レイリはその日不機嫌の絶頂だった。
朝方は今日遠征部隊が帰還すると聞いてご機嫌だったにも関わらず、シュノが帰ってきた頃にはすっかり不機嫌になっていた。
珍しく喧嘩でもしたのかと思えば、シュノがレイリの腕を強引に引っ張って、今日はもう帰ると告げて、何かを喚いているレイリを小脇に抱えて連れて帰って行った。
嵐のようなふたりを見送ったレシュオムはレイリの仕事の進捗の確認と振り分けのやり直しをして、レイリ用に用意したおやつのパンケーキを代わりに食べながら鶴丸は不思議そうに、何だったんだろうな?と首を傾げながらパンケーキに舌鼓を打った。


「だから嫌だってば!!しない!今日はしないって!!離して!!」
「煩い、黙れ」
キャンキャン喚くレイリを、自宅まで連れ帰り玄関にもつれるように転がり入ると、シュノが後ろ手で素早く鍵を掛けた。
キッと精一杯睨みつけるレイリを壁に押し付ける。
いわゆる壁ドン状態で、レイリだって普段ならばキュンキュンして蕩けた雌顔を晒して甘えてくるが、今日はそんな甘い雰囲気は無く、一触即発と言った状態だ。
主にレイリが、だが。
シュノは冷静にレイリの顎をグイッと掴むと自分と目線を合わせる。
力で勝てないレイリはなすがままだが、せめてもの抵抗としてシュノを噛み付かんばかりに睨みつけるしかできない。
「あいつとは何も無い」
「嘘!前戯したって言った!!
僕にはダメって言うのに!!」
「へぇ?お前はこんなに愛して尽くしてやってる俺の言葉より、見ず知らずの他人の言葉を信用するんだな?」
シュノの視線がいつもより突き刺さる刃のように冷たい。
普段はそんな冷たい目線もものともしないレイリが、流石にビクッと小さな身体を震わせた。
シュノが帰還したと聞いて出迎えに行ったらシュノが誰かと話してるのが見えた。
誰だろう?と近付くとそれはレイリの天敵とも言える相手で、二人は今にもキスしそうな至近距離で何かを言って居た。
レイリからはシュノが壁際に押し付けられてなにかされているように見えて慌てて駆け寄ったという訳だ。
「だっ、て……押し倒されてた」
「お前の目は節穴か?
どう見ても斬り掛かられてただろうが。
それにお前の姿が奴の後ろから見えたから早くお前を抱き締めたかったのに、勘違いした挙句いらん挑発に乗って噛みつきやがって…」
シュノの声色が呆れを含めば、レイリはそれでも抵抗するように細い腕でシュノの鍛え上げられた胸筋を必死に押し返そうとしていた。
「嫌だったんだもん!!
僕のシュノなのに穢された気分だ!!
だから今日はしない、もう寝る!!」
いやいやと駄々をこねるレイリに痺れを切らしたシュノがレイリの肩を掴んで玄関の壁に叩きつけるように押し付けると、強引にキスをする。
舌を絡め取れば抵抗すべく押し返していたレイリの腕から徐々に力が抜け、吐息に甘い色が混じり始める。
嫌だと散々喚いた手前、いつもの様に自分から積極的に求めることはしてこない。
「ふにゃ、はぁ、ん、ちゅぷ、んむぅ…
いや、だって……んぅ」
「その割には腰砕けになってるじゃねぇか。
感じてるんだろ?」
「そんな、こと…っひぁ!」
ぺろっと首筋を舐めればレイリが情けない悲鳴を上げてガクンと腰を抜かした。
「はは、腰抜けたのか?」
「うぅーーー!!!」
悔しそうに呻き声をあげるレイリをシュノが抱き締めると、涙目で見上げてきた。
「煩い煩いうるさぁーい!だいたい僕がこんなに体になったのは全部シュノのせいじゃない」
恥ずかしいのか悔しいのか、顔を赤くしながらキャンキャン吠えるレイリを見下ろしながら、シュノはニヤリと笑う。
「当たり前だ。レイリは俺のもの。
俺の好みの体に開発して何が悪い。
それなのにお前は貴族連中に味見されてマーキングまでされてる癖に俺が変なのに絡まれたからって当たり散らすのはお門違いだろ」
グッと膝をレイリの太腿の間に差し入れて小さな体を壁に貼り付けてキスをしてしまえば、わずかながらに抵抗する手が次第に縋るようにシュノの着物を掴む。
グリグリとレイリの股間を刺激すれば、それだけですぐに蕩け顔に変わっていく。
身体が、脳が、シュノと言う絶対的な雄を求めていた。
「貴族のは、どっちも、本気じゃないし…だって、悔しい……僕だってシュノを抱きた……ひゃうん!?」
