カルデアに大浴場があると聞いた面々は、室内シャワーで我慢していた日本人組を中心に盛り上がっていた。

「黒葉、お鶴、大浴場だとさ。久々に背中流してやろうか?」

大判のタオルを持ちながら嬉しそうに笑うのは国永だ。
温泉好きの鶴丸も満更では無い顔で笑い、黒葉も二人を見て微笑む。
サーヴァントになった今、別段汚れを落とす為にこういった物に入らなくとも、水で流すだけでも良くなった。
が、普通の人間らしい暮らしを好む三人には嬉しい状況で。
服を脱いだ一行は大浴場の扉を開けて息を飲むように驚き、

「よ、お前等も来たのか」
「わあ、国兄さんこっちこっちー!一緒に入ろうー」

白髪を後ろ手に整えた美青年と金髪の少年が手を振っていた。
金髪の少年は分かる、むしろ別に良い。
問題は白髪の青年で、ともすれば本性を一度垣間見た事のあるヒスイに鶴丸は

「お前女じゃん!!」

大層驚いて指を差した。
ヒスイは訝しげな顔をして自分が持ってきた酒を煽ると、気付いたように表情を変える。

「今は男だ」
「いや、そうだけど……そうだけど、女が本性だろ? その……あんま人の見んなよ」
「え、ヒスイが入ってるのって問題? でもこの子、今付いてるよ? なんなら僕より大きいし」
「レイリ、そういう問題でもない。気持ちの問題だ……」

フォローは入れつつ国永と黒葉は気にせずお風呂に肩まで浸かると、はふーと一息吐いて大人しくし始めた。
そして気持ちの問題だと言うのならヒスイに性別は関係ないようで、上機嫌にもう一口と酒を煽る。

「ヒスイよ、それはあの世界の酒か?」
「いや、こっちの酒。エミヤに分けて貰ったんだ。……風呂で沈まれても困る、やらんぞ?」
「む、少しくらい良いでは無いか。ケチ臭い奴め……お鶴、そこに立っていては寒かろう?」
「これ、ジャグジーとか泡風呂にならないのかな。後で怜悧坊に聞いてくるか」
「……やめてくれ、レイリと国兄が沈む姿が目に映る」

ようやく自分の中で折り合いを付けたらしい鶴丸も湯船に入り、国永を背中から抱き締めた。
当然のようにそれを受け入れた国永は鶴丸に背中を預けてのんびりし始める。
と、またも来訪者が来たようで入り口が開いた。
そこに居たのは目の色だけが違う鶴丸国永の二人で、国永は鶴丸に腕を掴まれて引かれている。

「よう、君達も先に来てたのか。これで皆様勢揃いって奴だな。国永、足元気を付けろよ」
「ん……」
「あれ? 君達脱いで来なかったのか?」
「いやあ、俺達にとってはこちらの方が普通だからなぁ。結構な爺だし」

白襦袢で湯に浸かる二人に、そういえば平安だかその位昔はそういう格好だったなぁと納得する国永。
大人しい普段はぼーっとしていて、ともすれば悪い奴に連れて行かれて行きそうな程虚ろな国永を見る。
今も好ましげに口元まで浸かって堪能する様は、幼い子供のようですらある。

「国兄、起きてるか?寝るなよ?」
「ん、寝てないから安心してくれ。ちょっと考え事してた」
「考え事?」
「分かるぞ、クニ。誰の物が一番大きいか、だろう?」

訳知り顔で微笑み、親指を立てて頷くヒスイの声だけが木霊する。
国永はあれ、最初に会った時はあんなに頼もしかったのにコイツこんなに下世話な話するような奴だったっけと思い。
皆が風呂から上がったり身体を洗ったりした後の就寝時、そういえば自分の前も起つのだったと気付いた瞬間だった。