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オメガバースぱろ8




「はぁ、全く貴方達は…」
ゼクスがため息をついたのはレイリの首輪の周囲の噛み痕を見つけたせいだ。
「うぅ…ごめんなさい」
しゅんとしたレイリのよそで、シュノはレイリの肩を抱き、よしよしと頭を撫でる。
「貴方も、少しは反省したらどうです?」
「レイリがエロいのが悪い」
耳許に唇を寄せて舌を這わせると、レイリがびくっと体を震わせて目をぎゅっと瞑る。
「やっ…」
「こんなどこもかしこもエロい身体を目の前にして我慢しろってのが土台無理な話だろ」
「開き直らないでください
レイリ、身体は大丈夫ですか?」
念のためゼクスはシュノからレイリを引き剥がした。
その途端、支えを失ったレイリはぺたんとその場に座り込んだ。
「あはは…実は、あんまり…」
「レイリ、宿で休んでるか?」
座り込んだレイリを支えながら立ち上がらせると、ぎゅっと腕の中に閉じ込める。
「大丈夫だから。
シュノのお仕事してるところ、みてたい。」
にっこり笑ったレイリに、つられてシュノも微笑みかける。
「無理はするなよ」
「うん、判ってる」
宿から少し歩いた先にある祭り会場の奥、神社の境内で撮影準備は整っていた。
境内や鳥居をバックにシュノを撮影していく様子をレイリは眺めていた。
幻想的な雰囲気の中に妖艶なシュノが笑みを浮かべている。
まるでファンタジー小説みたいだと他人事のように見ていた。
「シュノさん終わりましたか?」
ふと、背後からにこにこと柔和な笑みを浮かべた少年が立っていた。
「フィオルか。」
「次、私も一緒の撮影なのでよろしくお願いしますね」
見目麗しい二人が並ぶとたちまち見物客から黄色い歓声が上がる。
「フィオル、俺、やっぱり先に…」
フィオルの背後に小柄な少年が赤い首輪をしている。
「大丈夫だから、それにこれをしたまま独りで歩くのは感心しないな
襲われたらどうするんだい?」
ぐっと押し黙る少年に、何かに気が付いたようにシュノが頷いた。
「そうか、お前の番か」
「彼はロゼットです。まだ番ではないですが、卒業したら番になる予定です。」
フィオルがロゼットの腕をぐいっと引っ張ると腕の中に閉じ込めた小さな体を愛しそうに抱き締めた。
「ちょ、勝手にそんな…俺は、お前と番になるなんて一言も…」
「ならないとも言ってないだろう?
シュノさんもΩの恋人が居ると聞きましたけど」
「ああ。レイリ、おいで」
レイリがおずおずとシュノの側に行くとシュノの事務所の後輩モデルとその恋人のΩを紹介された。
レイリはΩであることを隠してきた。
その分Ωにしか判らない苦痛を分かち合える人は居なかった。
だから、シュノはレイリがロゼットと仲良くなって不安や悩みを共有できればと考えた。
ロゼットにしても、Ωは数少なく身の回りにΩの友人もなく、不安なことも多い。
少しでもその不安を分かち合える人を得て、レイリもロゼットもどこかすこし安心したように思えた。
「じゃあ俺らは撮影に戻るから、あんまりうろうろするなよ」
「うん」
二人の背中を見送って、何か話しかけようかと思ったときにレイリのスマホがなった。
着信表示はレイアだった。
「もしもし?」
『後ろ向きなよ』
レイリが首を傾げながら振り向くと人混みに紛れてレイアがこちらを見ていて、手招きしている。
「ゼクス、僕すこし離れる。
すぐに戻るから」
「あ、レイリ!何処に行くんです」
駆け出したレイリは人混みに飲まれてすぐに見えなくなってしまった。
「レイリさん、どうしたんでしょうね」
隣で撮影を見学していたロゼットは不思議そうにレイリが消えた方向を見た。

「レイア、どうしてここに?」
レイアと合流したレイリはついてこいと言わんばかりに歩き出した。
見失わないようにレイアの服を握りながらなれない下駄で付いていく。
人気のない場所まで来ると急にレイアが立ち止まった。
「なぁ、お前の番…シュリにそっくりだな。」
冷たいレイアの声に、レイリはびくっと体を震わせた。
「まさかと思うけど、お前…まだシュリのこと…」
「違う、違う、そんなんじゃない
僕はただ…」
レイアはレイリの首を片手で掴むと、力を込めて締め上げた。
「実の弟でも、シュリに手を出すなら殺すよ?」
殺すというのは流石に比喩だろうが、本当に殺しそうな勢いに、レイリは怯えて頷くしか出来なかった。
「まぁ、シュリは僕の番だからね
手出しなんてもう無意味だけど、シュリの事諦めてないならお前を番が作れない体にしてやるだけだよ」
「しない、そんなことしないよ…
信じてよ…」
涙を瞳一杯に溜め込みながら、レイアの誤解を解こうとしどろもどろに説明し始めた。
「雑誌で初めて見た時からシュリさんに似てるなって思ったのは確かだけど、シュノと付き合って僕はちゃんとシュノの事が好きで、シュノも僕が好きって言ってくれて…だから、だから僕はシュノだけのΩになろうって…Ωとして生きていこうって…」
レイアが手を離すと、レイリはその場にへたりこんだ。
「シュリさんの事は好きだけど、レイアからシュリさんを奪ったりするような好きとは違うよ…それに、僕はちゃんと…」
「別にお前がどうなろうと知らないよ
ただ、今日はお前に知らせなきゃいけないことがあってわざわざ呼び出したんだ。
話くらい聞きなよ」
話をそらしたのはそっちだと言いたかったが、レイアに逆らうとろくなことにならないと知っているレイリは黙っていた。
「シュリが妊娠した。」
「………えっ…?」
レイリは頭が真っ白になり、目眩がしたような気がした。
「もう大分身重でね、療養をかねてこっちの別邸で暫く過ごすことにしたんだけど、お前がここに来るって聞いたから」
レイアに子供が出来た事に驚きとショックを隠せない。
「本当はこの前会ったときに言うつもりだったんだけど、お前襲われた後だったし」
「あ…」
シュノと初めて会ったあの日にはもう二人の間には新たな命が宿っていた。
「そう、なんだ…急なことでビックリしたけど、おめでとう」
レイアは何も言わずにレイリを見ているだけで、レイリは居心地の悪さを感じた。
「まぁ、欲しくて出来た訳じゃないし事故みたいなもんだけど、これで跡取りも確保したし、そうなるとお前は本格的に必要なくなるね」
何も言い返せなくて、ぎゅっと浴衣をきつく握った。
どうせ必要とされてない家だ。
シュノと生きると決めた時点でこうなることは覚悟してたけど、いざ目の前で言われるとやはりつらい。
「お前はシュノと生きていきなよ」
そのために、シュリは子供を産むことに決めたのだから。
その想いが、今のレイリに正しく理解できなくても。
レイアと別れてから、ふらふらとゼクス達の所に戻ってきた頃にはシュノ達の撮影は終っていて、シュノが心配そうに駆け寄ってきた。
「 レイリ!」
人目も気にせずレイリに駆け寄りきつく抱き締めるとレイリはようやくハッキリした頭でわたわたと焦りだした。
