「ねぇ、シュノのそれって涼しそうだね。」

一日の仕事を終えて、二人でお風呂に入り、タオルで濡れた体を拭いていたレイリはシュノの夜着を指差した。
「ああ、浴衣か?
……確かに着物よりは生地も薄いけど…」
着てみるか?と、なんの気に無しに言ったこの一言で、あんなことになるとはこのときのシュノは露程も思っていなかった。
「え、いいの!?着てみたい!!」
キラキラと目を光らすレイリの頭を撫で、予備の浴衣を引っ張り出す。
紺地に白百合と紫の蝶々が描かれた艶やかな浴衣だ。
帯にはモノトーンの落ち着いた柄をチョイスして、レイリを招き寄せた。
「ほら、こっち来いよ。」
「ん。」
バスタオルを羽織ったレイリがシュノの方にパタパタト駆け寄るその仕草を、犬みたいだなぁと思いながら笑みがこぼれる。
「シュノ、何だかご機嫌だね。」
「お前が可愛いからだよ。」
レイリの体を抱き寄せて、浴衣を羽織らせると、腕を通す。
「帯絞めるから大人しくしてろよ。」
「はーい。」
素直に返事するレイリの頭を撫でて、慣れた手つきで浴衣を着せていく。
しかし、シュノより一回り小さく、華奢なレイリではシュノに合わせて仕立てられた浴衣はどうしてもだぼついてしまう。
「腰細いな、お前。」
「やめてよ、これでも気にしてるんだから…」
むーっと膨れるレイリかおかしくて、シュノは額にキスを落とした。
「んっ…ふ…ぅ…」
浴衣がずれないようにきつく帯を締めると、レイリが苦し気な息を漏らした。
「キツいか?」
「ん、ちょっと…でも大丈夫。」
「着なれないんだから無理するな。」
締めたら帯を緩めると、レイリが潤んだ瞳で見上げてきた。
「シュノの匂いがする…」
袖の袂をつかんで、マーキングするみたいにスリスリと頬を擦り付ける。
その度に浴衣の襟足がずれて、肩が丸出しになる。
「っ…!!」
湯上がりで火照った頬に、濡れた髪は下ろしていてポタポタと滴が胸元を妖しく濡らしていく。
正直レイリの裸なんて見慣れているシュノでも、さすがに何か理性が切れそうな気がしてきた。
「シュノ?」
首をかしげたレイリがシュノに近寄ろうとして、裾を踏んで前につんのめる。
そのまま、シュノを押し倒す形で倒れこんだレイリは、まさにシュノに馬乗りになった状態だ。
「レイリ、お前さっきから変だぞ?
誘ってんのか?」
レイリはシュノの浴衣をぎゅっと握り、顔を赤くしながら頷いた。
「誘って、るんだよ…判ってよ、ばか…」
「何処でこんなこと覚えてきたんだ。」
「ロゼットが、彼シャツってゆうのが流行ってるって教えてくれたから…」
実際、この言い方はかなり語弊があるが、最終的にはロゼットに聞いたことに違いないので、あえて訂正はしなかった。
「なにやってんだ、あいつら。」
一人頭を悩ませながら、シュノはレイリを抱き上げた。
最早可愛い恋人が自分を誘惑するためだけに浴衣を着たいと申し出たのだ。
その単純で愛しい行動に、据え膳喰わねば男の恥と言わんばかりにレイリをベットに座らせた。
「一応聞いとくが、本当にいいんだな?
後で止めろって言っても聞かねーからな。」
「良いって言ってるだろ、恥ずかしいから、もぅ…んっ…」
キスをしながらレイリの体を抱き寄せる。
「ん、今日は…僕がする…」
ベットから降りて、シュノの足の間に体を割り込めて、ちゅっと太ももにキスを落とす。
下着を脱がせば半勃ちした自身を口に含む。
「ふ…むっ…んん」
「もう少し奥まで咥えれるか?
