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触手ぷれい





「っ、うそ、でしょっ……」


完全に油断していた。
警戒は怠っていなかったはずだが、こんな魔物が居るなんて報告は受けていない。
だから、油断してた。
絡みつく粘着質な粘液を纏うそれは明らかに意志を持ってレイリに絡みついてくる。
何度も言うが、レイリは完全に油断していた。
だから初手で触手に絡め取られて武器を落としてしまったのだ。
魔力器官を持たないレイリはジークフリードお手製の魔法剣を使うことで触手を焼き払うことは出来たのに。
手を伸ばそうにも触手に絡め取られて身動きが取れない。
どうしよう、と混乱する頭で触手の動きを観察する。
さわさわと服の中に侵入してくるそれが体を這って、あちこちまさぐる。
「っ、やだ…気持ち悪い」
いやいやと暴れるレイリに触手は無遠慮に這いずり回り、閉じた蕾を探り当てた。
「いや、いやっ、そこはダメ!!」
どれほど嫌だと暴れてもがっちりと絡め取られて動けない。
触手は後ろの蕾に、細い管を差し込み中に何かの液体をはなっていく。
「ひっ!や、やだ…」
中に出されたそれがじわりじわりと広まっていく。
「いや、いやだ…助けて、だれか……」
その間に他の触手がズボンを下ろす。
足を絡め取られ、宙ぶらりんな体勢で大きく開かされたレイリが必死に身をよじる。
そんなレイリを絶望に叩きつけるように、やけに太くグロテスクな触手が後孔に宛てがわれる。
「や、やだぁ!いや、やめて!!」
どれだけ叫んでも助けは来ない。
どうして別行動したのか
どうして単独でこんな奥地に来てしまったのか
どうして行き先を誰にも告げなかったのか
後悔しても、もう遅い。
ぐちゅ、と音を立てて触手が入口を割り込んで押し入ってきた。
「ひぐぅ、うぁ…」
ズルっと内壁を擦りあげれば快楽に慣れてない体は直ぐに反応してしまう。
「やっ……ああ!」
最愛の恋人しか知らなかった体は今、魔物の触手によって暴かれ、それで快楽を得てしまっている。
恋人への裏切りを感じて、じわりと目頭が熱くなる。
嫌なのに、こんなの嫌なのに。
どうして気持ちいいのだろうか。
「ふぁ、ああん、ぅっ…ひっく…」
ぼろぼろと涙が零れてくる。
悔しい。
レイリは惨めな気持ちでいっぱいだった。
先程出されたのは催淫剤の類だろう。
それを受けてから腹の奥が熱くて堪らない。
触手がぐぽぐぽと音を立ててレイリを犯すのが気持ち良くて、逃げ出そうとする力が弱まる。
「はぁ…ん、あうっ、やぁ…きもちい」
涙を零したまま、レイリが悲鳴をあげる。
それに呼応して触手が激しくレイリを責め立てる。
触手はレイリを苗床と認識したのか、胸や性器に絡み付いて愛撫する様に身体を撫でていく。
やがて口にも太い触手が押し込まれ、何やら甘い液体を流し込まれる。
喉の奥で出されたそれを飲み込まざるを得なく、レイリはそれを飲み下した。
良くない何かなのは分かっていた。
「や、やらぁ……はなしてぇ」
抵抗する力も無く、内壁を擦り上げていたそれは最奥に辿り着き、ぐにぐにとそこを刺激する。
「だ、だめ!そこは…シュノにしか……!!」
必死になっても、無常に触手はレイリの最奥を貫いた。
「ああああああああぁぁぁ!!!!」
シュノしか侵入を許したことが無い身体を暴かれただけでなく、最奥までこじ開けられ、レイリは絶望に涙を零した。
絡み付く触手はいつの間にかレイリを覆い尽くし、その姿を隠してしまった。
レイリが快楽に喘ぐ中、触手達は我先にとレイリの胎内へと伸びてくる。
シュノに大事にされているレイリは強烈な快楽の拷問に心が折れていた。
視界が触手に覆われていくのを、絶望と悦楽の混じった瞳でみつめていた。

(たすけて、シュノ…)




