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まほうのおもちゃ



目の前が真っ白になった。


余りの刺激の強さに、レイリはくらくらしていた。
「ひぁ、あ、あんっ……」
はだけたバスローブが辛うじて腕に引っかかり、解いた髪がだらしなく枕に散らばる。
「いや、ああんっ、もぉ無理」
いやだと手を伸ばしても掴むのは空虚ばかり。
愛する人の温もりも声も何も無い。
ただ一方的に与えられた快楽の暴力。
「だめっ、も、無理だって…
さっきから、ずっと、イッて…ひゃあん!」
いくらいやだと泣き叫んでも届きはしない。
「……っ、シュノ…」
熱の無い空虚な快楽によってレイリはそのまま果ててしまった。
「虚しい…」
呼吸を荒く、ぐったりとしながらズッポリ収まるそれを引き抜いた。
それは貴族間の裏ルートで流行っている大人向けの玩具で、快楽を得るだけなら十分だがなんとも空虚すぎて現実味がない。
「……シュノなら、違ったのかな。
こんな玩具より、シュノで貫かれたら…」
そう言って手に握った玩具を見つめる。
「魔法のオナホね。
今度遠征に行く時シュノに持たせようかなぁ」
転がったオナホを眺めながら、切なげにため息をつく。


「また悪巧みしてんのか?」


ビクッと体が震え、扉を振り返るとシュノがちょうど帰ってきた。
「し、シュノ!?
お帰りなさい、えと、帰還は明日じゃ……?」
しどろもどろなレイリをよそに、冷たい目を細めてじっとレイリを見つめる。
明らかにひとり遊びをしていましたと言わんばかりに辛うじて引っ掛かっているバスローブに散らばる玩具。
「明日の方が都合が良かったか?」
「あっ、いや、その……」
シュノはレイリを見つめるだけで何も言わない。
無言の圧力にあっさり屈したレイリは観念して全てを洗いざらい話すことにした。
遡ること数時間前、レイリは貴族の夜会に参加していた。
そこで面白いものがあると言われ、別室へ案内された。
これはそういう目的だろうと警戒していたレイリの前にはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男。
「クライン伯爵に、巷で流行りの面白いものをお見せしたい」
そう言って取り出したのは何の変哲もない桃色の筒型。
「そちらは?」
「魔法のオナホですよ」
「………はい?」
たっぷり時間をかけて頭に染み込んでいく単語はあまりに…
「クライン伯爵にはよく遠方に行かれる恋人がいらっしゃるとお聞きします」
レイリが警戒しながらも、笑みを作る。
「ええ、そうですが。
それとなんの関係が?」
「寂しいのでは無いかと思いましてね?
恋人の熱を離れていても感じられるなら、どうします?」
「どうもしません。
彼が居ないなら熱を感じる意味もありませんので。
お話はそれだけでしょうか?」
早くここから立ち去りたかった。
「まさか、この性能を体験していただければきっと気に入りますよ」
そう言って男はとろりとそれに何かを垂らした。
「ひっ!」
中に、何かが流れ込む感触がある。
「なに、これっ」
「ただのローションですよ。
それでは、失礼して…」
そう言うと熱を持ち、肉質を帯びたそれに指を差し込んでいく。
「ひぁっ、あ、うっ」
指で内壁を好き勝手弄り回されて、異物感に吐きそうになる。
刺激を与えられる度に中が熱くなるのを止められない。
レイリはその場に倒れ込んでしまう。
男が自分を見て笑っている。
直接触られている訳じゃないのに、体をいいように暴かれている耐え難い屈辱。
自分から罠に誘うための餌にするのではなく、罠にかけられ体を暴かれるなどあってはならないのに。
「っ、は……やだ、もう……やめて」
生理的な涙が溢れ、止まらない。
「いいお顔ですなぁ。
貴方のような生意気なガキを黙らせるのは気分がいい」
「っは、あうっ……こんな手段、使わなくても、抱きたいなら、そう仰ればいい」
「いや、それじゃあ意味が無い。
君にふれれば、ご主人様に従順な獣が牙を剥くだろ?
私は慎重なんだ」
そう言って勃ちあがったそれに遠慮なくオナホを突き刺した。
「ああああんっ!!!」
「ははは、これはいい!」
ずちゅ、ずちゅっと水音をたてる。
中に入ってくる感じはあるのに、足りない。
全然足りない。
シュノは、シュノなら、
もっと奥まで届くのに。

