「は、ふ…」
レイリがグッタリしながらシュノを見上げる。
身体中に散りばめた所有印も中に吐き出した熱い欲情も一度に受け止めるにはレイリの体力が持たなかった。
「お風呂入りたい…」
甘える様に両手を広げるレイリを、シュノは軽々しく抱き上げる。
姫抱きにされたレイリはぼんやりしたままシュノの胸に顔をすり寄せる。
幽離籠自慢の浴場は温泉が引いてあり、疲れた身体を癒すには最適だった。
浴場には誰も居なく、調度皆客取りのために見世に出ている時間だった。
広々とした浴場を貸切、体を綺麗に清めてから湯船に肩まで浸かる。
「シュノの身体って結構しっかりしてるよね」
レイリがポツリと呟いた。
綺麗で妖艶なシュノの身体はそれとは裏腹に筋肉が程よくついた男の身体だった。
「女を抱くわけじゃないんだからな、皆こんなもんだろ。
それにな、太夫ってのは客に抱かれるだけが仕事じゃないからな。
1人前の太夫になるなら教養や芸事が出来て当たり前だ」
レイリの頭を撫でながらシュノは笑いかけてくれるが、レイリは自分の貧相な体を抱いてシュノは満足してるのか急に不安になった。
今のレイリは客じゃない。
今までだって客かどうか怪しかったが、今は完全にシュノの物。
自分より抱き心地の良い客が居たら、その人と添い遂げるかもしれない。
シュノを信じてるから疑いたくない気持ちと、自分に自信が持てないレイリの全てがシュノを引き止めておくことは不可能だと頭の中をぐるぐる回る。
シュノが何かを話しているがレイリの耳には届いていない。
「レイリ、いい加減のぼせるから上がるぞ」
ぐいっとレイリの身体を引っ張ると、急に現実に戻されたレイリは、くらりと眩暈を起こして倒れ込んだ。
「ほら、言わんこっちゃ無い」
「しゅの…」
小さな声でシュノを呼んで、レイリは意識を手放した。
シュノはそのままレイリを脱衣所に運び着替えをさせて、自分も着替えを済ますと意識を失ったレイリを再び抱き上げた。
随分軽く小さくなってしまったレイリは、抱けば壊れてしまいそうだった。
前から男とは思えない程華奢で小柄な身体は今はちょっとした衝撃で壊れてしまうガラス細工のようだ。
布団にレイリを寝かせると、夜風を入れるために窓を開ける。
外はちらほら雪が降り始めていた。
暗い部屋の行灯に火を灯すと、片膝をついて金の装飾がされた煙管に火をつける。
ふぅ、と窓の外に向かい煙を吐き出すと雪の中番傘をさしたまま立っていた青年と目が合う。
レイリより少し淡い金髪に柔らかな碧眼。
裕福そうな身なりの青年はこちらに気付きにこっと笑って頭を下げる。
何となく眺めていると、慌てて誰かが店から飛び出してきて青年に抱きついた。
その衝撃に傘を落とした青年はしっかりと腕の中にその人物を収めていて、その人物をシュノは知っていた。
レイリが来るまでシュノ付の禿だったロゼットが、着物を乱しながら青年に抱きついていた。
レイリにばかり構っていてすっかり忘れていたが、ロゼットは15歳になったので最近水揚げされて客を取るようになったと聞いた。
水揚げを買ったのはまだ歳若い金髪碧眼の好青年だと聞いていたが成程彼が噂の旦那かと、微笑ましい気持ちでシュノは窓から離れた。
「ん…」
胸あたりまで掛けていた掛布団を退けるようにレイリが体を揺らした。
暑いのかと、懐から扇子を取り出してゆっくりと扇いでいるとレイリが目を開けた。
「起きたか、気分はどうだ?」
レイリは暫くシュノを焦点が合わない瞳で眺めていたが、やがてのろのろと身体を起こして、ぎゅっと抱きついた。
「しゅの、僕の身体、すき?」
抱き着かれたシュノはレイリの背中をポンポンとあやす様に撫でながら、耳朶を食みながら囁いた。
「言って欲しいのか?」
まるで情事の最中の様な声にレイリは体を震わせた。
「ひぁ…ん、言って…お願い…」
「好きだぜ、お前の顔も、声も、身体も全部俺の物だ
今まで俺が抱かれた客の誰よりも、お前を抱いてる時が一番興奮する」
するするとシュノの手が腰の辺りに滑り落ちる。
「だから、何も心配するな」
腕の中に閉じ込めた身体をきつく抱き締めた。
「僕は、シュノの物だけど、シュノはそうじゃないから…
だから、僕…シュノを繋ぎ止めておくことは出来ないから…」
シュノは一瞬驚いてから、顔を朱に染め悶える様に顔を背けた。
レイリはこの関係がシュノに寄る一方的なものだと思っているらしい。
自分はシュノの事を好きだが、シュノが心変わりしたらそれを引き止める権利はないと不安になっているらしい。
今のレイリの起爆剤はどこにあるか判らないが、大方先程の風呂での会話だとあたりを付けた。
