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黒と白。10

その本丸の離れは、水辺の上に建てられた日本家屋のような佇まいであった。
"鳥"達の為だけにあるそれは鳥かごであり、黒鶴の室もそこに用意されていた。
朝、前日までの騒ぎが嘘のように本丸は静けさに包まれている。
むしろそれが正常であり、大概の者は遠征や出陣で出払っていることが多かった。
そんな屋敷の中を元気に駆け回る白い小鳥が二振り。
揃いの着物に左右色違いの目をした彼らは一振りの鶴丸国永から顕現した刀の式で在る。
彼らは洋館を模した本丸から橋を渡り、離れへと足を進め、

「たずー、あさー!」
「朝だぞ、たず、起きろー!」

黒鶴の室に辿り着くと中の様子を探ることなく、遠慮など知らぬ顔で障子を開け放つ。
中にはお日様の匂いをふんだんに含んだふかふかの布団の中央で、雛鳥のように丸くなって眠る黒い頭。
二振りはその頭を見付けると顔を見合わせ、喜色に笑みを浮かべ合う。

「たーずー! 今日はおれたちと畑当番ー!」
「白月、出陣したから、今日はおれたちと、いっしょー」
「ん、むー……」

ぷにゅぷにゅと、何事かを小さく呟いて寝ぼける黒鶴の左右から騒ぎ立て、ようやく頭を頭を上げたその頬にちゅ、と小さく音を立てて口付けを落とした。
目覚めのキスと言わんばかりのそれを受け、ぱちりと蜜色の瞳を瞬かせて黒鶴は首を傾げる。

「あえ……白月、はぁ……?」
「しゅーつーじーんー。たずはー、おれたちと、畑当番ー!」
「長義が起こしてこいって、ご飯食べよー」
「長義が? ん、分かった。……えーとー……あれ?」

頷き、名前を思い出せないことに気付いたのだろう。
起き上がった黒鶴は頭を掻こうとして黒く長い己の髪に気付いた。
引っ張ってみれば頭の付け根が痛んだことから、間違いなく自身の髪だと気付く。
手を離せば、さらりとした手触りで絹のよう。
不思議そうにそれらを確認した黒鶴は再度目を瞬かせ、

「あれ? え、あれ? 俺、昨日……」

昨日どころか、その前の記憶すら怪しい自身に気付いた。
自分は黒鶴で、ここは自分の住んでいる本丸の離れにある自室。
"鳥"と呼ばれる一部の男士は、主のための子を番の精を受けて孕む事が出来る。
そして自分の、黒鶴の番は白月だ。
他にも幾人かの男士の名前や顔は分かるのに、起きる前の出来事についてはあやふやな記憶しかない。

「どうしたの?」
「忘れちゃった?」

無邪気な声が左右から聞こえ、思考の縁から意識を取り戻す。
くすくすと笑う顔は同じであり、黒鶴にも似通っていた。
視線を交わし、黒鶴に左右から抱き着く身体は幼い子供と変わらない。

「たずは忘れん坊だから、仕方ないな! 双子鶴で、俺はつるまる」
「俺達の方が兄ちゃんだから、仕方ないな! 双子鶴で、俺はくになが」

片やふにゃりと柔らかく笑い、片やにやりと男らしく笑う。
忘れられたのが他の刀だったなら、双子は口やかましく罵っただろう。
けれど相手は可愛い弟分であり、少々訳ありの鶴丸国永だ。
むしろ今度はどう呼び分けるのだろうと楽しみですらある。
双子から名前を教わった黒鶴は左を見、右を見、もう一度左を見て考え込んだ。
そうして次の瞬間には閃いたと言わんばかりに顔を輝かせ、

「分かった、双子だな!」

結局以前と同じ、違うけれど一緒なのだと本能で悟った黒鶴は笑顔で言い切った。
どれだけの忘我の果て、自分の意味も有り様でさえ忘れてしまっても、黒鶴は変わらない。
それが嬉しくて可愛らしくて、双子は喜んで左右から黒鶴へと抱き着いた。

「おかえり、たず!」
「たず、おかえり!」
「え、ただいま? ……あれ、俺どっか行ってたっけ? 朝の挨拶はおはようだし……」
「良いの良いの、たずはそれでいいの!」
「そうそう、それよりご飯食べに行こー! 長義怒らせたら面倒だから」
「そっか、そうだな! 双子、今日は畑当番サボるなよ?」

