目の前が真っ白になった。


余りの刺激の強さに、レイリはくらくらしていた。
「ひぁ、あ、あんっ……」
はだけたバスローブが辛うじて腕に引っかかり、解いた髪がだらしなく枕に散らばる。
「いや、ああんっ、もぉ無理」
いやだと手を伸ばしても掴むのは空虚ばかり。
愛する人の温もりも声も何も無い。
ただ一方的に与えられた快楽の暴力。
「だめっ、も、無理だって…
さっきから、ずっと、イッて…ひゃあん!」
いくらいやだと泣き叫んでも届きはしない。
「……っ、シュノ…」
熱の無い空虚な快楽によってレイリはそのまま果ててしまった。
「虚しい…」
呼吸を荒く、ぐったりとしながらズッポリ収まるそれを引き抜いた。
それは貴族間の裏ルートで流行っている大人向けの玩具で、快楽を得るだけなら十分だがなんとも空虚すぎて現実味がない。
「……シュノなら、違ったのかな。
こんな玩具より、シュノで貫かれたら…」
そう言って手に握った玩具を見つめる。
「魔法のオナホね。
今度遠征に行く時シュノに持たせようかなぁ」
転がったオナホを眺めながら、切なげにため息をつく。


「また悪巧みしてんのか?」


ビクッと体が震え、扉を振り返るとシュノがちょうど帰ってきた。
「し、シュノ!?
お帰りなさい、えと、帰還は明日じゃ……?」
しどろもどろなレイリをよそに、冷たい目を細めてじっとレイリを見つめる。
明らかにひとり遊びをしていましたと言わんばかりに辛うじて引っ掛かっているバスローブに散らばる玩具。
「明日の方が都合が良かったか?」
「あっ、いや、その……」
シュノはレイリを見つめるだけで何も言わない。
無言の圧力にあっさり屈したレイリは観念して全てを洗いざらい話すことにした。
遡ること数時間前、レイリは貴族の夜会に参加していた。
そこで面白いものがあると言われ、別室へ案内された。
これはそういう目的だろうと警戒していたレイリの前にはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男。
「クライン伯爵に、巷で流行りの面白いものをお見せしたい」
そう言って取り出したのは何の変哲もない桃色の筒型。
「そちらは?」
「魔法のオナホですよ」
「………はい?」
たっぷり時間をかけて頭に染み込んでいく単語はあまりに…
「クライン伯爵にはよく遠方に行かれる恋人がいらっしゃるとお聞きします」
レイリが警戒しながらも、笑みを作る。
「ええ、そうですが。
それとなんの関係が?」
「寂しいのでは無いかと思いましてね?
恋人の熱を離れていても感じられるなら、どうします?」
「どうもしません。
彼が居ないなら熱を感じる意味もありませんので。
お話はそれだけでしょうか?」
早くここから立ち去りたかった。
「まさか、この性能を体験していただければきっと気に入りますよ」
そう言って男はとろりとそれに何かを垂らした。
「ひっ!」
中に、何かが流れ込む感触がある。
「なに、これっ」
「ただのローションですよ。
それでは、失礼して…」
そう言うと熱を持ち、肉質を帯びたそれに指を差し込んでいく。
「ひぁっ、あ、うっ」
指で内壁を好き勝手弄り回されて、異物感に吐きそうになる。
刺激を与えられる度に中が熱くなるのを止められない。
レイリはその場に倒れ込んでしまう。
男が自分を見て笑っている。
直接触られている訳じゃないのに、体をいいように暴かれている耐え難い屈辱。
自分から罠に誘うための餌にするのではなく、罠にかけられ体を暴かれるなどあってはならないのに。
「っ、は……やだ、もう……やめて」
生理的な涙が溢れ、止まらない。
「いいお顔ですなぁ。
貴方のような生意気なガキを黙らせるのは気分がいい」
「っは、あうっ……こんな手段、使わなくても、抱きたいなら、そう仰ればいい」
「いや、それじゃあ意味が無い。
君にふれれば、ご主人様に従順な獣が牙を剥くだろ?
私は慎重なんだ」
そう言って勃ちあがったそれに遠慮なくオナホを突き刺した。
「ああああんっ!!!」
「ははは、これはいい!」
ずちゅ、ずちゅっと水音をたてる。
中に入ってくる感じはあるのに、足りない。
全然足りない。
シュノは、シュノなら、
もっと奥まで届くのに。

