最初に2人に出会ったのは、
雪が降る季節だった。
綺麗な長い金髪の少女がボロボロの着物で冷たく凍る様な川の水で洗濯をしていた。
「おい、なんでこんな寒いところで選択なんてしているんだ」
少女は首をかしげた。
「…何でって……何でかしら?」
キョトンとしながらこちらを見上げて笑った。
少女はまるで異国人の様な金色の髪に宝石の様な澄んだ青い瞳をしていた。
「貴女は旅の方?」
「まぁ、そんなものだ。」
「そう…私はお洗濯をしに来たの。
私は人と違うから、みんなを怖がらせてしまうから。
だからここに居るの、いつもここに居るから良かったら旅の話を聞かせて欲しいな。外の世界はどんな風なの?」
無垢に笑う彼女の手は赤く悴んでいた。
「手が悴んでるじゃないか、赤切れになる。」
「大丈夫、わたし治るのはとても早いの」
そう言って少女は洗濯を続ける。
仕方なしに緋翠は水に手を付けた。
水気を操る事など容易い緋翠は少女の手のつけている水の温度を上げた。
「あら?急に水が暖かくなったみたい…
貴女がやったの?」
少女は驚いた様に緋翠を見上げる。
無垢な少女はどこかレイアの面影があった。
少女には悪いと思ったが、霊の色を見ればレイアと同じ色と波長なのがわかる。
(レイアが生きていて、その娘か、兄弟の方か…
それにしてもよく似ている、生き写しと言ってもいい。
まさか、生まれ変わりか…?)
緋翠が黙ってるのを肯定と取ったのか、少女は目を輝かせながら緋翠に駆け寄ってきた。
「すごい!すごい!
貴方もしかして神様にお仕えする巫女様なの?」
「ちが、そんなんじゃ…」
「あの、お洗濯が終わったら私の家に来て!
シュノにも会わせてあげたいし、お礼がしたいの」
無邪気に腕に絡みつく少女は確かにシュノと言った。
「シュノ…だって?」
その名には聞き覚えがあった。
初めてシュリに会った時、シュリが時渡りの術を使い逃がしたという双子の弟。
シュリはずっと、その弟の身を案じていた。
「あら、シュノの事知っているの?
なら良かった、シュノならもう帰ってきてる筈だから」
そう言って少女は洗い物を済ませて自分が暮らしている山奥にひっそりと、隠れる様に立っているあばら家に案内した。
「ここが私達の家。」
そう言って引き戸を開けると、シュリに瓜二つの青年が傘を編んでいた。
「レイリ、あまり出歩くなといつも言って……」
「シュノ聞いて、さっき旅の巫女様に会ったの!
冷たい水を一瞬で暖かくして下さったのよ、凄いでしょう?
あなたを知っているみたいだったから連れてきたのよ」
レイリと呼ばれた少女はシュノにぎゅっと抱き着いた。
「巫女?」
シュノはいかがわしげにこちらを見てきた。
「俺の名は緋翠。
お前は、シュリの弟か?」
シュリの名を口にすれば驚いた顔でこちらを見る。
「シュリを知ってるのか!?
シュリは、今何処にいるんだ?」
シュノは必死な様子で緋翠に縋ってきた。
歳の頃合はちょうどシュリが死んだ時と同じ頃合だ。
緋翠はシュノをぎゅっと抱き締めた。
「……すまない、シュリは死んだ…
守ってやれなかった…」
「そん…な……」
ガックリ肩を落としたシュノに、レイリが微笑みかける。
「シュノ、大丈夫?