討伐対象の処理が終わったシュノは刀に着いた血を振り払い、鞘に収めた。
そろそろ面倒な奴を迎えに行かなければならない事に盛大に溜め息を吐く。
しかしながら可愛い恋人の依頼である以上妥協をして面子を潰すマネはしたくなかった。
「はぁ…しかたねぇ」
何かの間違いで死んでいてくれないだろうか。
そんなありえない事を考えながら、何か面倒事を起こす前に引取りに行く前にレイリに報告がてら癒しを求めに拠点としてるキャンプ地に戻る。
「レイリは戻ってないのか?」
「一緒じゃないのか?」
キャンプ地に居たレイリの護衛のナタクに声をかけると不思議そうな返事が帰ってきた。
お互い、レイリが一緒にいると考えていた様で少し嫌な気配が胸を刺す。
「坊ちゃんはまだ戻っていない」
「そうか、なら俺が探してくるからお前はここにいろ。
入れ違いになっても困る」
「…わかった、坊ちゃんを頼む」
シュノは嫌な予感が当たらないように願いながら走り出す。
別れる前にレイリが調査に向かった方を探ってみると、鬱蒼とした森の中でキラリと光る何かを見つけた。
不思議に思い近付くとそれは無惨にちぎれたリボンとレイリが愛用していた魔法剣で、それが鞘から抜かれた状態で地面に落ちている。
辺りを慎重に見回せば、少し奥の大木にこんもりと、ちょうど小柄なレイリ一人分くらいすっぽり収まりそうな木の塊が、コブのように張り付いていて、それがドクンドクンと脈打っている。
「レイリ…?」
塊に近付くと、噎せ返るような酷い匂いにくらくらする。
甘い花の香りの様なそれに混じって、微かにレイリの香水の香りがした。
「レイリ、居るのか?」
返答は無い。
もしかしたら意識が無いのかもしれない。 そう思った時、塊の隙間からズボッと足が出てきた。
渾身の抵抗だったのか、それ以来動かなくなったそれは間違いなくレイリのブーツだった。
「レイリ!」
足を引くよりそれに沿って絡みつく木の根を引き剥がせ、中からドロリと蠢く緑色の粘着質な何かが姿を現わした。
「んっ、うぅっ、うぐ…」
くぐもったレイリの声に、蠢くそれを刀で切り裂くと、ドロドロの中から無数の触手に捕まり、犯されたレイリがぐったりとしたまま虚ろに身体を震わせていた。
付き合ってから数える程しか体を重ねていないレイリにとっては刺激が強すぎる。
「レイリ、しっかりしろ!」
触手はレイリの奥深くまで入り込み、感じやすい場所を責め立てる。
触手を刀で切り裂きながら、レイリの小さな身体を引き剥がす。
べとべとした粘液に塗れたレイリを何とか取り戻すと力無く地面に倒れる。
その体は頭からつま先までべっとり粘液に包まれ、服は中途半端に脱がされている。
「レイリ、レイリ、大丈夫か?」
抱き起こせば、身体に快感が走るのか、びくびくと身体を震わせながら空イキしてる。
とろんとした瞳は全く焦点が合わず、口の端から白濁した何かを零したたまま、レイリはシュノを見上げていた。
「おい、レイリ!しっかりしろ!」
「あ、ぅ………や、ぁ……けて…」
感じ過ぎて、軽く触れるだけでもイッてるようだ。
「レイリ!」
バシッと軽く頬を叩く。
「あ、あ……シュノ…?
ぼく、ぼくっ……」
意識が戻ったレイリは目の前にシュノを確認すると、じわじわと瞳に涙を溜めた。
「よしよし、怖かったろ?
もう大丈夫だからな」
抱きしめようとして手を伸ばすと拒絶する様に手を払われた。
「き、たない、から、だめぇ……」
「レイリは汚くない。
まぁでも、そんな訳分からん液体にまみれていたくは無いよな…
たしか近くに川があったからそこで体を洗うか。揺れるけど我慢しろよ?」
シュノはレイリを姫抱きにして川のある場所までなるべく刺激しないように気をつけて足早に移動する。
レイリはどうやら相当媚薬を飲まされたのか、川に着くまで3回はイッた。
「はぁん、う、あ……あつい、しゅの、おなか、あちゅい」
