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二人で創作・版権小説を書き綴ってます。
<光の家>
王城内にある隠された庭の中心にある施設。
優秀な血筋に再興の教育をさせる為と称して、騎兵隊所属者の子供を強奪、教育する。
他、身体能力の異常な者を拉致誘拐し、観察研究している魔憑き研究所。
光の家に招かれる子供は大体5歳で親と引き合わされ、元の家に戻される。
魔憑きは光の家の隔離区画に連れて行かれる。
その後はただ腹の底まで探られるような観察と、実験の日々。
魔人化を抑える術は見付かっていないので、無為に犠牲者を増やしている。
光の家の責任者、かつ魔憑き研究所管理者はルーシェスの部下のウィッカ。
在籍者
ゼクス5歳まで、その後騎兵隊所属の生家へ戻されてマグノリアに引き取られる。
レシュオム7歳まで、騎兵隊所属の生家から拒否されていたがマグノリアが引き取る。(シュノ17歳の時12歳)
(タウフェス、在籍していなかったが唯一光の家の場所を知る人物。たまに魔憑き区画の方まで侵入していた)
貴族の魔憑きは存在自体を隠蔽されるか、魔憑きである事実を隠蔽されるのと外面的に連れて来づらい為、放置される場合が多い。
<ウィッカ>
好奇心旺盛で世界の全てを知りたがる知的探求者にして気狂いの魔女。
マッドサイエンティスト。
ルシェとは正反対の魔騎士。
一人称:儂
二人称:お前様
特徴:カカカ笑い。歯をむき出しにした笑い。左が短い黒髪、右が長めの緑髪アシメ。左目が緑で右目が黒のオッドアイ。
職業:魔騎士
武器:蛇腹剣
シュノを見付けて彼の正体を知って以降、魔憑きへの興味を無くし友人の養子に全てを押し付け失踪中。
<マグノリア>
王国の為の盾、人民の為の剣。
仕える主君を見付けて自らの担い手になって貰う、人間に与えられる道具。
ルシェは魔剣、ゼクスは魔導書、レシュは聖剣、タウは賢者の石な位置づけ。
道具の素質があるからマグノリアなのか、マグノリアになって道具の素質を見出すのかは不明。
ルシェとレシュは戦う為の武器、ゼクスはサポートする為の道具、タウはサポートが万能の道具。
<ノエル・ミト・クロッシュ>
カルデロン教会の主教であり元騎兵隊隊長。
レイリが入るまでの隊長、シュノが副隊長になるまでの副隊長。
シュレイを後押しした人物その2。
ガキ共と呼んで可愛がる俺様。
一人称:俺様
二人称:ガキ、テメェ
特徴:白の髪に紅目のアルビノ。不老。
職業:僧侶
武器:チェインメイス
女神に愛された一族の一人で、見た目は30代だが実年齢は二倍以上。
愛煙家でサボリ魔。滅多に自分から動かないが、チェインメイスを使わせると守りに強い。
老衰しないが殺されれば死ぬ。毒への耐性は無いが浄化の魔法があるので死にづらい。
暗い森の中。
焚き火によって自分たちの居る周辺だけを明るくしながら、その火を見守るヴェリテの隣りにトラヴィスは腰掛けた。
それによって反応するものは何もない。
「何かさ、強さって難しいよね」
空いている肩に頭を預け、目を閉じて小さく呟くトラヴィス。
実戦訓練におけるチーム戦で特攻した彼女は孤立し、早々に戦死。
突出した強さがあれば、周りの敵を薙ぎ払えば簡単だと思っていた彼女は、自信を失った。
トラヴィスの抜けた穴を塞ぐ為にヴェリテが先陣を進み、その分後ろへの注意が疎かになる。
挙げ句に瓦解し、チームは自滅した。
何日か続けて行われるこの訓練は、各々のチームで夜営をする事も求められる。
ヴェリテを見張りに立てた皆は既に就寝中だ。
「もっと派手に戦えば楽だと思ってたよ」
「……頭は悪くない」
溜め息を吐いて頭をぐりぐりと動かすトラヴィスに、ヴェリテは頷いて返す。
話を聞くだけならまだしも、返答まであるとは思わなかったトラヴィスは驚いて振り仰いだ。
ヴェリテは、細長い枝を二つに折って焚き火にくべている。
赤い炎に照らされた彼は全体的に赤く彩られていて、普段の大人しい雰囲気とはまた違って見えた。
強いて言うなら、人間らしく映えて見える。
「でもさ、アタシ負けたよ? アンタ達にまで苦労かけたし」
「何故」
「……何が? アタシが負けたのとアンタ達が負けたのは関係ないとでも?」
本気で不思議がるトラヴィスの言葉に、ヴェリテは頷いて返した。
しかし今チームを組んでいるのは事実なのだし、一人が足を引っ張れば相当な痛手だろう。
チラリ、と横目に見てきたヴェリテと眼が合い、トラヴィスは口を噤んだ。
次いで彼が取り出したのは、革の水袋で。
