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sweetkiss


「シュノ、起きて!」
朝早く揺すり起こされたシュノは不機嫌そうに目の前の人物を見上げた。
「なんだよ、今日は休みだろ。
いいから大人しく抱き枕になれよ。」
レイリの腕を掴んで、ぐいっと引き寄せた。
「わわっ!」
ベットの中に引きずり込まれたレイリは、仕方なくシュノをぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。
普段、自分の為に裏でいろいろとこなしているシュノの為に、休みはシュノを思いっきり甘やかしたいと思っていた。
「ねぇ、シュノは今日なにがしたい?」
「…特には。強いて言えば…」
そういってシュノがレイリをぎゅっと抱きしめた。
「キス…レイリからして欲しい。」
さらっと前髪をかき分けられて、額にチュッとキスされ、レイリの頬が赤く染まる。
「どうした?してくれないのかよ?」
「する、するよ!」
とは言ったものの、いざとなればやはり気恥ずかしい。
そもそもキスはしようと思ってするものじゃなくて、雰囲気というものがある気がするのだが、いかんせん自分が言い出したと故に、レイリはイヤだとは言い出せなかった。
「シュノ…」
そっと頬に触れ、シュノの唇に自分の唇を重ねた。
そのまま何度か唇を重ねる内に、次第に貪るようなキスに代わり、息苦しさに目眩がして、ようやく唇を離した。
「ふぁ…」
その瞬間、急に気恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしたレイリが急にシュノの胸に顔を埋めて一人悶えていた。
「おー、よしよし。」
シュノはおかしそうに笑いながら、子犬でもあやすようにレイリの背中を撫でた。
「…からかわないでよ!
僕はまじめに…」
「判った判った。
ほら、腹減ったから飯いこうぜ。」
ようやくベットから起きあがったシュノは、レイリに手を差し伸べた。
「…うん。」
食堂で軽く食事を済ませたあと、書庫に行くというレイリに付き添って、二人で書庫に向かった。
読む本をレイリが選んでいる間、興味がないシュノは窓際の机でうつらうつらしていた。
「お待たせ、シュノ。」
ようやく本を選んできたレイリは、眠たそうなシュノをみて微笑んだ。
「眠いの?」
「いや、暇なんだよ。」
シュノがむくりと体を起こすと、何か思いついたようにレイリがぽんぽんと太股を叩いた。
「?」
「寝てていいよ。」
すぐに意味を理解したシュノは、レイリに膝枕をしてもらい、本を読むレイリを見上げていた。
「シュノ、飴たべる?」
レイリがポケットから取り出した可愛らしい包み紙の飴を手に取る。
「……お前何味食べてんの?」
「レモンだよ。」
「それでいい、それ寄越せ。」
ぐいっとレイリの顔を引き寄せて咥内の飴を絡め捕った。
「ちょ…人が居るって…」
「別に今更だろ?」
「まぁ、確かに。」
さして困った様子も見せずに、笑いながら柔らかなシュノの髪に指を絡めた。
心地よさそうに眠りに落ちたシュノをみながら、レイリも満足そうに微笑んだ。

うたたね



朝目が覚めて、外は快晴だった。
なんだか気分が良くなって読みかけの小説を手に持ってお気に入りの中庭に向かった。
天気のいい日の中庭は、気持ちよくてゆっくり出来るので、予定がない日は大概ここにいる。
備え付けのベンチに腰を下ろし、本を広げる。
柔らかい風が初夏の香りを運ぶように頬を撫でる。
最近は気温も高くなってきて、外で過ごすには丁度良くなったと思い、ロゼットは手元の本に目を落とした。
休みの日じゃないと中々読み進められない分厚い本のページを、ゆっくりとめくっていく。
と、不意に目の前に誰かがたっているらしく、日の光が遮られた。
「やっぱりここだった。
隣、いいかい?」
慈しむような柔らかい笑みを浮かべたフィオルが、本を片手にたっていた。
「あぁ、どうぞ?」
少し横にどけてフィオルのスペースを作ると、ロゼットは本に目を落とした。
最近フィオルはこうしてロゼットと一緒にいる事が多くなり、フィオルに好意を寄せているロゼットとしては、嬉しくもあるが、同時に破裂しそうな心音に気付かれないか必死だった。
読書が好きでないフィオルが、何故毎回自分に付き合ってくれるのか、ロゼットは答えを出せないでいた。
しかし、たぶん彼なりの優しさなのだと理解すれば、嬉しくもある。
特に言葉を発するわけではない。
さぁっ…と木々が葉を揺らす音と、時折ページをめくる音だけが聞こえる静かな空間。
賑わしいのも嫌いじゃないが、こういった時間が一番落ち着く。
フィオルは、何か話しかけるわけでもなく淡々と本を読む。
隣にいられるだけで満足だった。
会話は無くても、隣で存在を感じられれば、安心する。


「ふぅ…」
きりの良いところまで読み終わったところで、一息吐こうと本にしおりを挟んだ時に肩に重みを感じた。
そこには、ロゼットの肩にもたれ掛かるようにして、うたた寝をしているのに気が付いた。
横を向いただけで、そのアンティークドールの様な整った顔が目の前にある事実に、顔がかぁぁっと赤くなった。
どうしようかと迷い、手にした本を脇に置いてフィオルの体を反対側に向けようとしたときだ、ぐらっとフィオルの体がぐらついて、ロゼットの膝に倒れ込んだ。
いわゆる膝枕状態だ。
「なっ…」
自分の膝の上にフィオルの顔があることに、完全に思考がショートしてしまったロゼットは、あたふたするのをやめて、じっとフィオルを見つめては目を逸らすを繰り返していた。
しばらくして、ようやく落ち着いてきたのか、フィオルの柔らかな髪に触れた。
さらさらと、指の隙間からこぼれ落ちる様な髪に、つい心地よくなり、髪を鋤くように指を絡めた。
「ふふっ…」
思わず笑みがこぼれるロゼットに、フィオルは起きる気配は見せないものの、すこし擽ったそうに身を寄せた。
ロゼットは、いたずらが過ぎたかと反省し、フィオルの髪から指を離した。
「膝掛けでも持ってくれば良かったなぁ…」
女の子のように柔らかくない自分の太股に頭を乗せていて、頭が痛くないのか心配になる。
そして、本を手に取り読書を再開しようとた。
暫く本を読んでいたけれど、どうにも落ち着かない。
仕方なしに、本を閉じてゆっくり目を閉じた。

なんだか、幸せな夢をみられそうだったから。


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