いつもの日常の風景に、鶴丸と国永は喜び勇んで黒鶴を左右から引っ張るのだった。

黒と白。9

双子の鶴丸国永に案内され、白月がやって来たのは長義の"蜜壺"だった。

「入るぞ」
「おう、ようやく来たか」

中から上がる声は長義の涼しげなそれではなく、野性的な獣を思い出すそれ。
おや、と首を傾げながら襖を開けば、思わぬ人物が。

「南泉、戻っていたのか」
「ああ。戻って直ぐに鶴丸から長義がキレたって聞いてにゃ」

部屋の中央には汁を吸い、もはやその役割を果たしていない布団が一式。
その上に互い違いで横になり、それぞれの逸物を口に含んですすり上げる雌が二匹。
鈍色の髪と白磁の肌を桜色に染め上げ、一心不乱に口へと含んで蜜を啜る黒鶴。
彼のモノを口に含み、時に舐め上げ、甘い声と共に青い瞳を蕩けさせる長義。
そんな二人を布団の脇に置いた座布団に座り、徳利を揺らして隣へと誘う南泉。
ふふ、と小さく笑みを浮かべた白月はその隣へと腰を下ろし、胡座をかく。
まずは一献、と渡された朱色の杯はまるでこれから神前での誓いを交わす式のよう。

「ああ、キレた、な。実際に斬られたのはたずだったが……」
「長義がたずを斬るなんてよっぽどだろ? 小鳥の中でも特にお気に入りだからにゃあ」
「そうか? 母として、全ての"鳥"を愛しておるぞ」
「……分かってんだろ?」

不意に、鋭い瞳を南泉から投げかけられて白月は笑みを深くした。
無垢な魂はその分移ろいやすく、黒鶴は他の"鳥"よりも不安定。
番を得たならばその者だけを愛し、身を捧げ、悦び、そうして依存を深めていくのが"鳥"だった。
けれど黒鶴はその無垢な心で白月を惑わし、周囲を魅了する。
生まれから呪縛され、無知な鳥が自由を知らぬ事を哀れんだ白月は、黒鶴が奔放に舞うのを好んだ。
そんな白月の執着は、黒鶴への思いとは反比例に増していく。
自由で在る事を望みながら、白月を思い、求めて狂い鳴いて欲しいという欲。
こんな風に何かを強く思うのは、黒鶴以外ありえない。

「珍妙な輩がな、迷い込んだのだ」
「ちん、みょう……?」
「うむ。本来ならば毒にも薬にもならぬ、獲って喰うだけの些細な贄。……しかし、守人が厄介でな」
「そいつが長義をキレさせたのか……チッ、面倒だにゃ」
「おや、南泉は長義に仕置きをするのも好きであろう?」
「そりゃあ嫌いじゃねぇけどよ、俺も長義も仲間を傷付けた仕置きってのは趣味じゃねぇよ」

酒を啜り、顔を顰める南泉のそれは本音だ。
子猫たちの愛らしい鳴き声と濡れる音を肴に、酒を酌み交わす。
長義の求める仕置きは南泉の居ない暇を潰す遊戯でなければならない。
南泉もまた、長義を鳴かせる事は好んでも泣く姿を見るのは好まない。

「ならば、せっかく長義がここまでお膳立てをしてくれたのだ。仕上げをするとしようか」
「お、そうだ。長義がよぉ、ちゃんと染め直した所を見ねぇと気をやれねぇって言うんだよ」

ふん、と鼻を小さく鳴らし不機嫌な声を出す。
つまり長義のみならず南泉が残っていたのは見守りのため、強いて言うなら補佐をする為だろう。
口は悪いが仲間思いであり、番想いな南泉に白月は喜び少女のような笑みを浮かべた。

「ふふ、おぬしらはほんに……俺はよき理解者を得たなぁ」
「ったく……ほら、長義。白月が来たぞ?」
「ぁ、ふ……ん……ちゅ、ぷ……はぁ……にゃあ、せぇ……?」

ちゅくちゅくと淫らな音を響かせ、熱を吐き出す為ではなく惹かせる為の遊戯に更けていた長義が顔を上げる。
瞬間、ぴゅるりと薄くなった汁が黒鶴のモノから吐き出され顔に掛かった。
ぺろり、と自身の頬に跳ね飛んだそれを舐める舌が艶めかしい。
快感に震える身体に叱咤し、足の間に顔を埋める黒鶴へと手を伸ばす。
神気を吐き出した身体は、損なった分を補おうと貪欲に穢れを呑み込んでいた。
蜜色の瞳はそのままに、髪の色を真白から鈍色へと変える。
絹のような手触りは変わらず、確実に染まっていくその身に笑みを深めた。
と、頭を撫でられた事で顔を上げた黒鶴の目に、白い白い、真白の月が昇る。
目が合った瞬間、情欲の熱に晒され桜色に染まっていた頬がそれとは違う意味で朱に染まった。

