シュノは仕事を終えて客を大門まで見送り、店に戻ると不機嫌の絶頂だった。
「シュノ、店先でそんな顔するなよ。
客が逃げるだろ」
どこかの帰りなのか、煌びやかな着物を着たレイアがニヤニヤと笑いながら煙管をふかしていた。
「あの色ボケジジイの相手で疲れてるんだよ、放っとけ」
「暫く休みにしてやるからそう怒るなよ」
レイアはそれだけ言うと大きな紙袋を抱えてどこかに行ってしまった。
中身は恐らくシュリへの土産だろう。
「……レイリ」
甘味屋で会った時は何て事をしてくれたんだと恨み言を言いたくて仕方なかった。
あれからロウゲツは事ある事にレイリの話題を口にした。
完全に目をつけられてしまった。
お陰で気を逸らすために普段より濃密に抱き合ったせいか身体中の倦怠感が酷い。
それ以上にレイリに早く会いたかった。
会って、抱き締めて、癒されたい。
「レイリ」
部屋までの距離がけだるい身体には遠く感じる。
「レイリ」
部屋の襖をすっと開くと、綺麗に着飾ったレイリがちょこんと正座していた。
そしてレイリの横には茶器が置かれ、目の前には座布団が一枚敷いてある。
レイリはじっとシュノを見つめていた。
座れと言われているのかと思い座布団に座るとたどたどしい手付きで茶を入れてシュノに差し出す。
シュノはそれを受け取り、作法通りに茶を口に含む。
抹茶の程よい苦味が疲れた体に染み渡る。
器にわけられた茶を飲むと、すっと茶器を差し出した。
「結構なお手前で」
そう言ってレイリをぎゅっと抱き寄せた。
「ローゼスに習ったのか?」
「うん、他にも習ったの。
シュノに見て欲しい。」
レイリが上目遣いでシュノを見上げる。
「ああ、見せてくれ」
するとレイリは懐に入れていた扇子を取り出した。
「舞を習ったのか?」
「…うん、まだうまくできないけど」
そう言ってレイリは習った通りに舞を披露した。
客前に出す物なら全くダメだが、これはシュノだけの為の舞であり、一朝一夕にしてはよく出来ていると思う。
遊女の息子なだけあって、郭事には才能があるようだった。
「どうだった?」
シュノの為に可愛らしく着飾り、茶や舞を披露するレイリが愛しくて、疲れも忘れてレイリを抱き締めて夢中で口付けた。
「んむ、ふ…ふぁ…」
レイリの手がシュノの着物を掴んで、縋るように身体を寄せる。
「んっ、は…しゅの、しゅの…」
おずおずと舌を絡めるレイリを畳に押し倒し、貪るように口付けた。
「くそ、我慢出来ない」
着飾った着物を乱雑に脱がして行く。
「シュノ、待って!
あの…まだシュノにしたい事があるの」
珍しく抵抗するようにシュノを押しのける。
今すぐにでもレイリを抱きたい気持ちを押さえつけて、レイリから離れると、レイリは布団を敷き始めた。
敷布団を敷くと、寝ろと言わんばかりにシュノを見る。
レイリは袖を紐で縛り、何かをする気だ。
「うつ伏せになって」
言われるがままうつ伏せになると、小さな手が強ばった身体を優しく揉みほぐしていく。
それは自分の欲を満たすためにシュノに触れる男達の手とは違い、シュノの身体を丁寧に隅々まで癒す様に優しく触れる。
「上手いじゃないか、もっと上の背中のあたりたのむ」
「ん、わかった」
レイリが懸命にマッサージしてくれるのが疲れた心も体も癒してくれる。
「ん、あ…そこ、気持ちいい」
「ここ?」
「違う、もう少し左…んっ、は…あ、そこっ」
「こう?」
「そうそう、もっと体重かけろ。
あー、気持ちいい」
すっかりリラックスしたシュノにレイリの笑みがこぼれた。
「お前才能あるな
今度から客と寝た後はお前にマッサージしてもらおう」
「うん」
レイリが嬉しそうに笑ってシュノの腰に手を回した。
シュノに跨るように腰を落とすと、しゅるりと帯を解いた。
向きを変えてレイリに跨られたシュノは楽しげに口元を細めた。
「一人前に俺を誘惑する気か?」
レイリはどこか蕩けた様な顔で着物を脱いでいく。
襦袢一枚になったところでシュノの着物をはだけさせる。
程よく筋肉のついた身体にぺたぺたとレイリの手が触れるのがくすぐったい。
「お前に初めて抱かれた時みたいだな」
「シュノ…僕で気持ちよくなって…」
レイリが途端に泣きそうな顔で下を向いた。
シュノの身体には客に付けられた赤い花が無数に散りばめられていて、色白なシュノの肌に良く映えた。
