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二人で創作・版権小説を書き綴ってます。
連れてこられた新たな子供、朱乃と過ごすようになって数日。
2人の間に会話らしい会話はあまりなかった。
小さな子狐の怜悧は自分より少し背が高く落ち着きのある朱乃に少しの遠慮と不安を覚えていた。
「しゅの…あの……」
怯えたように尻尾が足の間に挟まっているし、耳もしゅんと垂れている。
怜悧は不安げに朱乃を見上げている。顔色を窺うように。
「どうした?」
「おとなり、すわっていい?」
抱きしめたぬいぐるみから顔を覗かせる怜悧に、朱乃は座っていた場所を少し上げる。
それを良しと受け取ったのか、怜悧は朱乃の隣に座って少しだけ口元を緩めた。
「あのね、ぼく、だれかといっしょってはじめてなの。
これからはしゅのといっしょにおべんきょう、するんだよね?」
嬉しそうにふわふわの尻尾が揺れるのが抑えられない。
「ぼく、うまれたときからここにひとりぼっちだったの。
でもね、ひすいがきてくれて、しゅのといっしょにいれてうれしい」
まだ善悪も情緒も何もわからないまっさらで無垢な子狐が頬をほんのり赤くして嬉しそうな声色で告げた。
笑い方も知らない、歪な子狐の中に初めて芽生えた感情だった。
暫くは政府から与えられた学習用の映像や本を二人で眺める日々が続いた。
朱乃との会話はそんなに多くないが、怜悧は満足していた。
一緒に誰かが居てくれるというのが怜悧の中で一番心の支えとなっていた。
そして、緋翠が進言した通り朱乃は怜悧には必要不可欠な存在だった
「これは…朱乃の能力か?今までこのような反応はなかった。
一度朱乃を詳しく検査する必要がある。
反応が気になるから同様に怜悧の検査も行おう。
何故か朱乃が一緒だと怜悧の膨大な霊力が一気に安定する」
政府の研究機関の所長である男は興奮気味に語った。
朱乃は本来外れだった。
目的は片割れの方だった。
だが、鬼の血を引く強靭な肉体と力。そして霊力を散らすという上手くいけば遡行軍そのものを無に帰すことができるかもしれない可能性を秘めた力を開花させた。
それによって高密度の爆弾の様だった怜悧の霊力を上手く散らせて一定の状態を保たせている。
備中国の椿の審神者は一目でそれを見抜いたうえでこの二人を引き合わせたというのかと所長は末恐ろしさを感じた。
「さすが化け物共の集まりだ」
しかしながらそのおかげでこちらは最高の実験体を手に入れることができた。
時渡の異端児と玉藻の孫。
一生飼い殺して、実験を続ければ審神者にかなり有利な状況を作れるに違いない。
遡行軍に対して力を持つ審神者は圧倒的に不足している。
顕現する力があれば審神者に据えることができるが、霊力が弱ければ結局押し負ける。
この二人の力を利用すれば力の弱い審神者でもまともに戦える時代が来る。
顕現さえできれば審神者の頭数はいくらでも増やせる。
そうすればいずれはたどり着けるだろう、この戦争の終結に。
男は狂ったように笑った。
最高のモルモットが二匹、まさに手の内から転がり出てきたのだから。
「朱乃、怜悧、今日は検査を行うからお勉強は中止です」
「え?」
本を読んでいた怜悧がぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて不安そうに大人たちを見上げた。
「けんさってなにをするんだ?」
「二人が今どれくらい成長したか見るだけよ。
霊力の強さとか、あとは身体検査ね。健康かどうかのチェックよ」
朱乃が警戒して怜悧を庇う仕草を見せると女性研究員が二人の前に出て着て屈みこむ。
目線を合わせて微笑みかけ、なるべく優しく語り掛ければ怜悧は朱乃の手をきゅっと握って顔を見上げてくる。
「しゅの、だいじょうぶ。いこ?」
連れてこられたのは真っ白な部屋。