「シュノ!ここ外だよ!」
「心配しただろ、勝手にどこか行くな」
「……ごめん」
大人しく抱きしめられたまま、レイリは騒めく辺りの声もぼやけてよく聞き取れなかった。
「シュノ、ここでは目立ちますから」
「ああ、そうだな。レイリを休ませたいし宿に戻るか」
まだ何処かぼんやりしたレイリを離さないように抱き寄せる。
「シュノさん、私達はこれで。
良かったらこれ、ロゼットの連絡先です。
レイリさんが落ち着いたら渡してください」
「ああ、悪いな」
「ロゼも話し相手がいると安心すると思います。
私では理解の及ばないことも多いですから」
αには理解出来ないΩの苦しみや不安。
それを緩和させたいと思うのはどうやらフィオルもおなじようだった。
しかしながら、当の本人であるレイリは思い詰めたような表情のまま下を向いている。
何か良くないことを考えている気がして、早々にレイリを連れて宿に戻ることにした。
「ごめんね、お祭見れなくて…」
「祭なんか興味無いし人混みはあまり好きじゃない。
お前こそ何かあったんだろ?」
部屋について、楽な部屋着に着替えてから敷いてあった布団に横になりながらシュノはレイリを抱き締めながら頭を撫でた。
「レイアに会ったんだ。
子供が出来たんだって。」
「へぇ…」
「でね、レイアがね…もうお前は家にいらないって。
シュノと生きるって決めたのにね」
レイリが、泣きそうな顔でシュノにしがみついてきて、噛み殺すような声で啜り泣く。
「お前は家族が好きなんだな」
優しくレイリを抱きしめて、安心させる様に撫でるとシュノは困った様な顔でレイリを撫でていた。
「俺は家族からバケモノ扱いされて家出同然に家を出てずっと施設にいたんだ。
ゼクスの実家の系列の施設だ。
俺の家は一般的なβ家系で、何故αが産まれたのか判らない程普通の家庭だった。
だから、そんな親からすれば小さい頃から他の奴らとは違うαの子供は喜ばしいを通り越して気味悪かったんだろう。
そんな家に居るのは居心地が悪くて俺は家を出て施設に入った、小学生の頃だ。」
「そんな…シュノは、こんなに優しいのに」
「施設でも、βばかりでαの俺はやっぱり浮いた存在だった。
ゼクスとは施設の関係で長い付き合いだが、俺を恐れないで受け入れてくれたのはお前だけだ、レイリ」
ぎゅっと抱きしめられる。
本当に大切な宝物のように優しく、けれど確りと。
とくんと伝わる心音、温もりがレイリの冷えた心を暖かく癒してくれた。
「僕、シュノが居ないと全然ダメだ。」
「その言葉、そっくりそのままお前に返してやる。
俺もお前が居ないと生きていけない」
自然と唇が重なる。
貪るようなキスもレイリは抵抗せずに受け入れて、シュノはそのまま優しく頭を撫でた。
「お前は何も心配しなくていい。
俺はずっとお前のそばにいるから」
「うん、僕にはシュノだけ居ればいい」
笑ったレイリがシュノの背中にゆっくり手を回す。
照れた様な笑みでシュノの胸元に顔を埋める。
「大好きだよ、一緒に居れば居るほどシュノの事が大好きになってく。
シュノ、これからもずっと一緒だよね?」
シュノはレイリをきつく抱き締めて優しく微笑んで頷いた。
「何があってもずっと一緒だ」
その言葉に安心したのか、レイリは笑顔を見せて微睡みの中におちていった。
眠ったレイリの額にキスをして、顔にかかった髪を避けてやる。
幼い寝顔を晒すレイリが愛しくて可愛くて心が高鳴る。
「お前だけだ、ここまで俺を本気にさせたのは」
シュノには、レイリは壊れやすくか弱い者に映っていた。
しかしレイリは変わろうと必死にもがいている。
それはシュノと出会い、レイリの世界が開けたから。
何度、眠るレイリを前に愛を囁いただろう。
そうして、閉じ込めても、レイリはいつも居なくなる。
「……今度は、離さない。」
そう呟いて、シュノは違和感を感じた。
「……今度は?」
前にもあったのだろうか、いや無かったはずだと頭の中を整理する。
不思議と初めて会ったときもそんな感じがしなかった。
眠るレイリを抱き締めて、シュノも目を閉じた。
何がどうでも構わない。
レイリが隣に居て、自分はそれを幸福と感じている。
それだけでいい。


オメガバースぱろ7



「レイリ、レイリ…」
首筋の首輪を噛みながら、シュノはレイリを押さえつける。
シュノより小柄なレイリはすっぽりとシュノの腕に収まってしまう。
「レイリ…可愛い…」
浴衣の帯を解き、白い肌を露にする。
まだ誰にも開かれたことのない身体。
ずっと犯したかった。
「悪い、優しく出来そうも無い」
αの本能が目の前のΩを犯したくて仕方ないと焦燥に駆られる。
レイリがにこっと笑う。
無理をしてるのは目に見えていた。
身体が震え、笑顔が引きつってる。
それでもレイリはシュノを受け入れようと覚悟を決めたのか、逃げるそぶりは見せない。
「レイリ…」
理性が弾け飛んだシュノはレイリの秘部に自身を押し込んだ。
「ひ、う…く」
慣らしてない、ましてや初めて男を受け入れりるそこは固く閉ざされていて、無理矢理押し開いていく為、強烈な痛みがレイリを襲う。
「う、あ…あ…」
大きく目を見開き、白い喉元をさらけ出して体を震わせるレイリ。
「い…た、ひう…」
苦しさと痛みと、体の芯が熱くなる感覚に涙が溢れてくる。
怖くて逃げ出したかった。
いつもと違うシュノが怖かった。
それでも、これから向き合わなければいけないのも事実で、何よりがっちり押さえつけられて逃げることすらかなわない。
「う、ぁ…レイリ…全部、入った」
シュノが苦しそうにレイリの頬をなでて、額にキスをする。
シュノも逆らえないαの本能をおさえつけようと必死なのが伝わった。
腹をこじ開けるような痛みと圧迫感に声も上げられないレイリはシュノにしがみついて唇に触れるキスをした。
「僕は、大丈夫…」
自分の痛みよりシュノが苦しそうにしているのを見ている方が何倍も辛かった。
そう思えば、不思議と恐怖も薄れて逆に愛しさが込み上げて溢れ出る。
「無理、しないで…全部、僕にちょうだい」
それが、Ωとして生まれた自分の役目だから。
「レイリッ…」
レイリの脚を抱えてより深く繋がると、ギリギリまで引き抜いて一気に突き刺す。
ズプッ、とゆっくり緩急をつけてなるべくレイリの負担にならないように出し入れする。
「…んああ…ふぁっ…っん、ふ…」
息も絶え絶えなレイリはギュッと唇を噛み締め、畳に爪を立てる。
濡れていないレイリの中は、動く度に媚肉が貼り付いて双方に痛みをもたらしていたが、無理な挿入により切れた秘部から滴る血が少しずつローションの代わりを果たし、ようやく濡れたレイリの秘部をシュノが激しく突き上げる。
シュノの性器は熱くレイリの媚肉を押し広げ、奥深く迄暴かれる。
このままとけてしまいそうだとレイリは思った。
一度体を繋げてしまえばもう止まらない。
「はぁ…んっ、ふぅ、ぁッ、ん!!」
シュノの首に腕を回し、レイリはキスを強請るようにシュノを見上げた。
