「しゅーのっ!」
ぎゅっと背後から抱き付いてくるレイリの重さをもろともせずに受け止め、振り返る。
「何だよ」
「ねぇねぇ、今日はいい夫婦の日なんだって!
僕とシュノは同棲してるし、もう夫婦みたいなものだよね?」
シュノは少し考えながら、そうだなと頷いてレイリの頬に手を当てた。
「それで?
俺の嫁さんは何をするつもりなんだ?」
「あのね、一発ヤらせ…」
「却下だ」
速攻で断られてレイリはむくれてシュノを見上げる。
「ヤりたいなら可愛がってやるぞ?」
「違う、そうじゃないの!
僕がシュノを抱きた…」
「それはダメ」
シュノはレイリの口を塞いでそのままソファーに押し倒した。
柔らかな唇を押し広げ、舌を絡ませる。
「んっ、ん…」
シュノの服を握りながら、なすがままに行為を受けている。
「は…んむ…っ…しゅの」
息継ぎをしながら、それでも離れたくないのか懸命にしがみついてくる。
それが愛しくてたまらない。
「レイリ…」
名前を呼ぶと、レイリが嬉しそうに顔を緩めて笑った。
柔らかな頬にそっと触れると、甘えるように擦り寄る。
今日は一日目一杯レイリを甘やかそうとした時だ。
「……っ」
体が熱いことに気付いて、レイリを睨むように見下す。
「お前、また…性懲りもなくっ…」
「シュノはすぐ警戒するからね。
唇に塗るタイプの媚薬を買ったんだよ。
効いたでしょ?」
ニッコリと笑い、レイリはシュノに両手を伸ばしてキスを強請る。
「っ、くそ…」
普段は可愛らしい恋人もこの時ばかりは憎たらしく、シュノは熱くなる体の熱に身を任せてレイリの唇を貪るように奪った。
「ん、んんっ…は、ふ…」
「煽ったのはお前だからな」
そう言ってレイリの身体を抱き上げると2階の寝室にレイリを運ぶ。
「はぁん…や、だめっ…僕がしたいのに…」
キスをしながら押し倒したレイリの服をぬがしていく。
「もぅ…仕方ないなぁ」
レイリが小さく笑うと、シュノはお前のせいだという言葉を飲み込んでキスをした。



「あっ、ん…ふぁ…ちょっと、がっつきすぎ」
ベットのスプリングがギシギシと唸りをあげる。
レイリからみるシュノはストイックな所があり、節操なく体を求めることは無い。
ただ、自分もシュノもまだ歳若く熱を持て余すことがある。
その時にタガが外れたみたいなシュノがレイリは愛しくて堪らなかった。
いつもはクールでかっこよくて優しいシュノが野獣みたいなギラギラした目で自分を見ているのが堪らなくレイリを興奮させる。
「レイリ、お前、ほんとにっ…」
どうやら今回の媚薬はかなり効いたようで、予めゼクスとティアに成分を分析させて増強させたのが効果を表しているらしい。
「ふふ、シュノどうしたの?
今日は随分余裕ないね」
「くそ…お前っ、今日は絶対、ゆるさねぇ…んんっ!?」
体が熱くて疼いているのを堪えるシュノが可愛くてレイリはシュノを引き寄せてキスをしながらシュノの着物の帯に手をかけてゆっくり解いていく。
「シュノの、もうこんなに…
ふふ、そんなに気持ちいい?」
そっと熱を持ったシュノに手を這わせると、シュノが顔をしかめる。
いつもより全然余裕が無い。
それが楽しくて堪らない。
それでいい、もっと僕に溺れればいい。
そう心の奥で想いながらレイリはシュノをいやらしく撫で回しながら、キスをした。
「シュノ、ねぇ…出したい?」
「くっ……レイ、リ…」
ぎゅっと抱き締められ、激しくキスをされて頭がおかしくなる。
「ねぇ…ちゃんと僕が欲しいって言ってよ。
余裕が無いシュノが見たいの。」
「いい根性してるなほんと…
レイリ…抱きたい。
我慢出来ない、もう、頼むっ」
シュノは珍しく余裕が無い切羽詰まった様子で、でも平常を保とうとするのが楽しくてつい微笑んでしまう。