とろんとした、情事中の様な顔で欲しがるように手を伸ばした。
「レイリ、おいで」
いつもは縛られてる髪を撫で、頬に手を添える。
キスをしながらベタついた服を脱がせながら自分も一緒に服を脱ぐ。
「はぁ、ん…シュノ、ぼく……」
皆まで言わせる前にキスで口を塞ぎ、レイリを抱き上げると川の中に入っていく。
初夏の頃とはいえまだ水は冷たい。
腰ほどの深さの場所でレイリを下ろすと、粘液に濡れた髪を水で洗い流してやる。「んっ、ふ…」
身体をゆっくりと手で撫で回す。
「あんっ、ふぁ、んにゃ…」
「気持ちいいのか?」
レイリは恥ずかしそうに頷いた。
「んむ、ふぁ、ああんっ」
しっとり濡れたレイリは情欲に染まった瞳でシュノを見た。
そのまま、唇が重なる。
「んっ、ちゅ、ちゅぷ、んむっ」
キスをしながら、レイリの後孔に指を這わせて広げれば、中から粘着質な液が漏れ出す。
「随分中に出されたな…可哀想に、怖かっただろ」
「ふぁ…?しゅの、おこって……?」
「怒ってない。間に合わなくて悪かった」
ギュッと小さく細い体を抱きしめる。
「シュノ……僕もごめん」
完全に油断していたのはレイリなのでシュノに謝らせた事に罪悪感を覚えていた。
「ねぇ…シュノ……怒ってないなら、抱いて欲しい…」
「レイリ…いいのか?
怖かったんだろ、こんなに震えて」
抱きしめた小さな体は震えていた。
「いいの、シュノがいい」
体はまだ媚薬が抜けてないのか、とろんとしたレイリがシュノに甘えてくる。
そこまで言うなら嫌な記憶を全部自分で上書きしようと思った。
「レイリ、後ろ向け」
「えっ……?」
急に不安そうな顔でレイリがシュノを見る。
「あの……えと…
シュノの顔が見れないのが、怖くて…」
先程抵抗も出来ないまま触手に一方的に体を暴かれた恐怖があるのだろう。
「……そうか、ならこっち来い」
シュノは手を掴んでレイリを岸辺に連れていき、そのまま小さな身体を岸辺に座らせる。
「慣らさなくていいから……」
熱に浮かされた様にレイリが縋るようにシュノに手を伸ばした。
「へぇ?随分いい様にされたんだな。
鳴らさなくても入る程ガバガバにされたのか?」
レイリはじわっと瞳に涙を貯めた。
「ご、ごめんなさい…嫌いになった?
ぼくっ、もう、いらない?」
泣かないように必死に涙を堪えるのはシュノの同情を引かないためだ。
相手の事ばかりで自分がどれだけ傷付いてもそれを選び取る勇気は自己犠牲にしては酷く独善的である。
自分が嫌だから、見たくないからそうするんだと言っていたレイリの肩は細く体は小さいのにその身に降りかかる重責と付き纏う英雄の影はレイリの存在よりも大きく、小さなレイリをいつでも飲み込む程だ。
だからシュノは守りたいと思った。
この小さく愛しい恋人を。
「どうして俺がレイリを手放さなきゃいけないんだ?
こんなに欲しいと思ったのはレイリが初めてで、ようやく手に入ったのにそんなくだらない事で手放す程俺は愚かじゃないつもりだが」
「…ふぇ?」
「悪かったよ、いじめすぎた。
いちいち反応するレイリが可愛くて」
ちゅっと掠めるようなキスの後、柔らかく微笑まれる。
「俺の愛はお前だけのもので、この先どんな事があってもそれは揺るがない。
だからお前は永遠に俺のものだという自覚をもて」
ぎゅむっと頬を挟まれ、レイリは恥ずかしそうに頷いた。
「シュノ…ありがとう。
えへへ、うれしいな、もっと君を好きになっちゃう」
「なっていい。他の男なんて目に入らない位俺で満たして染め上げてやる」
それは甘い悪魔の誘惑。
堕ちてはいけないとわかった時にはもう羽をもがれてどこにも行き場を失った小鳥。
「満たしてよ、シュノでいっぱいにして?」
「ああ、何度でも満たして上書きしてやる。
お前の記憶に残る全ては俺だけでいい」
ゆっくり宛てがわれたそれが窄みを押し広げて中に侵入してくる。