「なら、俺の気持ちをお前に縛り付けさせてみろよ。
ここは遊郭、お前は俺専用の太夫。
俺を今以上に夢中にさせればいい」
「え…?」
「客を取るなってのは無理だ。
それ以外の生き方を俺は知らないしお前を養うにも金が必要だ。
だけど風呂でも言ったが毎回客と寝てるわけじゃない。
殆どが話を聞いて酌をするだけだ」
レイリはポカンとしてシュノを見上げた。
「そう…なの?」
「お前なぁ…人を節操無しみたいに言うなよ。
客を選べない新人時代ならまだしも、今は吉原一の花魁だぞ、そうそう簡単に抱けてたまるか」
するとレイリは恥ずかしそうにシュノの胸に顔を埋めた。
「うー…」
「お前、可愛すぎ。」
ちゅっと額に口付けると、レイリはまたシュノの胸に顔を埋めた。
「シュノ、僕にも芸事を教えて?」
「ああ、琴と舞なら教えてやる
三味線と茶はローゼスに習え」
「うん」
レイリが嬉しそうにふふっと笑った。
愛しい気持ちになり、シュノは頭を撫でながら煙管の煙を外に吐き出した。
「シュノ、今日はお客さん取らない?」
「ああ、約束だからな
今日はお前とずっとこうしてたい」
シュノはひょいとレイリを背中から包み込むように膝に座らせ、身動きが取れないほど抱きしめた。
「シュノの事、もっと聞かせて…」
「俺の話なんて面白くも何も…」
「聞きたいの、シュノが水揚げされた時の事。
この着物で、どんな風に抱かれて、どう思ったの?」
「……レイリ、もしかして妬いてるのか?」
シュノはくすくすと笑ってレイリを抱き締める。
「いいぜ、教えてやる。
俺の初夜の相手はクジョウって貴族の嫡子で、この前甘味屋の前で会ったやつだよ。」
ハッとしたレイリはシュノを見上げた。
「あいつは俺が禿の頃からの客で、見栄と独占欲の塊みたいな男だ。
俺が心底惚れてると思ってるおめでたい奴だよ」
「……あの人、怖い…
僕を見てた時、凄い目で睨んでた。」
怯えるレイリの額に口付けを落とした。
「あいつは俺を抱き寄せて口付けした、何度もねちっこく舌を絡ませながらな」
シュノはレイリを自分側に向かせて、唇を奪う。
ふっくらと柔らかな唇を這うように舐め、ゆっくりと舌を絡ませていく。
「んふ、んんっ…は、んふっ」
「は、ぁ…レイ、息、しろ…」
レイリは瞳に涙を浮かべながら、唇の離れた一瞬の合間に息を吸う。
弱々しくすがりつく身体を抱き締め、そっと腰に手を這わせた。
「ん、ひっ!?」
柔らかな秘部に指がクチュリと音を立ててねじ込まれる。
その隙に首筋から胸元に赤い花びらを散らせて行く。
「しつこく身体中を舐め回されたな、俺も初めての時はそれだけで体が熱くなってすぐにもイきそうだった。」
レイリはもはや自力で立つことも出来ず、シュノの肩に手を置いて体を預けている。
「ここも美味しそうに膨れてきたな」
身体を熱くさせたシュノが珍しくがっつく様に胸の果実を舌で弄び、余った片方の手はレイリ自身に這わされた。
「ひぃぃぃ、あっあ、ふぁああっ」
三ヶ所同時に攻められ、唾液を零しながらだらしなく喘ぐレイリを布団に押し倒す。
帯を解き、着物をはぐように脱がせると、下着の紐をしゅるりと解く。
真っ白な無垢な身体は一糸纏わぬ生まれたままの姿になる。
「綺麗だ、シュノ…ひたすらそればかり耳元で囁かれたな。
お前は綺麗ってよりは可愛いだな」
レイリの耳元でシュノが甘い声で吐息を漏らすように囁く
「可愛い、レイリ可愛いな、可愛い」
「や、やぁっ、そなに、言わないでっ
シュノの方が綺麗!」
「判った判った、それで今のお前みたいにやめろって言った時点で……」
ふと、秘部にあつい熱があてがわれるのを感じた。
「アイツはなぁ、俺が処女だってのにお構い無しにな突っ込んできやがった」
シュノはトロトロに溶けた秘部に一気に挿入した。
「ひぁああっ、あっああああ!!!?」
レイリはビクンと体を跳ねさせ、背を反らせながら敷布をぎゅっと握った。
「あっあうぅぅ…はふ…ま、まって…」
目を大きく開きながら、涙が溢れて零れ落ちてもシュノは止めなかった。
「そんなに可愛く哀願してもきっとやつは止めなかったし、俺はただ早く終われと思っていた」
「いやぁっ、あんっ…も、おかしくなっちゃ…」
さすがに立て続けに抱かれ、レイリは涙を零してシュノに手を伸ばした。
「まだ、終わらないぜ?」
脚を胸に付きそうな程大きく開かせると、レイリにそれを抱える様に言い、シュノを受け入れて限界まで広がった秘部がシュノから丸見えになる。
「へぇ、結構いい眺めだな。
判るか?お前のココが俺をピッタリ受け入れてる」
「いやぁ!恥しいよ、もうやだよぉ…」
「知りたいんだろ?