「ああ、もう……」

快楽に殴られながらレイリは立ち上がる。
苛立ちに顔を歪ませて。
「……じゃ、……ないんだよ」
「は?」


「そんな短小じゃ全然足りないんだよ!!」


怒りに任せて男の股間を蹴り上げた。
まさか好き勝手していた相手が立ち上がって股間を蹴り上げるなど予想していなかったのか、男はもんどりを打ってオナホを手放した。
それを拾うと、レイリは踵を返す。



「という訳で、ちょっと自分で使ってみようかなって思ったら……その…」
壁にもたれ掛かるシュノの前で正座させられ、洗いざらい吐かされた…というか勝手に自白したレイリに呆れたため息で返す。
「やっぱり物足りなくて、シュノじゃなきゃダメだって思って……
遠征に行く時に持って行って貰おうかなって…」
えへっと可愛らしくオネダリ顔で微笑めば冷たい視線が帰ってくる。
「断る」
「なんで!?」
「所詮玩具だろ、本物に繋がっててもお前自身が居ないならその行為に意味は無い」
「うっ……」
「でもまぁ、お仕置は必要だよな?」
そう言ってオナホを取り上げると、レイリのペットのスライムが数匹いる水槽にそれを落とした。
「っ!!」
スライムがオナホに集まってきて、我先にとそこに入り込もうとする。
「ひぃう!あ、ああっ、やだ、僕もう、でないっ」
がくっと体を倒し、快楽に悶えるレイリを見下ろしている。
「ああ、や、いやっ、もうイきたくない」
「どうして?気持ちいいんだろ?」
「シュノがいい、どうして、ひどい」
レイリが泣き縋るようシュノを見上げる。
「おねがい、シュノ」
スライムの刺激に身悶えながらも、仕方なしにオナホを取り上げ、スライムを引っ張り出せばレイリは床で激しく体を痙攣せて大人しくなった。
「イッたのか」
悔しそうにシュノを見上げる瞳には熱がこもっていた。
「それで?何か言うことは?」
「……抱いて、シュノ。
奥までいっぱい、シュノで満たして欲しい」
「よくできました」
そう言ってレイリを抱き上げ、ベットに寝かせると服を脱いで覆い被さる。
欲しかった、求めていた快楽にレイリは溺れて行った。
「こんなにとろとろになるまで遊ぶなんて悪い子だな」
「やぁん、ちょ、待って…むり、今は、感じやす…ひゃうん!」
熱量をもったそれが無遠慮にレイリを貫く。
「イッたばかりだから、だめっ、シュノ」
「むりじゃない、やめない
これはお仕置だ」
内壁を擦る度に目の前がチカチカする。
「やだよぉ、もう、また、ひとりでイッちゃうの、やだぁ」
散々一方的な快楽を与えられ、一人果ててきたレイリはシュノが目の前に居るのにひとりで果てるのを拒む。
「そうか、なら頑張れ」
シュノはあっさりと言い放ち、腰を進めた。
奥まで挿入して、激しく叩きつけるレイリの中が、何度かきつく閉まる。
「はは、メスイキしてんのか?」
「あう…も、やだぁ、シュノきらい、いじわる」
何度か絶頂を迎えたらしいレイリが不満気にシュノをにらむ。
「次は、一緒がいい…」
シュノは頷いてレイリの足を抱えて奥を貫いていく。
「可愛い、レイリ」
「あっ、あ…シュノ、すきっ」
ぎゅっとシュノにしがみつくレイリを傷つけないように何度も奥を打ち付けて、多幸感に包まれながら2人は同時に果てた。
「ふぇ…」
「よしよし、いっぱいイけてえらかったな」
何か言いたそうなレイリの言葉をキスで塞ぎ、よしよしと頭を撫でた。

ジェラシー

レイリはその日不機嫌の絶頂だった。
朝方は今日遠征部隊が帰還すると聞いてご機嫌だったにも関わらず、シュノが帰ってきた頃にはすっかり不機嫌になっていた。
珍しく喧嘩でもしたのかと思えば、シュノがレイリの腕を強引に引っ張って、今日はもう帰ると告げて、何かを喚いているレイリを小脇に抱えて連れて帰って行った。
嵐のようなふたりを見送ったレシュオムはレイリの仕事の進捗の確認と振り分けのやり直しをして、レイリ用に用意したおやつのパンケーキを代わりに食べながら鶴丸は不思議そうに、何だったんだろうな?と首を傾げながらパンケーキに舌鼓を打った。