突然太腿に挟まっていたシュノの膝がぐいっと股間を強く刺激した。
レイリの体は大きく跳ね上がり、壁と腰の空いた隙間に腕を捩じ込まれて抱き締められれば、ほとんど力の入らない足で爪先立ちしている状態になり、シュノの支えがなければそのまま床に崩れ落ちるだろう。
「や、ぁんっ…そんな、だめっ、んんぅっ」
シュノの片腕がガッチリレイリの背を抱き寄せ、片方で顎を固定されば、レイリは唯一自由のきく手で抵抗しようとするが、身体が快楽を拾い始めればシュノのメスとして隅々まで仕込まれた身体は抵抗する力も奪い去り、くたりと身体をシュノに預けた。
「もう降参か?」
長いキスから酸欠でクラクラするレイリに笑いかければ、優しく頬を撫でられる心地良さにレイリが目を閉じて甘える様に擦り寄った。
「ん、降参」
蕩け眼のレイリと目が会う 。
「今日はこのままもう寝るか?」
意地悪くシュノが聞き返せば、レイリは恥ずかしそうに俯きながら小さな声で言った。
「……えっちしてから寝る」
それを聞いて満足気に笑うと、レイリを姫抱きにして寝室に運んだ。
柔らかなベッドにレイリを寝かせ、覆いかぶさってキスをしながら互いに服を剥ぎ取っていく。
「はぁ、ん…シュノ、すき」
「ああ、レイリ可愛い、もっと、声聞かせろ、ふふっ、こんなエロい下着付けてヤる気満々だったのに、寝るって駄々こねてたのか?」
先日新しく新調したばかりの薄い青色の総レースの下着を支えているのは可愛らしいレースのリボン。
レイリの瞳より薄い色味の下着に顔を寄せれば膨れ上がったそこにレイリが顔を真っ赤にする。
「だって、んっあ、期待するに、決まってる……1ヶ月振りだよ?
なのに、なのにあんな……悔しくて」
「ふーん?じゃあこんなにエロい下着で、俺を迎えに来たのに勘違いして寂しく独り寝する気だったのか?」
「あっ、ん…そう、だよ。
シュノなんか、知らないっんんっ!
やぁ、だめっ、おなかくすぐった…ひゃあん!」
レイリの臍にキスをして、舌で窪みを刺激する。
ぴちゃ、と湿った音が耳を、鼓膜を犯していく。
「ひっ、やだぁ!そんなとこ、っうん!?」
ぐりぐりと舌先で臍の窪みを押し込めば、ひんひんと小さく鳴き声を上げるレイリを見上げる。
シュノの視線に気がついたレイリは両腕で顔を隠す。
「みるなっ…」
極上の美貌が執拗に臍を舐めたり吸ったりするのは、羞恥心が緩いレイリもさすがに顔を赤くした。
「反抗的だな?ここはこんなに素直な癖に」
新調した下着を手のひらで感触を確かめるように触りながら腹回りにキスをすれば、レイリは擽ったそうに体をよじる。
「ああんっ、ふぁ…」
「観念したんじゃなかったのか?
ほら、どうする?
俺に暴かれるか、ペットのスライムに慰めてもらいながらひとり寂しく寝るか」
シュノの歯がリボンを噛んでくいっと解けない程度に引っ張る。
「……そんなの、シュノがいいに……
決まってるじゃない……」
泣きそうな顔で震えながら自ら脚を抱えて開く様子を見て、満足そうに笑うと、しゅるりとリボンを解いた。
「お前は俺のメスだとは言ったが、こんなに女みてぇなエロ下着で外歩くのやめろ。
お前、可愛い顔してる癖に腕力ないんだから連れ込まれる」
「はやく、会いたくて……
それに、帰ったら…すぐにすると思って……」
「………」
「それに……もし連れ込まれたら、助けに来てくれるでしょ?」
良くも悪くも自分の使い方というものをよく知っているレイリは、とろとろに蕩けた瞳で照れたようにふにゃりと笑って見せた。
可愛さや弱さというのもまた、レイリの武器だとシュノがいちばんよく知っている。
「嫉妬するレイリも可愛いけどな、俺はそうやって俺の手で蕩けた顔でオネダリしてくる方が可愛くて気分が上がるけどな」
レイリの下着を捲り上げて、そのまま勃ちあがったそれをレイリの孔に埋めて行く。
こんなに手の込んだお膳立てをしてあるなら、きっと中の方も準備万端な筈だろうと遠慮なく昂りを腹奥に収めて言った。
「やっ!そんな、いきな、ひぃあああっ!!!んっ、くぅん……あ、ふあっ」
いつ抱いても初物のようなキツさなのに中に収めてしまえばしっかりシュノを肉壁で包み込んでキュンキュン吸い付いてくる。
「やっぱりな。ちゃんと中までしっかり準備して抱かれる気満々だったんだろ?