「ん、いいよ。
いつも僕の為に頑張ってくれるシュノにご褒美」
「レイリ、明日は…」
「大丈夫、僕休みだから。
全部僕に…シュノの全部を僕に頂戴」
にっこり笑ってレイリは手を広げる。
シュノはそのまま本能にまかせてレイリをにキスをする。
「んっ、ふ…ふぁ…」
「んんぅ…しゆ、の…は、あぁん」
シュノが自分を見下ろす視線にたまらなくゾクゾクする。
「ふにぁあ、や、やぁんっ」
キスを落とし、所有印を肌に刻みながらレイリの身体を愛撫していく。
「んっ、ちゅ…んんっ、はぁ…」
シュノの吐息が甘く漏れ、熱い舌先がレイリの胸の突起に触れる。
「ひゃぅぅ!?んっ、ああああ!!」
まるで赤子みたいに胸を吸い上げるシュノに、レイリは顔を真っ赤にして首を左右に降った。
「レイリ、買ったもの出せよ」
シュノが唇を離すと、急に寂しくなり頭が快感で支配される。
「かった…もの?」
「媚薬、まだあるんだろ?」
レイリがぼんやりした頭でポケットから1本のリップクリームを取り出す。
「これ…」
シュノはそれを受け取り、キャップを外すと妖艶に笑った。
シュノはレイリの髪を束ねてる菫色のリボンをしゅるりと外すと、それで手を束ねてベットに縛り付けた。
「あ、シュノ…」
シュノはリップクリームをレイリの胸に当てた。
「や、やめて…」
「だぁめ、やめない」
酷く色っぽい声に、レイリは思考を麻痺させた。
そして、胸に塗込められた媚薬はレイリの身体を熱く敏感にしてしまう。
ぷっくり桜色に膨れた乳首をシュノの舌先が少し触れただけで、レイリは悲鳴をあげてイッてしまった。
「やっ…うそ、こんな……や、やだ、もうやだぁ…」
恥ずかしさのあまりに泣きじゃくるレイリに構わず、シュノはレイリの胸を口に含み、吸ったり舌先での愛撫を繰り返す。
「んあぁぁぁぁっ!!ふっ、ううっ…しゅの、ごめんなさい、ごめんなさい、も…やだぁ」
「ふぁ…レイリ、甘い…お前、砂糖みたいだ」
レイリがボロボロ涙を零しながらシュノを見上げる。
手を縛られているから身動きも取れなく、成されるがままだ。
「ひぁああああっ!ひぃう、も、もぉ…だ、めぇ…」
媚薬のせいで感じやすくなっている為、どこに触れられてもイきそうだった。
シュノの為に増強したせいか、レイリにはシュノより何倍も強く媚薬の影響が出ていて、もはや思考すら快楽に飲まれていた。
「ふぁぁん、しゅの、しゅのお願い
もうイかせて!」
シュノは縋るように腰をすり寄せるレイリを見て満足げに笑った。
「レイリ、可愛い」
ちゅっとキスを落とすとシュノはリップクリームを最大まで出し切る。
「な、に…するの…」
何となく嫌な予感がしたレイリは恐怖で青ざめた顔でシュノを見た。
「何って…お仕置き?」
楽しそうに笑って、シュノはそのリップクリームをレイリの秘部に押し込んだ。
っぷ、つぷ…と奥に入っていくリップはレイリの媚肉に包まれ、その熱でゆっくり溶けてその成分を染み渡らせた。
「は、はふ…ふぁあ…」
レイリはガクガクと身体を震わせながら湧き上がる快楽に必死に耐えていた。
白い喉を仰け反らせ、大きな瞳からは涙がぼろぼろ零れ、はくはくと息をしながらこちらを見る余裕すらないようだった。
もともとシュノ用に強めた媚薬でレイリには強すぎたようで、辛うじて意識はあるものの、理性は崩壊しているようだ。
「ああん…しゅのぉ…おなか、おなか…あっつい…」
「ん、今から何も考えられないほど気持ちよくしてやるからな」
秘部からリップクリームを抜き出すと、それはもう殆ど溶け切っていて、若干まずったなと思いつつも、シュノは昂る熱をそのままレイリの秘部に突き刺した。
「ひぃぃぃぃっ!!!
