試したんだよ」
「そうなのか? それはすまない、調子は?」
「ハイテンションってのとー、少し絶倫、かな? ヒヒヒ、俺ってばクスリに強ぇのかもなぁ」

相当脳みそをやられている様だ、と思いながら黒葉へと目を向ける。
暫し悩んだようだが、政宗の様子を観察した後に頷いて返した。

「副作用は一般的なクスリの類いより軽い物のようだが、器官は既に出来ているのか?」
「それは長期摂取によるんだろうな、一回じゃあ俺の身体に変わった所は無い」
「ふむ、まあそうだろうな。出来れば在宅服用をしたいのだが?」
「そいつぁ…………無理だろうな」

言葉と同時、肩を組んできた政宗に引き倒される様に抱え込まれて首に何かを刺される。
黒葉が目を見開いて驚いているのを見ながら、小突いて確認しようとするのを急に現れた男達に押さえられた。
舌打ちと同時に文句を言ってやろうと口を開いた瞬間、

「ふぁぁあああああ!? は、ひッ、あッ!!」

何かの液体を流し込まれる感触と頭を駆け巡る蕩けるほど甘い快感に、声を出して目の前を白く染める何かに身体から力が抜けた。
ぐったりと政宗に身体を預けながら、快感の余韻にビクビクと身体を跳ねさせる。
全身に走った快感の痺れは国永の瞳から涙を押し流し、口も満足に閉められずに唾液を流した。
謎の注射によりあっという間に快感へ堕とされた親友を見、黒葉は絶句する。
そして国永を人質にされた今、この場から自分も逃げる事も叶わないだろうと知った。

「何を考えている。少なくとも国永は本気でお前を信用していた。その思いを裏切るのか?」
「ヒヒヒ、ヒッ! 信用なぁ、元よりそんなもんが欲しかった訳じゃねぇ。欲しかったのはこいつ自身さ」

べろり、とピアスをしている舌で国永の頬を舐めれば、微かに喘ぎながら気持ち良さそうに目を閉じて震える。
自分もついでとばかりに捕まるのだろうが、それでも政宗の事を信用していた国永が悔やまれた。
同時に、何故そんなにも堕としてしまったのかという疑問も。

「お前はそういう目でこいつを見ないと聞いていたぞ?」
「ハッ、それこそ最初は諦めたさ。けどなぁ、惚れた相手に後から手を出した男が居ると聞いて黙ってられるか」
「諦めの悪い……」

会話をするうちにも徐々に男達が黒葉を拘束し始め、同じように首に注射器の針が刺さった。
通常なら腕などにする物だろうに、初心者が相手では生きた心地がしないと顔を青ざめる。
せめて家族には手を出されないと良いのだが、と考えて愛しい番の姿を思い描きながら目を閉じた。



黒葉もまた注射を打たれ、快感に身を喘ぎながら身体から力が抜けていく感覚を味わっていた。
髪をほどかれ頭を撫でられる度に背筋に甘い痺れが走り、顔を上げれば知らない男が笑っている。
けれど、その男に触られる度にドキドキと胸が高鳴り、愛しさが込み上げてきた。
その唇で触れられればどれだけ気持ちが良いのだろうと、瞳を潤ませて見上げてしまう。
一方男はまた、お雛様と呼ばれていた黒葉をよく知り、熱情を持っていた。
大事に大事に触れる度に身体をビクビクと跳ねさせながら愛らしい微笑みを浮かべる憧れの人に感極まる。
男がその唇で薄く色付く黒葉の唇に触れば、とろりと表情を緩ませて吸い付いてきた。