なら次からはつまらない嫉妬はするな。
俺だって早くお前を抱きたかったんだから」
「はひっ、ん、んっ、ごめ、なさ……んぅっ、ひぃん!!
しゅの、もっとして…僕を、欲しいって、言って?」
必死にしがみつきながらレイリはシュノの律動に合わせて腰を揺らした。
「レイリッ、可愛いな、俺を欲しがってるのはレイリじゃないのか?
ほら…こんなに俺を締め付けて離さない」
ぐちゅりと奥を突きあげれば、背中を反らせながら体を震わせてレイリが先に果てた。
「メスイキしたのか?
俺の可愛いレイリは少しひとり遊びのし過ぎじゃないのか?」
「んっ、最近、スラちゃん達が……すごく餌を欲しがって、可愛そうだから……ひぃあんっ!!そんな強くとんとんきもちぃ…」
「へぇ?お前のペット達に中をいじられて精液搾り取られたのか?」
「ちがっ、いや……違くないけど…
シュノとは違う…」
レイリのペットのベビースライムは所詮小さな無害な軟体生物。
シュノの質量のある剛直で奥を突かれる快楽に比べれば、繁殖能力の無いスライムがレイリの胎内を無造作に動き回るのとは意味が違う。
精液はスライムの餌になったが、空っぽだから出ないと言うよりは身体をシュノによってメスにされているから出ないとレイリは言いたいのだが、シュノが自分に覆い被さり、自分だけが見る事を許された極上の笑みにシュノの愛を余すこと無くこの身に叩き込んで欲しい欲が溢れて蕩けた顔でレイリは、手を伸ばしてシュノに抱きついた。
「おかえりなさい」
大切に、大切に小さな体を抱き締めてキスで口を塞ぐ。
「ただいま、レイリ」
そのままキスをしながらレイリを深くベットに沈めて慈しむように頬を撫でる。
「だいすき、大好きだよシュノ
もっと僕だけを見て、愛して」
「こんなにお前だけを愛してるのに欲張りなやつだな。
今日は気絶するまで抱き潰すからな」
ギリギリまで引き抜いたソレを抉り込むかのように奥に突き刺し、レイリは悲鳴のように喘ぎながら身体を跳ねさせた。
「えっ、ちょ……それは、ひゃう!
だめ、そんな奥ッ…あっ、んぁあぁぁぁあぁぁあぁっっっ!!」
強すぎる快楽に目眩がして、頭がクラクラする。
そのままシュノがレイリの腰を浮かせて膝立ちになると、腰をがっちりと掴む。
体勢が不安定なレイリは、何をされているか理解出来ずにシュノを見上げる。
「もっと奥までぶち抜いてやるからな」
そう言って垂直落下する勢いに載せてレイリの結腸にまで先端を捩じ込ませ、それをまたギリギリまで引き抜いて結腸口まで落とすというのをひたすらに繰り返した。
「あ"あ"あ"ぁぁぁ!!!ひっ、う……
んっあぁん、んぅ、や…だめっ、ソレは、バカに、なるっ、ひぃぃん!!」
ぎゅぅっとキツくシーツを握りながら蕩け顔のまま涙を零していやいやと頭を振るが、シュノはお構い無しに結腸口を開いていく。
ズドン、ズドンと激しく重いピストンがレイリの腹を抉る感覚に、身体がメスの悦びを享受してシュノを離すまいと締め付ける。
その無意識の行為が更にレイリを快楽の底へと叩き落とす。
「いやっ、だめ。やだぁぁ!ごめんなさい!きもちい!おかしくなる、やだ、こわいっ!シュノ、シュノ!!」
「可愛い、レイリ。
その顔もっとみせろ」
レイリの意識は既に溶けて微睡みと快楽に飲み込まれてしまって理解は出来ないが、この世でレイリただ一人に許された極上の笑みを浮かべるシュノを垣間見た気がして、レイリも蕩けた顔でふにゃりと微笑んだ。

支配欲、というのはシュノの魂源を辿れば
備わっていて当然のものである。