「キス…して…」
潤んだ瞳で上目使いに見上げられれば、シュノもこらえることが出来ない。
舌を絡め、息つく暇も無い程に激しく濃厚に咥内を犯す。
上と下、両方の口を同時に犯されて、レイリは口の端から唾液を零しながらシュノの名を舌足らずな声で何度も呼んだ。
ぬちゅぬちゅと、出し入れされる水音が部屋に響き、聴覚までを犯される。
「んむッ…はぁん…んっ…んん」
「レイリ…っ…は、レイリっ!!」
シュノも全く余裕が無く、レイリを抱き締めて貪る様にキスをしながら乱雑に揺さぶる。
「はぁっ、んッ、ん…う…あっ、あああ!」
箱入り育ちのレイリは、αとのセックスがこんなに激しい行為だと知る由もなく、頭を真っ白にさせながら為すがままに揺さぶられていた。
「くっ…レイリの中…すげぇ熱い…」
「ふぁあ、ん…や、だ…そんな、言わないで…」
急に恥ずかしくなったのか、レイリは両腕で顔を覆った。
「顔、見たい…
レイリの可愛い顔見せて、声を聞かせて」
静かな部屋にレイリの押し殺した吐息が漏れ、濡れた肉と肉がぶつかる水音が部屋中に響く。
「ひぁああ!!あっ、あ…やぁぁ…」
レイリは足をピンと伸ばし、指先が突っ張る。
シュノはレイリを犯す獣の様に深く体を繋げてずちゅずちゅとひたすら腰を動かしていた。
「っ、レイ…もう…イく…」
「しゅの、ぼく…も、おかしく…なっちゃう…」
快感に負け、トロトロに蕩けた表情でレイリはこれから自分がどうなるのか理解出来ずに泣き叫ぶ。
「やぁっ、こわい、おかし…ふぁああっ!!」
「レイリ、悪い…もう、無理だ…」
シュノは一際激しく腰を打ち付ける。
首輪を噛みながら、レイリの身体に自らを刻みつける。
レイリはびゅるっと自分の腹を精液で濡らす。
「レイリ、頑張れ」
シュノが、妖艶に笑った。
それをどこか他人事みたいに、ああシュノはやっぱりカッコイイな…なんて考えながら、レイリはそっとシュノに抱きついた。
体の奥底で熱い何かが弾ける。
それは少ししずつ、レイリの腹の中にたまっていく熱くて愛しいシュノの愛液。
「ふぁっ…しゅの、熱い…おなか、溶けちゃう…」
「っく、まだ、まだだ
レイリ、ごめんな、うぁっ…ん、とまんねぇ…」
αのヒート時の射精時間は10分から20分程度、通常の精液より何倍も濃いのがレイリの腹にどんどん溜まっていき、下腹部を圧迫する。
「う、あ…しゅの、おなか、くるしい…
しゅの、しゅの助けて、しゅのっ」
「悪い、ヒート時は射精が終わるまで抜けなくなるんだ」
「ひっ、うぁあ、うごいちゃ、やぁ…」
シュノが性器を引き抜こうとすると、なにか硬く膨れたものが根元で引っ掛かる感覚に、体が跳ねる。
「や…こんな、一杯出しだら、あかちゃん出来ちゃう…」
泣きながら首を左右に振って嫌がるレイリの身体を反転させて、バックの体勢になると、レイリを逃がさない様に深く押し込んで、身体をしっかり密着させる。
「あ、あう…」
ドクドクと流し込まれる熱いシュノの精液がだんだん心地よくなってきて、畳にしがみつきながら腰を高く上げて結合部をギュッと締め付けた。
「今締まったな、この体勢がイイのか?」
「ん、さっきより、ちょっと楽…」
シュノはレイリをギュッと抱き締めて、耳元から首筋に顔を埋める。
「レイリ、好きだ
孕んでも構わねぇから全部受け止めてくれ…」
甘い吐息に混じり、掠れた声で囁かれて、心がキュンとした瞬間、もうダメだった。
レイリはさらにキツク秘部を締め付け、ついでに堪えきれずに身体をヒクつかせてイッた。
結局シュノの射精が終わるまでにレイリは4回もイッてしまった。
ヒート後の脱力感に、グッタリした身体を起こし、俯せになったまま腰だけをシュノに突き出す体勢のまま気を失っているレイリの中からようやく萎えた性器をズルリと引き抜く。
愛液に濡れて妖しく湿ったそこから、コポリと中に出した精液が溢れて太腿をイヤらしく濡らしていく。
「レイリ」
軽く揺さぶってみると、レイリは虚ろな瞳でシュノを見上げた。
「あ、う…」
身体を起こそうとしたレイリは、秘部からトロトロと溢れてくる精液に顔を赤くした。
「中の掻き出すから掴まれ」
シュノは危なげもなくレイリを抱き上げ、浴室の扉を開けた。
「立ってられるか?」
「う、ん…大丈夫」
レイリを壁際に立たせて、指を押し込んで中で出したものを掻き出していく。
「ひっ…う、ん、あっ、ふぁ」
ギュッと壁に爪を立てながら込み上げる快楽に耐えるように目を瞑る。
太腿を伝い落ちるそれは足元に小さな体を水溜りを作り、これが今迄自分の胎内に収まっていたのかと思うと、少しの喪失感を感じる。
「こんな、一杯…」
「お前が発情期じゃなくて良かった。
発情期とヒートが重なれば避妊なんて意味無いからな」
「…そうだね、僕はまだ…妊娠したくない…」
ふらふらした足取りでシュノに抱きつき、甘えるように胸に顔を埋める。
そんなレイリが愛しくて、頭を優しくなでる。
「俺も、お前との子供なら居てもいいけど今はいらねぇ。
お前を独り占め出来なくなるだろ」
きつく抱き締めて、そのまま自然にキスを交わす。
汚れた身体を綺麗に洗って、二人で露天風呂に入って身体を休めると汗を引かせるために冷たいアイスを売店で購入した。
「ふぁー、甘くて美味しい。」
「よく食うな、これもいるか?」
「ひとくち頂戴」
レイリは自分の持っていたマンゴー味をシュノに差し出す。
「交換」
にこっと差し出すスプーンを避けて、そのままレイリを抱き寄せて口付けする。
「んむ、ふ…ぁ」
咥内に残る甘いマンゴー味のキスをたっぷり堪能して唇を離すと、とろんと蕩けた表情で見上げるレイリは、名残惜しいのかキスをねだるように瞳を閉じた。
シュノは白桃味のアイスを口に含み、唇を重ねた。
絡まる舌の間でアイスが溶けていく。
「あま、い…」
「レイリ、あんまりそうゆう顔するな
我慢できなくなる」
まだどこか頭がふわふわしているレイリは、意味がわからずに首をかしげた。
「シュノ、そろそろ着替えなくて良いの?」
貪るようにアイスを食べ合って気がつかなかったが、辺りはもう大分暗くなっていた。
「そうだな、着付けてやるからまずそれ脱げ」
シュノがキャリーから取り出したのは海色の睡蓮と金魚の浴衣。
帯もレイリの甘い蜂蜜色の髪に合わせた黄色。
宿の浴衣を恥ずかしそうにはだけさせるレイリに手早く浴衣を着付けていく。
少し伸びた髪をサイドで結えば、幼い顔付きによく映えた。
「浴衣なんて子供の頃以来だ」
シュノの目の前で嬉しそうにレイリがくるっと一回りして見せる。
「良く似合ってる」
シュノはレイリの頭を撫でながら自分も着替える。
濃淡の違う青みの強いグラデーションに蝶や花をあしらった浴衣に紺色の羽織を肩に引っ掛ける。
紫銀色の長い髪が妖艶な雰囲気を増していて、いつもと違うシュノにレイリは目線を泳がせた。
「シュノ、何だかすごい色っぽいね」
「レイリも妙にえろいな、祭だからって浮かれて俺以外見てるなよ」
「見ないよ!