「ん、んちゅ、はむ、ぁ……ん、ふぅ、あひぃ……!?」
「黒葉さん、黒葉さん、可愛いですよ! お雛様ッ!」

深く舌を絡ませあい、唾液を互いの口で呑み合いながら口を離す寸前に黒葉の舌を咬む。
息も絶え絶えで口の端から唾液を垂らし、黒葉は全身を紅潮させながらくたりと意識を手放した。
その身体を国永とは違うベッドに拘束し、男達はそれぞれのブリーダーとサポートを決めていく。
元々集まったのは政宗の声かけがあったから。
彼らはクスリを服用した事は無いが、二人に苗床を植え付けるには栄養として男の精を注ぐ必要があった。
それで政宗は国永の連れてくるもう一人を神への捧げ物にする為、国永を手元に置く為に協力者を募る事に。
このクスリにはまず刷り込み要素という物があり、初めに見た人物を対象とする。
国永には政宗が、黒葉には阿部という人物が刷り込まれた。
後は快感を常に与えてクスリを常用させ、快楽に堕としていく手はずだ。

「ヒヒ、ヒヒヒ! 可愛いなぁ、くぅぅううにながぁぁぁあああああ!」
「黒葉さんの指、美味しい! むちゅ、はぶ、ぢゅるぢゅるぢゅるぢゅる」

男達は場の雰囲気と二人の意識を飛ばしたイキ顔に欲を募らせるのだった。

黒い蓮の花。2

酒を飲む事自体が久々とは言え、飲み過ぎたのを反省しながら国永は帰宅した。
鶴丸も宗近ももう寝ている、と黒葉に怒られたのだ。
今日はここも仕事で遅いらしく、たまたま起きていたらしい。
「全く、お鶴が気にして居ったぞ。ただでさえ最近お前の顔色が悪いと言っているのに」
「俺の顔色? へぇ、気付かなかった」

勿論、嘘だ。
本当は顔色など気に出来る余裕が無かっただけだ。
黒葉に言われたと言う事は、よほど自分は上の空だったと見える。
水を入れたグラスを渡され、それを傾けながら黒葉に悩みを言ってしまおうか、迷った。
恐らくは一番良いタイミングで、そして彼にも関わる話だろう。
だが、今のところ答えの無い無駄な悩みとも言える。

「何を考えている」

対面のソファに座り、黒葉は足を組んでリラックスした状態になった。
話そうとして迷っている様子を気付かれているのは流石長年の付き合いと言える。
そうして、結局黙っていても無駄なのだと国永は苦笑をして水を飲んだ。

「この間、三条家の事を聞いたんだ。宗近に関する事……多分、ここにも関わる事」
「ふむ? 俺は特に聞いておらぬな」
「内密の話だからな。それに、君に心配を掛けたくないんだろう。優しい子だから」

そこでここの事を言えばほっそりと微笑みを浮かべ、黒葉は誇らしげに頷く。
愛し合って信頼し合っている二人だからこそ、言いづらくもあるのだ。

「異能持ちは、子を孕みづらいと言われた。10年互いに連れ添っても、子を成せなかったと」
「だが全てがそうという訳でもあるまい?」

眉を潜めて呟く黒葉に、何と返して良いのか分からず国永は曖昧に微笑む。
黒葉の言葉は奇しくも彼の伴侶と同じ言葉であり、それを希望と縋るにはあまりにか細い願いだ。

「俺は、宗近に家族を与えたい。彼の血を分けた温もりを、孕みたい。全身の細胞がそう言ってる気がしてくる」

目元を隠し、水の入ったグラスを一瞬で粉々に割り砕いてしまう。
痛みも感じないほど、今の自分は不安定だ。
黒葉は驚きはすれど、怒る事も無くため息と共に処置をしてくれる。

「毎夜蜜を貰っても、熱が通り抜けていく感じがする。孕めないのが分かるんだ……鶴はそんな事言わない。俺がαだから?」
「……宗近はお前の身体を刻んでまで、お前が変わる事を望まんだろう。それにお前には、お鶴が居る」
「ああ、鶴の産んでくれる子はさぞかし可愛いだろうな。俺の血も引いてるんだ、宗近だって喜んで、家族が出来たと言ってくれる。でも、与えるのは俺じゃない」
「お前の気持ちが分からんでも無い。ここもまた異能持ち故、俺が孕める可能性は低くなるのだろう」
「ふ、ふふふ……忘れてくれ、今のは酔っ払いのグチだ。みっともない」
「お前……早まった判断はするなよ?」

