目が潰れそうなほどの目映い光の中。
一人の華奢な身体の幼子が立っている。
あの時と同じように手を差し伸べながら、あの時とは違う無垢な笑顔を浮かべていた。
真白のローブに身を包んで、真黒のヴェールに顔を隠し。
白く細く小さな身体が柔和の笑みを称えてそこにある。

「椿、国永――貴方はここにあるカミを、病める時も、健やかなる時も。
富める時も、貧しき時も。シモベとしてこれを愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

知らない誓約に知らない言葉。
女のようで男のようで、子供のようで年枯れた老人のようで。
けれど、求められる答えは分かっている。
カミサマに求められ、必要とされ、捧げる事が出来るなら。

「カミよ、この身は貴方の物です。貴方の贄です。貴方に愛を誓います」

満足そうにカミは笑う。嗤う。晒う。



白い背景、白いベッドの上、真白の青年は目元に電子的な光を映すサンバイザーを付けて横たわっていた。
先の出撃で負った背中と頭の傷が原因で救護室にて"治療"をされているのだ。
サンバイザーが光を通す度、白磁の指をピクピクと跳ねさせて肌を赤く染め上げる。
彼が今見ているのはサブリミナルを含んだ映像で、アラガミや敵対者の顔が殲滅の文字と交互に現れた。
その文字が現れる度、人体の急所に貼られた電極パッドから微弱な電流が流れて快楽を生み出す。
他にも快楽や雌犬、交合の文字と男同士のセックス、受け手側の表情をアップした映像など。
様々な交合における快楽の情報を視覚で刷り込み、それを身体でも覚えるように"治療"は進められていた。
投薬により意識を曖昧にされ、白く染まっている脳内を文字通り脳髄まで犯していく。

「ひ、あ!? あ、ああ……あ"、はぁ、あん……、んぁ――ッ!!」

洗脳により与えられた快楽に従順に反応し、身体が快楽を示しだした。
サンバイザーの下では琥珀色の瞳孔を収縮する瞳に涙を浮かべ、過ぎた官能に舌を伸ばし唾液を零す。
食いしばり赤に発色した唇から溢れ、端から垂れる唾液の筋が光に照らされて妖しい。
快楽が白い脳内に焼き付き、焼き付いた快楽に悶えていた。

「ひぁ、ああ……ん、くぅ、ひッ!? ぁ、や、ぁあ"あ、あひッ!? いぃぃい"い"い――!!」

処理しきれない快楽に、再び意識が白く濁っていく。
口から出している喘ぎももはや無意識で言葉すら出てこない。
陶磁器の様な白い肌を大きく仰け反らせ、身体全体を小刻みに震わせていた。
ポール型の拘束具を付けられた両足の指がぎゅっと力を込めて丸くなる。
頭の上に両手を一括りに革バングルで拘束され、完全に身動きを取れない状態だ。
もはや何度目かも分からない絶頂を向かえ、国永の身体から力が抜けていく。
"治療"に当たっていた医師がサンバイザーを外すと、焦点の定まらない淀んで濁った金色が見えた。
虚脱症状にある様子を見て、足の拘束を外し自身の白濁と汗で汚れた国永を横向きに抱え上げる。
くったりと首を落とす国永の口からは、飲み込まない唾液が垂れていた。
大人しくされるがまま、いつもの活発な彼とは違う様子に驚く事もなく白い身体を持ち歩く。
ゆったりと揺れを少なく移動された先は、多くの仮面を付けた男達が待ち構えていた。

「椿国永、さあ……彼らに奉仕をするんだ。お前の愛を示しなさい」
「――……ぅ、あ?」

抱える男の言葉に反応し、骨張った細い指先をピクリと揺らして国永はゆったりと首をもたげる。
男が誰だとか、場所に反応した訳では無く、この言葉こそが彼に刷り込んだキーワードだったからだ。
細い首に乗る小さな桜色の頭を傾げ、ぼんやりとした表情のまま自分を抱える男の唇に唇を重ねる。
夢中で口を、舌を絡める国永の目元は涙と発情でほんのりと赤く染まって蕩けていた。
ちろちろと唇から伸びる舌も赤く、官能をそそる蛇のようですらある。
はぁ、と呼吸の合間に離された顔を今度は別の手が引ったくる。
その手に請われるままに視線を動かして仮面の男に唇を寄せる。
誘蛾灯に誘われるように、或いは誘蛾灯が誘うように官能を灯らせた。

「ん、む……ちゅ、……ちゅく、あむ……ん、んむぅ……ちゅるぅ、ちゅう、ふぁ……」
「お、良いねえ。国永君って言ったっけ? この調子なら口淫もイケるんじゃない?」
「今まで穴をお試し頂いた事はあるのですが、口淫は自己意識があると難しいんですよ」

仮面の男から国永の顔を、口に手を入れて舌を指で挟みもてあそびながら医師が言う。
抱き上げていた手を下ろせば、国永の身体を支える物は他に無く。
先程の絶頂の余韻で足に力が入らず、かろうじて膝立ちになった国永は大人しく医師にされるがまま。