「し……ろぉい、ちゅき……しろ、ちゅきぃ……しろぉ!」

ふにゃり、と無邪気にも喜びに無垢な笑みを浮かべ、両の手を伸ばして白月を求める。
体力の少ない身体では、耽った淫事に既に限界が近いだろうに。
泣きすぎた目元は赤く腫れ上がり、頬には長義のモノだろう白濁や自身の唾液が垂れている。
けれどその表情はまるで、汚れを知らぬ少女のよう。
乞われるまま、その手に手を伸ばし、頬を撫でた。
すりすりと頬擦りをし、蕩ける蜜色の目が嬉しいと細められる。

「ふふ、たずは本当に白月が大好きだね」
「ん、ん、たじゅ、しろちゅき、らいしゅきぃ! しろ、しろぉ、あのね、たじゅね、おにゃか、くゆひぃの」
「……あ、そういやずっと挿れたままだったな」

くひん、と小さく鼻を鳴らし、白月の手に擦り寄りながら片足を上げて後孔を示した。
黒鶴の背後に回った長義がその肩に掛かった着流しを捲れば、慎ましく窄まっていた菊が縁一杯に玩具を呑み込んでいる。
含んだそれの大きさに下腹をぽってりと膨らませ、黒鶴は苦しい苦しいと涙を流す。

「おお、たず気に入りのアレか。しかし、スイッチは入れてやらなんだか?」
「最初はね、入れてたんだけど。お前に付き合わせるなら、疲れすぎても可哀想でしょう?」
「んなこと言って、蜜飲ませるのに邪魔だっただけだろ」
「しろ、しろぉ……」

鳴いていては呑まないから、途中からは止めて奉仕をさせていたのだと長義は語った。
それで南泉は身体を持て余し、二人の睦み合いを肴に酒を含んで遠征の疲れから休憩していたよう。
玩具を少し動かしてやれば、その合間から潤滑剤と自身の蜜が溢れて零れた。
下唇をきゅうっと噛みしめ、細い身体を快感に震わせる。
可愛い可愛いその淫らさに白月は笑みを深め、そうして困ったなぁと空とぼけて見せた。

「たずよ、おぬしの用意は出来ていても……俺の方はまだなのだ。その愛らしいお口で奉仕してくれるか?」

白い狩衣の袖で口元を笑みを隠し、こてりと小さく首を傾げてみせる。
more...!

黒と白。8

ようやく白む視界から戻ってきた長義の目の前には、鼻の頭まで白濁塗れの黒鶴がぼんやりと目線をさ迷わせていた。
繋いでいた筈の手を外し、ぺちょり、と薄いがやや粘つくそれを指で掬い口元へと運ぶ。
瞬間、どろりと脳髄を侵す熱に恍惚の笑みを浮かべた。
"花"の蜜の催淫に、抗いようもなく堕ちていく。
ちぅちぅと指や顔についた蜜を舐め、それでも足りないと長義の手に滲む血に舌を這わせる。

「ふぁ、あぁ……v」
「たず、こっちにもっと甘いのあるぞ?」
「は、ッあ、あぁん、や、たじゅ、らめぇ……」
「あまぁい、のぉ?」
「うひぃいんッ!!」

南泉に唆されるまま、黒鶴は後ろから穿たれる長義の中心へと顔を寄せた。
その瞬間、長義の腹に回された手を南泉に引かれ、その繋がりを深いモノにされる。
ごちゅん、と最奥を突かれた衝撃で尿道に残っていた残滓が溢れた。
再度顔へと掛けられたそれに、ふにゃりと笑みを浮かべた黒鶴は舌を這わせる。
すなわち、長義の雌と化して使われる事のない淡い肉の色を晒す中心を。
甘い蜜を求める小鳥は、穴を舌でほじくり啜る。
その直接的な慣れない快楽に、目を白黒と瞬かせて長義が鳴いた。
長義の脳裏に過ぎるのは、こんな筈じゃなかったのにという困惑と番の熱を感じる悦びだ。
前を黒鶴に、後ろを南泉に責められて受けきれない快感に、目尻に涙が浮かぶ。

「ひぃいううぅ、らめッ! にゃ、せぇ……やぁ、たじゅ、やぁああ!!」
「嫌じゃねぇ、だろッ! 漏らした、みてぇに……濡れてん、ぜ?」
「うぶ、ちゅ、むぅう……! ぐ、にゅぶ、んぐぅッ!!」