何時もとは違う検査室。
手術台や検査で使用する椅子や精密機械など沢山の見たことも無い物が並んだ部屋。
怜悧は大人の男が数人で囲んでいて不安そうに朱乃を見る。
「朱乃、こちらへ来なさい」
そういわれて朱乃は連れてこられた場所に座らせると、トレーが差し出された。
そこには錠剤が1錠とコップ一杯の水。
「朱乃、お前は特殊な抗体を持っている。それは今後の戦いに大いに役立つはずだ。
だからそれをより完璧にしなければならない。
お前がどれほど耐えれるのか見せてもらおう」
「…なに、いって…?」
朱乃に怯えの色が走る。
「黙って薬を飲みなさい。
身体に異変が起きるまで飲み続けなさい。」
朱乃が首を横に振ると、怜悧が小さく悲鳴を上げた。
朱乃が反射的に振り向くと、怜悧が床に伏せっていて地面に足で押さえつけられている。
押さえつけられた怜悧はじたばたとそこから抜け出そうと必死にもがくが、そこから背中を何度も踏みつけられ、やがておとなしくなった。
それを目の前で見せつけられた朱乃は、震える足で怜悧に歩み寄ろうとしてそれを阻まれる。
朱乃はそれを飲む以外の選択肢が無いのだと悟らされた。
諦めて飲んだ薬は特に何の変化もない。
5分待って何も変化がなかったので次に2錠、3錠、4錠と増やしていき、トータル10錠を含んだあたりから酷いめまいと吐き気を覚え、立っていられなくなり、床に倒れこむ。
息の仕方も忘れたかのように息ができなくて、身体が冷たくなっていく気がした。
朱乃はこれが死ぬという事なのかと思い、残された子狐の事が気がかりで仕方なかった。
「しゅ…の」
朱乃の意識が途切れる前に、微かに子狐が涙ながらに自分を呼ぶ声がした気がした。
必死に伸ばした手が朱乃の手に触れる。
お願いだから死なないでと必死に祈って朱乃の手を掴む。
それと同時に怜悧の小さな体からあたたかな光の粒が朱乃の体を包み込んだ。
死なせない、死なせない、絶対に。
その強い思いが朱乃の中の毒素を消し去った。
怜悧も暴行されたときの傷は癒えていたが、突然に大量の霊力を消費した為かそのまま気を失ってしまい、実験は中止になった。
部屋に戻された二人はダブルベットに寝かせられ、数日目覚めることは無かった。
目覚めてからは地獄だった。
抗体が完成した。
毎日毎日朱乃に致死量ギリギリの毒を飲ませては怜悧に毒を浄化させてを繰り返し、逆らえば小さくてか弱い怜悧に暴力を振るった。
どうせすぐに治るのだからと、小さな子供の体を蹂躙しつくす。
朱乃は心をすり減らし、感情を凍り付かせ、毒を飲み続けるしかなかった。
それがある日、抗体が完成したと言われて急にお払い箱にされた。
これで開放されるのかと思ったが、そんなことは無かった。
まだ地獄のふたが開いただけだった。
「もう朱乃には毒も薬も一切効かない。
あとは怜悧の浄化の力がいかほどかも試しておかないとなぁ?」
そういわれて、怜悧はビクッと震えあがった。
尻尾が完全に足の間に挟まっている。
怯えているのが目に見えてわかる。
「怜悧、今度はお前が朱乃の代わりにこれを飲むんだ」
怜悧に差し出されたのは朱乃の様な錠剤などではない。
毒草を乾燥させたものを粉末にしたものだった。
普通の人間なら一口舐めただけで即死する猛毒。
しかしながら怜悧は朱乃の体内のどんな猛毒でも瞬時に浄化してしまった。
興奮気味に研究所の主任が嫌がる怜悧を部下に抑え込ませてその小さな口に粉を流し込む。
「がはっ、う、ぐぁあ…」
口からぼたぼたと血を零し、床の上でのたうち回る怜悧を朱乃が蒼白な表情で見ている。
何かを発するたびにごぽごぽと血の泡を吹き出し、暫く痙攣していた体はやがてピクリとも動かなくなる。
「すぐに怜悧を検査する。
異常がないかスキャンをしろ、異常個所があれば適宜処置するように。
どうせすぐに回復する、生きていればそれでいい」
