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星祭り



「ねぇ、タナバタって知ってる?」


朝、ドレッサーの前で髪をとかしていたマーガレットに、トラヴィスが尋ねた。
「タナバタ…?」
「リアン、知ってるです!
古い星のお祭りです。」
首を傾げるマーガレットに、リアンが思い出したように言った。
「星のお祭り?楽しそう!」
タウフェが興味津々に話題に食らいつく。
「リアン、それって何をするお祭りなの?」
「えっと…たしかタンザクという願いを書いた紙をササという葉に吊して、星にお祈りをするお祭りだった、と思うです。」
「タンザク?ササ?それってどんなもの?」
「さぁ…?詳しくはリアンも知らないです。
古い文献を読んだ程度なので…」
内容の判らない祭りに一同は首を傾げた。
「なにも、本物を再現しなくても、雰囲気だけ味わえりゃいいんじゃない?
適当な神に願い事を書いて、適当に葉っぱに吊せば…」
「それでいいんですの…?
何だか罰があたりそうですわ。」
大雑把なトラヴィスにマーガレットが呆れたように溜息をついた。
「とにかく、タンザクとササを用意して、今夜星を見に行かない?
男子達には内緒でさ!」

「今はやりの女子会ってやつだねぇ〜♪」
「女子会!楽しそう!!」
キラキラと目を輝かせるリアンとタウフェ。
マーガレットだけが一人、イヤな予感に溜息を吐いた。



「ちょっとぉぉ!これはどうゆう事ですの!!」
柔らかな風が吹き抜ける、女子寮の屋上。
羊皮紙の切れ端にそれぞれ願いを書いて、小さな鉢植えのポトスに短冊を吊した。
「ほらほら、お嬢もこっちきなよ〜!」
トラヴィスが手招きをする。
マーガレットが窓の縁に立って、子鹿の様に震えている。
「大丈夫?」
ふわりとマーガレットに手を差し伸べたのはタウフェだった。
「あ…ありが…とう…」
タウフェの手を取って、照れたように顔を背けた。

「ふぁー…風が気持ちいいです。」
リアンが星空を見上げながら、風に髪を遊ばせた。
「星が綺麗だねぇ。」
タウフェがマーガレットの方を振り向く。
「……そうですわね。」
「こうしてみんなで何かをやるのは、楽しいよね?」
陽気に笑うトラヴィスに、マーガレットもほんの少し口角をあげた。


ポトスの葉に揺られた、短冊だけがそれぞれの願いを星に願うように揺れていた。



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