シュノ以上のαなんてこの世に存在しないし、僕には必要ないもの」
そういって、首輪にそっと触れる。
首もとには先程シュノが噛み付こうとした痕がくっきり残っている。
首輪がなければ番が成立するところだった。
番は一生もの、一時期の感情に流されて簡単に決めるものではない。
ましてや選択権の無いΩには余計に早まるべきではない。
噛んでも良かった。
シュノは今まで出会ったどのΩよりもレイリに惹かれている。
そしてどうやらレイリも同じだと踏んでいる。
それでも、レイリを愛しているからこそ後悔はして欲しくないし、自分で良かったと思ってほしかった。
「そうだな、俺もお前以外興味ねぇ」
抱き締める小さなからだのぬくもりがこんなに愛しいと知ったのはレイリのせいだ。
この腕の中の存在にどれ程心揺さぶられているか。
「愛してる、レイリ」
「僕も愛してる、シュノ」
出会った頃よりたくさん笑うようになったレイリを大切に抱き寄せた。


オメガバースぱろ6



その日はシュノと朝早くから現場に向かうために車で移動していた。
運転はゼクスがして、シュノは助手席でスケジュールを確認している。
レイリは後ろからそんな二人を眺めながら、眠そうに目を擦る。
「レイリ、眠いなら寝てて良いぞ」
「現地迄はあと一時間くらいかかりますからね」
「でも、こうゆうの初めてなんだ
誰かと旅行するの、だから何だか楽しくて寝るのはもったいないよ」
楽しそうなレイリを見て、シュノはレイリに微笑みかけた。
ずっと、怖くて外に出ることも出来なかったレイリが、目を輝かせながら移り変わる窓の外の景色を眺めている。
休憩を挟んで、目的地に到着すると待っていたスタッフに案内されて先に宿に通された。
高そうな和室に露天風呂と小さな中庭がついている。
荷物を置いたらすぐに撮影を開始するらしい。
「レイリ、おいで」
シュノに呼ばれてレイリが駆け寄ると、ぎゅっと抱き締められた。
「シュノ…どうしたの?」
「撮影現場は一般のビーチだからこの時期は沢山海に来てる奴がいるんだ。
だから、お前が心配で…」
大半はβだろう。
だが、βも発情期ならΩを孕ませられない訳では無い。
それに、海に万が一αが居れば、レイリは襲われて番にされるかもしれない。
「シュノ…アレ、付けてよ。
覚悟は、出来たから」
にっこりと笑いかけて、そっと頬に手を当てる。
「本当は、噛んでもいいんだよ
だけどシュノがお互いを良く知ってからって言ってくれるなら、僕は君だけのΩになる覚悟をしていこうと思う。」
まだ会って間もないけど、シュノがレイリに対して誠実なのは理解出来た。
レイリの気持ちを第一に考えて行動していることも。
そこまでしてくれるなら、レイリはシュノの物になる為の覚悟をしようと決めた。
シュノだけのΩになる為に。
「わかった」
シュノはレイリの頬に何度もキスをすると、キャリーケースから赤い革の首輪を取り出した。
シュノが友人に頼んでレイリに似合う首輪を特別に誂えてもらった物で、この世でたった一つしかない特別な首輪。
首輪にはきちんとロックがついていて、特殊な鍵でないと開閉できない仕組みになってる。
Ωにとって首輪は己の身を守るための唯一の手段。
望まない番にならないための。
レイリはシュノを見上げた。
確り真っ直ぐ見上げて、ニコッと笑った。
この笑顔を守りたい。シュノはそう決意してレイリに首輪を嵌めた。
カチッとロックがかかり、レイリの首にピッタリ隙間なく嵌った。
これでレイリはαに襲われても、最悪番になる事だけは防げる。
「どう…かな?」
「可愛い、よく似合ってる。
だけど気をつけろよ、これで防げるのは番の契約だけだからな
孕まされないように周りに気をつけろ」
ギュッと、きつく抱きしめられて頭を擦り寄せて甘えるシュノが愛しくて、可愛くて、レイリはシュノを抱き返しながら頷いた。
「シュノ、そろそろ時間ですよ」
隣の部屋に止まることになっていたゼクスがシュノ呼びに来た。
「鍵、シュノが持ってて
君以外にこれを外す人は居ないから」
レイリはシュノにちいさなカギを握らせてから名残惜しそうに離れた。
そして部屋のドアを開けてゼクスを招き入れた。
「これから海に行くけど、レイリは遊んでて良いからな
だけどあまり俺から離れずに目の届く範囲に居ろよ」
「うん、お仕事の邪魔にならない様にしてるね」
水着に着替えて、ラッシュガードを着込むとプールバックに着替えとスマホ、財布に浮き輪を詰め込んだ。
「シュノ、今日の予定です」
ゼクスが打ち合わせから戻り、撮影のスケジュールを伝えていく。
「肌を焼かないように日焼け止めはしっかり塗ってくださいね
レイリ、貴方もですよ」
ゼクスがシュノに日焼け止めを渡すとシュノはめんどくさそうに舌打ちする。
「レイリ、向こうについたら塗ってくれるか?