遠慮無く後ろからガンガンと突き上げ、長義の穴を犯すと共に黒鶴の喉を犯していく。
懸命に小さな口を開き、長義を根元まで呑み込みながら汁を啜っていた。
不規則な律動で動くそれを前後から受け、長義は後孔を強く締め付けて極める。
と同時に、黒鶴の口の中へと絶頂の余韻を吐き出し、口の端から唾液を垂らして強すぎる快感に浸った。

「うぁ、あー……」
「っぷぁ……けふ、けほけほ……ほあ……」
「ははっ、勢い良すぎたか? たーず、俺の事分かるか?」
「……うにゅ……はふ、はぁ……あちゅいの、くゆひぃ……」

南泉の言葉に首を傾げ、全身を扇情的な桜色に染め上げた黒鶴が飲み下しきれなかった白濁に塗れて身体を起こし着流しの裾をまくり上げる。
膝立ちの毛の生えていないまっさらな肌に、腹に付きそうな程に反り返らせて根元を封じられた黒鶴自身があった。
蜜口からは苦しげにぱくぱくと、既に白いものが混じり合い垂れている。
本来ならば吐き出させた分、中へと注ぎ、染め直さなければならないのだが。

「全部忘れちゃったんだにゃあ……けど、それは長義、ママにお願いして摂って貰わねぇとにゃ?」

いたずらに南泉は笑い、腰を突き上げて快感に浸る長義を起こす。
ずりずりと後孔を引き摺られ、絡み合う肉襞がきゅうきゅうと南泉自身を締め付けた。
無意識に、より深い悦楽を得ようと追いかけてくるそれが愛おしい。
涙で瞳を濡らす黒鶴はこくこくと小さな頭を縦に振り、長義へ見せつけるように腰を突き出す。

「まぁ、ま、まぁま! こえ、おねが、とってぇ!」
「……た、ず? い、今……ママって……」
「まぁま、とってぇ……!」

必死な黒鶴は甘えるような声を出し、身をくねらせて許しを請うた。
意識を取り戻した長義はその雛鳥のお強請りに感動し、南泉を受け入れている事も忘れて黒鶴の細い身体を掻き抱く。

「たず、たずッ!! いい子だね、俺のかわいい小鳥! いいよ、一杯お出しッ!」

感激し、抱き締める身体にある小さな胸の尖りへと吸い付き舌を絡め、甘噛みをした瞬間に根元の戒めを解いた。
同時、大きく背をしならせて黒鶴が声もなく極める。
とぷとぷ、と全てが出ようとするものを、溜め込んだそれがもはや勢いを無くして緩く流れ出した。
その分断続的な快感に晒され、がくがくと小刻みに身体が痙攣する。
可哀想なほどに震える身体に、けれどそれを見た南泉は笑う。
真っ白だった黒鶴の髪先が、ほんのりと鈍色に輝いていた。

「――ぁ……あ、ばちばち、ちかちかぁ……」
「ははっ、全く、可愛くて仕方ない……俺の可愛い小鳥、白月の大事な番……。君はこの本丸の子、ここから離れたら生きていけないんだよ?」

快感に白く染まる意識に、毒を塗り込むように小さく囁く。
哀れな小鳥は、はくはくと口を開閉し、蜜色の瞳を淀ませていく。
少しずつ、少しずつ。
けれど確実に、闇を滴らせ穢れに染め上げていく。

「でも大丈夫、俺がたずを愛してあげる。俺は皆のママだから……ずぅっと守って愛してあげる」
「はぁあ……ひ、ぃいいん……たじゅ、かぁい? まぁま、あいひて……たじゅ、ここかや、でにゃぃい……」
「ああ、いい子だな、たず。そうだぜ、この本丸の外は怖いモノが一杯だ」
「でもここに居る限り、一杯愛して可愛がってあげる。白月の番でいる事は、幸せで気持ち好いでしょう? 気持ち好い事は好きでしょう?」
「ん、ん! たじゅ、いぃこ、しゅゆ! こあいの、でにゃい! かや、まぁま、かぁいい、ひてぇ! きもひ、しゅきぃ!!」
「いい子だよ、黒鶴」
「いい子だな、黒鶴」