「あ、う……ぐ、ぅぶ……ちゅぶ、あへぇ、なう゛ぅ……えれぇ……」

ぐにぐにと舌をつままれ、指を押し込まれてはギリギリまで引き抜かれ。
疑似口淫をしているように動かされるのを、ちゅぶちゅぶと音を立てて指を追い。
口の端から垂れる唾液には気にも留めず、指で歯列をなぞられる悦びに金色の目を細めた。
白い首筋は唇が指に吸い付く度に筋を浮かばせ、内股の薄い肉がヒクヒクと痙攣を起こす。
徐々に起ち上がりつつある中央の男性器からは先走りを溢れさせ、再び下半身を濡らしていく。
革バングルで拘束された両手を前に突きだして空を掻き、尻穴をぱくぱくとさせて悶えていた。
瞳を蕩けさせて一心に口内を犯す指に吸い付き、身体を震わせて先走りをしとどに漏らす扇情的な姿に、仮面の男達は情欲を感じて逸物が起ち上がるのを感じる。
そのうちの一人が不意に国永の腰を掴み、ズラしたスラックスの間から勃起したソレを後孔に突き挿入れた。

「か、ひゅ――!!!」

肉を暴かれる刺激は全て、快楽へと変換される。
しかもそれが性感帯を一気に貫き、更に痛ければ痛いほど、酷ければ酷いほど好く感じると暗示を受けていた。
国永の身体を尊重しないそれはまさに理想的で、僅かの刺激すら快感として倍増していく。
先走りや自身の精でとろとろに濡れ解されていた穴に無理矢理突き挿入れられた感覚で、国永は背筋を走る快感に勢いのなくなった白濁をまき散らした。

「あ、ああ……ひぃ……お、おお、おほぉ……!?」
「いやぁ、いつ入れてもきつくて良い尻穴ですねえ!」

男は笑いながら腰を突き出し、パンッと尻を叩くように密着させる。
その度に国永は引き延ばされた肉壁のシワを収縮させ、より男の肉棒を締め付けた。
腹の奥に届く衝撃と熱に舌を伸ばして悦び喘ぐ。
支えのない腕を前に突きだし、床に付けて背を仰け反らせた。
そのうち他の男達も我先にと肉の薄い胸を揉み、桃色の乳首を弄り、白魚のような背中でセンズリをし、肉欲の塊で頬を叩く。

「あん、あ、はぁ、あ、ひぃ、んぁ、あ、ん……ふぁ、あ、あえ、ひ、ぃいッ!!」

体中にもたらされる熱に刺激に、脳を快感で埋め尽くしながら国永は喘ぐ。
頬を叩く男のモノにすりすりと頬擦りをし、後ろ髪を掴まれて顔を引き起こされた。
手を拘束する革バンドは外され、両手で別の男の逸物を握らされる。
唇に先走りのリップを塗られたところで、国永は堪えきれずに男のモノへと舌を伸ばした。
最初はちろちろと、次は竿や玉をぺろぺろと舐めて雁に口を近づける。
舐めようと伸ばされた舌はしかし、男が腰を突き出してくる事で口付けを通り越してぬるりと喉奥まで侵入をした。
喘いでいた国永はその衝撃に目を見開いて嘔吐き、反射的に締まった喉が男の欲に絡みつく。

「くっ、良いぞ! 良い子だ良い子だ、そのまま締めてろよ!」
「――う゛ぇ、え、う゛、ぶほ、おぐ、ぐぅう、んえ、えぐ、おぼぉッ!?」
「おい、白ちゃん苦しがってるぞー?」
「そういうお前だってずっと乳首ばっかじゃん、赤く腫れてかーわいそー」
「あ、俺もうイク! 国永くんの中でイク、イク!!」

腹の最奥に熱を叩き付けられ、きゅうっと締まった尻が叩かれて更に締め付けを強くし。
とにもかくにも引き抜かれる感触も、腹の中で暴れる熱も、別の男に割り入れられるのもまた好い。
自身でも腰をへこへこと前後に動かしながら手を動かし、口を蹂躙するモノを受け入れた。
喉奥に熱が叩き付けられたと同時、体中に観客の白濁を受け止めながら国永は中イキした勢いで潮を噴く。
飲み込むには勢いのきつすぎたそれを鼻や口から垂れ流し、顎を掴まれて上向かされた。
白い光がちかちかと目の裏を走り、焦点が合わなくなったのは過ぎる快感故。
汚れて穢れて淀んだ光のない金色の瞳を蕩ける熱で溶かし、思考も気持ち良い事だけで埋め尽くされた国永は頬を緩めてあへ顔で笑う。
もう一度眼前に突き出された逸物へ、今度は自分から先端を舐めて吸い付き、口の中へと導きながら。
国永の身体は悦楽に震え溺れていった。



白い病室に横たわる桜色の青年。
それが誰であるのかを理解した瞬間、

「くににぃー!!」

白い少年は抱き着くように覆い被さって涙を流した。
深く寝入った訳でも無かった国永はすぐに気が付き、少年――弟の鶴丸の頭にぽん、と手を置いて意識がある事を伝える。

「ごめんな、怖かったろう? ちょっとドジっちまったなぁ」
「ぅ、うう……くにに、ごめ……ごめんなさい……」
「鶴? 何も、君が泣く事ないんだぞ。一緒の隊でもなかったし……ちゃんと戻ってきたろう?」

異常に怯えた様子を見せる弟に不思議に思いながら、そこが懐かしくてくす、と笑いが零れてしまった。
せっかくの可愛い顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃの不細工にして謝る弟が可愛すぎて仕方が無い。
例え鶴丸がきっかけで死んだとしても、きっと俺は本望だと笑って言うだろう。
この世でたった一人の、俺の可愛いカミサマ。
この身は君の物であり、君の為にあり、俺は君を愛してる。