動かなくなった怜悧を手術台にのせてあれこれ検査してはまるで物を扱う様に粗雑に怜悧の体を切り開いていく。
怜悧は深く意識を失っているのか、目を覚ます様子はないが、麻酔をしている様子が無く、朱乃は怒りの炎を胸に灯した。
朱乃はまだ子供で、何をできる程力も強くなかった。
それでも、自分に懐いてきた小さな子狐をまるでおもちゃの様に扱う様子は許せなかった。
手術台から赤い血が川のように流れてくる。
それが全て怜悧の血だと理解した途端、朱乃の理性は切れた。
「……す、ころす、ころすころすころすころすころす!!!!」
手術台の大人たちをなぎ倒して怜悧を抱きしめる。
真っ青な顔の怜悧はもはや死体の様だったが、上下する胸が生きているのだと理解できて安心した。
「だれか、朱乃を取り押さえろ!」
「近寄るな!!」
怜悧を抱きしめたまま朱乃が大人たちを殺意のこもった瞳で見つめると、霊力の波動が広がり誰も近付けなくなる。
「怜悧に酷いことするな!怜悧は、怜悧は俺が守る!!」
きつく抱きしめた生気のない小さな体。
先ほどまで無残に切り刻まれていた体の傷はきれいに消えている。
傷口は綺麗に消えているが、こびりついた血は消えてはいない。
「どうして、なんで、俺達が何をしたっていうんだ!!」
悲痛な叫びと共にぎゅっと朱乃は怜悧をきつく抱きしめた。
「…しゅ、の……」
「怜悧!?大丈夫か?どこか、痛いところはないか?」
怜悧が光のない瞳で朱乃を見上げる。
耳はしゅんと垂れたままあまり動かせないのかびくびくと震えている。
朱乃が微笑みかけ、頬に触れると甘える様にすり寄ってくる。
朱乃が安堵したのと同時に今まで近寄れなかったほどに強力に広がっていた霊力の波動が徐々に収まっていく。
「あ、あ…僕…」
「大丈夫だ、もう、俺がずっとまも……」
何かを言い終わる前に朱乃の喉から血が溢れて怜悧の顔を赤く濡らす。
「ひっ…しゅ、の…!!?」
「あ、が……」
怜悧の方に倒れこんできた朱乃は背後からナイフで喉を一突きされて、血が溢れている。
呼吸するたびに泡のように血がこぽこぽと溢れて体温を奪っていくあたたかな命の水。
「や、いや、いや、死なないで、死なないで朱乃!!」
怜悧が朱乃を抱きしめて悲鳴の様に泣き叫ぶ。
それまで収まっていた波動がひときわ強く、衝撃波の様に辺りの物を破壊していく。
「怜悧をとめろ!意識を失わせればそれでいい!
朱乃から怜悧を引き離せ!!」
「やだ、朱乃は絶対死なせない!!好きにさせない!!」
怜悧の身体から急に暖かな光が溢れて二人を包み込む。
光の粒子が怜悧を朱乃を包み込んだまま朱乃の傷口を修復していく。
ナイフを引き抜いても綺麗に傷跡が消えて何も残っていない。
「…よかった…」
怜悧は微笑むとそのまま意識を失った。
重なり合う様に倒れこむ怜悧と朱乃はもはや霊力も落ち着いており、ただの疲れ果てて眠る子供の様だった。
「……朱乃にはまだ有用な使い道があるようだ」
壊れた実験室の中で主任の男が嬉しそうに笑った。
朱乃は両手足と首に霊力制御の為の枷を付けさせた。
霊力に反応して重さが変わるというものだが、こちらの指示で強力な電流を流し、麻痺させることもできる。
朱乃の身体能力を考えたらそれほどの枷を与えてもまだ両手離しに安心とは言えないが。
二人は部屋に置かれたダブルベットに寝かされてから三日程眠ったままだった。
先に目が覚めたのは朱乃だった。
隣に眠る怜悧が生きているかどうか確かめてからあたりを見回す。
見慣れた自分たちの部屋。
監視カメラで常に監視されているのも、今思えば実験に仕えるころ合いを見計らっていたのかと朱乃は舌打ちした。
「ん…」
怜悧がぴくりと反応する。
「怜悧!」
「……しゅ…の?ここは…?けがはだいじょうぶ?」
小さな手をぎゅっと握って安心させるように頷くと怜悧はふにゃりと微笑んだ。
「よかった」
「ずっと一緒だっていっただろ?
