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呼びたい名前と聞きたくない名前



降りしきる雨の中で、君を見つけた。


騎兵隊の長きに渡る遠征がようやく終わり、帰路に着く。

2か月半という長い長い遠征期間にはそれなりの大きな任務を幾つか並行して行う必要があった。
恋人であり隊長でもあるレイリはそれを見込んだ上でシュノにこの件を預け、武器や防具、資材から消耗品の手配や追加の為の資金を渡してきた。
それを揃えるのにどれ程の労力を割いたことか、貴族院のお偉い方は理解しないでレイリを無能だと罵るのだ。
そんな労が報われにくい恋人と長期間離れていては恋しくなるのも当然だ。
「長かったですね、これでようやくゆっくり休めます」
「長かったな、まぁ土産はその分沢山買えたからいい」
袋の中には黄金色の蜂蜜や花のシロップ漬け等レイリが喜びそうな日持ちのする菓子が沢山入っていた。
「後はこちらで処理しておきますので副隊長はどうぞ隊長のご機嫌取りでもしていてください」
長期任務に出た後のレイリはだいたい帰還する頃には機嫌が悪くなっている。
シュノに会えない分、貴族院からのやっかみに耐え切れず、落ち着かせてくれるシュノが居ない為に感情が不安定になる。
それを知っているゼクスはさっさとシュノをレイリの元に向かわせるのが最前と知っていた。
シュノもそれをわかっていたので、執務室でグズっている恋人をどう甘やかしてやろうか考えながらレイリの待つ執務室へ足を早めた。


「あはは、こらっ、ダメだってば!
ノエル、そんなとこ潜ったらくすぐったいって!」
ドアの前でノブに手をかけると中から楽しそうならレイリの声と、シュノが気に入らない男の名前が飛び出した。
「ちょっと、んっ、ノエル…
ほんとにそこはマズイって……はぁ、あったかい、癒される」
レイリが楽しそうなのはいい。
しかし、ノエルの名前を呼びながら楽しそうにしているのが、シュノにはどうしても許せなかった。
「戻った」
不機嫌そうな声色でドアを開ければちょうどレイリの少し開いた胸元から何かがモゾモゾと這い出してきた。
「あ、ようやく出てきた。
もう、ノエルったら…ここに潜ったらダメだからね?」
そう言って小さな子ネコを取り出すと、シュノを見上げて花が咲いたようににっこり笑う。
「ああ、おかえりなさいシュノ。
今回は長期だったから疲れたよね?
いまお茶をいれるからノエルをお願い」
「……気にいらねぇ」
「え?」
シュノは渡されたネコをソファーに放り、レイリを抱き締めた。
「俺の前でそんな顔であいつの名を呼ぶな」
そのまま頭を押さえ付けられてキスをした。
「っん、は、んんぅちょ、シュノんっ」
何か抵抗を示すようなレイリに腹が立って、頭を抑えて腰を抱き寄せたまま久しぶりのキスを堪能する。
だんだんとレイリの吐息に色が混じり、瞳が蕩けて抵抗する力が弱くなる。
そうして、レイリは降参だと言わんばかりに自分からシュノの首に腕を回して抱き着いて、何度もキスをねだるのだ。
「はぁ、ん、ちゅく、んむ、ぷはっ
シュノそんなに僕が恋しかった?」

唇を離し、蕩けた瞳で見上げるレイリは蠱惑的に微笑んだ。
「そう思っていたのは俺だけみたいだな」
「なに、やきもち焼いてるの?
ふふ、可愛いシュノも僕は好きだけどこの子は少し前に雨に打たれているのを拾ったんだ。
可愛いでしょ、ノエルっていうんだよ」
レイリはシュノから離れてソファーで二人を見上げる子猫を抱き上げた。
「ほんと可愛い。僕が飼ってあげたいくらい可愛い」
ふにゃりと微笑みながら猫に頬を摺り寄せる。
それだけ見れば微笑ましい光景で、日頃ストレスを抱えやすいレイリがこうして小さな動物に触れ合うことで癒しを求めることができるなら、少しの間なら黙って見逃していた。
レイリは常に命を狙われている。
だから愛玩動物はその争いに巻き込まれて命を失ってしまう可能性が高い為、優しいレイリの心を守る為にそういった動物は身近に置かない様にしていたし、レイリ自身それを理解しているから何も文句を言ってこなかった。
シュノが許せないでいるのは名前だった。
こうしてレイリが動物を拾ってくるのは初めてではなく、最終的にいつも譲渡先を斡旋してくれる施設に預けるまでの数日、レイリを癒している。
ただ、毎回毎回レイリは保護している動物に仮の名前としてノエルの名前を付ける。
親を恋しがる子供の様に、盲信している程に尊敬する師匠の名を嬉しそうに愛しそうに呼ぶのがシュノは気に入らなかった。
「そいつの幸せを願うのならお前が飼うべきじゃない。
あとその名前はやめろと何度も言ってるだろ」
「いいでしょ、別に。名前何てどうせ一時的な物なんだから。
この子はこれから新しい飼い主に会って新しい家族と名前を貰える。
ここに居たことも僕の事も僕が付けた名前も忘れて生きていく。
それが幸せなんだよ」
猫を愛しそうに抱きしめながら、レイリはどこか昏く目を落とした。
堪え切れない何かが溢れそうになっている予兆だ。
「僕がどれだけ望んでも、みんな最後にはいなくなる」
そういってレイリは猫をソファーに卸して振り返って笑った。
「お茶入れてくるね」
レイリからは死の匂いがする。
無数の命の上にレイリは生かされている
それを理解しているから、すぐに死んでしまう命を預かることができない。
「寂しいなら俺が居るだろ」
ぎゅっと背後からレイリを抱きしめて耳元で囁けば、びくっと体が震える。
シュノはだめ」
「なんでだよ」
「だって、欲しくなっちゃうから。
名前を付けたら、手放せない。
シュノの名前は手放せないから、だから、つけない」
顔を赤らめながら小さな声でつぶやくレイリに、シュノは抱きしめる腕に力を込めた。
「でも、あいつの名前をお前が嬉しそうに呼ぶのは気に入らねぇ」
そういって、レイリを抱き上げる。
隊舎にあるレイリの私室へ運んでベットに張り付けながら貪る様にキスをする。
「お前がもうアイツの名前を付けないって約束するまで、徹底的に叩き込んでやるから覚悟しろ」
獲物を前にした肉食獣の様にギラつかせた瞳でレイリに覆いかぶさる。
「君が妥協するって選択肢はないの?」
「ない。恋人が自分の前で他の男の名を嬉しそうに呼んでるのが妥協範囲だと思うなら俺もお前を抱きながら他の男の名前を呼んでもいいんだな?」
「それはダメ」
若干食い気味に反応が返ってきて思わず笑ってしまった。
「そうだろ?ならお前はこれから罰を受けるべきだし、俺の前でクソ神父の名を呼ぶのは許さない」
乱暴に唇を重ねて、珍しく余裕がないようにレイリの衣服を剥いでいく。
(今回は長かったからシュノも相当来てるみたい。
でも、それは僕も同じなんだよなぁ)
両腕をシュノの首に回して抱き寄せて耳元で甘くささやく。
「じゃあ僕の体に君を刻み込んでよ。
先生はしてくれない、シュノしかしない事で僕を満たして」
「後悔するなよ、今日はいくら泣いても止めてやらない」
「望むところ」
ふふっと笑ってキスを交わすと二人の重なった影が激しくぶつかり合って夜に溶けていく。