あっ、ああああああっ!!」
「くっ…あ…レイリ…あんまり締めるな…」
「は、ふ…あんっ、んんっ…んァアア!!」
レイリは挿入の衝撃だけで身体を震わせて2回ほど果てた。
シュノもあまりにレイリが締め付けるのでそのまま中に熱を吐いた。
「ふ、あ…しゅの……」
「そんな物欲しそうな顔しなくても、媚薬が抜けるまで相手してもらうからな」
シュノは手首のリボンを解いて、レイリを抱き締めた。
「ん、シュノ…愛してる…」
その一言にシュノは理性が切れて、レイリにめちゃくちゃにキスをしながら激しく身体をぶつけ合い、獣の様に愛し合った。





「ごめんなさい、もうしません」
饅頭のように布団を被ったレイリがゲッソリした声で呟いた。
まだ多少は熱が残るものの媚薬の効果は抜けた様だ。
流石にシュノもやり過ぎたとは思う。
それでも、自分の下で蕩けた顔で可愛らしく鳴いて縋る恋人の姿にどうにも歯止めが効かなかった。
レイリの身体を気遣う余裕もなく、自分の欲をぶつけた後悔と、元はと言えばレイリが媚薬なんて盛るから悪いという気持ちが半々で、シュノは考えるのをやめた。
「シュノ」
布饅頭から顔を出したレイリはふにゃりと笑ってシュノを見てる。
「いつもありがとう。
これからもよろしくね?」
幾つになっても無邪気な恋人に、シュノは少し頬を赤くして笑った。
「ああ、よろしく」
「ふふっ、シュノが照れた」
じゃれつくレイリを抱き締めて、すっぽりと腕に収める。
「ねぇ、シュノ。
僕の旦那さんはきっとお腹がすいた僕にクリームと蜂蜜とチョコが沢山のパンケーキを焼いてくれて、マッシュポテトのサラダとフルーツミックスジュースのランチを運んできてくれると思うんだ」
レイリはまるで持ってこいと言わんばかりにシュノを見上げた。
「…判ったからお前は寝てろ」
シュノがベットサイドにあるガウンを羽織るとそのまま寝室を出ていき、レイリはそれを眺めていた。
窓から中庭を通して一回の様子が見える。
レイリは窓にもたれ掛かりながらシュノの姿を眺めていた。
シュノの中に本のわずかに流れ込んだレイリの力の一分に、シュノは気付いていない。
媚薬で思考を緩ませていたから、すんなりとシュノの中に侵入できた。
「お守りがわりじゃないけれど…
一度くらいなら君の身を守ってくれるはずだから」
誰もいない部屋で独り言のように呟きながらレイリはシュノがいるキッチンを眺めていた。
「君は僕の為ならすぐに無茶しちゃうからね。
心配する僕の身にもなって欲しいな」
レイリは熱っぽい視線でシュノを見続ける。
やがて昼食を完成させたシュノがこちらに戻ってくるのが見えて、暫くして扉が開く。
「まだそんな格好してんのかよ…
はやくパジャマ着ろ、風邪ひく」
「腰が痛くて起き上がれない」
シュノはテーブルに食事を置くと、脱ぎ散らかした服を拾い集めてベットから動く気の無いレイリに投げ付けた。
「着せて?」
「はぁ…しょうがねぇな」
ぎしりとベットに体重をかける。
窓際に身体を寄せるレイリを抱き寄せて服を着せる。
シュノの綺麗な指先がパジャマのボタンを留めるのをレイリがじっと眺めている。
「何だよ」
「シュノの手、綺麗だなぁって思って」
緩みきった笑顔で言われればシュノも釣られて笑う。
「変な奴、ほら出来たぞ」
「シュノ」
シュノが身体をずらしてレイリから離れようとする前にレイリがシュノに抱きついた。
「愛してるよ」
「判ってる」
「うん、でも言いたいの。
シュノがだいすき、愛してる」
「ああ」
レイリの頭を撫でるシュノはどこか嬉しそうだ。
「あんまり危ない事はしないで、僕はシュノがいないと生きてけないよ。
もう僕は君をは一人にしたくない」
いつも先に死んでしまう。
か弱くて脆い自分はもう嫌だった。
「そんな事俺がさせない。
俺は死なないしお前も死なせない」
「でも、僕は君が傷ついて帰ってくるのも嫌だよ…」
レイリはぎゅっとシュノに抱きついた腕に力を込めた。
こんなに強く抱き締めてもシュノなら振り払うことは容易い。
程よく付いた筋肉も、瞬時に周りを見極める頭の回転の速さも、敵を薙ぎ払う力も全てレイリに無いものだから。
「お前がそう望むなら善処する。
ただ、無傷ってのは場合によっては無理だぞ」
「綺麗なシュノの肌が傷つくのは嫌なんだ
シュノばかり戦場で戦って僕だけ王都で守られてるなんて」
「王都に居れば安全って訳でも無いだろ。
お前の場合特に敵が多いんだから、暗殺未遂なんて何度もあっただろ」
シュノの目の前でレイリが凶刃に倒れた事もあった。
治癒力の高いレイリの体は傷跡すら残さずに数日で完治したが、それはシュノの心の傷になっていた。
「それと同じ…シュノが傷つけば僕も痛いよ」
レイリは言葉選びが上手いと思う。
シュノはレイリの言いたい事を先読みして理解してしまうけれど、こうしてあえて口に出す言葉はシュノに必要な言葉ばかりだ。
「判ってる。
お前を悲しませる様な事はしない」
約束だとは言わない。
それは騎兵隊の隊長と副隊長と言う立場上それが叶わないと知っているから。
「僕はシュノが居れば大丈夫」
レイリは言わば生贄だ。
王都に捧げれた生贄。
英雄の血を引き、期待を押しつけられた哀れな子羊。
「それに、みんなが居るから…
僕には大切な家族がいるから」
レイリはにこりと笑った。
手の内に抱き込めたものを守る為なら、レイリは何でもできる。
「ね、だからこれからもずっと一緒だよ」
腕に抱き締めたレイリの体温を感じて、シュノは甘える様にレイリの身体をきつく抱いた。
もう2度とこの腕に抱いたまま死なせたりしない。
「シュノ、愛してる」
安心させる様なレイリの声に、シュノは柔らかく微笑んだ。