うっとりと蕩け、悦びに笑みを浮かべて長義の首に両手を絡め、透明とも白とも付かぬ蜜を垂らすモノを長義のモノへ押し擦りつける。
長義自身もまた、酷く興奮しているようで催淫効果のある蜜をししどに垂らした。
どちらとも付かぬ粘液に股の間を互いに濡らし、黒鶴の身を終わらぬ熱が責め喘ぐ。
やがて二人は口を合わせ、子猫の毛繕いのような口付けを交わした。
ちゅぷ、ちゅ、くちゅりと必死に舌を絡め合い、その様を見て南泉は笑う。
長義の手を取り、黒鶴のモノと一緒に彼のモノを後ろから握り込んで性急に責め立てた。

「ひぃ、あッ! にゃーせ、の、てぇ!! きもち、きもちぃよぉおお!!」
「にゃあ、まぁま! しょれ、しょれぇええ! きもひ、しゅきぃいい!!」

二人がおとがいを反らして快感に鳴く姿に笑みを深め、南泉が手を離しても止まらぬ長義の手淫にぺろりと唇を舐めた。
次にする事は"花"達から摂った蜜を使った催淫作用のある潤滑剤を、長義の用意した玩具に絡める事。
蜜をより能率的に取り出すため主手ずからに改良を加え、"花"ですら淫狂う程の強力さを持つ。
それを遠慮無く、玩具全体にぬらりと塗り込め、てらついた光りを反射する程に塗り込めた。
長義の用意した玩具は普段、遠征や出陣に行っている番を模した大きさ、形で作られている特注の品。
白月のモノより一回り小さいが、元より規格外の大きさを誇る彼の逸物を慣らす為の道具に過ぎない。
用意を済ませた南泉は、長義の耳元に悪魔の囁きをする。

「長義……たずを産みなおすんだろ? なら、仕上げをしなくちゃだよにゃあ?」
「ん、ちゅぷ、はっ……ぁ、し、あげ……そう、白月に、あいされるように……たずのおもちゃ……」
「ああ、これだよな? 長義もそろそろ、腹が疼いてきたんじゃないか?」

お腹が疼く、それはつまり、先程からぱくぱくと番の熱を滴らせる孔を埋めて貰えるのかと。
長義の目がどろりと蕩け、口元がにやぁと笑みを象った。
黒鶴のモノと一緒に自身を握り込んでいた手を離し、南泉の用意した玩具へと手を伸ばす。
穢れを含んで鈍色には近付いたけれど、まだまだ堕ち足りないのだ。
長義との口吻で手淫で、興奮を示し濁る蜜色の瞳はぼんやりと長義と南泉を映し出す。
更なる狂乱の時間を求め、長義は南泉の用意した玩具を黒鶴のひくつく後孔へと――。

黒と白。7

長義は一つの部屋の前、がりがりと親指の爪を囓って腕を組み扉を睨み据えていた。
その先にあるのは手入れ部屋であり、傷付いた刀剣男士の治療が行われている。
傷付いた、そう、傷を付けたのだ。
他ならぬ長義自身が、愛して病まない我が子と呼ぶ"鳥"の雛を。
母と呼び慕う主の傍でそれを支える白い月。
彼の伴侶には、特殊な刀剣男士が据えられた。
顕現した時より仮初めの人格を与えられ、今もなお魂を縛られる哀れな刀。
まっさらで無垢な心を持つ、鶴丸国永。
染めやすく、染まりやすいその心を、長義は愛している。
そうして、同時に強く憎んでもいる。
黒鶴は"鳥"だ。
主の駒を増やすため、その身には番の子を孕むための器官がある。
自分がどんなに望んで番の精を腹に受けても、長義に子を孕むことは出来ない。
けれどそれが自分の子の役目であるならば、それを全うさせる事が長義の悦びだ。
待つこと暫し、待ちに待った扉が開く時が来た。

「うわっ、長義!」
「え、ちょーぎ?」

中では二振りの白い小鳥が舞い踊る。
その奥には一式の布団があり、横たわる姿もまた、真っ白な小鳥。

「ああ、やっぱり……せっかく無垢な黒に染まっていたのに」
「……ん、手入れ中、変わったんだ」
「長義、手から血が出てる」

眉を下げ、落ち込んだ様子を見せる二振りに長義は構わないと頭を撫でて部屋へ入った。
傷跡の消えた身体は桜色に染まり、意識のない頬は上気している。
手入れを済ませた後も確かに麝香が効いている事を確認した長義はその膝裏に手を差し入れ、羽根のように軽い身体を抱き上げた。