背中は届かねぇんだ」
「うん、いいよ」
シュノはソワソワしたレイリをぎゅっと抱き締めて頭を撫でる。
「撮影終わったら遊んでやるからな」
「うん!」
レイリを連れてビーチへ向かう。
にこやかにスタッフに挨拶するシュノは完全に仕事モードだ。
水着に着替え終わったシュノがレイリに日焼け止めを塗るように背中を向ける。
冷たい日焼け止めをシュノの背中に塗り込める。
手のひらを介して伝わる鍛えられた肉体に心が乱れて落ち着かない。
レイリは我慢できずにシュノの背中にぎゅっと抱きついた。
「寂しいのか?」
衝動的に抱き付いたのを寂しいと言われ、はっとして我に返るとすぐに離れて顔を赤くした。
「あの…シュノが…カッコよくて、その…」
次第に自分が何を言っているのか判らなくなってレイリは俯いたままフードを深くかぶってしまった。
撮影場所は他の人が入らないように仕切られており、一般のビーチへ向かったレイリは何かあったらゼクスに連絡する様に言い、ゼクスにもレイリを見張るように告げる。
レイリは浮き輪を片手に海に足を入れた。
避暑地に海辺に来たことはあったが、海に足をつけるなど初めてだった。
ひんやりとした海水が足元の砂を浚っていく。
「気持ちいい…」
心地よい感覚に足を浸して歩いていると、浜辺で撮影してるシュノが目に入った。
シュノは水着で浜辺に立つだけで絵になるなぁと考えながら嬉しくなってしまう。
あの人が、自分の恋人で番になってくれる人なんだと。
レイリは浮き輪を水につけて、穴の部分に身体を寝かせるようにして両手を伸ばした。
天気は晴天、綺麗な青空と夏の日差し全てがレイリに取って何物にも変えがたい時間だった。
世界はこんなに色々なもので溢れていたのに、Ωだと言うだけでそれらすべてを無かったことにするのは愚かな行為だったと改めて気がついた。
「レイリ!もう少しで休憩になりますから余り離れないでくださいね!」
ゼクスが声をかけてくれて、気が付けば大分陸から離れていたので慌てて浜辺まで戻ってくる。
そこに撮影を終えたシュノがパーカーを羽織ってフードまでかぶってレイリを迎えに来た。
「レイリ、海はどうだった?」
ぎゅっと抱き締めて、首筋にキスを落としながらシュノが聞いてきた。
レイリからは磯の匂いがした。
「楽しかったよ、ぷかぷかしてて気持ちよかった
それに、お仕事中のシュノも見てたよ、凄くカッコ良かった」
にこっと屈託なく笑うレイリに満足したのか、シュノはレイリの手を引いた。
「昼飯食べに行くぞ」
「あ…でも…」
レイリはゼクスを振り返った。
もし他のスタッフも一緒なら自分のような一般市民が居ては迷惑がかかると思ったからだ。
何となくレイリの言いたいことを理解したのか、ゼクスは大丈夫ですよとレイリを宥めた。
「シュノはいつも一人で食事するんで、スタッフも周知の上です。」
「お前はいつも勝手に付いてくるけどな」
「当たり前です、貴方はいつも食べる詐欺ですからね。
見張ってないとコーヒーだけしか飲まないでしょ」
「シュノ…それは…」
さすがにレイリも困ったようにシュノを見上げた。
「ちゃんと食うからそんな顔するな」
レイリの頭を乱雑に撫でて、シュノとゼクスは近くの海の家で昼食をとることにさした。
午後も海で撮影した後、夜には近くで開催される祭りでの撮影があり、ちょっとしたイベントに参加して今日の日程は終わりだった。
「お祭りあるの?」
「この時期は観光客向けに温泉街で一斉にお祭りをやるんですよね」
「そうなんだ」
かき氷を食べながらレイリが祭で何をしようかとワクワクしてると、気だるそうに頬杖をついたシュノがレイリを見上げた。
「浴衣着て行けよ」
「え、浴衣なんて持ってきてな…」
「無いわけ無いでしょう、シュノが持ってきてますよ」
「えっ、え?」
シュノと二人で買い物に行ったとき、水着やら私服やらは新調したのだが浴衣は買った覚えはない。
とはいえ、着せ替え人形の様にあれこれ試着させられたので後半の方はもう何を着せられたか覚えていない。
「ちゃんとお前に似合うやつにしたから安心しろよ」
シュノが柔らかく微笑むと、レイリもシュノが喜んでくれるならそれもいいかと黙って頷いた。
「シュノ、そろそろ時間ですよ」
撮影再開の時間になると、シュノは人が変わったように爽やかな笑みでスタッフやカメラマンに声をかけている。
「シュノっていつもあんな感じなの?」
「そうですね、表面上の愛想は良いですよ。
スタッフや共演者にも好印象はもたれやすいです」
「そう…なんだ…」
何だか胸のあたりがきゅっと絞まる。
苦しくて、息が詰まる。
「ゼクス、僕ここで撮影見ててもいい?
邪魔にならないようにするから」
「構わないですよ、この椅子に座ってなさい」
レイリに椅子を勧めて、それにレイリがちょこんと座ると、こちらに気がついたシュノが笑いかけてきて身体が熱くなる気がした。
思えば一目見た時からシュノに惹かれていた。
シュノも一目惚れだと言っていたのを思い出す。
「運命の…番…」
その言葉にレイリは嬉しそうに頬を染めた。
「はい、お疲れ様でした。
じゃああとは夜になりますので時間までゆっくりしてください」
「お疲れ様でした」
シュノがスタッフに挨拶すると真っ直ぐレイリに駆け寄って、ぎゅっと抱き締める。
「シュノ?」
「周りの奴らがお前のことチラチラ見てた
俺から絶対離れるなよ」
「君を、見てるんだと思うけど…
大丈夫、離れないよ」
にこっと笑うとレイリはシュノの手をぎゅっと握る。
ふたりは一旦宿に戻り、レイリは部屋についていた露天風呂に入浴中だ。
ゼクスは隣の部屋で時間まで眠ってくるといわれ、シュノは広い旅館の部屋に1人手持ち無沙汰だった。
「シュノー」
不意に浴室から楽しそうなレイリの声がした。
「どうした?」
「ねぇ、シュノも一緒にはいろー!
