俺達のコロニーが襲われたのはある意味必然で、けれど戦う力が無かったのは偶然なんかじゃない。
身分に差を付けてあぐらをかくそれらは、圧倒的な暴力の前に屈した。
城を守ろうとした王様はその奇異な力の為に狙われて。
無力な住民達は殺され、秀でた者は捕虜になり。
力のない子供達は自身の手で親を殺し、兵士として収容され。
俺達は少しばかり秀でた容姿と特徴で、奴らに殺されずに捕まった。
捕まえた奴らを奴隷として売買し、略奪の限りを尽くす宙賊。
奴らに目を付けられた原因はコロニーの王様、見目の麗しい一人の青年の為だった。
そうして調べる内に放浪者だった鳥人の青年の存在も明るみに出たようだ。
瞳に美しい奇跡を持つ人間と、不死に近い再生能力を持つ獣人。
彼らは恋人で、友人だった。
たった一人の弟を恋人に託し、他にも捕まった友人達と逃げる作戦を決行したのは奴隷市場に出される前日の事。
初めから、俺だけは逃げるつもりなど無かった。
弟と恋人と離れるのは寂しかったけれど、彼らを逃がせるのなら本望だと思い。
止めようとした友人はその婚約者に任せ、奪った武器を使って暴れ回った。
基地ごと潰してやろうとした反抗は、友人である獣人が瀕死の体で捕まっている所を見せられて呆気なく終わった。
身体を無遠慮にさぐる手に、しかめっ面で反抗を堪える。
ニヤニヤと笑う男達の言う事を聞かねばならない状況なのは嫌気が差したが、壁に磔にされた半死半生の友人を見れば受け入れる事は容易かった。
突き出された逸物を咥え、胸を触られ、尻の間にまで這い回る指は気持ちが悪い。
「……ク、ニ……」
小さく、友人がか細い声を出した。
毒を飲まされ、傷だらけの身体は治癒が遅いのか血だらけで青白い顔が痛々しい。
羽根をむしられ、時折湧き出てくる涙を採取されているとまるでか弱い女性のようだ。
いや、本当はか弱い女性なのだ。
性格や行動力からはそう思えないだけで、守らなければいけない人物の一人だった。
「おら、もっとしゃぶれよ!」
「そうそう、気持ち良くしてくれないとお友達にお薬あげないよー?」
「ん、ぶっ!?おぐ、ぐ……うえっ、えふ、ん、ぐぅ……」
遠慮無く喉奥まで突き上げられて込み上げる吐き気を、必死で飲み下す。
そうだ、今は集中しないと解毒薬が貰えない。
左右に引っ張られる手が熱いナニカを握らされ、腰や尻の間にナニカが擦りつけられる。
段々と粘性を帯びた液体に濡らされるのを感じながら、頭を前後に動かした。
雁首を舐め、玉袋を吸い、尿口を舌先で強く刺激すれば独特の匂いと味がしてくる。
愛しい人達のそれはとても香しく思うのに、これは臭くて気持ちが悪い。
胸の底から吐き気を催しながら、涙目になるのを堪えようとするのに上手くいかない。
「やだ泣いちゃいそう? 美人の泣き顔とかイっちゃうわー!」
「やべ、俺もう出るっ、飲め、飲めよ、うぉ、ぉおおお……!!!」
喉奥に掛けられるソレに、反射で顔を背けて口を離した。
ビュクビュクと、数回に分けて射精されたものに、顔が濡れる。
「あ、おめぇ離すなよ!!」
「えー、お前のくっせぇのじゃ無理だってなあ?」
「そんな事よりよ、もう尻入れて良いかな?すげぇ締まって今すぐぶち込みてぇ!」
「まだ濡れて無いんじゃね?あ、でも出血って処女っぽくて良いよなぁ!」
「白く濡れる顔とかまじそそる、もっと顔射しようぜ顔射!!」
思い思いに離され、引かれる身体に痛みが走った。
それでも振り解く事は許されずに白濁液を吐き出す口に再び熱。
