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オメガバースぱろ8




「はぁ、全く貴方達は…」
ゼクスがため息をついたのはレイリの首輪の周囲の噛み痕を見つけたせいだ。
「うぅ…ごめんなさい」
しゅんとしたレイリのよそで、シュノはレイリの肩を抱き、よしよしと頭を撫でる。
「貴方も、少しは反省したらどうです?」
「レイリがエロいのが悪い」
耳許に唇を寄せて舌を這わせると、レイリがびくっと体を震わせて目をぎゅっと瞑る。
「やっ…」
「こんなどこもかしこもエロい身体を目の前にして我慢しろってのが土台無理な話だろ」
「開き直らないでください
レイリ、身体は大丈夫ですか?」
念のためゼクスはシュノからレイリを引き剥がした。
その途端、支えを失ったレイリはぺたんとその場に座り込んだ。
「あはは…実は、あんまり…」
「レイリ、宿で休んでるか?」
座り込んだレイリを支えながら立ち上がらせると、ぎゅっと腕の中に閉じ込める。
「大丈夫だから。
シュノのお仕事してるところ、みてたい。」
にっこり笑ったレイリに、つられてシュノも微笑みかける。
「無理はするなよ」
「うん、判ってる」
宿から少し歩いた先にある祭り会場の奥、神社の境内で撮影準備は整っていた。
境内や鳥居をバックにシュノを撮影していく様子をレイリは眺めていた。
幻想的な雰囲気の中に妖艶なシュノが笑みを浮かべている。
まるでファンタジー小説みたいだと他人事のように見ていた。
「シュノさん終わりましたか?」
ふと、背後からにこにこと柔和な笑みを浮かべた少年が立っていた。
「フィオルか。」
「次、私も一緒の撮影なのでよろしくお願いしますね」
見目麗しい二人が並ぶとたちまち見物客から黄色い歓声が上がる。
「フィオル、俺、やっぱり先に…」
フィオルの背後に小柄な少年が赤い首輪をしている。
「大丈夫だから、それにこれをしたまま独りで歩くのは感心しないな
襲われたらどうするんだい?」
ぐっと押し黙る少年に、何かに気が付いたようにシュノが頷いた。
「そうか、お前の番か」
「彼はロゼットです。まだ番ではないですが、卒業したら番になる予定です。」
フィオルがロゼットの腕をぐいっと引っ張ると腕の中に閉じ込めた小さな体を愛しそうに抱き締めた。
「ちょ、勝手にそんな…俺は、お前と番になるなんて一言も…」
「ならないとも言ってないだろう?
シュノさんもΩの恋人が居ると聞きましたけど」
「ああ。レイリ、おいで」
レイリがおずおずとシュノの側に行くとシュノの事務所の後輩モデルとその恋人のΩを紹介された。
レイリはΩであることを隠してきた。
その分Ωにしか判らない苦痛を分かち合える人は居なかった。
だから、シュノはレイリがロゼットと仲良くなって不安や悩みを共有できればと考えた。
ロゼットにしても、Ωは数少なく身の回りにΩの友人もなく、不安なことも多い。
少しでもその不安を分かち合える人を得て、レイリもロゼットもどこかすこし安心したように思えた。
「じゃあ俺らは撮影に戻るから、あんまりうろうろするなよ」
「うん」
二人の背中を見送って、何か話しかけようかと思ったときにレイリのスマホがなった。
着信表示はレイアだった。
「もしもし?」
『後ろ向きなよ』
レイリが首を傾げながら振り向くと人混みに紛れてレイアがこちらを見ていて、手招きしている。
「ゼクス、僕すこし離れる。
すぐに戻るから」
「あ、レイリ!何処に行くんです」
駆け出したレイリは人混みに飲まれてすぐに見えなくなってしまった。
「レイリさん、どうしたんでしょうね」
隣で撮影を見学していたロゼットは不思議そうにレイリが消えた方向を見た。

「レイア、どうしてここに?」