すごい気持ちいいよ」
シュノは少し躊躇ってドアを開けた。
レイリは湯船に浸かりながら浴槽の淵にもたれ掛かってこちらを見上げていた
「シュノ」
しっとりと濡れた髪からこぼれ落ちた雫がほんのり赤く色付いた肌を滑り落ちる。
髪を下ろしたレイリはいつもより余計に幼く見える。
「ねぇシュノ、こっち…」
「レイリ…判ってんのかお前」
レイリは首をかしげてシュノを見上げる。
シュノはαでただでさえΩであるレイリに惹かれやすいのに、密室に裸で2人きりなんて、生殺しもいい所だ。
レイリの気持ちが追いつくまで手を出さないと決めているシュノはちりつく本能と戦っていた。
「手を出さないと保証出来ないから上がったら教えろ」
そこまで言われたレイリは顔を赤くしてシュノに背を向けた。
肌に張り付く髪の隙間から覗く赤い首輪が目に入る。
白く細い項に嵌められた赤い首輪。
シュノの奥底からじわじわと込み上がる黒い感情。
初めて会った時に感じた、レイリを滅茶苦茶に犯したい衝動。
そんな衝動を理性で押さえつける。
レイリを絶対に怖がらせたくない、傷付けたくない。
その一心でシュノは深く深呼吸して熱を吐き出すためにトイレに篭った。


暫くして、宿の浴衣にバスタオルを肩にかけたレイリが浴室から出てきた。
「シュノ、次いいよ」
ホカホカとしたレイリの身体を抱き締めて、首筋の首輪に唇を寄せる。
びくっ、とレイリの身体が震える。
「いい匂いだな…すごく…」
「あ…ん、や…くんくんしないで…」
「だってお前、すげぇいい匂い…」
レイリの首周りを執拗に嗅ぎ回るシュノに少し恐怖を感じつつ、そっと押し返した。
「シュノ…怖い…」
不安そうにシュノを見るレイリに我に返りレイリから離れた。
「悪い、なんか俺変だ…俺から離れろ」
「シュノ…」
戸惑うレイリには判らないだろう。
「俺、今…ヒートだ。」
「えっ…」
ヒート…名前だけは聞いたことがあるα特有の発情期で突発的にくるが、引くのも早い。
「あの、僕…いいよ?」
レイリがシュノの服を引いた瞬間、鋭い視線に身動きが取れなかった。
気が付いたら畳に押し倒されていた。
フー、フーと荒い息でレイリの首輪に噛み付くシュノに、初めて恐ろしいと思った。
「あ…あっ…」
がくがくと身体が震えるレイリに、シュノは必死に首輪を噛んでいる。
Ωの匂いがシュノのヒートを加速させていた。
元々理性で抑えるのが難しいヒート。
シュノの理性とは裏腹にαの本能がΩと番になろうと首筋に噛みたい衝動に逆らえない。
レイリは恐怖に声も出せず震えるだけ。
箱入りで育って、Ωと認めずに隠して生きていたレイリに圧倒的に足りない知識は、Ωを目の前にしたヒート状態のαの反応で、今それを身を持って体験している。
「や、だ…いや…こんな…」
普段紳士的なシュノの変貌に驚きを隠せない。
受け入れると覚悟を決めたはずなのに、恐怖を感じている自分が情けなくてレイリは涙を流した。
「レイリ、早く…俺から…逃げろ」
「や、いや…シュノが苦しいのに、置いていくなんて…」
そう、頭では思っていても、身体は震える。
「いい、から…シュノの…好きに…していいから」
レイリがぎゅっとシュノに抱きつく。
その瞬間に、押さえ付けていた理性は、脆く崩れ去ってしまった。

オメガバースぱろ5


連絡先を交換してから二人は頻繁に会うようになった。
専らレイリがシュノの自宅へ足を運び、映画のDVDを見たり、一緒にゲームをしたりただ二人で一緒に居るだけで互いに幸せを感じていた。
「レイリ、海に行かないか?」
レイリはキッチンでフレンチトーストをひっくり返しながら振り返った。
「海?何で突然?」
「来週海で撮影があるんだよ
近場に温泉宿もあって気分転換にはいいだろ
いつも会うときは俺の家ばっかりだし、たまには良いかと思って」
シュノと旅行なんて、この先いつ行けるか判らない。
仕事柄休みも殆ど無いようなシュノと、仕事のついでとはいえ海や温泉を一緒に楽しめるのは魅力的な誘いだった。
「うん…そうだね、考えとく」
「煮えきらないな、予定でもあるのか?」
予定などは無かった。
ただ旅行となれば色々物要りで、実家からある程度自由にできる金額は貰っているものの、レイリとしてはいつ見放されるか判らない立場上貯金しておきたいので、中々直ぐには答えを出せずにいたがそれをシュノに言うのは気恥ずかしかった。
アルバイトでもすればいいのだろうが、発情期を抱えたΩであるレイリは休みがちになるのは目に見えているため、中々仕事にもありつけない。
ただ、一番の理由はどれも違った。
「僕にも色々あるんだよ」
「まぁ、無理にとは言わないが俺はお前と一緒に行きたい」
ぎゅっと背後から抱き締められ、シュノの腕の中に閉じ込められる。
「…でも…」
「何だよ、何が心配なんだ?
誰かに会うのが嫌なら部屋に居ても良いんだぞ、部屋にも露天風呂がついてるらしいし」
「うわ、高そうな部屋…
流石人気モデルは違うね」
笑いたいのに笑えない、シュノとの格差を見せつけられてるみたいで。
「心配しなくても宿代は向こうもちだし、まぁ何か必要なもんが有るなら明日辺りにでも買いに行くか?
お前の服もその時に見繕ってやる」
「シュノに買って貰ってばかりはやだよ」
シュノは会う度にレイリに何かを買い与えたがった。
「俺がしたいからしてるだけだ
お前が側に居てくれるだけで俺の心はこんなに穏やかになるんだ
だから、少しでも長く一緒にいたいし望む事は何でもしてやりたい」
「シュノ…」
レイリは顔を赤くして下を向きながらモゴモゴと僕だって…と消えそうな声で呟いた。
「それにな、好きな奴に服を贈るのは脱がせたいって意味もあるんだぜ」
「っ、それ…」
「お前にはまだ早いがな
折角可愛い顔してんだから可愛い服着てにこにこ笑ってればいいんだ
そうすれば誰もお前をΩだと咎めはしない
そんなこと、俺がさせない」
優しく抱き締める力を込めて、そっと頭を擦り寄せる。
「俺が守ってやる、お前を否定する総てから」
「シュノは…僕を買い被りすぎだよ
僕はそんなに無垢な存在じゃないよ」
レイリは振りかえってシュノを突き飛ばすと、よろけたシュノを組み敷いた。
腰の上に馬乗りになると胸ぐらを掴んで噛みつくようにキスをした。
シュノはレイリの好きなようにさせていたが、暫くしてレイリが涙を零しながら胸元に踞ったので、背中を撫でてやる。
「っく…ふ…」
声を殺しながら、震えながら、レイリはシュノにはすがり付いて泣いた。
惨めでしかたがなかった。
シュノが与えてくれる物全てに埋めようのない差を感じてしまう自分が。
「なぁ、レイリ。
首輪、着けるか?」
首輪と言われてレイリがビクッと反応する。
「シュノ…」
「お前が周りにΩって知られたくないのは知ってる
だけどお前がΩであることに不安を感じるなら、首輪を着けてやる」
番の契約はαがΩの首を噛んで成立する。
それにΩの意思は必要ない。
だから番の居ないΩは首輪をするのが一般的だ。