細かい破片を取り去り、手の消毒を終えて包帯を巻き終わると、黒葉は国永の隠された顔を見ながら口にした。
早まった判断など、何のことを指しているのか黒葉自身も分かりはしない。
だが、同じ思いを抱えるほど、連れ合いを愛するほどに強く抱える欲求は一人では晴らせない。
それこそ藁にも縋る思い、という奴なのだ。
国永は何も言わず、ただ応急処置の成された手を振って黒葉を見送った。



人には必ず望みが生まれる。
どんなに欲が無いと思われる人間にも。
それは国永然り、黒葉然り、そして、この男もまたその一人だった。
後輩から渡されたのは二種類のクスリ。
一つは注射器型で、一つは錠剤。
どちらも黒い蓮の花が描かれていて、後輩は詳しい成分を説明はしなかった。
しかし、これを摂取したモノは最初に見た者に依存するようになり、体内に苗床が出来ていく。
その間は絶え間なく快感を拾う媚薬の様な効果をもたらし、出来上がった苗床に嫡出すると子を孕むという。
クスリを渡してきた後輩は怪しい笑みを浮かべていたが、男はそれに気付かなかった。
何故なら男もまた、このクスリを使う事で望みを叶えようとしていたから。


国永の元に突然の知らせが入ったのは、飲み会から数日が過ぎた頃だった。
偶然にも政宗の後輩が、男性にも子宮のような孕む為の器官を産み出す薬を手に入れたらしい。
その後輩は使ってみたらしく、恋人の子を無事に孕んだようだ。
「そんなうまい話、簡単に落ちてるとは思えないけどな……」
『確かに俺も疑ったけど、実際に妊娠して腹が膨れてる姿を見たんだ』
「他にも実例は無いのか?」
『それは流石に。後輩が実際に使ってた薬は用意できたんだが、とある企業が独占して治験をしてるらしい』
「情報規制か」
『そういう事。俺ももう少し調べて見るけど、もし椿にそのつもりがあるなら、連絡くれ』

電話を切り、薬の効能や副作用などをより詳しく書いたメールが送られる。
それに数回目を通した国永は、応接間のソファに深く腰掛けて頭に手を置いた。
もし本当の話だったとして、あまりに上手すぎる内容に本来なら即決で拒否をするつもりだった。
だが一件でも実例があると聞いてしまえば、縋りたくなる。
愛しい番が身体を拓く度、孕めと切ない願いを託された。
過ぎた望みである事を承知で孕みたいと、願ってしまう。
募った想いは一番大切で愛しい筈のもう一人の番への嫉妬を膿みだした。

「随分とまた、病んだ顔をして居るな」
「……黒葉か。今度は何の苦情だい?」

耳に入った声に返事はすれど、顔を向ける気力も無い。
だがため息を吐いた瞬間、幾日か前の会話が脳裏をよぎった。
咄嗟に黒葉を仰ぎ見る。

「君……もしも自分の胎で番の子を孕めるなら、君なら賭けに乗るかい?」

突然の言葉と興奮から瞳孔を開いた目で見られ、黒葉は両目を大きく開いて驚愕する。
それほどいきなりの内容であり、信じられない内容であり、国永の本気を垣間見た。

「何をするつもりだ?」
「出元は不明だが、男でも子宮に似た器官が作れる薬がある。実例は一件、信用出来る奴から」
「面妖だな、聞いた事も無いぞ。副作用は当然あるのだろう?」
「身体が刺激に過敏になる。一時的なホルモン異常で精神的にクる可能性、発熱発汗目眩。一度飲んだら一日三回服用を一週間、歩行困難になるから決まった場所で」
「ふむ、無難だな……それ故に怪しいとも言えるが……聞かずともお前の答えは決まっているのだろう、国永?」
「ふふ、そうだな。これを魅力的な話だと思った時点で、多分決めていた」
「ならば俺も興味はある、連れて行け」

あくまでも心配だからとは言わず、自分の為だと言う親友の優しさに苦笑をする。
これで国永と黒葉、責任はそれぞれに渡った。
国永が改めて携帯を使って連絡をすると、決行は三日後と相成った。
prev next
カレンダー
<< 2018年07月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31