「だから嫌だってば!!しない!今日はしないって!!離して!!」
「煩い、黙れ」
キャンキャン喚くレイリを、自宅まで連れ帰り玄関にもつれるように転がり入ると、シュノが後ろ手で素早く鍵を掛けた。
キッと精一杯睨みつけるレイリを壁に押し付ける。
いわゆる壁ドン状態で、レイリだって普段ならばキュンキュンして蕩けた雌顔を晒して甘えてくるが、今日はそんな甘い雰囲気は無く、一触即発と言った状態だ。
主にレイリが、だが。
シュノは冷静にレイリの顎をグイッと掴むと自分と目線を合わせる。
力で勝てないレイリはなすがままだが、せめてもの抵抗としてシュノを噛み付かんばかりに睨みつけるしかできない。
「あいつとは何も無い」
「嘘!前戯したって言った!!
僕にはダメって言うのに!!」
「へぇ?お前はこんなに愛して尽くしてやってる俺の言葉より、見ず知らずの他人の言葉を信用するんだな?」
シュノの視線がいつもより突き刺さる刃のように冷たい。
普段はそんな冷たい目線もものともしないレイリが、流石にビクッと小さな身体を震わせた。
シュノが帰還したと聞いて出迎えに行ったらシュノが誰かと話してるのが見えた。
誰だろう?と近付くとそれはレイリの天敵とも言える相手で、二人は今にもキスしそうな至近距離で何かを言って居た。
レイリからはシュノが壁際に押し付けられてなにかされているように見えて慌てて駆け寄ったという訳だ。
「だっ、て……押し倒されてた」
「お前の目は節穴か?
どう見ても斬り掛かられてただろうが。
それにお前の姿が奴の後ろから見えたから早くお前を抱き締めたかったのに、勘違いした挙句いらん挑発に乗って噛みつきやがって…」
シュノの声色が呆れを含めば、レイリはそれでも抵抗するように細い腕でシュノの鍛え上げられた胸筋を必死に押し返そうとしていた。
「嫌だったんだもん!!
僕のシュノなのに穢された気分だ!!
だから今日はしない、もう寝る!!」
いやいやと駄々をこねるレイリに痺れを切らしたシュノがレイリの肩を掴んで玄関の壁に叩きつけるように押し付けると、強引にキスをする。
舌を絡め取れば抵抗すべく押し返していたレイリの腕から徐々に力が抜け、吐息に甘い色が混じり始める。
嫌だと散々喚いた手前、いつもの様に自分から積極的に求めることはしてこない。
「ふにゃ、はぁ、ん、ちゅぷ、んむぅ…
いや、だって……んぅ」
「その割には腰砕けになってるじゃねぇか。
感じてるんだろ?」
「そんな、こと…っひぁ!」
ぺろっと首筋を舐めればレイリが情けない悲鳴を上げてガクンと腰を抜かした。
「はは、腰抜けたのか?」
「うぅーーー!!!」
悔しそうに呻き声をあげるレイリをシュノが抱き締めると、涙目で見上げてきた。
「煩い煩いうるさぁーい!だいたい僕がこんなに体になったのは全部シュノのせいじゃない」
恥ずかしいのか悔しいのか、顔を赤くしながらキャンキャン吠えるレイリを見下ろしながら、シュノはニヤリと笑う。
「当たり前だ。レイリは俺のもの。
俺の好みの体に開発して何が悪い。
それなのにお前は貴族連中に味見されてマーキングまでされてる癖に俺が変なのに絡まれたからって当たり散らすのはお門違いだろ」
グッと膝をレイリの太腿の間に差し入れて小さな体を壁に貼り付けてキスをしてしまえば、わずかながらに抵抗する手が次第に縋るようにシュノの着物を掴む。
グリグリとレイリの股間を刺激すれば、それだけですぐに蕩け顔に変わっていく。
身体が、脳が、シュノと言う絶対的な雄を求めていた。
「貴族のは、どっちも、本気じゃないし…だって、悔しい……僕だってシュノを抱きた……ひゃうん!?」
突然太腿に挟まっていたシュノの膝がぐいっと股間を強く刺激した。