「俺はお前の気持ちは判らない
何に不安になるのか、何に劣等感を抱くのか
だけど、側に居てやることはできる
俺とお前は違う人間だ
αの振りをしてもお前はΩなんだ」
シュノの言葉が胸に刺さる。
痛みがまるで根を張るようにシュノの言葉が重い。
「だから、俺がお前を守るから
全部捨てて俺の物になれ」
「シュノっ…僕は…」
「無理に話さなくていい、ほら鼻かんで目冷やせ」
「お願い、聞いて…
シュノには僕の全部を知って貰いたいから…」
レイリのぐちゃぐちゃな顔をタオルで拭ってやると、レイリはシュノに抱きついて胸に顔を埋めた。
顔は見せたくないらしい。
「僕のお祖父様はとても厳しい方で、特にΩは下劣な忌むべき性だと教えられた。
僕らがαだと判ったときも、Ωとだけは番になるなとキツく言われた。
αはα同士で結ばれるのが自然の摂理、Ωなどαに寄生する虫だ、決して契りを交わすなと」
「そうか、辛かったな…」
ぎゅっと抱き締めればレイリが震えてるのが判る。
「ん…そうだね…辛かった…かな
僕は両親も兄もお祖父様も大好きだったし、皆もΩと判るまでは僕をとっても可愛がってくれた」
しかしレイリはΩだった。
そのあとの事等簡単に理解できた。
「後は…判るよね
僕は親族から害虫のように扱われた、両親は僕みたいなΩを産んだせいで一族全員から哀われまれた
バッシングを受けなかったのはレイアがいたから
レイアは本当に百年に一度の天才って言われるほど何でもできた
努力はしてるんだけどそれを表に出さないから余計ね…
皆が言うんだ、双子の弟がΩだとはレイアが可哀想だって」
レイアを憎んだことは確かにない。
ただ、レイアがレイリを邪魔に思ってるかどうかは別だった。
いつも心の底ではレイアが自分を疎んでいるのではないかと心配していた
「レイアはね、僕の事何だかんだで心配してくれてるんだってレイアの番が教えてくれた
それに僕はレイアの事、嫌いだったことなんて一度もない
レイアは僕の自慢の兄様だから」
「そうか、でも兄貴はΩを番にしたんだろ?」
「うん、シュリさんは僕の事本当の弟みたいに可愛がって大切にしてくれた
レイアの事もとても深く愛し合ってて、羨ましかったな
僕もシュリさんみたいにαと番になって、幸せになりたいって初めて思った
そして、その相手が…シュリさんだったら良かったのにって…」
ぎゅっとレイリがシュノの服を握る。
「僕は、最低だ
あの時、ほんの一瞬でもΩだったのが僕じゃなくレイアだったら、僕はシュリさんと番になれたかもしれないのにって…
だから、だから僕は君に愛してもらえるような無垢で可愛らしい存在じゃないんだ…
僕は、僕は下劣な忌むべきΩ…
αに寄生しないと生きていけない害虫なんだ…」
「話は判った、なぁ…俺はシュリって奴の代わりにはなれないがお前を愛してやることはできる
幸せになりたいなら俺が幸せにしてやる
俺はお前を目一杯甘やかしたい
だからもうΩだからって悩まなくていい
お前を受け入れずに蔑む家なら捨ててしまえ
俺は世界がお前の敵に回ってもお前をずっと愛して守って幸せにしてやる自信がある」
「ほんと、君は不思議だね
君といると今まで悩んでたことも大丈夫って思える」
レイリは涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。
シュノはそれでも笑ってキスをしてくれた。
「シュノ、僕も海に行きたい
シュノのお仕事してるとこ見たい、服も水着もシュノに全部選んで欲しい」
「ああ、任せとけ
俺はお前のためにここに居るんだから」
愛しくて、愛しくて堪らない。
腕の中に閉じ込めた存在にこんなにも心を奪われている。
「ねぇ、僕に首輪をして…
僕をシュノだけのものにして…」
「ああ、お前に似合う首輪を選んでやるから」
レイリが漸く幸せそうに笑った
それを見ているだけでシュノも暖かい気持ちになった。
こんな気持ちは初めてだ。
「少しは落ち着いたか?」
レイリをあやすように抱き締めていたシュノは、腕の中に閉じ込めた愛しい片割れに額を合わせた。
「うん、ごめん
卑屈になるのはもうやめるから
僕を愛してくれた君に失礼だから」
照れたような笑みでシュノの唇に触れるだけのキスをする
「お昼、冷めちゃったね…」
すっかり覚めきったフレンチトーストを見て、レイリはシュノから離れた
「レイリ」
シュノはレイリの腕を掴んで抱き寄せると、舌を絡めながら何度もキスした
「ん、ふぁ…」
そのままシュノはレイリの体を抱き締めた。
「ちゃんと、言ってなかったな」
よしよしと頭を撫でられて、キョトンとするレイリを見てシュノは耳許で掠れた声で囁いた。
「好きだ、愛してる
俺の恋人になってくれ」
レイリは驚いた顔でシュノを見上げ、ボロボロと涙をこぼした。
そうして、目を赤く腫らしながら、何度も頷いた。
「僕で…いいならっ…」
「ばか、何度も言わせるなよ
お前じゃなきゃダメなんだよ」
「……うんっ…」
レイリが泣き止むまで頭を撫でながら抱き締めた。
「ほんと、泣き虫だな」
シュノが笑うと、レイリも嬉しくなってきた。
「シュノの前だから、シュノの前ではいいこやめる」
「そうだな、俺はいいこのお前が欲しいんじゃない、ありのままのお前が欲しいんだ」
「……シュノ、かっこよすぎ…」
レイリは恥ずかしくなったのか、またシュノの胸に顔を埋めた。
「当たり前だ、俺はお前の恋人だからな」
「ふふ、そうだね
僕の自慢がひとつ増えちゃった」
腕の中でレイリは今までで一番の笑顔を見せた。

オメガバースぱろ4



「心配だなぁ…」
レシュオムは運ばれてきたパフェにスプーンをさしながら呟いた。
向かいではリクが意味が判らないと言った風に首をかしげた。
「何がだ?」
「レイリさん
食事会してから様子がおかしいんだよね」
「お前、俺と居るのに別の男の心配とか…」
呆れたようにリクはコーヒーに口を付けた。
これはレシュオムの性格の問題なので仕方無いし、そう言ったところも好きだと言う惚れた弱味だった。
「ごめんごめん
でもやっぱりシュノさんと二人きりはマズかったかな…」
「時期尚早だとは思うがシュノさんがその辺のαと同じ様にホイホイΩに引っ掛かるとは思えないな」
「うん、シュノさんは信じてるよ
問題なのはレイリさんの方
レイリさんね、本当はずっと好きだった人がいるの
でもその人とレイリさんは絶対結ばれることはないの」
「何でだよ、何か問題でも?」
「うん…その人はΩ性でね、レイアさんの番なの」
さすがにリクも返す言葉を失った。
「本人は憧れに近いものだって言ってた
けど、もしレイリさんがΩじゃなかったら…」
最初はαだと言われ周りから持て囃された。
上手く出来なくても皆が慰めてくれていた。
それはレイリがΩと診断される迄の本の少しの間だった。
「その人がね、シュノさんにそっくりなの…」
はぁ…と盛大に溜め息を吐いたレシュオムに、リクはぼんやり窓の外を眺めた。