私はずっと一緒に居るからね」
無邪気なレイリの笑顔に、シュノも少し笑顔になる。
レイリの頭を撫でながら緋翠から離れた。
「……すまない、シュリを看取ってくれて感謝する。
見ての通り貧しい暮らしなんで大したもてなしも出来ないがゆっくりして行ってくれ」
「そうね、シュノのお兄様の話を聞かせてほしいな」
レイリは緋翠の手を握りながら笑いかけて来る。
レイアと同じものなのにレイアとは全く真逆。
純新無垢で天真爛漫なその少女に、いつの間にか緋翠も笑顔を浮かべていた。
レイリとシュノは幼い頃からこの山の麓にある村で孤児として育てられた。
レイリは幼い頃より不思議な力があって他人の傷や病を治癒できた事から神の御子として育てられて来た。
シュノは見た事も無い髪色と瞳から最初は恐れられたが、レイリも異国人のような容姿だった為か、すんなり受け入れられた。
しかし2人が息を呑む様な美しい成長を遂げた頃から男達がレイリを見る目を変えた。
閉鎖的な村の中で、2人は人目を引き過ぎた。
若い男が皆レイリの虜になり、女はこぞってシュノに気に入られようと仕事を放り出して金を使い込んで派手に着飾ろうとした。
これは神の神子の皮を被った悪魔だったと村中の人間が掌を返してこぞってふたりを責め立て、レイリを神の生贄にするという騒ぎになった。
それに気付いたシュノは村で乱闘騒ぎを起こし、レイリを連れ去るようにこの山に逃げてきた。
山は昼間でも薄暗く危険な獣や山賊も多い為村人は滅多な事では近寄らなかったからだ。
山での自給自足の生活は苦労も多いが自由で、二人は貧しいながらも幸せに暮らしていた。
緋翠がその話を聞いているとカリカリと戸をひっかく音がした。
二人はそれに気付いているようで、レイリは怯えたようにシュノにしがみつき、シュノがレイリを抱きしめながら扉を睨む。
「そんな事しなくてもいいぞ」
緋翠は立ち上がり、玄関の戸の前に立つと少しだけ霊力を当たりに放つ。
「去れ、二度とこの場所に来るな」
緋翠が吐き捨てる様にいい放つと、音が止み、暫くしてから何かが逃げ出して行く気配がした。
念のため戸を開けて見るが近くに居た妖の気配は全てなくなっていた。
恐らくは2人の上質な霊力に目を付けた下級の妖だろう。
今となっては霊力を持つ人間は貴重な存在だから。
どうやら2人は身を守る術はないが、霊力で無意識に境界を敷いてるらしい。
自らが開けてしまわない限りは大丈夫だろうと踏んだ緋翠は引き戸に懐から取り出した一枚のお札を張り付けた。
「それはなぁに?」
「魔除けの札だ、これでお前達が招き入れない限りはこの家に妖の類は侵入できない。」
「緋翠は何でもできるのね」
レイリは嬉しそうに近寄ってきてまじまじと御札を眺めていた。
「シュノがあれはとても怖いものだと教えてくれたけど、毎日の様にああして扉を引っ掻いていくの。
私怖くて夜になるのが怖かったけど緋翠のおかげで怖くなくなったわ、ありがとう」
レイリは並の人間より霊力の質が良く何か不思議な力を秘めている。
それをシュノが守って共生しているんだなと緋翠は感じた。
「シュノ、この札をお前にやる。
年に一度は札を張り替えろ。
あとレイリには戸を開けないように、返事をしないように厳しく言っておけ」
シュノは札を受け取り、まじまじと眺めた。
「あんたは何者だ?」
「おれはただのしがない陰陽師のはしくれさ」
そう言って頭を撫でれば、少しだけ安心した様にシュノが笑った。
「緋翠がずっとここに居てくれたらいいのに
シュノはいつも私を置いてどこかに行ってしまうの」
レイリは緋翠の隣に座り何処か寂しげに緋翠を見た。
「レイリ、緋翠を困らせるな。」