「後は"蜜壺"ですませるから、お前達は母さんに伝えて。たずはちゃぁんと、俺が染め直すよ」

うっとりと、これからまた染まるだろう黒を思い浮かべて笑む。
小さな二振りの鶴丸国永は頷き、手を取り合って廊下の奥へと進んでいった。
それを見送った長義もまた、黒鶴を抱き上げて"蜜壺"と呼ばれる部屋へ足を進める。
そこは、淫猥な"花"達の咲く場所。
穢れに闇落ちた刀剣男士達には欠かせない、蜜を生み出す為の部屋。
主からの霊力の他、その力を維持する為に蜜を栄養源としていた。
"花"達に孕む器官はない代わり、その体液全てが淫狂わせる蜜となる。
そんな"花"達が淫事に耽り、蜜を摂る為の部屋。
"蜜壺"の中でも長義専用の室へと入り、くったりと腕にしなだれる身体を布団の上に横たわらせる。

「たず、たぁず?」

呼びかければ、白く長い睫が震え力なく瞳が開かれた。
焦点の合わないそれはぼんやりと長義を見つめ、緩慢に瞬きをする。

「ふふ、いいこだね」

無垢にこちらの言葉に首を傾げ、頭を撫でれば気持ちが好いのか眼を細めて擦り寄せてきた。
手を離し、少し間を開ければ眉を下げて身をよじる。
用意しておいた香立てに麝香を醸し、枕の近くにある文机に置いて戻った。
その際にいくつかの玩具を持ち出し、黒鶴に見せる様に傍へ置く。
傍へ戻ったことに安心をしたのか、黒鶴が嬉しそうに笑みを見せた。
けれどすぐに表情は苦しそうなそれへと代わり、はぁ、とか細い吐息が小さな口から漏れる。

「ああ……たず、やっぱり苦しいんだね。あの子狐……悪い物に当てられたから、ここの空気に馴染めなくなったんだね」
「……ん、はふ……」
「大丈夫だよ、全部俺に任せて。さあ、はじめようか?」
「はぁ……やぁ、ん……はじぃ、めぇ……?」

香る匂いに顔を歪めて身をたじろがせた黒鶴は、それでもとろり、と蕩けた瞳で長義を見ながら微かに首を傾げた。
白月の瞳により、邪魔な仮初めの人格を封印された黒鶴は、今は無垢な雛鳥そのもの。
普段から気が強く、無邪気な面を見せる彼の剥き出しの心は、今は長義だけを縁とする。
舌っ足らずにも長義の言葉を反復し、きゅうと手が握り込まれた。
可愛らしくて愛おしい、長義の大事な雛鳥。

「いい子にしていればすぐに終わるよ? だって俺は……下準備だけ。君を染め上げるのは真っ白のあの子じゃないと」

ちゅ、と頬にキスを落とせばゆるりと笑みを浮かべ、むずがるように身をよじる。
その申し訳程度に合わされた着物の帯をするりと解き、真っ新な生まれたままの姿を晒させた。
黒鶴はキスが気持ち好いのか、上気した頬の桜色を深めてされるがままに身体を開く。

「ん、んん……ぁ、……おれぇ、いぃ、こぉ? しろ……しろい、ちゅき……」
「可愛いね。そう、たずが大好きな白月に一杯可愛がって貰えるように、おめかししようね?」

オウム返しに言葉を連ね、瞬きを繰り返す度に蜜色の瞳が熱を孕んで色を濃くした。
白月、という言葉に花が咲くような笑みを見せる。
本能で番を理解しているのだろう、それに長義は愛おしさで胸を締め付けられた。
こんなにも純粋無垢な可愛い小鳥を、愛おしい子供を奪おうだなんて。
陶磁のように白くシミも傷もない太腿の内側を、するりと撫でる。
びくり、と跳ねた身体が、爪先をきゅうっと丸め込んで長義の手ごと太腿を内股に挟み込んだ。
今はまだ触れていない中心は既に兆し、透明な蜜を垂らしている。

「あ、ん、んんっ!」
「ふふ、かわいい、わかいい……俺の可愛い子。たずはここを触られるのが好きなんだね」
「はぁ……しゅ、きぃ……! たじゅ、らいしゅ、きぃ……」

こくこくと頷き、すき、すきと同じ言葉を口にしながら呼吸を求める様に口をぱくぱくと動かした。
その度にわだかまった空気が対流し、焚いた麝香の濃い匂いが立ちこめる。
くぅ、と真白の髪を振り乱し、桜色に頬を染めた顔が苦しげに顔をしかめ、左右に頭を振りたくった。