IF騎兵隊会話文



つる「くにに、くににぃ! 今日は外で食べていこうぜー」

くに「ん、そうだな。トレハンでずっと地下に居たし、美味しいものでも食べに行くか」

つる「やった! じゃあいつもの冒険者食堂行こうぜ!」

シル「んぉ、おう双子じゃねぇか。こっち来い!」

つる「あ、シルバーにシュノだ。二人も食べに来たのか?」

シュノ「ああ、こいつが煩くてな」

シル「ぁん? 良いだろ、せっかく王都に戻ってきたんだから」

くに「あれ、二人もどこか行ってたのかい?」

シル「ああ、商人の護衛でな。つまんねぇ仕事回しやがってあいつら……」

シュノ「龍の巣の近くを通るから俺達に回されたんだ」

つる「龍の巣!? 二人共、さすが凄腕の傭兵団だなー」

シル「俺は戦えればそれで良いけどな」

シュノ「……はぁ……ドラゴンに遭遇しないからって帰り道で俺に斬りかかってくるのはどうなんだ」

くに「ああ、いつもの悪い癖が出たのか」

シル「キヒヒ、やっぱシュノは最高だぜ! どれだけ斬りかかっても防がれちまうんだからよぉ」

つる「まあ普通はシュノと戦おうとは思わないよな……。でも、一緒に組んでるって事はシュノもまんざらじゃ無いのか?」

シュノ「ちげぇ……他の奴らに押し付けられたんだよ」

くに「……嫌ならギルド、抜ければ良いんじゃないか?」

シュノ「それはそれで暇でな」

シル「嫌よ嫌よも好きのうちってヤツだよなぁ? ついでに今晩どうよ?」

シュノ「断る、俺が下なんてありえん。そもそも、今夜は先約が居るんでな」

くに「……シュノは何だかんだ言ってレイリの事好きだよなぁ。王都に戻ったら必ず会いに行くんだろ?」

つる「うんうん、仲良いよなぁ。騎兵隊からの依頼はシュノが率先して受ける位だし」

シル「妬けるなぁ、ええ? 仕方ねぇ、双子で我慢してやるか」

くに「我慢するじゃねぇよ、俺達だって断る」

つる「え? 俺ちょっと興味あるかも、シルバー強いし」

シュノ「……鶴丸、シルバーの誘いは模擬戦じゃないぞ」

つる「違うのか?? じゃあ何するんだ?」

シル「なにって、ナニだよ。お前の尻孔に俺様をブッ差すんだぜ。おい片割れ、そっちのは情操教育済ましてんのか?」

くに「(鶴の耳を両手で塞ぎ)あーあー、きこえないなー。お鶴に変な事教えないでくれないかい?」

シル「ぁあ? 嫌ならお前等もギルドに入れよ。攻城戦で疑似戦争すんのは愉しいぜぇ」

くに「何でそうなるんだ……(鶴の耳から手を離して頭を撫でつつ)俺達は好きにトレハンしたいんだ。攻城戦なんて興味ないね」

つる「え?こーじょー??」

シュノ「気にしなくて良い、戦闘狂の戯れ言だ」

シル「はぁ?普段すかした顔してるヤツの顔面殴れるんだぜ?気分良いだろ」

くに「いや、全然……」

つる「喧嘩は良くないんだぜ?」

シル「その喧嘩が合法的に認められんのが攻城戦だろ。キヒヒヒ、たぁのしーぜぇー?」

くに「……シュノは参加してないんだろ?攻城戦の間は何してるんだ?」

シュノ「休暇だな。レイリに会いに行ってる」

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