自分もレシュオムもβ性、この世の大半はβでαなんて希少な存在。
知人に一人いるだけで自慢できるレベル。
それよりも更に少ない、Ωがこうも自分達の周りに集結している。
大変だなぁと茅の外でいるわけにもいかない。
「大変だよな、お前も」
レシュオムは大学でレイリと知り合った。
一年上の先輩に凄いピアニストが居るの!と目を輝かせていたレシュオムを見て、レイリに嫉妬した時期もあった。
声楽科のレシュオムはピアノ科のレイリとよく一緒にコンクールに出場することもあって、コンクールを見に行ってレイリのピアノを聴くまでは。
レシュオムがレイリの世話を焼くのは単にレイリのピアノに惚れ込んだだけじゃない、複雑な家庭環境の中で、それでもただひた向きに生きているレイリの力になりたい気持ちが強かったからだ。
そんなことがあり、リクも何かとレイリを気にかけるようになった訳だった。
「レイアさんは誰もが認める天才の頂点みたいな人だけど、レイリさんは秀才型なの
頑張って努力して結果を出しても、レイアさんには叶わない」
「秀才が天才に勝つことは出来ない…か」
「だから、今回のコンクールの事も気にしてるみたいだし…」
話ながらパフェを平らげて、レシュオムは気だるげに頬杖をついた。
「こればかりは本人がとうにかするしか無いだろ」
「うん、それは判ってるよ
でも私はお義父さんもお義母さんも義兄さんも、血は繋がってないけど愛してくれたから、レイリさんにも幸せになって欲しいの
あの人自分がΩだからって幸せになることを諦めちゃってるから」
「そうだな、それは俺も同意する」
リクは溜め息を吐いた。
「だけどな、さすがに久し振りに会ってレイリさんの話ばかりするなよな」
レシュオムが一瞬きょとんとして、次の瞬間真っ赤になった。
「ほら、そろそろ映画始まる時間だろ」
伝票を会計に持っていくリクの背後で、頬を紅潮させながらレシュオムはそっとリクの手を掴んだ。
「ねぇ、リク
心配しなくてもレイリさんは私の事妹見たいにしか思ってないし、私もレイリさんの事は親しい先輩としか思ってないからね。
「判ってるよ、もう今更レイリさんに嫉妬はしてない
俺はお前に怒ってるんだよ」
そういって、軽くレシュオムの額をデコピンすると、子供のようにリクが笑う。
「いったい!レディーに何するのよ」
「これであいこ」
リクがレシュオムの手を握り、走り出した。
それにつられてレシュオムも走り出して、二人は楽しそうに笑いながら映画館への道を走っていた。
久しぶりのデートに幸せな気持ちで胸を一杯にしながら。



「ねぇー、ゼクスー!
どっか行こうよー、今日お休みでしょー!」
「貴女はいつも元気ですね、タウフェス」
眠そうに目を擦りながら見上げるゼクスに馬乗りになって彼を揺さぶる少女はゼクスとレシュオムの従姉であり、レイリの家に仕える使用人のレイシスの娘だった。
「ママからね、水族館のチケット貰ったの
ねぇ行こうよー、いいでしょ?」
にこにこと笑顔を浮かべるタウフェスに、身体を起こすから退くように言い、開館時館に会わせて家を出る事にした。
「ゼクス、最近ずっと難しい顔してるねー
シュノさんと何かあったの?」
「まぁ、そんなとこです」
シュノは事務所の看板モデルで、ゴシップは避けたいところで…
今までの女性関係はシュノにその気がない、女性側の一方的なものだったから良かった。
ただ、今回は違う。
明らかにシュノの方が固執してる。
あのレイリ・クラインという薄幸のΩに。
「寄りによってΩになんて…」
「え、あのシュノさんがΩに興味持ったの!?」
「オフレコで頼みますよ、こんなことに事務所に知られたら私の経歴に傷がつきます」
「あはは、シュノさんのって言わないのがゼクスらしいね
大丈夫、誰にも言ったりしないよ!」
「シュノは好きでやってるんですからどうなろうと知りません」
そう言いつつも、シュノの名に傷がつくようなことは阻止するんだろうなぁと一人小さな笑みを浮かべたタウフェスは隣で車を運転するゼクスを眺めて笑った。
「どうかしました?」
「ううん、なーんでも!」
楽しそうに笑うタウフェスにゼクスも自然と笑みをこぼした。
「ねぇ、着いたらまずイルカショーの時間調べようね、あとペンギンさんのパレードもあるんだよ!」
「タウフェスは初めてですか?」
「うん!だから楽しみなんだ!
学校の友達も皆行きたいって言ってたの」
「なら、友達と行けば良かったのでは?」
「……ゼクスの鈍感!
最初にゼクスと行きたかったの、判ってよ」
無邪気で無垢な子供だと思っていたタウフェスはいつの間にか一人前のレディーに成長していて、ゼクスは申し訳なさそうに笑った。
「好きなもの科ってあげますから、それで許してくれませんか?」
「しょうがないなぁ、じゃあイルカの縫いぐるみ買ってくれたら許してあげる
おっきい奴ね?」
嬉しそうなタウフェスを連れて水族館に着いたら、入り口で女子高生らしき数人が楽しそうに入場を待っていた
「あれ、友達だ」
「あー、タウフェスじゃん!
何々隣のイケメンさんはもしかして噂の彼氏?」
こちらに気が付いたピンク色の髪の少女が声をあげて駆け寄ってきた
「うん、そうだよー」
「いつもタウフェスがお世話になってます
これからもこの子と仲良くしてやってくださいね」
「勿論ですよー、今日もほんとはタウフェスも誘うつもりだったんだけど用事があるって言ってたのデートだったんだな」
「まぁねー」
タウフェスは誇らしげで、友人たちもなかなか気さくな良い子達だなと安心した。
最近厄介事ばかり起こったせいでこんなに穏やかな時間は心身共にリフレッシュになって良いかもしれない。
「今日は男子達は一緒じゃないの?」
「お兄様とクレイさんは今日は仕事ですの」
「ロゼは…ほら、いつものアレ」
「発情期?」
「そそ、だからヴェリテだけってのもかわいそうだねってなって」
確かに女子ばかりの面子で男子一人は心細いだろうとゼクスは一人突っ込みをいれた。
「お嬢もリアンも水族館は初めてだって言うからアタシ達だけで来ることにしたんだ
次はタウも一緒に行こうね、彼氏さんも一緒でさ!」
「リアン、次は動物園行きたいがです
可愛いもふもふ一杯です」
「あるぱか、というのが可愛いですわね…」
「じゃあ次は動物園だね!
タウも、次は一緒だからね!」
じゃあお邪魔虫は退散するよーと、嵐のように去っていった三人の背中をにこにこしながら見送ったタウフェスはゼクスを見上げた
「……予定を確認しておきます」
「えへへ、やったぁ!」
ぎゅっと腕に抱き付く愛しい重みに、数日間心に引っ掛かっていたもやもやが消えていく気がした。
シュノも、きっとこの気持ちをようやく知ることが出来たのだろう。
それなら影ながらサポートくらいはしてやろうと、暖かな気持ちで嬉しそうに笑うタウフェスを幸せな気持ちで眺めていた。


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