「た、じゅ……だぁ、れ? たじゅ、て……おれ、おりぇ、は……」
「余計な事は考えなくて良いんだよッ」

太腿を撫でていた手を割り開くために動かし、中心をぎゅうと強く握り込む。
その瞬間におとがいを逸らして目を見開き、甘く甘く嬌声を上げた。

「ひゃあああッ!? やあ、しょれ、ひぃいいんっ!!」
「たず、俺の可愛い子。君は黒鶴、この本丸の刀で、白月の番で、俺の可愛い可愛い愛しい子だよ」
「ひっ、は、あ、ぁあッ!!」

教え混むように耳元で、その耳朶を食みながら囁く。
面白いほど快楽に従順で、白魚のような身体が白いシーツを掻き乱した。
透明な蜜をししどに垂らし、長義の細い指がぐちゅぐちゅと粘性の液体で濡らされていく。
少し強いくらい、痛みを感じる程度が特に良いらしく脇目も振らずに口端から涎を垂らして涙を流した。

「あっはははは! 可愛いよたず、最高……ああ、たずは後ろの方が良いかな?」
「か、――あひゅッ!!?」

長義の身体で無理矢理に身体を割り開かれ、閉じられない足を尚も閉じようともがき布団を乱していく。
more...!

黒と白。6

にこり、と人好きのする笑みを浮かべて白い月は一つ頷いて見せた。
濃紺の三日月の方へと胸に抱いた白い身体を放り投げると、鶴丸の傍に膝を突いて座り込む。
労るように肩を抱かれる手を、穢れを感じるものであるのに振り払うことは出来なかった。

「好い判断だ。ここでやりあっても俺かお主、どちらが勝つかは分からぬが……子を思う母は恐ろしい故、なぁ? まあ、俺の負けでも好いんだが」

ころころと笑う声は涼やかに、その内容は恐ろしい。
もし自分がここで深手を負っていなければ、足手まといにはならなかったのに。
せめて二振りの恐慌が、彼らに及ばないことだけを鶴丸は願った。
白い月が鶴丸を確保したことを確認し、銀髪の彼はようやく腕の中の小さな存在を解放する。

「ほら、君も親元に帰りな。……今度、俺の子供達に手を出したら……次は命はないよ」
「ひ、ぁ……ちか、父様……くに父様、ごめんなさい、僕のせいで……」
「何、お前のせいではない」

確かに三日月が国永を、怜悧を抱き留めた事を声音から知り、鶴丸は全身に込めていた力を抜いた。
これ以上はもう、指一本も動かせそうにない。
たかだか胸への一撃だけで、穢れに犯された身体は重く、鉛のよう。
地面にそのまま崩れ落ちるかと思った身体は、けれど肩に添う腕が抱き込んだことで免れた。
どうして、この刀がそんなにも気遣ってくれるのか。
まるで大切な、それこそ宝物のようにその腕の中へと隠される。
血が喉に絡んで、言葉はもう話せそうにない。

「ああ……ごめんね、たず。今母さんの所に連れて行ってあげるから。大丈夫、すぐに治るから」

どうして、その刀もこんなに気遣ってくれるのか。
知らない名前を呼びながら、それでも一心に向けられる愛情は温かい。
頬を撫でる手は穢れているのに、どこか心地よさを感じてしまう。
そういえば自分を折った刀すら、辛い思いをさせてすまぬと、悲しそうに言いながら抱き締めてくれた。

「白き月の噂は聞いた事がある」

胸に白い身体を、小さな温もりを抱えた月が言う。
こちらを見る瞳はいつもより色を濃くしていて、その内情は計り知れない。

「無双の力を持つ正体不明の白い月が出る、とな。遡行軍に荷担しているとの話しも聞いていたが、人の子の噂とばかり思うて居た……どうやら、そうではないようだ。今日は我が子を取り返しに来ただけだが……いずれ、鶴も返して貰う」
「なに、気にするな。我らもまた、我が子を取り返しただけのこと。はて……鶴、とは。誰の事だろうなぁ? この子はたず、黒鶴という」

いずれ鶴も、そう自分の事を言って貰えただけで、それだけでもう良いと鶴丸は思った。
再び遡行軍の手に落ちた自分が虜囚として出来る事は、情報を漏らさぬうちに折れる事。
その為だけに、自分は居るのだ。
なのに、白い月の声は優しい。
知らない名前を、愛おしいと言わんばかりに口にする。
その温もりに絆されてしまう訳にはいかないのに。
精一杯の強がりでその顔を睨み付けてやろうと、恨み言の一つも聞かせてやろうと痛む身体をはね除ける。

「くぅ、ぐ、だ、れが――あ……う、ぁ……?」

それが間違いだったと気付くには、遅すぎた。
身体を起こしたことでかち合った視線は、朝ぼらけの空に浮かぶ一条の月に魅入られる。
離せない視線に、音が、全てが段々と遠く感じて分からなくなる。
月が、見てる。
しろい、つきが。