好き勝手に突き入れられるそれに呼吸を乱され、横から掛けられる熱に目を閉じる。
瞼が震えるのは恐怖じゃない、悔しさからだった。
それでも、愛しい人が弟を連れて逃げてくれた事には、嬉しさで胸が梳く思いで。
満足感を抱えた心は、次の瞬間に足の間から感じる痛みに引き裂かれた。
「いっ、ぎッ――!!!」
「うお、めっちゃ締まる、やっべぇ熱い、肉襞が絡みついてくるぞ!」
「何ソレ、名器?まじ名器ってやつ??」
「おー、痛がってんぞ!俺のが食い千切られたらどうすんだよ!!」
だはははと無骨な笑いが飛び交い、それすら聞こえなくなるほどの痛みに冷や汗が浮かぶ。
愛しい人達と経験が無かったわけではないが、解されもせず無遠慮な侵入を受ける事は無かった。
愛しいと思い、思われ、愛される行為は激しくても嫌じゃ無かった。
なのに今は、涙が出てくる。
気持ちが悪い、嫌気が差す、身体が冷える、心が、冷える。
それでも涙だけは見せたくなくて、歯を食いしばって磔の友人を見た。
「……なに反抗的な目してんだよ」
気付いた蛮族の一人が、怒りに目を燃やして殴ろうと手を上げてくる。
けれど他の仲間に止められ、代わりに友人が殴られた。
「ヒスイっ!!」
「おっと、こいつが助かるかはお前次第だぜ?意味、わかるよなぁ」
ヒスイを殴った蛮族がげひた笑いを浮かべて腰を震わせる。
足の間からそそり立つ逸物がぶるんと震え、込み上げる殺意のままに口を噛んだ。
数回深呼吸を繰り返し、頬を殴りつけてくる逸物に口を開けて舌を向け、自分から丁寧に舐めていく。
屈辱的で今すぐ噛み千切りたかったが、だからこそ慎重に舌を動かした。
「――あがッ!!?」
次の瞬間、律動を止めていた後ろの男が動き始めて痛みが走る。
けれど、それに耐えながら舌を這わせ、口に含み、痛みの少ないように腰を動かした。
「お、自分から降り始めたぜ!この好き者が!」
「ひゅー!美人で淫乱とかたまんねぇ!!」
「なあ、リザレクトって確か傷だけじゃなくて薬も抜けたよな?」
「何すんだぁ?」
言われている内容を意識の外に置くようにだけ気を付け、男のモノをすすり吸う。
少しして吐き出された熱を口を抑えられた事で飲み下した。
捕虜となった間、ずっと男達に強要されていたが拒み続けた行為。
その一つを許してしまった事に、心の消耗が一気に進む。
次々に顔に吐き出され、青臭さが鼻について取れない気がしてきた。
そろそろ臭いに慣れて鼻が利かなくなってきているかも知れないが、むしろ都合が良い。
身体にも掛けられるそれが塗り付けられる度、怖気や鳥肌が立ったが気にならなくなってきた。
ただ一心に早く終わる事だけを祈る。
そうして、
「おい、そろそろ休憩させようぜ。薬の相談もしなくちゃなぁ」
「えー!まだ良いだろ、もっとヤろうぜ?」
「馬鹿、こういうのは緩急を付けた方が折れやすいんだよ。それにあっちに死なれても困るしな」
突き放されるように身体を解放され、勢いを殺しきれずに地に伏した。
男達の向こうでは友人が何かの小瓶を飲まされ、磔にされていたのを鎖に繋ぎ直すのが見える。
約束通り解毒剤を飲ませたようで安心すると同時に、疲労が目眩を催してきた。
バケツ一杯の水を掛けられて適当に汚れを流された頃、急に訪れた眠気に抗えずに目を閉じる。
ああ、良かった。
まだチカは捕まってない、ツルもきっと無事だ。
上手くどこか遠くに逃げてくれると良いんだが。
脳裏に過ぎったのは悲しそうに、けれどしっかりと自分を見返して微笑んでくれた最愛の人。