しかしながら、シュノはそれが全方位に向かず、ただレイリ一人にのみ向いてしまう。
シュノはシュノなりの独占欲と嫉妬をしながらレイリを大切に愛している。
だからこそ、たまに行きすぎるほどに目に見える形で嫉妬したり、不安になったり、愛を示してくるレイリを愛しいと感じるし、自分の手で蕩けていくレイリを見ているのが好きだった。

「んっ、あっ……ふぁあん!」
腹を抉る心地よい律動に身を任せ、レイリは最早微かに悲鳴をあげるしか出来ないほどにとろとろに溶かされて、自分がどうなっているかさえ理解していなかった。
ただ、腹を抉る凄まじい快楽と、暖かに注ぎ込まれる愛欲に身を任せている。
「レイリ、気持ちいか?」
「ん、きもちぃ、もっと」
ハチミツをかけたパンケーキの様に、甘くて幸福な時間を手放したくなくて、頭がカラッポになった様なまま、盲目的にシュノを求めた。
「シュノ、シュノ……」
それしか言葉を知らないみたいに、レイリはシュノを呼び続けた。
大きな青い宝石の様な瞳がシュノだけを映し、シュノの為に柔らかく揺れる。
性格も、属性も、何もかも正反対な二人がこれほどまでに強烈に、深く求め合う事こそ運命といえる。
「ああ、俺はお前の為に存在してるんだから。
俺以外の男に現抜かすなよ、あとアイツに噛み付くのもダメ」
グイッと身体を抱き起こして深く繋がると、小さな身体をきつく抱きしめる。
「あぁんっ、ふぁ…ん、ごめ……ひぃうっ、な、で……おっきく…?」
「抱き潰すって言ったからな。
お前が俺の言う事聞かないで俺以外の男に構った罰」
抱き締められ身動きが取れないまま、キスで口を塞がれ腹を抉られながら、レイリは少しでもシュノの機嫌をなおすために甘える様に縋るしか出来なかった。
腹の中に溜まる愛液を感じながらも、酸欠と快楽の暴力でレイリの意識は途切れる寸前なのだが、身に宿る女神の力とシュノの力強いピストンに意識を手放す事も許されない。
まるで快楽の拷問にでも合っているようなのに身体の芯まで幸福で満たされる。
ついに自力でシュノに捕まることも出来なくなったレイリをベットにうつ伏せに寝かせ、枕を抱かせて苦しくない体勢を取らせる割にはシュノは手加減も遠慮も無くレイリを貫く。
結腸口に先端が埋まり、中に出され続けた精液が溢れてレイリの太ももを濡らしても構わなかった。
喘ぐ気力も無く、呼吸だけで精一杯なはずのレイリも意識を手放す寸前までシュノを求め締め付けるのを止めなかった。
「はぁっ……レイリ…」
最後にレイリの顔を見ようと体勢を変えれば、最高に蕩けた笑みを浮かべるレイリが愛しそうにシュノの頬に手を伸ばした。

『あいしてる』

もはや音の出ない吐息で告げると、シュノがレイリの中に最後の精を放つのと同時にパタリと腕がベットに落ちてグッタリと意識を手放したレイリが眠っていた。
「これからは変な嫉妬なんかする暇なんか与えてやらねぇから、覚悟しとけ」
気絶したレイリの頭を撫で、額にキスをしたら身体を綺麗にしてパジャマを着せる。
泣き腫らした目が赤く腫れぼったくなっていて、こうなるとレイリは朝まで何をされても目覚めはしない。
眠っている身体を好き勝手に抱こうが、耳元で抱かせてやると唆しても指先どころか眉ひとつ動かさずに深い眠りに落ちていた。
シュノの愛欲をその身に受け止め、限界すら超えて身体の隅々まで愛で満たされる幸福の中、レイリは甘い夢を見ているのだろう。
時折シュノを呼ぶ小さな寝息が耳に心地よくてシュノもまた、小さな体を抱きしめて甘い夢に落ちていくのだった。