「のう、たずや?」

遠かった筈の音が、その甘い囁きが、頭の中に響き渡る。
たず?
たずって、だぁれ?
呆然と、ぼんやりと、首を傾げる。

「白月、これをたずに……母さんの香を炊きあげておいたから、落ち着くと思う」

誰かが、月に、話しかけてて、俺の前には、白い、月が、あって。
その月を見ていると、全てが惹かれて、もう、他には、何も――残らない。
ぽっかりと、空いた全てを、白い月が魅たしていく。
もう、他の音は、聞こえない。

「……すまぬ鶴……許せ」

誰かが誰かに対して、悔やむような言葉を言っているのも、どうでも良い。
月が、俺を望んでくれるなら、俺は、もう。

「たず、少しおいたが過ぎたようだなぁ。おてんばも良いが、長義に心配を掛けては行かんぞ? ……駆けつけるのが遅くてすまなんだなぁ」
「たず……ごめんね、たず……。ああ、また俺は愛しい子供を傷つけてしまった……。大丈夫、俺も白月も君の傍にいるよ、たず……」

手に、遠慮がちに握り締めてくる温もりがあった。
白い月に魅入られ、麝香を焚きしめた羽織に全身を包まれ。
頭の奥からじんわりと蕩け出すような気持ち好さを感じて身をよじる。
頬に掛かる手に擦り寄り、手の中の温もりを握り締め、心地よさに身を預けた。

「ん……は、ふ……んぅ……」

ずきり、と痛む胸に呼吸が詰まりかけたが、直ぐにどうでも良くなってしまう。
元より、痛みには強い身体をしているのだ。
羽織の上から抱き締められ、力の入らない身体はなすがまま。
なのに、どうしようもなく安心する。
もっとその心地を味わいたくて、ぼんやりと滲む眼を細めて擦り寄った。

「ふっ、愛らしい真似を……。だが、これでたずはまた染め直さねばならんなぁ」

染め直し、という言葉が気になったけれど、相変わらず鈍い頭は動いてくれない。
それどころか刻々と鈍くなっていくようで、思考の端から砂のようにこぼれ落ちてしまう。
軽く身体が揺れたと思うと、足下の感覚がなくなった。
ゆっくりゆっくり、揺られているそれはまるで揺りかごのよう。
とろりと思考を蕩かす香りと、温かな腕の中、手を握り込む温もりに、心が溶かされていく。
どうしてこんなに大事にしてくれるの?
どうして、優しくしてくれるの?
何も分からないのに、分からなくて良いんだよと頷いてくれる。
ただ、自分があるだけで肯定される。
嬉しくて嬉しくて、しあわせを感じた。
月のためにと言われたけれど、この月が好い。
選ぶことが出来るなら、この月のモノになりたいのだ。

「あいわかった、黒鶴よ。そなたは俺のモノ、俺の伴侶。俺はそなたのモノになろう」

本当に?
おれがくろたずになったら、この月がもらえるの?
月が、優しく、頷いた。
それならおれは、くろたずがいい。
ずっと、ずっと。
月が欲しくて、がまんしてたの。

「もう、良いんだよ。たずは偉い子、いい子だね。我慢せず、素直になって良いんだよ」

月の腕から預けられて、銀色の人が笑って言う。
どうして、なんで離れるの?
かなしくて、さみしくて、手を伸ばそうとしたけれど月は行ってしまう。
銀色の人がそれを笑って、おれを怖いところへ連れて行く。
やだ、いやだ、そっちはいや。
暗くて、怖くて、何かいやなものがある。

「たず? 悪い子はお仕置きの時間だよ」

銀色の人が、笑う、笑う。
苦しくて息が出来なくて、身体が引き裂かれるように感じて涙が出た。
はあはあと荒い息だけが聞こえる中、

「苦しいのかな?ああ、可愛そうに……ちょっと準備をするから、いい子で待ってるんだよ?」

温かな手が頬を撫でて、頭を撫でて、優しい声が耳に届いた。
じくじく痛んで、段々と熱くなってくる身体を持て余す。
だけど、けれど。
いい子にしたら、もっと撫でてくれる?
ほめてくれる?
噎せ返る甘い匂いは呼吸をする度、胸にわだかまる。
息を吸ってるはずなのに苦しくて、だからすがれる何かが欲しい。

「ふふ、甘えん坊だね。ちぁゃんと……染め直してあげるよ」

甘い香りが、ぶわりと一気に広がった。
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