レイリの体は大きく跳ね上がり、壁と腰の空いた隙間に腕を捩じ込まれて抱き締められれば、ほとんど力の入らない足で爪先立ちしている状態になり、シュノの支えがなければそのまま床に崩れ落ちるだろう。
「や、ぁんっ…そんな、だめっ、んんぅっ」
シュノの片腕がガッチリレイリの背を抱き寄せ、片方で顎を固定されば、レイリは唯一自由のきく手で抵抗しようとするが、身体が快楽を拾い始めればシュノのメスとして隅々まで仕込まれた身体は抵抗する力も奪い去り、くたりと身体をシュノに預けた。
「もう降参か?」
長いキスから酸欠でクラクラするレイリに笑いかければ、優しく頬を撫でられる心地良さにレイリが目を閉じて甘える様に擦り寄った。
「ん、降参」
蕩け眼のレイリと目が会う 。
「今日はこのままもう寝るか?」
意地悪くシュノが聞き返せば、レイリは恥ずかしそうに俯きながら小さな声で言った。
「……えっちしてから寝る」
それを聞いて満足気に笑うと、レイリを姫抱きにして寝室に運んだ。
柔らかなベッドにレイリを寝かせ、覆いかぶさってキスをしながら互いに服を剥ぎ取っていく。
「はぁ、ん…シュノ、すき」
「ああ、レイリ可愛い、もっと、声聞かせろ、ふふっ、こんなエロい下着付けてヤる気満々だったのに、寝るって駄々こねてたのか?」
先日新しく新調したばかりの薄い青色の総レースの下着を支えているのは可愛らしいレースのリボン。
レイリの瞳より薄い色味の下着に顔を寄せれば膨れ上がったそこにレイリが顔を真っ赤にする。
「だって、んっあ、期待するに、決まってる……1ヶ月振りだよ?
なのに、なのにあんな……悔しくて」
「ふーん?じゃあこんなにエロい下着で、俺を迎えに来たのに勘違いして寂しく独り寝する気だったのか?」
「あっ、ん…そう、だよ。
シュノなんか、知らないっんんっ!
やぁ、だめっ、おなかくすぐった…ひゃあん!」
レイリの臍にキスをして、舌で窪みを刺激する。
ぴちゃ、と湿った音が耳を、鼓膜を犯していく。
「ひっ、やだぁ!そんなとこ、っうん!?」
ぐりぐりと舌先で臍の窪みを押し込めば、ひんひんと小さく鳴き声を上げるレイリを見上げる。
シュノの視線に気がついたレイリは両腕で顔を隠す。
「みるなっ…」
極上の美貌が執拗に臍を舐めたり吸ったりするのは、羞恥心が緩いレイリもさすがに顔を赤くした。
「反抗的だな?ここはこんなに素直な癖に」
新調した下着を手のひらで感触を確かめるように触りながら腹回りにキスをすれば、レイリは擽ったそうに体をよじる。
「ああんっ、ふぁ…」
「観念したんじゃなかったのか?
ほら、どうする?
俺に暴かれるか、ペットのスライムに慰めてもらいながらひとり寂しく寝るか」
シュノの歯がリボンを噛んでくいっと解けない程度に引っ張る。
「……そんなの、シュノがいいに……
決まってるじゃない……」
泣きそうな顔で震えながら自ら脚を抱えて開く様子を見て、満足そうに笑うと、しゅるりとリボンを解いた。
「お前は俺のメスだとは言ったが、こんなに女みてぇなエロ下着で外歩くのやめろ。
お前、可愛い顔してる癖に腕力ないんだから連れ込まれる」
「はやく、会いたくて……
それに、帰ったら…すぐにすると思って……」
「………」
「それに……もし連れ込まれたら、助けに来てくれるでしょ?」
良くも悪くも自分の使い方というものをよく知っているレイリは、とろとろに蕩けた瞳で照れたようにふにゃりと笑って見せた。
可愛さや弱さというのもまた、レイリの武器だとシュノがいちばんよく知っている。
「嫉妬するレイリも可愛いけどな、俺はそうやって俺の手で蕩けた顔でオネダリしてくる方が可愛くて気分が上がるけどな」
レイリの下着を捲り上げて、そのまま勃ちあがったそれをレイリの孔に埋めて行く。
こんなに手の込んだお膳立てをしてあるなら、きっと中の方も準備万端な筈だろうと遠慮なく昂りを腹奥に収めて言った。