いつも感じる圧迫感もなくすんなり入ってしまったことに胸が痛む。
「……しっかり慣らしたからいつもよりすんなりはいったな。
大丈夫。俺が全部慣らしたんだ、思い出せ。指とローションで念入りに慣らしただろう?」
レイリの身体が一瞬強ばったのを敏感に感じ取り、シュノはレイリの記憶をすり替えるように耳元で囁きながら乳首を摘んで刺激を与え、余計な思考を追いやる。
「ふぁ!?あっ、んぅ…きもち、んんっ、シュノ、指で、中をっ……ひゃあん!」
快楽でまともな思考を飛ばし、言葉でレイリの脳に刻み込んで嫌な記憶を自分で上書きしていくシュノは、ハッキリと自覚していた。
触手ごときにレイリの身体を暴かせるなんて。
自分以外勿論許せるはずは無い。
だが寄りによって人では無い意思も言葉も通じ無い魔物に一方的に快楽だけを叩き込まれたレイリはどれ程心細く、恐怖だった事か。
やり場の無い怒りを感じる程に目の前の青年を溺愛している事にまた、愛しさを覚えた。
「気持ちいいか?レイリはここ弄られるの好きだもんな?
この奥を突かれながら弄られるの好きだろ?」
「ひゃう!?あっ、ああんっわ、らめ、おかひくなりゅ、おっぱい弄りながらとんとんしちゃらめぇ!!」
柔らかな肢体をくねらせながら、きゅうっと中を締め付け、とろとろに蕩けきった表情で涙を零しながらシュノに必死にしがみついてくる。
「中スゲー締まった。
レイリは気持ちいいの好きだろ?
嫌じゃないよな、ほらなんて言うんだ?」
いい所をわざと外してレイリを突き上げれば、快感は拾うものの欲しい刺激じゃないのかシュノの背中に回された指に力がこもる。
「やっ……アァッ、ちが、そこじゃ……
うう……」
恥ずかしいのか、レイリはモジモジしながらシュノを見上げた。
恋愛にも性事情にも疎いレイリにとって、こういったオネダリは羞恥心との戦いで、それをかなぐり捨ててシュノを欲する情欲に染まりきったレイリを見るのがシュノは好きだった。
自分だけに許された特権だと。
「しゅの……奥、奥に……その……」
中々次の言葉が紡げない。
「た、沢山、入ってきて……
すごく、いや……だった……こわくて、君じゃないのが、いや、だった」
レイリが背中に回した手に力を込める。
「だから、上書きして?
全部シュノに愛されたことにしてほしい」
「ああ、全部俺がやった。
だからあんな事は忘れろ、二度と思い出すな」
キスでレイリを安心させてから、結腸の入口をぶち抜いた。
「ひああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
びくんっと大きく背中を反らせたレイリを逃がさないよう腰をしっかり掴んで叩きつけるように打ち付けた。
水面が水を打つ音に紛れて卑猥な肉を擦る音とレイリの悲鳴の様な喘ぎ声が静かな川辺に響いた。
細い腰は力を込めれば折れそうなのにしっかりシュノを根元まで咥えこんではなそうとしない。
「ひぁっ!しゅ、のぉっ!!
だして!おくにいっぱい、うわがき、して!!」
「ああ、俺の可愛いレイリ…
お前は俺だけのものだ、誰にも渡さねぇ」
ぐぽぐぽと結構口を開かされてレイリは最早前後不覚な程に揺さぶられてキツくシュノにしがみつく。
足をピンと伸ばして衝撃を少しでも逃がそうとする。
「ふあああぁぁぁ!!!」
目の前がチカチカしたと感じると急に視界が真っ白になった。
腹の奥に暑い熱を感じて、ぐったりと身体を投げ出した。
「もううごけない……」
「ああ、お疲れ様。
あとは俺に任せて少し寝てろ」
頭を優しく撫でて中に入っていたものが引き抜かれる。
ポッカリ空いた穴から白濁した液がごぽっと溢れてきて何とも欲をそそる。
「あふっ、んぅっ…」
「感じてんのか?」
「うう…もう、意地悪しないでよ…」
レイリはぐったりしたまま地面に寝そべって意識を手放した。