客と触れ合った所をレイリがちゅっと口付けて上書きする。
見える部分は全て上書きした所で下肢に手を伸ばす。
下着を脱がせてそっとシュノの性器に触れるとおずおずと小さな口に含んで奉仕する。
「んっ、そんなのまで、教わったのか?」
ぴちゃぴちゃと音をたてながら這う様に舐めたり、口に含んで先端を吸い上げるレイリの拙い奉仕は高ぶったシュノを高みに追いやるには十分だった。
「もう、いいからっ…」
「ん、ふ…出して…」
レイリが髪を耳に掛けながら上目使いでシュノを見上げた。
お世辞にも上手いと言えない口淫もレイリがシュノの為に懸命になっていると思うとそれだけでイきそうだった。
「っ、レイリ…もう…はなせっ」
レイリは首を振ってシュノをそっと手で扱きながら口淫を続けて、堪えきれなくなったシュノが背を反らせながら口元に手を当てて声を出さない様にしながらレイリの口内に果てた。
「んんっ、ふ…」
突然口内に出されたものに驚いたレイリはそのまま口を離してしまい、白濁した液が少し幼い顔を残した。
「は、ふ……んっ」
口内に残されたものをシュノが吐き出させようとする前にレイリは喉を鳴らして飲み込んでしまった。
「ばか、飲むな」
「……気持ちよかった?」
硬い表情のままレイリは首をかしげた。
どこか緊張している様だ。
「お前、ローゼスにそんなことまで習ったのか?」
「…これはティア姐さんとリラ姐さんが…」
「……やっぱりあの2人か…」
何となく予想はしていたが、シュノが不在の間、レイリは随分変わったらしい。
「どう?気持ちよく、無かった?」
不安そうなレイリに、シュノは身体を起こしてレイリを抱き締めた。
「すげぇ良かった。客にされてもイッたこと無いのに。
だから俺も教えてやるよ、本当の口淫ってのをな」
レイリの脚を開かせると、下着はつけておらず、幼い性器は既に硬く勃ち上がっていた。
「い、いやぁっ…見ないでっ…」
顔を真っ赤にしたレイリがシュノから逃げようと身体をよじるが、シュノは慣れた手つきで脚を固定してレイリの性器を口に含む。
「ひぃあああっ!!
んっ、あっああん、しゅの、だめっ、だめぇ…」
少し触れただけでビクンビクン反応するレイリが面白くてつい苛めたくなり、激しく上下に喉奥までレイリを口内に収め込む。
「やっ、ふぁ、あっあっ…だめ、も…
ひっ、ああああああああああっ!!」
まるでシュノの中を犯しているような錯覚を覚える気持ちよさに、レイリは呆気なく果てた。
シュノは中にはき出されたレイリの精を飲み下すと、そっと秘部に触れた。
クチュリと卑猥な音を立てて指がすんなり内部へ侵入する。
「ヤる気満々だな、もうトロトロになってるぜ」
「シュノ、お願い、僕にさせて。
シュノに僕で気持ちよくなってほしいの」
レイリが懇願するようにシュノを押しのける。
「…よしよし、じゃあ俺はお前の客だ。
お前の全部で俺を気持ちよくさせてくれ。」
シュノが頭を撫でると、レイリは嬉しそうに頷いた。
シュノを押し倒して自ら慣らしておいた秘部にゆっくりとシュノを受け入れてく。
懸命にシュノを悦ばせようとする姿に愛しさがこみ上げた。
「んっ、あ…シュノの…熱い…」
潤んだ瞳でシュノを根元まで受け入れると、ゆるゆると腰を上下に振った。
「あっ、んぅ…しゅの、ねぇ…きもちい?ぼくのっ、なか…気持ちいい?」
トロトロの媚肉がシュノの挿入を悦ぶ様にからみ付く。
レイリは蕩けた顔でぎこちなく笑った。
着物も肌蹴て殆ど引っ掛かっているだけの状態で、柔らかな身体を揺らし、シュノを快楽に導く。
「気持ちいいな、もっと気持ちよくなりたい」
シュノはレイリの腰を掴むと、グンッと勢いよく突き上げた
「ひあぁああああっ!!?」
あまりの衝撃にレイリは身体をビクビクと震わせ、果ててしまった。
「……ひっく…ぐす…」
レイリが急にボロボロと泣き始め、ぎょっとしたシュノは身体を起こしてレイリを抱き締めた。
「ごめ、なさい…先にイッちゃった…
僕、上手くできなくて…ごめん、嫌いにならないで…」
レイリが何に怯えてるか、シュノには理解出来なかった。
ただ、レイリが自分に好かれようと慣れない郭事の真似事をしたのだと思うと愛しくて堪らなかった。
「どうして嫌いになるんだ?