「そうね、ごめんなさい。」
食い下がる様子もなく、レイリは緋翠の隣でニコニコしている。
シュノの言う事には従順に従う様だ。
「別に俺は構わないぞ。
ずっと一緒というわけには行かないが、お前達が身を守るすべを覚えるくらいまでならな」
すると途端にレイリが花のように笑い、緋翠にぎゅっと抱き着いてくる。
心も体もまだ幼いレイリがここに1人で居るのはやはり心配で、シュリの時の様な後悔をしたくないと、抱き着いてきたレイリの頭を撫でた。
こんな子供が二人、妖や賊がうろつく山の中でひっそりと暮らすなど不用心にも程があった。
それだけ、この2人は酷い仕打ちを受けてきたのだろう。
「シュノもいいでしょ?」
「……ああ、俺は別に…
あんたがいいなら…」
シュノは複雑な様だったが、シュノ自身も初対面のはずなのに何処か懐かしいと感じている事に戸惑いを感じていた。
「緋翠と居ると安心するの。」
ぱちぱちと燃える火を眺めながらレイリは緋翠にもたれ掛かる。
「シュノとは違う安心。
へんよね、初めてあったのに…ふふっ、へんなの」
「俺は……お前に良く似た奴を知ってる。
シュリの番だった奴だ。
レイリの様な可愛らしい性格のやつじゃなかったがな、一度言い出したら聞かない我侭なやつで、シュリを誰より愛してた」
「つがい?」
「夫婦みたいなものだな、互いに深く愛し合っていた。」
「愛……
なら、私とシュノも番になれる?」
レイリは珍しく真剣な目で緋翠を見た。
「お前達は番ではなく夫婦って言うんだよ。
愛し合ってるならなれるだろ、自分の命をかけて愛する覚悟があるならな」
レイリは首をかしげて緋翠を見た後にシュノを見た。
「私は出来てるけど、シュノは?」
「そんなの言うまでもない。レイリは誰にも渡さない」
まるで立場が逆転したなと思いながら笑みを浮かべてレイリの頭を撫でる。
「なら、お前達は今日から夫婦だ。
俺が保証してやろう」
緋翠の言葉に嬉しそうに目を輝かせるレイリは小さな子供のようにはしゃいでいた。
「今日は嬉しいことばかりだわ
幸せすぎて死んでしまいそう!」
「おいおい、夫婦の誓を交わした後に死ぬ花嫁なんぞ聞いたことないぞ。」
そんな無邪気に笑いあった日々が、なくしてしまった日々と重なる。
辛いとか、寂しいとかは思わなかった。
ただ、そういう普通の幸せをあの二人にも与えてやりたかったと思うだけだった。
それから半年ほど一緒に暮らしながら生きる知恵を教え込んだ。
外敵から身を守るすべも、薬の作り方も教え、それを売って路銀を稼ぎ、レイリに花嫁衣裳がわりの綺麗な赤い着物をシュノが買ってきてレイリが嬉しくて泣き出したり、幸せな日々を過ごしている二人を見てるだけで緋翠は満たされていた。幸せだと、そう思っていた。
生活が安定すると、緋翠は出稼ぎに行くと言って半年ほど帰らなくなった。
地方を渡り歩き、薬をうっては2人に土産を買ってくる緋翠が、三度目の帰省をした頃だった。
「おかえりなさい、緋翠」
昼間から布団に横になるレイリに、何か病にでも掛かったのかと思って慌てて駆け寄ると、大きく膨れた腹を大事そうに撫でながらレイリが笑った。
「貴女に伝えたいことがあるの。
私、シュノの子供を授かったの。
もうすぐ産まれると思う…」
「子供…?そうか、お前も母親になるのか…
早いものだな、とにかくおめでとう。
元気で健康な子供が生まれるまじないをしてやろう」
するとレイリは緋翠の手を掴んで首を振った。
「それより、貴女にお願いがあるの。
私達の子供を取り上げてくれない?」
レイリはそっと緋翠の手を自分の腹に触れさせた。
命が脈打つ気配がわかる。
シュノとレイリの子供。
「俺は助産の経験なんて無いぞ?」