意識を失ったレイリを川の水で綺麗に体を清め抱き上げる。
着物の羽織を広げ、そこに寝かせている間に火を起こして汚れた衣服を洗い落として乾かしておく。
シュノの着物にくるまったレイリを膝に載せて火の傍で温めながら頬を撫でる。
貴族としてレイリは、高潔であり無垢だ。
シュノが触れるだけで顔を赤くし、あたふたしたレイリが可愛くて傍に居たいと思った。
騎兵隊は息が詰まると言ったのを気にしてか、レイリはシュノを束縛したりしない。
「お前になら、それも構わないと思ってるんだがな」
眠ったままのレイリの頬にキスをした。




きみのために



ガシャン!と音を立てて装備品が床に落とされる。
相当機嫌が悪い証拠だ。
それもそのはず、神毒の影響が強い前線には並の兵士では役に立たない。
そうなればなるほど、その役割は全てただ一人に一任される。

神殺しの英雄、レイア・クラインに。

彼がそう呼ばれるのは実際だいぶ先の事だが、この侵食し続けるこの地で抗い続けるには負担が大きい。
「オベロン、剣の調子が悪い。
検査して」
「私は忙しいんだけどね」
そう言っても今この戦線はレイア一人で維持されているようなもの。
彼が倒れたら、全て終わる。
レイアはいつも理性的で、戦局を常に把握してそれに必要な自分に瞬時に切り替える。指揮能力の高さもさながら、身体能力や戦闘能力はやはり一般的なそれから大きく外れている。
それに耐えうる強固な精神も。
オベロンはレイアの剣を手に取り、丹念に調べていく。
「……剣に問題は無いみたいだ。
だがパスが弱くなってる、レイアくん側の問題かもしれないね」
剣を鞘に納めると、レイアが振り返った。
綺麗な宝石を嵌め込んだオッドアイが強い意志でオベロンを見た。
「そう、ならやって」
「毎回毎回君はそうして自分を捧げてまでどうして戦うんだい?」
献身的なタイプじゃないだろ君、と言われてレイアは珍しく俯いた。
「僕が化け物だからさ」
人に愛されたかった、愛を知らない英雄。
孤独な彼は望んで化け物になる道を選んだのに。