怜悧は俺が必ず守る」
「うん、だから朱乃はぼくがまもるよ、ずっと一緒に居たいから」
えへへと笑う怜悧をぎゅっと抱きしめて頭を撫でると嬉しそうに笑う。
その日から怜悧への実験はもはや虐待を通り越して拷問としか言えないものに変化していった。
気絶するまで暴行、血を吐くまでの投薬、痛みを和らげたうえで瀕死まで解剖したり、臓器を取り出してみたり、薬品や煮えたぎった油で酷いやけどを負わせたりと人としての品位を疑うものばかりで、それを椅子に拘束されてただ眺めているだけの朱乃は怜悧が生き物ではなく実験動物としてしか価値が無いのだと理解させられた。
朱乃が怜悧の霊力をある程度安定させることができる事に気が付いた大人たちは怜悧の近くに朱乃を置くことで、怜悧の霊力の暴走と怜悧の理性の崩壊を同時に防げることに気が付いた。
そして、朱乃という人質が居る以上怜悧は大人しく指示に従うしかない事も。
どれほど泣き叫んでも、どれほど助けを求めても、どれほど許しを乞うても
その地獄が終わることは無かった。
自分たちが何をしたというのか。
何もしていない。
ただ生まれ落ちただけ。ただ生きているだけ。
それすら罪だと言われる程に、自分たちは悪なのかと朱乃が唇を噛んで涙を流す。
何度か助けを求めようとしたことはあった。
二人が唯一信用できる大人である緋翠が来た時だけ。
ただ、緋翠は多忙故に年に一度の短い時間しか会うことを許されず、霊力の修行のみで後は少しばかりの雑談をしたらすぐに帰ってしまう。
そして、緋翠に助けを求めようとすれば朱乃の枷に強力な電流を流して気絶させると言われている。
朱乃が最後までそれを伝えられない以上、怜悧が朱乃の代わりに緋翠にそれを伝えるのは難しい。
ましてや朱乃に痛みを与えると明言されていれば怜悧は自分から助けを求めることはしないだろう。
怜悧の悲鳴を聞きながら今日も朱乃は涙をこらえるしかできなかった。
この日は普段と様子が違った
可愛らしく成長した怜悧が解放されてすぐに床にたたきつけられる。
連日の非情な実験のせいで身も心も弱った怜悧はそのまま床になぎ倒される。
訳が分からないと言った表情で大人たちを見上げると、怜悧の検査義の紐をほどいた。
「な、に…、いや……」
逃げようとする怜悧の尻尾をぎゅっとつかむと、怜悧がきゃんと悲鳴を上げる。
「や…なにするの?やだ、やだやだ、しゅのっ、た、すけ…ひぃう!!」
「やめろ!!離せよ!怜悧に触るな!!怜悧、怜悧ッ!!」
朱乃が椅子をがたがたさせるが、床にネジで固定されているそれはびくともせず、拘束も外れない。
うつ伏せのまま、急所である尻尾を掴まれて逃げられない怜悧はそのまま乾いた後孔に猛った男の一物を押し込まれて、絶叫した。
「いやぁぁぁっ!!!いたい、いたいいたいいたい!!!やめて、ごめんなさい!
おねがい、もうやめて、いたい、いたい、動かないで!!」
泣き叫ぶ怜悧にお構いなしに男はその猛った欲を怜悧にぶつけていく。
「俺は朱乃の方が好みだが、お前はあぶねぇからな。
こっちで我慢してやるよ」
そういって涙を零して許しを懇願する怜悧を嬲りつける。
怜悧は縋る様に朱乃を見た。見て、悟った。
怒り狂った朱乃が今にも目の前の男を殺そうと自分が傷つくのも顧みずに拘束を破ろうとしていることに。
「…しゅの、だいじょうぶだよ」
怜悧がにこっと笑う。
蹂躙は怜悧が気を失うまで続き、かわるがわるに犯された後孔からは大量の精液と血がこぼれていた。
「朱乃を眠らせろ」
気絶した怜悧を物の様に抱えると、男の一人が朱乃の口元に何かを吹きかけた。
薬品の様でそれを吸ってしまった朱乃は強烈な眠気に勝てず、そのまま目を閉じた。