そう…いい子だな。」
浴衣を開けさせ、頬を紅潮させながら懸命に奉仕するレイリの頬に手を当てて、犬でも弄るように頬を撫でる。
「んっ…むぐ…」
レイリはそのまま浴衣をたくしあげて、秘部に自ら指を押し込んだ。
「今日は随分サービス満載だな、そんなに溜まってたのか?」
シュノの問い掛けに、恥ずかしそうに目を伏せながら、頷いた。
「なら、折角だし自分で慣らしてみろ。」
ローションのボトルをレイリに渡すと、口を離したレイリが真っ赤になりながらボトルを受け取った。
「うぅ…シュノの意地悪…」
レイリはベットの上に横になるシュノに跨がり、ローションを手のひらに垂らした。
グチグチと粘着質な音を響かせて、秘部に指を這わせた。
「ひ…あ…つめた…ふぁあん」
元々体が柔らかい上、シュノに慣らされた身体はあっという間に三本目の指を飲み込んでいく。
「ふ、あ…ぁ、んつ…もぉ、我慢できな…」
「よしよし、良く頑張ったな。」
シュノはレイリの頭をなで、腰を掴んだ。
「腰、少しあげろ。挿れっから。」
「うん…」
シュノの両肩に掴まるように手を置いて腰をあげる。
「そのまま、ゆっくり腰落とせ?ゆっくりでいいからな。」
先端をあてがい、柔らかく解れた秘部を引き裂いていく。
「ふ…ぁ…あァんっ…おっき…」
一度根元まで埋め込んでしまえば、キスを交わしながら欲望のままに突き上げてしまえばいい。
「ん、んんっ…は、ふっふあぁんっ!!」
唾液を口の端しから溢しながら、最高に蕩けた表情で、レイリは舌足らずにシュノの名を叫んだ。
「ひあ、ああ…しゅ、の…しゅのぉっ!!」
ボロボロと涙を溢しながら、レイリの体がビクンっと震える。
「ここ、好きだな?」
レイリの弱いところを重点的に攻めれば、甲高い悲鳴が響く。
「いやっ、あァんっ!!そこ、いやっ、おかしくなっちゃう…やだぁ、しゅの、やだよっ!!」
シュノはニヤリと笑って、レイリの腰を掴んでわざと激しく突き上げた。
「ああんっ、やあ…ああんっ!!
ああっ…きっ、もちいっ!!ああんっ!!いっちゃ、ああああっ!!」
結合部からぐちゅぐちゅと漏れる水音。
細い指に扱かれて先走りが溢れ続ける自身も、全てがレイリを興奮させる。
シュノがレイリを突き上げる度に浴衣がズレ落ちたきて、白い肌を惜しげもなく晒す。
「やあああっ、だめぇっ!!
いっちゃう、いっちゃううぅっ!!」
悲鳴のように叫びながら、レイリは大きく反り返った。
レイリがイく瞬間に内壁がぎゅうっと収縮し、シュノを締め付けた。
「…っく、出すぞ!!」
「へっ…?は、ふぁ…あァんっ!?」
中に熱い欲望がぶち撒けられ、ぐったりとレイリが頭を垂れた。
「レイリ…」
まだ呼吸が整わないレイリを抱き締めると、虚ろな目でシュノを見上げる。
「まだ…もっと、シたい…」
可愛らしいおねだりに、シュノは迷わずレイリを押し倒した。
脚を抱えて、レイリの秘部に自身を捩じ込んで抽出していく。
「ひぃあ…あぁあん、あっああん、あんっ、気持ちぃよぉ…しゅのっ…ふぁ…ん、好き…シュノっ…しゅ、の…」
細い腕が背中に回されて、必死にしがみついてくる。
「レイリ…可愛い」
ちゅっと頬にキスすると、ふにゃりと顔が綻んだ。
情欲に濡れたレイリは、その幼さが残る顔で妖艶な色を纏い、シュノを見上げた。
「しゅ…のは、きもちぃ?」
シュノの頬に手を添えて、微笑むレイリに愛しさが込み上げる。
「ああ、最高に気持ちいいよ。
愛してる、レイリ」
「よか、た…っ…僕も、ぃし…て、ひっ!!