滑稽で愉快でなんとも哀れだ。


「そういうの、嫌いじゃないけどね」
超越者であるレイアは魔力器官の維持が難しい。
それは元々器官を持たないレイアは自力でそれを生み出すという、並の人間には出来ない方法でそれで魔術を使えるようになった事に由来する。
ある種外法のような方法な為大成した魔術師の様な大掛かりな魔術は使えなくても、身に宿る莫大な魔力のお陰で一般的な魔術師よりは強力に使える。
レイアは体への負荷を考えて剣に属性を付与させて戦う方法を好むが、ここ数日は魔物の数が多く、流石にレイアも広範囲の魔術で焼き払う方法を取らざるを得ない状況がつづいていた。
レイアの身体には、当然相応の負荷がかかり暴走の危険があった。
だからこうして、暴走する前にわざと器官を暴発させてそれを強制的に魔術を使用不可にした状態で修復させる。
あまりの激しい痛みに並の者は耐えきれずに死に至る。
レイアはそれを、もう幾度となく繰り返してきた。
他の誰でもない、たった一人の為に。
砦にレイアの絶叫が響く。
強固な精神力をもつレイアすら声を上げるほどに強烈に激しい痛みはレイアの体を駆け巡り、グラッと身体が傾いたのをオベロンが受け止めた。
「レイア様っ!!」
駆け付けたジュリアンが傍により、ひょいとレイアの体を抱き上げた。
ぐったりと意識を失ったレイアは荒い呼吸を繰り返している。
一介の将としては細すぎる肩と小さな身体。
こんな軽すぎる身体でこの戦線をたった一人で維持している主に何も返せない事を悔やんだ。
「しばらくは目を覚まさないよ」
「理解っている、今セバスチャンがアナスタシア様を呼びに行ってる」
そう言ってレイアを抱き抱えたまま寝室に向かった。
ドアが乱暴に開かれた事でシュリがびくっとして柱に隠れるがジュリアンは気にも止めずにレイアの身体をベットに横たえた。
「失礼します」
そう断りを入れ、服を脱がせて夜着に着替えさせる。
その間レイアは苦しそうに呻くが目を覚ます様子は無い。
いつもの事だ。
暴走を阻止するために魔術回路をわざと暴発させるとレイアは回復の為深い眠りについた。
こうなると身体が回復するまでいくら女神の力を持ってしても5日はかかる。
レイアの疲弊具合によってはもっと長くなる事もある。
ジュリアンがレイアの着替えと顔を冷たいタオルで拭いて、苦しげなレイアを懸命に世話する。
コツコツとヒール音が反響してアナスタシアが部屋に入ってくる。
険しい顔をしたアナスタシアはレイアをじっと見た。
「オベロンがあらかた処理を終えていますね。
このまま放っておいてもレイア自身の回復力で十分でしょう」
そう言ってアナスタシアはシュリを振り返った。
「シュリ、レイアをお願いできますか?」
柱の影からこちらをみていたシュリはおずおずとこちらに向かって歩み寄ってきた。 「レイア、どこか、わるい?」
「暫くは目を覚まさないでしょうけど、死にはしませんよ」
表情は変わらなくても瞳が不安に揺れる。
「レイア、苦しそう…」
「ええ。自力で回復できるからと言っても身体の内部を吹き飛ばしたのです。
いくらレイアとはいえ無事では済みません」
「レイア…」
苦しげに呻くレイアの手を両手できつく握る。
「シュリ様…俺達は隣に居りますので何かありましたらすぐにお呼びください」
一応セバスチャンが声を掛けるがシュリは手を握ったまま動こうとはしない。
ジュリアンがセバスチャンの腕を掴んで首を振る。
今はそっとしておくべきであり、レイアが目を覚ますまでここを守り抜く義務があるからだ。
シュリの精神状態に気を配る必要はあるが、今は二人きりにさせておくことにした。
今までこの状態のレイアにシュリを立ち会わせて来なかったつけが回ってきたのか、不安そうに手を握る。
「レイア、いやだ、おきて」
レイアは苦しそうにブランケットを握るだけ。
こんな苦しそうなレイアは見た事がなかった。
レイアはいつも自信に満ち溢れて、綺麗な瞳を柔らかく緩めて微笑んでいた。
「レイア…」
ぽろっとシュリの瞳から涙が零れた。
自分でもわからない感情が込み上げてきた。
「レイア、レイア。
どうしたらいい?おれ、レイアに何が出来る?」
レイアは応えない。
汗が滲んで、苦しげにうめくだけ。
シュリをすくい上げた優しい手が冷たく感じた。
失うのはいつも一瞬だ。
「レイア、いやだ」
深く昏睡してるレイアはどれだけ揺すっても目覚めない。
綺麗な宝石の様な瞳は閉じられて、白い肌が月明かりに青白く映えた。



長い夢を見る。 いつもの事だ。
ふわふわ浮かぶ、ぼくのたいせつな―――


「う、んっ……」
重い体を動かして、瞼を開ける。
いつまで眠っていたのか。
体は重くて力が入らない。
「クソッ…」
こうなったらもう仕方ない。
ジュリアンがめちゃくちゃ世話を焼いてくるのがウザイけど体が動かないから仕方ない。
シュリ、寂しがってないかな?
いつも寂しい思いをさせて、嫌いになったしりしてないかな?
ああ、いやだな。すごく不安になる。
「レイア?おきてる?」
シュリの声がすぐ傍で聞こえた。
「シュリ……どうして」
「良かった、レイア」
ぎゅっとシュリが抱き着いてきた。
「レイア、全然動かないから…死んじゃったかと思って……」
「僕がシュリを残して死ぬわけないじゃない?
僕を誰だと思ってるの?」
撫でたいのに、体を動かすと痛みが走る。
「ぐっ…う」
「レイア、まだどこか痛いのか?」
「大丈夫、だよ。
でもシュリがぎゅってしてくれたら早く治りそう」
シュリは、レイアにぎゅっと抱き着いて、隣に蹲る。
「僕には君がいてくれればそれで十分なんだから」
「ん、俺もいっしょがいい」
甘えるシュリの頭を、痛むのを堪えてゆっくり撫でる。
暖かなシュリの体温を感じながら、瞼が重くなる。
「レイア、ねむい?」
「……うん。シュリが、暖かいから……
ねむく、なってきたな…」
「じゃあ俺がこうしてれば、レイアねれる?」
「うん、ぎゅってしてくれる?」
シュリの暖かな体温に、眠りに落ちた。