俺がどうやって客に抱かれてるか」
そのまま腰を上下に振ると、根本迄押し込んで一気に引き抜く。
「ひゃあああんっ!だめぇっ!
出ちゃうっ、から…だめぇぇぇ!!」
ガクガク身体を震わせながら律動に合わせて身体を揺らす。
「あぁんっ、あうっ…ひっ、あん!
お願い…もう…っあぁああんっ!」
我慢出来なかったレイリが身体を痙攣させながら自分の腹に精を吐き出した。
「ひっく…うぅ…」
あまりの激しさと恥ずかしさに、レイリは両腕で顔をおおった。
「レイリ」
シュノが優しく名前を呼ぶ。
それに応えるみたいにレイリが腕を解くと、シュノの舌が涙を舐め取った。
そしてレイリの表情がとろんとシュノを見つめると口付けを深く交わす。
「んっ、んふ…んんっぅ」
舌を絡め、唾液が口の端から零れ落ちる。
その間も腰はレイリを秘部を擦りあげ、胸とレイリ自身も攻められ酸欠状態のレイリはクラクラとしながらシュノに縋り付いた。
「あいつは一々口に出すんだ
レイリの中は最高だな、トロトロとした媚肉が俺に絡みついて離れないってな風にな」
「ひぅっ!も、おかしく…なっちゃ…」
レイリは今までで一番蕩けた顔で自分から口付けてきた。
「中に出すからな、一番奥に、オレの子種沢山だすぞ」
シュノが抽出を早めると、レイリが悲鳴の様な喘ぎ声を上げながらシュノにしがみつく。
「あっああん、ひぃあ!あああっ!
しゅの、しゅの…ぼくもう…しゅのぉぉ!」
涙でグチャグチャになったレイリの身体をシュノは一層激しく揺さぶり、レイリの腹の奥に精をタップリと吐き出した。
「ふぁ、は…はふ…んんっ、う…」
呼吸が整わないレイリに覆い被さったまま口付けを交わし、レイリの息が整うのを待つ。
「は、ぁん…は、はぁ…」
「落ち着いたか?」
レイリはこくんと頷くと、シュノはようやくレイリから自身を引き抜いた。
「シュノ…初めてなのにこんなに激しかったの」
「客なんて皆そうだ。
有り余る性欲を俺らにぶつけるために遊郭に来るんだからな
結局アイツは朝まで俺を抱き続けたよ」
シュノはよしよしとレイリの頭を撫でる。
「俺が初めて抱かれた着物で、同じ方法で俺にだかれた気分はどうだ?」
「僕がシュノを抱いた日、あんまり気持ちよくなさそうだったから…
ちょっと気になっただけだよ」
レイリは言った事を後悔してるのか、両腕で顔を隠してしまった。
「箱入り坊ちゃんにしては頑張った方だろうが、俺を満足させたいならお前が抱かれる方がしっくりくるな」
シュノは両腕を開かせると顔中に口付けを落として行った。
「お前は何度抱いてもすぐに欲しくなる。
麻薬みたいだ、お前の身体は」
レイリはシュノの腰に片足をそっと回した。
「いいよ、好きにして。
シュノになら…ううん、僕を好きにできるのはシュノだけだよ」
「これ以上したら足腰立たなくなるぜ」
フッと不敵に笑うシュノに、レイリも釣られて笑った。
「タオル取ってくる。
何か欲しいものはあるか?」
グッタリしたレイリは気だるそうに寝返りをうつと、妖艶に笑って見せた。
「お茶とお菓子。
あと花札がいいな」
遊んで欲しいとねだる子どもにしてはタチの悪い笑に、シュノは頷いて立ち上がった。