「ああ、もう……」

快楽に殴られながらレイリは立ち上がる。
苛立ちに顔を歪ませて。
「……じゃ、……ないんだよ」
「は?」


「そんな短小じゃ全然足りないんだよ!!」


怒りに任せて男の股間を蹴り上げた。
まさか好き勝手していた相手が立ち上がって股間を蹴り上げるなど予想していなかったのか、男はもんどりを打ってオナホを手放した。
それを拾うと、レイリは踵を返す。



「という訳で、ちょっと自分で使ってみようかなって思ったら……その…」
壁にもたれ掛かるシュノの前で正座させられ、洗いざらい吐かされた…というか勝手に自白したレイリに呆れたため息で返す。
「やっぱり物足りなくて、シュノじゃなきゃダメだって思って……
遠征に行く時に持って行って貰おうかなって…」
えへっと可愛らしくオネダリ顔で微笑めば冷たい視線が帰ってくる。
「断る」
「なんで!?」
「所詮玩具だろ、本物に繋がっててもお前自身が居ないならその行為に意味は無い」
「うっ……」
「でもまぁ、お仕置は必要だよな?」
そう言ってオナホを取り上げると、レイリのペットのスライムが数匹いる水槽にそれを落とした。
「っ!!」
スライムがオナホに集まってきて、我先にとそこに入り込もうとする。
「ひぃう!あ、ああっ、やだ、僕もう、でないっ」
がくっと体を倒し、快楽に悶えるレイリを見下ろしている。
「ああ、や、いやっ、もうイきたくない」
「どうして?気持ちいいんだろ?」
「シュノがいい、どうして、ひどい」
レイリが泣き縋るようシュノを見上げる。
「おねがい、シュノ」
スライムの刺激に身悶えながらも、仕方なしにオナホを取り上げ、スライムを引っ張り出せばレイリは床で激しく体を痙攣せて大人しくなった。
「イッたのか」
悔しそうにシュノを見上げる瞳には熱がこもっていた。
「それで?何か言うことは?」
「……抱いて、シュノ。
奥までいっぱい、シュノで満たして欲しい」
「よくできました」
そう言ってレイリを抱き上げ、ベットに寝かせると服を脱いで覆い被さる。
欲しかった、求めていた快楽にレイリは溺れて行った。
「こんなにとろとろになるまで遊ぶなんて悪い子だな」
「やぁん、ちょ、待って…むり、今は、感じやす…ひゃうん!」
熱量をもったそれが無遠慮にレイリを貫く。
「イッたばかりだから、だめっ、シュノ」
「むりじゃない、やめない
これはお仕置だ」
内壁を擦る度に目の前がチカチカする。
「やだよぉ、もう、また、ひとりでイッちゃうの、やだぁ」
散々一方的な快楽を与えられ、一人果ててきたレイリはシュノが目の前に居るのにひとりで果てるのを拒む。
「そうか、なら頑張れ」
シュノはあっさりと言い放ち、腰を進めた。
奥まで挿入して、激しく叩きつけるレイリの中が、何度かきつく閉まる。
「はは、メスイキしてんのか?」
「あう…も、やだぁ、シュノきらい、いじわる」
何度か絶頂を迎えたらしいレイリが不満気にシュノをにらむ。
「次は、一緒がいい…」
シュノは頷いてレイリの足を抱えて奥を貫いていく。
「可愛い、レイリ」
「あっ、あ…シュノ、すきっ」
ぎゅっとシュノにしがみつくレイリを傷つけないように何度も奥を打ち付けて、多幸感に包まれながら2人は同時に果てた。
「ふぇ…」
「よしよし、いっぱいイけてえらかったな」
何か言いたそうなレイリの言葉をキスで塞ぎ、よしよしと頭を撫でた。