レイアと合流したレイリはついてこいと言わんばかりに歩き出した。
見失わないようにレイアの服を握りながらなれない下駄で付いていく。
人気のない場所まで来ると急にレイアが立ち止まった。
「なぁ、お前の番…シュリにそっくりだな。」
冷たいレイアの声に、レイリはびくっと体を震わせた。
「まさかと思うけど、お前…まだシュリのこと…」
「違う、違う、そんなんじゃない
僕はただ…」
レイアはレイリの首を片手で掴むと、力を込めて締め上げた。
「実の弟でも、シュリに手を出すなら殺すよ?」
殺すというのは流石に比喩だろうが、本当に殺しそうな勢いに、レイリは怯えて頷くしか出来なかった。
「まぁ、シュリは僕の番だからね
手出しなんてもう無意味だけど、シュリの事諦めてないならお前を番が作れない体にしてやるだけだよ」
「しない、そんなことしないよ…
信じてよ…」
涙を瞳一杯に溜め込みながら、レイアの誤解を解こうとしどろもどろに説明し始めた。
「雑誌で初めて見た時からシュリさんに似てるなって思ったのは確かだけど、シュノと付き合って僕はちゃんとシュノの事が好きで、シュノも僕が好きって言ってくれて…だから、だから僕はシュノだけのΩになろうって…Ωとして生きていこうって…」
レイアが手を離すと、レイリはその場にへたりこんだ。
「シュリさんの事は好きだけど、レイアからシュリさんを奪ったりするような好きとは違うよ…それに、僕はちゃんと…」
「別にお前がどうなろうと知らないよ
ただ、今日はお前に知らせなきゃいけないことがあってわざわざ呼び出したんだ。
話くらい聞きなよ」
話をそらしたのはそっちだと言いたかったが、レイアに逆らうとろくなことにならないと知っているレイリは黙っていた。
「シュリが妊娠した。」
「………えっ…?」
レイリは頭が真っ白になり、目眩がしたような気がした。
「もう大分身重でね、療養をかねてこっちの別邸で暫く過ごすことにしたんだけど、お前がここに来るって聞いたから」
レイアに子供が出来た事に驚きとショックを隠せない。
「本当はこの前会ったときに言うつもりだったんだけど、お前襲われた後だったし」
「あ…」
シュノと初めて会ったあの日にはもう二人の間には新たな命が宿っていた。
「そう、なんだ…急なことでビックリしたけど、おめでとう」
レイアは何も言わずにレイリを見ているだけで、レイリは居心地の悪さを感じた。
「まぁ、欲しくて出来た訳じゃないし事故みたいなもんだけど、これで跡取りも確保したし、そうなるとお前は本格的に必要なくなるね」
何も言い返せなくて、ぎゅっと浴衣をきつく握った。
どうせ必要とされてない家だ。
シュノと生きると決めた時点でこうなることは覚悟してたけど、いざ目の前で言われるとやはりつらい。
「お前はシュノと生きていきなよ」
そのために、シュリは子供を産むことに決めたのだから。
その想いが、今のレイリに正しく理解できなくても。
レイアと別れてから、ふらふらとゼクス達の所に戻ってきた頃にはシュノ達の撮影は終っていて、シュノが心配そうに駆け寄ってきた。
「 レイリ!」
人目も気にせずレイリに駆け寄りきつく抱き締めるとレイリはようやくハッキリした頭でわたわたと焦りだした。
「シュノ!ここ外だよ!」
「心配しただろ、勝手にどこか行くな」
「……ごめん」
大人しく抱きしめられたまま、レイリは騒めく辺りの声もぼやけてよく聞き取れなかった。
「シュノ、ここでは目立ちますから」
「ああ、そうだな。レイリを休ませたいし宿に戻るか」
まだ何処かぼんやりしたレイリを離さないように抱き寄せる。
「シュノさん、私達はこれで。
良かったらこれ、ロゼットの連絡先です。
レイリさんが落ち着いたら渡してください」
「ああ、悪いな」