「これは……」
シュリの食事を持ってレイアの様子を見に来たジュリアンとセバスチャンはベットで眠る二人を見つけて微笑んだ。
「食事は置いておこうか」
「そうだな、起こすのは流石に忍びない。
レイア様が目覚めたなら、呼ばれるだろう」
レイアの傍で丸まったまま眠るシュリと、そのシュリを抱きしめながら眠るレイアは幸せそうだった。


まほうのおもちゃ



目の前が真っ白になった。


余りの刺激の強さに、レイリはくらくらしていた。
「ひぁ、あ、あんっ……」
はだけたバスローブが辛うじて腕に引っかかり、解いた髪がだらしなく枕に散らばる。
「いや、ああんっ、もぉ無理」
いやだと手を伸ばしても掴むのは空虚ばかり。
愛する人の温もりも声も何も無い。
ただ一方的に与えられた快楽の暴力。
「だめっ、も、無理だって…
さっきから、ずっと、イッて…ひゃあん!」
いくらいやだと泣き叫んでも届きはしない。
「……っ、シュノ…」
熱の無い空虚な快楽によってレイリはそのまま果ててしまった。
「虚しい…」
呼吸を荒く、ぐったりとしながらズッポリ収まるそれを引き抜いた。
それは貴族間の裏ルートで流行っている大人向けの玩具で、快楽を得るだけなら十分だがなんとも空虚すぎて現実味がない。
「……シュノなら、違ったのかな。
こんな玩具より、シュノで貫かれたら…」
そう言って手に握った玩具を見つめる。
「魔法のオナホね。
今度遠征に行く時シュノに持たせようかなぁ」
転がったオナホを眺めながら、切なげにため息をつく。


「また悪巧みしてんのか?」


ビクッと体が震え、扉を振り返るとシュノがちょうど帰ってきた。
「し、シュノ!?
お帰りなさい、えと、帰還は明日じゃ……?」
しどろもどろなレイリをよそに、冷たい目を細めてじっとレイリを見つめる。
明らかにひとり遊びをしていましたと言わんばかりに辛うじて引っ掛かっているバスローブに散らばる玩具。
「明日の方が都合が良かったか?」
「あっ、いや、その……」
シュノはレイリを見つめるだけで何も言わない。
無言の圧力にあっさり屈したレイリは観念して全てを洗いざらい話すことにした。
遡ること数時間前、レイリは貴族の夜会に参加していた。
そこで面白いものがあると言われ、別室へ案内された。
これはそういう目的だろうと警戒していたレイリの前にはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男。
「クライン伯爵に、巷で流行りの面白いものをお見せしたい」
そう言って取り出したのは何の変哲もない桃色の筒型。
「そちらは?」
「魔法のオナホですよ」
「………はい?」
たっぷり時間をかけて頭に染み込んでいく単語はあまりに…
「クライン伯爵にはよく遠方に行かれる恋人がいらっしゃるとお聞きします」
レイリが警戒しながらも、笑みを作る。
「ええ、そうですが。
それとなんの関係が?」
「寂しいのでは無いかと思いましてね?
恋人の熱を離れていても感じられるなら、どうします?」
「どうもしません。
彼が居ないなら熱を感じる意味もありませんので。
お話はそれだけでしょうか?」
早くここから立ち去りたかった。
「まさか、この性能を体験していただければきっと気に入りますよ」
そう言って男はとろりとそれに何かを垂らした。
「ひっ!」
中に、何かが流れ込む感触がある。
「なに、これっ」
「ただのローションですよ。
それでは、失礼して…」
そう言うと熱を持ち、肉質を帯びたそれに指を差し込んでいく。
「ひぁっ、あ、うっ」
指で内壁を好き勝手弄り回されて、異物感に吐きそうになる。
刺激を与えられる度に中が熱くなるのを止められない。
レイリはその場に倒れ込んでしまう。
男が自分を見て笑っている。
直接触られている訳じゃないのに、体をいいように暴かれている耐え難い屈辱。
自分から罠に誘うための餌にするのではなく、罠にかけられ体を暴かれるなどあってはならないのに。
「っ、は……やだ、もう……やめて」
生理的な涙が溢れ、止まらない。
「いいお顔ですなぁ。
貴方のような生意気なガキを黙らせるのは気分がいい」
「っは、あうっ……こんな手段、使わなくても、抱きたいなら、そう仰ればいい」
「いや、それじゃあ意味が無い。
君にふれれば、ご主人様に従順な獣が牙を剥くだろ?
私は慎重なんだ」
そう言って勃ちあがったそれに遠慮なくオナホを突き刺した。
「ああああんっ!!!」
「ははは、これはいい!」
ずちゅ、ずちゅっと水音をたてる。
中に入ってくる感じはあるのに、足りない。
全然足りない。
シュノは、シュノなら、
もっと奥まで届くのに。