「やっ!そんな、いきな、ひぃあああっ!!!んっ、くぅん……あ、ふあっ」
いつ抱いても初物のようなキツさなのに中に収めてしまえばしっかりシュノを肉壁で包み込んでキュンキュン吸い付いてくる。
「やっぱりな。ちゃんと中までしっかり準備して抱かれる気満々だったんだろ?
なら次からはつまらない嫉妬はするな。
俺だって早くお前を抱きたかったんだから」
「はひっ、ん、んっ、ごめ、なさ……んぅっ、ひぃん!!
しゅの、もっとして…僕を、欲しいって、言って?」
必死にしがみつきながらレイリはシュノの律動に合わせて腰を揺らした。
「レイリッ、可愛いな、俺を欲しがってるのはレイリじゃないのか?
ほら…こんなに俺を締め付けて離さない」
ぐちゅりと奥を突きあげれば、背中を反らせながら体を震わせてレイリが先に果てた。
「メスイキしたのか?
俺の可愛いレイリは少しひとり遊びのし過ぎじゃないのか?」
「んっ、最近、スラちゃん達が……すごく餌を欲しがって、可愛そうだから……ひぃあんっ!!そんな強くとんとんきもちぃ…」
「へぇ?お前のペット達に中をいじられて精液搾り取られたのか?」
「ちがっ、いや……違くないけど…
シュノとは違う…」
レイリのペットのベビースライムは所詮小さな無害な軟体生物。
シュノの質量のある剛直で奥を突かれる快楽に比べれば、繁殖能力の無いスライムがレイリの胎内を無造作に動き回るのとは意味が違う。
精液はスライムの餌になったが、空っぽだから出ないと言うよりは身体をシュノによってメスにされているから出ないとレイリは言いたいのだが、シュノが自分に覆い被さり、自分だけが見る事を許された極上の笑みにシュノの愛を余すこと無くこの身に叩き込んで欲しい欲が溢れて蕩けた顔でレイリは、手を伸ばしてシュノに抱きついた。
「おかえりなさい」
大切に、大切に小さな体を抱き締めてキスで口を塞ぐ。
「ただいま、レイリ」
そのままキスをしながらレイリを深くベットに沈めて慈しむように頬を撫でる。
「だいすき、大好きだよシュノ
もっと僕だけを見て、愛して」
「こんなにお前だけを愛してるのに欲張りなやつだな。
今日は気絶するまで抱き潰すからな」
ギリギリまで引き抜いたソレを抉り込むかのように奥に突き刺し、レイリは悲鳴のように喘ぎながら身体を跳ねさせた。
「えっ、ちょ……それは、ひゃう!
だめ、そんな奥ッ…あっ、んぁあぁぁぁあぁぁあぁっっっ!!」
強すぎる快楽に目眩がして、頭がクラクラする。
そのままシュノがレイリの腰を浮かせて膝立ちになると、腰をがっちりと掴む。
体勢が不安定なレイリは、何をされているか理解出来ずにシュノを見上げる。
「もっと奥までぶち抜いてやるからな」
そう言って垂直落下する勢いに載せてレイリの結腸にまで先端を捩じ込ませ、それをまたギリギリまで引き抜いて結腸口まで落とすというのをひたすらに繰り返した。
「あ"あ"あ"ぁぁぁ!!!ひっ、う……
んっあぁん、んぅ、や…だめっ、ソレは、バカに、なるっ、ひぃぃん!!」
ぎゅぅっとキツくシーツを握りながら蕩け顔のまま涙を零していやいやと頭を振るが、シュノはお構い無しに結腸口を開いていく。
ズドン、ズドンと激しく重いピストンがレイリの腹を抉る感覚に、身体がメスの悦びを享受してシュノを離すまいと締め付ける。
その無意識の行為が更にレイリを快楽の底へと叩き落とす。
「いやっ、だめ。やだぁぁ!ごめんなさい!きもちい!おかしくなる、やだ、こわいっ!シュノ、シュノ!!」
「可愛い、レイリ。
その顔もっとみせろ」
レイリの意識は既に溶けて微睡みと快楽に飲み込まれてしまって理解は出来ないが、この世でレイリただ一人に許された極上の笑みを浮かべるシュノを垣間見た気がして、レイリも蕩けた顔でふにゃりと微笑んだ。