「あら、私だって出産の経験はないのよ
お互い初めてで一緒ね」
レイリはいつも花のように笑うだけ。
「お願い、無理を承知で頼んでるの。
私達、こんなだからお医者様にもかかれないし。
初めての出産で何をすれば良いかも判らないけど、産まれてくる子はどうしても貴女に取り上げて欲しいの。
これはシュノの願いでもあるのよ
お願いできないかしら…」
いつもふわふわとした綿毛の様な少女だったレイリは今母親になろうとしてる。
仮初とはいえ息子2人を育てていた緋翠はレイリには頼もしく見えているのだ。
「判った、お前達の子は俺が取り上げる。
だからお前は何も考えずに安静にしてろ。
臨月は母体にも負荷がかかりやすいからな。
元気な子を産んでくれ」
レイリを布団に横たえた頃にちょうどシュノが帰ってきた。
大量の椿の花を抱えて。
「緋翠、帰ってたのか。おかえり」
「ただいま、父親になるんだな。おめでとう」
緋翠が素直に賛辞を述べれば、シュノは照れたように目線を外す。
「父親なんて、俺には向いてない
でも、レイリがどうしても子供が欲しいって…」
「生まれてくる子のね、名前はもう決めてあるの」
レイリがまるで聞いてほしいと言わんばかりに緋翠を見るので、緋翠は笑ってレイリの頭を撫でた。
「聞かせてくれ」
「翠花、私達の大切な人から一文字貰って、翠花よ。
ねぇ緋翠…その人は、勝手に名前を使われて怒るかしら?」
急に不安そうな顔でレイリは緋翠を見上げる。
「そうだな…きっとこう言うだろうな。
男だったらどうするんだ?って」
するとシュノとレイリは顔を見合わせて笑った。
「大丈夫よ、きっと女のコだから
でもそうね…男の子だったら貴女が名付け親になってくれないかしら?」
「俺が?」
「お願いばかりだな、レイリ」
シュノが沢山抱えた椿の花をレイリに差し出した。
「そうね、ならお礼はこれでどうかしら?」
レイリは緋翠の髪に椿の花を1輪挿した。
「私が育てた椿なのよ
香りが強くていい油が取れるの」
緋翠は笑みを浮かべながらレイリから花を受け取った。
「ああ、十分だ。
ありがとう、大事にするよ」
嬉しそうに花を受け取った緋翠を見てシュノはレイリの肩を抱いて、レイリがそれにもたれかかるように身体を預けた。
「レイリ、大丈夫か?」
「うん、平気。
シュノは心配しすぎよ」
身重のレイリを心配するシュノを、レイリがおかしそうに笑う。
ようやく、幸せを掴んだと思った矢崎だった。
突然三人の家に幕府の役人を名乗る男が数人訪ねて来た。
異国人が隠れ住んでいると聞いてやって来たのだと。
2人は容姿こそ変わっているが日本人だと説明しても聞く耳を持たない。
挙句、レイリが身篭っている事に気が付くと、レイリを引き渡すように言ってきた。
「シュノ、レイリを連れて逃げろ
ここは俺が何とかするから」
緋翠は2人を背後に庇い、男達を睨みつけた。
もしこれが手練の武士ならその殺気が人のそれと違うことに気付いたかもしれない。
然しながらゴロツキのようなその男達は何も気付かずに緋翠に切り掛る。
緋翠はそれをひらりと交わして男に組み付いた。
「走れ!」
入口の男達を蹴散らした緋翠は叫び、シュノが反射的にレイリの手を引き走り出す。
レイリは心配そうに緋翠を見た後にシュノに手を引かれて走り出した。
せめてどこかに身を隠してくれと願いながら、目の前の誰一人逃がさないように組み付いた男の首を折り、刀を手にした。
「あの子達に触れさせ等しない」
逃げた2人を数人が追って行った。
そして緋翠の目の前には三人の男が立ちはだかったが、いずれも図体ばかりの鈍らで緋翠は醜く命乞いするそれを斬り捨てた。