それと、奴らに逆らい続けたせいで傷付けられぼろぼろになってしまった最愛の弟の姿だった。
捕まってからどれくらい経ったのか、暗く窓一つ無い部屋の中では時間の経過が分からない。
体内時計はとうに狂っていて、けれど皮肉にも生かされ続けている。
理由は二つ、この身が不死鳥を模る獣人であった事。
そして、目の前の桜色の友人を殺さず生かさず壊す為。
「うあ"あ"あ"あ"あッ!!」
「好い声で鳴くねぇ、もっと声聞かせてよー!」
どうやら今友人の細い肢体を慰めモノにしているのは猟奇主義の奴ららしく、感触が鋭敏すぎて苦痛に感じる薬を使われたらしい。
ゴロゴロと地面に転がる注射器は、常人なら廃人になっていてもおかしくない量だ。
金色の瞳から涙を零し、口の端からは唾液を流し、逃げようと擦り傷を作りながら身悶えしている。
それでも時折こちらへと目線が降れば、一瞬だけ息を詰めるのだ。
まだ正気を保って静かになる友人に、何故自分を置いて逃げなかったのかと罵倒したくなる。
「ぐぅ、ひ、あ"あ"あ"、いッ……ぐ、ぅううううッ!!」
「あれ、泣くのやめちゃったー?薬足りないのかな、もっと入れようぜ」
「馬鹿、それ以上だと死んじゃうってー!けどまあ、嫌だってお願いするなら考えてやろうぜ」
「そうだな、助けてってお願いしても良いんだぜ? だーいじょうぶ、俺等そこまで悪人じゃないからさぁ」
どの口が言うのか。
鎖で固められ、代謝を落とす薬を使って動きを封じている俺を盾に、男達が言う。
十分に動くにはある程度の熱量が必要になる俺は、首の枷を掴む男にされるがまま友人、クニに顔を向けていた。
また、瞳孔を収縮させた瞳が俺を見る。
動きそうになった口がわななき、けれど彼は男達に請う事をしない。
それで良い、お前はそういう奴だ、だからそのままで居てくれ。
「……言っておくが、そのくすり……それいじょうは、死ぬぞ」
「は?何言ってんのトリ子ちゃん?」
「俺は、くすしだ。それ、は……ふくさよ、……しんきん、こうそく……」
途切れがちになる声で、けれど注意事項を上げてやれば男達は一旦躊躇する。
少しの間男達の密やかな声がした後に薬を取り上げられ、再度動きがあった時には抑えられた悲鳴が上がった。
どうやら薬の追加は諦めたようで、しかし今度は粘度の高い水音が響く。
その後に香るのは鉄を含んだ独特のもので、クニが傷付けられた事を知った。
最後は水バケツと、おざなりに手当のされた白い肢体が色を無くして床に転がされる。
がちがちと奥歯を鳴らして小刻みに震える身体を抱える事も出来ず、束の間の静寂を味わった。
身体が熱い。
どこもかしこも熱くて、粟立つ肌が風に吹かれるだけで気持ち良い。
頭がふわふわとして、真っ白になる刺激が欲しくて、もっともっとと快楽を求める。
お腹の奥が突かれる度、胸の桃色に染まった突起が弄られる度、肌が触れる度に脊髄から電気が走ったように白くなる。
それが欲しくて腰を動かして、お腹に力を入れて締めて、舌がナニカを舐めて、口が吸いつく。
気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い。
「しろちゃん上手に咥えるようになったねー?」
「ここ、気持ち良い?ずっと痙攣してる、イってる?ねぇイってる??」
「うわ、萎えても精子だらだらじゃん……これ潮噴くかな?嬉ションするかな??」
「んぶ、ちゅ……むぐ、おぼ、お、あむ、ちゅ、れろ……ぢゅ、ぢゅうう……」
口にナニカをくれるのが嬉しい。
お腹を突かれるのが嬉しい。
前を触られるのが嬉しい。