俺は今でもお前が欲しくて堪らないのに」
そう言ってレイリを押し倒すと、脚を抱えてより深く繋がった。
「ふぁあっ!?」
「今度は俺がレイリを気持ち良くさせる番だ」
シュノは激しく腰を打ち付けて、レイリは揺さぶられるままにシュノにしがみついた。
「レイリ、可愛い、愛してる」
朧気な意識の中でレイリはシュノに愛される悦びに打ち震えた。





「ん…」
意識を失う手前でシュノが自制を効かせ、レイリは漸く解放された。
後処理を手早く済ませたシュノは布団に横になり、レイリの身体をぎゅっと抱き締めた。
たった3日会えなかっただけなのに随分会わなかった気がする。
「シュノ…僕、ちゃんと出来てた?
ちゃんとシュノを気持ちよく出来た?」
執拗にそればかり訪ねるレイリに、何かあったかと思い頭を撫でる。
「ああ、客とするより何倍も気持ち良かった」
するとレイリはふにゃりと顔を綻ばせた。
「……良かった」
「どうしていきなりあんな事したんだ?」
「……シュノが…お客さんと…身請けの話してたの、聞いちゃって…
シュノがどこかに行っちゃうと…」
シュノに身請けの話など初めてでも無ければ毎日の様に来ていた時期もあるほどだ。
それはレイリもよく知ってる筈だし、断っているのも知っている。
「離れに来たのか…
客に見つかったらどうするんだよ。
お前は可愛いからすぐ目付けられるぞ、実際あの色ボケジジイはお前に興味あるみたいだったし…」
「ごめんなさい…目が覚めたらシュノが居なくて、寂しくて僕…隙間から少しだけシュノの姿を見たら帰るつもりだったの…」
レイリから帰ってきた返答のあまりの可愛らしさにシュノは目一杯レイリを抱き締めた。
「お前、可愛すぎだろ…」
「ごめんなさい、その時シュノがお客さんに抱かれながら身請けの話してるの聞いて…
僕じゃない誰かにシュノが抱かれてるのとか、身請けの話とか、それがすごく嫌で…」
レイリは涙を零しながらシュノに抱きついた。
「部屋にいたらお腹のそこがグルグルして、気持ち悪くて、どうしたらいいかわからなくて…
朝になってローゼスが一緒に寝てくれて…シュノはお仕事なんだって思ってもお客さんと一緒だと思うと不安で…
だからローゼスが皆と遊ぼうかって言ってくれて…」
それからの話は大体予想していた通り、レイリは幽離籠の太夫達と仲を深めた。
レイリに好意的でなかった太夫達もレイリの事情を聞くとその境遇を理解してくれたらしく今の幽離籠にはもうレイリを貶める輩はいなくなった。
新造の様に可愛がられたレイリは他の太夫達から男を喜ばせるためのいろはを習ったらしい。
「何をしててもシュノの事ばかり考えてた。
シュノは喜んでくれるかな…とか。」
「ああ、嬉しい。
お前が俺のために一生懸命やってくれてと思うと愛しくて堪らない。」
「良かった…」
レイリは嬉しそうに微笑む。
「レイリ、眠い…
一緒に寝よう、一人じゃ寒くて寝れねぇ」
頷いたレイリを湯たんぽ代わりに、シュノは疲れた身体を癒すのだった。