あとは二人を追った奴らを排除しなければとシュノとレイリの霊力の残滓を辿っていると、どこからともなくレイリの絶叫が聞こえた。
「レイリ!?」
鬱蒼と茂る草木をかき分けながら必死になって辿っていくと、血濡れのシュノがグッタリとして倒れていた。
だいぶ深手を負っているようだが、一命は取り留めていた。
「シュノ!」
「ひ、す……レイリが……つれて……
たのむ、俺はいいから……レイリを…」
「お前を置いていけるか!」
そう言って緋翠は着物を裂いて止血し、応急手当を施すとシュノを背負ってレイリの霊力を辿っていく。
レイリは山の奥に進んでいったのかどんどん薄暗くて嫌な気配が漂う場所を進んでいた。
「くそ、霧が出てきた。」
当たりに白い霧が立ち込め、視界が悪くなる。
シュノは苦しげに息を吐く。
霧で体が冷えてるのかもしれない。
早くシュノも安全なところで手当しないといけないと早る気持ちを抑え、山道をひたすらに歩いていくと、血染めになった赤い着物が落ちていた。
「緋翠、それ、レイリの…」
朧気な意識でシュノが指を指す。
拾い上げれば微かに椿の香りがする。
「お前が持ってろ、急ぐぞ」
緋翠はシュノを抱え直し、辺りに目を凝らした。
着物が落ちていたあたりからは血のあとがつづいており、しばらく歩いた先に打ち捨てるようにレイリが横たわっていた。
「レイリ!」
シュノが背中でジタバタするので、レイリに近寄ってからシュノを下ろす。
シュノがフラフラしながらレイリを抱き起こす。
「しゅ……の」
レイリはもう虫の息で、肩や手足等に刀を突き刺されたであろう跡が残っていた。
「ひ、すい……赤ちゃんは…わたしの、あか、ちゃん……」
レイリはもう気が付くことは出来ないのだろう。
自分の腹が裂かれ、胎盤なら臍の緒が繋がれた赤子が人の形をしていない事に。
「レイリ!レイリ…」
シュノが泣きながら怜悧を抱きしめて、自分の体で赤子が見えないようにしていた。
「緋翠、赤ちゃん……たすけて
おね、がい……あの子は、私達の……宝物、だから…」
緋翠に縋るように手を伸ばし、涙を零した。
こんな悲しそうなレイリを緋翠は見た事がない。
「レイリ、お前の…お前の子は……」
ぎゅっとレイリの手を握り、シュノを見ると、蒼白になりながらも首を降る。
「……可愛い、女の子だ……」
レイリは、それを聞くと満足そうに微笑んで目を閉じた。
「レイリ…嘘だろ、目を開けろよ…
俺を、一人にしないでくれ…レイリ!
お前も翠花も亡くして、俺はどうすればいいんだよ、レイリ!レイリ!」
シュノがレイリを抱きしめながら悲痛な声で泣き叫んだ。
「ああ、また俺は守れなかった」
レイリは優しい子だから、きっと俺を許すだろうけど、俺は自分を許せそうにないよ…
緋翠はぐちゃぐちゃになった赤子を抱き上げた。
かろうじて、女の子だったのが判るくらいで、殆ど肉塊と言ってよかった。
「シュノ、帰ろう。
お前の傷に障るし、こんな寒いところにいつまでもレイリを置いておくのは可愛そうだ」
シュノは頷いて怜悧を抱き上げた。
中身が出てしまったレイリの体は軽かった。
レイリと産まれることが出来なかった翠花は火葬して緋翠が綺麗な箱に遺骨をいれてくれた。
シュノはそれを大事に抱えながら緋翠と宛の無い旅に出たが、1年後に病で息を引き取った。
緋翠はシュノ達が住んでいた家に戻ってきた。
家は焼き払われたのか焼け跡だけが残っていた。
あたりを歩いているとレイリが育てていたと言っていた椿が群生していた。
レイリが居なくなっても、椿は美しく咲いていた。
緋翠は遺骨を椿の花の根本に埋めた。
「レイリ、シュノ、これでずっと一緒だな。
向こうで家族仲良く暮らしてくれ、さようなら」