意図が読めないトラヴィスは首を捻って理解しようとし、三秒で諦めた。
考えるよりも聞いた方が早いのだ。
「それ水? どうするの?」
トラヴィスの目線も水袋に向いている事を確認したヴェリテは、手の平に少しだけ垂らして水溜まりを作る。
指の間から漏れていくそれには気にせずに焚き火へとくべ、
「うわっ!?」
炎が跳ねた。
水ならばただ単に火を消すだけだろうと思っていたトラヴィスは驚いた。
まさか少量の水が跳ねてくるとは思わなかったのだ。
ヴェリテの足下に飛んだ火の粉を、今度は足下の土を手に取ってその上に盛る。
はっきり言って何をしたいのかが分からない。
「何してんの? 頭おかしくなった?」
「バランス」
「は?」
いきなり口を開いたヴェリテに何と言っていいのか分からず、トラヴィスは胡乱な目線を彼に向けた。
表情を微塵も変えない彼だが、意外と疲れて寝ぼけているのかも知れない。
そう思って腰を突いてみても、チラリと目線が向けられるだけだった。
くすぐったがりもしない。
「足りない物」
「それがバランス?」
頷くヴェリテは再び焚き火へと目線を移し、肩でトラヴィスの頭を小突いた。
促されるままに頭を再び乗せ始める。
こうすると彼の表情が見えないのだが、元より表情筋の動く方でも無し、トラヴィスは軽く息を吐いて望まれたままにした。
静かな呼吸が肩越しに伝わってくる。
「大きい、小さい、多い、少ない。バランスだ」
そしてそれは強さにも関わってくる、とヴェリテは言う。
トラヴィスが弱いのはトラヴィスの問題で、皆が負けたのは皆の問題だと。
かなりの極論で暴論ではないかと思ったのだが、つまり彼は自分なりにトラヴィスを励ましているらしい。
何となくむず痒い感覚になり、落ち着かない気持ちになり。
トラヴィスは心の赴くままに振り返りながらヴェリテの腰へと抱き着いた。
「なんだよー! アタシの事心配してくれちゃってんのー!?」
嬉しい気持ちのままぐりぐりと引き締まった腰つきに頭を擦りつけ、ヴェリテの肘に軽く頭を殴られる。
目線を向けない所から察するに、焚き火に薪をくべるのに邪魔だからだろう。
それを気にせずにうりうりーっと腰に抱き付いたままで居ると、
「あ! トラヴィスがヴェリテの押し倒してる!」
「は!? 何セクハラしてんの!?」
「おや、仲が良いのだね」
「姉さん……」
「お、おまっ……! お前達、不純異性交遊だぞ!!」
起きていた仲間達が次々に口を開いて2人の周りを取り囲んだ。
恐らく、珍しく落ち込んだ様子のトラヴィスが気になってそれぞれ独断で起きていたのだろう。
何だかんだでお人好しで仲間想いなメンバーに、トラヴィスは両手を広げて笑顔で応えるのだった。
早々に実技訓練の試験を終わらせたリアンとシルフィスは、2人で他の皆の所へ向かって歩いていた。
迷子になるからと差し出されたリアンの手を、恥ずかしげにシルフィスが握り返している。
「あ、見るですシルフィス」
「うん? どうしたのリアン?」
繋いでいた手を引っ張って制止を促す彼女を、青と紫の色違いの瞳で見つめる。
2人の後を着いていく猫のヒゲが、風もないのにさわさわと揺れた。
道を外れて歩いていく2人の前には丘が広がり、小さな花畑が広がっている。
学生がここまで来る事は珍しいのだろう、刈り取られて綺麗に高さを合わせる草は寝転んでいない。
「お花畑、可愛いがです」
「本当だ……こんなとこにあるとは思わなかった」
「ふふ! 素敵が発見ですね?」
嬉しそうに繋いだ手に力を込めて喜ぶリアンの顔は朗らかとした笑顔で、つられてシルフィスも頬を緩ませた。
力を込めて握ってた手をするりと抜き取り、シルフィスの両頬を両手で包んだ。
「もっと笑う、良いです!」
細められた目と頬を紅潮させながら言われると、つられて頬が赤くなる。
そもそも女の子と2人きりというこの状況も、手を繋いで並んで歩くという経験も無いのだ。
自然にそう接するリアンにつられていたが、シルフィスは改まって今の状況を考えてもの凄く恥ずかしくなった。
他の誰かに見られていたら、特に姉に見られようものなら何と言われるか判らない。
なのに目の前でリアンが笑うだけで、嬉しくなるのだ。
「シルフィスが、笑うです。リアン嬉しい!」
「……うん、僕もリアンが笑うと嬉しい」
頬を包まれた手に自分の手を重ねながら、一緒に笑い合う。
年若い少年少女が花畑の中で微笑み合うというのは仲睦まじく、とてもほのぼのとする光景だが、
「あなた達、ここがどこだか判ってるんでしょうね」
一匹の猫の言葉によってシルフィスは全身赤く染め上げて硬直するのだった。