触られるのが嬉しい。
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい。
もっと欲しい、もっともっと、痛いのを忘れるくらい、溺れてる、溺れたい。
「あいつらしろちゃんに痛い薬与えたんだってさー」
「えー、気持ち良い方が良いじゃん。ほーら、しろちゃんだってこっちのが嬉しいよなぁ?」
「あはぁっ!うれひ、もっと、ほひぃ!おしり、いじって、おく、ついて、おくち、ちょうだい、しゃわってぇ」
顔がだらしなく弛むのを感じるけど、気にならない。
口に含んだナニカから温かい熱を待って、吸い付いて、出されて、飲み込む。
嚥下する感触にもゾクゾクと背中が粟立って、知らない間に笑みが零れた。
嬉しくて仕方なくて、涙を零しながら喜ぶ。
「ほらしろちゃん、おしりじゃなくておまんこ。俺達のちんぽがズポズポしてるんだよー」
「おまんこ!おりぇのおまんこ、もっとちんぽでズポズポして、おくにちょうだい!」
「あははー、素直な子は好きだよー!ところでしろちゃん、他の子が逃げた場所知らない?」
「あへ、ほかの、こ……? ……ぁ、ぁああ、ちが、うそだ、やめろ、離せ!!」
「うわ、しろちゃん!?」
しろちゃんって誰だ、俺は、なんで、こんな。
違う、喜んでない、嬉しくない、もう欲しくない、気持ち良くしないで。
逃げた場所なんて知らない、皆逃げれたのか。
チカ、上手く逃げれたんだろうか、泣いてないだろうか。
ツル、生きてくれ、泣いても良い、悲しくても、全部許すから生きて。
どうして、どうして二人の事も、皆の事も忘れて、思い出せなくなって。
ああ、ツル、チカ、今はただ笑った顔が見たいよ。
地面に転がる注射器は一体どの位あるのか。
ここにある以外の物も、何種類も大量に投与されて。
爆発音がしてからあいつらは居なくなったが、クニも反応が無い。
少し前から、何度も痛みと快楽の薬を交互に投与されてクニは人形の様に動かなくなった。
心が壊れたのか、ショック症状で意識が混濁してるのかは分からない。
ただ、床に投げ出した身体は傷と精液塗れな事が痛々しい。
「……クニ、起きてるか……」
「……」
目は開いているのに、空に視線を投げたまま。
指先すらピクリとも動かない。
涙の跡が目を赤く染め、頬を腫らせていた。
桜色の髪の毛は綺麗に染まっていたのに、ガビガビで固まっている。
白い肢体は肋が浮き出るほど、痩せ衰えた。
それでもクニは綺麗だった。
「……クニ……必ず、助けるから……」
「……」
物言わぬ人形と化した彼は人ならざる色香を醸し出している。
儚い物とはなんと美しい事か。
せめて、今は少しの平穏を。
会いたい。
もう一度、君に会いたい。
それが誰の事を思ってか、分からなくなってしまったけれど。
叶うなら、もう一度抱き締めて欲しい。
君の傍は、安心出来て、泣いて良いと思えるんだ。
温かくて、支えてくれると分かるから、一緒に生きたいと思えたんだ。
だから、
「クニ、返事をしてくれ、お前の望み通りツルは無事だ、俺は約束を守ったぞ…」
暗かったけれど、怖かったけれど、何も分からなかったけれど。
とても温かかったから。
とても優しかったから。
「クニ、今度はお前が、約束を守る番ではないか?」
泣いて欲しくない。
悲しい声を、聞きたくない。
「必ず、戻ると…言ったではないか」
分からなかったけれど。
でも、会いたい誰かだと思ったんだ。
チカ、ツル、とても大切な誰か、大切な思い出、俺の奇跡。
ああ、君の顔が見えるよ。