あっ…あうぅっ…あっぁあ…っ!?」
一気に不覚まで押し込められ、レイリの瞳が大きく見開かれる。
「も…イくっ…」
「ん、良いよ…中にいっぱい…だして…」
レイリの体を抱き込んで、激しくピストンすれば、腰を揺らしながら精液を搾り取るように秘部を締め付ける。
その締め付けに耐えきれず、シュノは容赦なく腰を打ちつけ始める。
「もぉ…や、だめ、ぁあん、はぁ…っ、ひぁああっ!!」
「ちょ…と、絞めすぎだぞ…も…イく…」
「ああっ、もう無理!!おかしく、なるっ、あんっあんっもぉや、しんじゃぁっあああっ!!」
目の前が真っ白になる感覚に、レイリはぐったりとベットに体を沈めた。
それと同時に腹の奥で熱い精液が迸る。
そのまま、背面座位でもう一度イッた所でレイリが気を失ってベットに俯せに倒れこんだ。
ずるんっと中を犯していた自身が抜け、精液がゴポリとこぼれ落ちて太股を妖艶に濡らす。
「……ありえねぇ、ヤりすぎた…」
さすがにグッタリと気を失っているレイリを目の前に、シュノは反省した。
しかしながら溜まっていた上、あんな誘われ方をして、理性の飛んだ恋人を前に、まだ年若いシュノの理性も脆く瓦解した。
体を清めて事後処理を済ませ、はだけた浴衣を整えると、レイリが目を開いた。
「あ…僕…」
ぼんやりとしたレイリがシュノを見上げて、頬を赤く染めた。
「悪い、加減できなかった。」
「いいよ、別に…それに、僕も気持ち良かったし…」
照れたように、枕に顔を埋めるレイリの頭を撫でると、あまえるように擦り寄ってくる。
そんなレイリが愛しくて、きつく抱き締めながらタオルケットを引っ張った。
「ねぇ、シュノ…」
「なんだ?」
「明日お休みでしょ?
僕もゆかた仕立てて貰いに行きたい。」
よっぽど浴衣がお気に入りらしく、浴衣を仕立てたいというレイリに、行き付けの民族衣装を取り扱う店にレイリに似合う反物があったのを思い出した。
マリンブルーに睡蓮と金魚が描かれた涼し気な生地で仕立てれば、見目幼いレイリも少なくともそれなりには見えるはずだ。
「そうだな、判った。
お前に合うのを仕立ててやるよ。」
「ほんと?嬉しいな!!」
ニコッと笑いながらシュノ胸元にすりよるレイリの額にキスを落とす。
「だけど、着るのは夜だけな?」
「なんで?」
「……お前が可愛いからだよ。」
抱き締めて、頭を撫でてキスをすれば、レイリは赤くなりながらも頷いた。
「うん…約束、ね。」



後日出来上がった浴衣を受け取ったレイリはそれを大事そうにチェストにしまった。
「着ないのか?せっかく仕立てたのに。」
「うん…これはね…シュノとしたいときに着ることにした。」
つまり、レイリが夜着に浴衣を着ていたら誘っていると思っていいらしい。
「…いや、これは着ろよ。
誘うときは前みたいに俺の着ればいい。」
レイリは一瞬キョトンとしたが、すぐに嬉しそうに笑ってシュノの浴衣を引っ張り出した。
着ていたパジャマを脱いで、シュノの浴衣を羽織ると、ぎゅっとシュノに抱きついた。
「シュノ…抱いて?」
「………お前ってやつは…」
シュノは、レイリに余計な知識をつけさせてしまった気がして、頭を抱えた。
それでも、愛しい恋人からの甘い誘いを断ることもなく、今日も二人はベットに沈んだ。