「ロゼも話し相手がいると安心すると思います。
私では理解の及ばないことも多いですから」
αには理解出来ないΩの苦しみや不安。
それを緩和させたいと思うのはどうやらフィオルもおなじようだった。
しかしながら、当の本人であるレイリは思い詰めたような表情のまま下を向いている。
何か良くないことを考えている気がして、早々にレイリを連れて宿に戻ることにした。
「ごめんね、お祭見れなくて…」
「祭なんか興味無いし人混みはあまり好きじゃない。
お前こそ何かあったんだろ?」
部屋について、楽な部屋着に着替えてから敷いてあった布団に横になりながらシュノはレイリを抱き締めながら頭を撫でた。
「レイアに会ったんだ。
子供が出来たんだって。」
「へぇ…」
「でね、レイアがね…もうお前は家にいらないって。
シュノと生きるって決めたのにね」
レイリが、泣きそうな顔でシュノにしがみついてきて、噛み殺すような声で啜り泣く。
「お前は家族が好きなんだな」
優しくレイリを抱きしめて、安心させる様に撫でるとシュノは困った様な顔でレイリを撫でていた。
「俺は家族からバケモノ扱いされて家出同然に家を出てずっと施設にいたんだ。
ゼクスの実家の系列の施設だ。
俺の家は一般的なβ家系で、何故αが産まれたのか判らない程普通の家庭だった。
だから、そんな親からすれば小さい頃から他の奴らとは違うαの子供は喜ばしいを通り越して気味悪かったんだろう。
そんな家に居るのは居心地が悪くて俺は家を出て施設に入った、小学生の頃だ。」
「そんな…シュノは、こんなに優しいのに」
「施設でも、βばかりでαの俺はやっぱり浮いた存在だった。
ゼクスとは施設の関係で長い付き合いだが、俺を恐れないで受け入れてくれたのはお前だけだ、レイリ」
ぎゅっと抱きしめられる。
本当に大切な宝物のように優しく、けれど確りと。
とくんと伝わる心音、温もりがレイリの冷えた心を暖かく癒してくれた。
「僕、シュノが居ないと全然ダメだ。」
「その言葉、そっくりそのままお前に返してやる。
俺もお前が居ないと生きていけない」
自然と唇が重なる。
貪るようなキスもレイリは抵抗せずに受け入れて、シュノはそのまま優しく頭を撫でた。
「お前は何も心配しなくていい。
俺はずっとお前のそばにいるから」
「うん、僕にはシュノだけ居ればいい」
笑ったレイリがシュノの背中にゆっくり手を回す。
照れた様な笑みでシュノの胸元に顔を埋める。
「大好きだよ、一緒に居れば居るほどシュノの事が大好きになってく。
シュノ、これからもずっと一緒だよね?」
シュノはレイリをきつく抱き締めて優しく微笑んで頷いた。
「何があってもずっと一緒だ」
その言葉に安心したのか、レイリは笑顔を見せて微睡みの中におちていった。
眠ったレイリの額にキスをして、顔にかかった髪を避けてやる。
幼い寝顔を晒すレイリが愛しくて可愛くて心が高鳴る。
「お前だけだ、ここまで俺を本気にさせたのは」
シュノには、レイリは壊れやすくか弱い者に映っていた。
しかしレイリは変わろうと必死にもがいている。
それはシュノと出会い、レイリの世界が開けたから。
何度、眠るレイリを前に愛を囁いただろう。
そうして、閉じ込めても、レイリはいつも居なくなる。
「……今度は、離さない。」
そう呟いて、シュノは違和感を感じた。
「……今度は?」
前にもあったのだろうか、いや無かったはずだと頭の中を整理する。
不思議と初めて会ったときもそんな感じがしなかった。
眠るレイリを抱き締めて、シュノも目を閉じた。
何がどうでも構わない。
レイリが隣に居て、自分はそれを幸福と感じている。
それだけでいい。


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