「ああ、もう……」

快楽に殴られながらレイリは立ち上がる。
苛立ちに顔を歪ませて。
「……じゃ、……ないんだよ」
「は?」


「そんな短小じゃ全然足りないんだよ!!」


怒りに任せて男の股間を蹴り上げた。
まさか好き勝手していた相手が立ち上がって股間を蹴り上げるなど予想していなかったのか、男はもんどりを打ってオナホを手放した。
それを拾うと、レイリは踵を返す。



「という訳で、ちょっと自分で使ってみようかなって思ったら……その…」
壁にもたれ掛かるシュノの前で正座させられ、洗いざらい吐かされた…というか勝手に自白したレイリに呆れたため息で返す。
「やっぱり物足りなくて、シュノじゃなきゃダメだって思って……
遠征に行く時に持って行って貰おうかなって…」
えへっと可愛らしくオネダリ顔で微笑めば冷たい視線が帰ってくる。
「断る」
「なんで!?」
「所詮玩具だろ、本物に繋がっててもお前自身が居ないならその行為に意味は無い」
「うっ……」
「でもまぁ、お仕置は必要だよな?」
そう言ってオナホを取り上げると、レイリのペットのスライムが数匹いる水槽にそれを落とした。
「っ!!」
スライムがオナホに集まってきて、我先にとそこに入り込もうとする。
「ひぃう!あ、ああっ、やだ、僕もう、でないっ」
がくっと体を倒し、快楽に悶えるレイリを見下ろしている。
「ああ、や、いやっ、もうイきたくない」
「どうして?気持ちいいんだろ?」
「シュノがいい、どうして、ひどい」
レイリが泣き縋るようシュノを見上げる。
「おねがい、シュノ」
スライムの刺激に身悶えながらも、仕方なしにオナホを取り上げ、スライムを引っ張り出せばレイリは床で激しく体を痙攣せて大人しくなった。
「イッたのか」
悔しそうにシュノを見上げる瞳には熱がこもっていた。
「それで?何か言うことは?」
「……抱いて、シュノ。
奥までいっぱい、シュノで満たして欲しい」
「よくできました」
そう言ってレイリを抱き上げ、ベットに寝かせると服を脱いで覆い被さる。
欲しかった、求めていた快楽にレイリは溺れて行った。
「こんなにとろとろになるまで遊ぶなんて悪い子だな」
「やぁん、ちょ、待って…むり、今は、感じやす…ひゃうん!」
熱量をもったそれが無遠慮にレイリを貫く。
「イッたばかりだから、だめっ、シュノ」
「むりじゃない、やめない
これはお仕置だ」
内壁を擦る度に目の前がチカチカする。
「やだよぉ、もう、また、ひとりでイッちゃうの、やだぁ」
散々一方的な快楽を与えられ、一人果ててきたレイリはシュノが目の前に居るのにひとりで果てるのを拒む。
「そうか、なら頑張れ」
シュノはあっさりと言い放ち、腰を進めた。
奥まで挿入して、激しく叩きつけるレイリの中が、何度かきつく閉まる。
「はは、メスイキしてんのか?」
「あう…も、やだぁ、シュノきらい、いじわる」
何度か絶頂を迎えたらしいレイリが不満気にシュノをにらむ。
「次は、一緒がいい…」
シュノは頷いてレイリの足を抱えて奥を貫いていく。
「可愛い、レイリ」
「あっ、あ…シュノ、すきっ」
ぎゅっとシュノにしがみつくレイリを傷つけないように何度も奥を打ち付けて、多幸感に包まれながら2人は同時に果てた。
「ふぇ…」
「よしよし、いっぱいイけてえらかったな」
何か言いたそうなレイリの言葉をキスで塞ぎ、よしよしと頭を撫でた。

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