支配欲、というのはシュノの魂源を辿れば
備わっていて当然のものである。
しかしながら、シュノはそれが全方位に向かず、ただレイリ一人にのみ向いてしまう。
シュノはシュノなりの独占欲と嫉妬をしながらレイリを大切に愛している。
だからこそ、たまに行きすぎるほどに目に見える形で嫉妬したり、不安になったり、愛を示してくるレイリを愛しいと感じるし、自分の手で蕩けていくレイリを見ているのが好きだった。

「んっ、あっ……ふぁあん!」
腹を抉る心地よい律動に身を任せ、レイリは最早微かに悲鳴をあげるしか出来ないほどにとろとろに溶かされて、自分がどうなっているかさえ理解していなかった。
ただ、腹を抉る凄まじい快楽と、暖かに注ぎ込まれる愛欲に身を任せている。
「レイリ、気持ちいか?」
「ん、きもちぃ、もっと」
ハチミツをかけたパンケーキの様に、甘くて幸福な時間を手放したくなくて、頭がカラッポになった様なまま、盲目的にシュノを求めた。
「シュノ、シュノ……」
それしか言葉を知らないみたいに、レイリはシュノを呼び続けた。
大きな青い宝石の様な瞳がシュノだけを映し、シュノの為に柔らかく揺れる。
性格も、属性も、何もかも正反対な二人がこれほどまでに強烈に、深く求め合う事こそ運命といえる。
「ああ、俺はお前の為に存在してるんだから。
俺以外の男に現抜かすなよ、あとアイツに噛み付くのもダメ」
グイッと身体を抱き起こして深く繋がると、小さな身体をきつく抱きしめる。
「あぁんっ、ふぁ…ん、ごめ……ひぃうっ、な、で……おっきく…?」
「抱き潰すって言ったからな。
お前が俺の言う事聞かないで俺以外の男に構った罰」
抱き締められ身動きが取れないまま、キスで口を塞がれ腹を抉られながら、レイリは少しでもシュノの機嫌をなおすために甘える様に縋るしか出来なかった。
腹の中に溜まる愛液を感じながらも、酸欠と快楽の暴力でレイリの意識は途切れる寸前なのだが、身に宿る女神の力とシュノの力強いピストンに意識を手放す事も許されない。
まるで快楽の拷問にでも合っているようなのに身体の芯まで幸福で満たされる。
ついに自力でシュノに捕まることも出来なくなったレイリをベットにうつ伏せに寝かせ、枕を抱かせて苦しくない体勢を取らせる割にはシュノは手加減も遠慮も無くレイリを貫く。
結腸口に先端が埋まり、中に出され続けた精液が溢れてレイリの太ももを濡らしても構わなかった。
喘ぐ気力も無く、呼吸だけで精一杯なはずのレイリも意識を手放す寸前までシュノを求め締め付けるのを止めなかった。
「はぁっ……レイリ…」
最後にレイリの顔を見ようと体勢を変えれば、最高に蕩けた笑みを浮かべるレイリが愛しそうにシュノの頬に手を伸ばした。

『あいしてる』

もはや音の出ない吐息で告げると、シュノがレイリの中に最後の精を放つのと同時にパタリと腕がベットに落ちてグッタリと意識を手放したレイリが眠っていた。
「これからは変な嫉妬なんかする暇なんか与えてやらねぇから、覚悟しとけ」
気絶したレイリの頭を撫で、額にキスをしたら身体を綺麗にしてパジャマを着せる。
泣き腫らした目が赤く腫れぼったくなっていて、こうなるとレイリは朝まで何をされても目覚めはしない。
眠っている身体を好き勝手に抱こうが、耳元で抱かせてやると唆しても指先どころか眉ひとつ動かさずに深い眠りに落ちていた。
シュノの愛欲をその身に受け止め、限界すら超えて身体の隅々まで愛で満たされる幸福の中、レイリは甘い夢を見ているのだろう。
時折シュノを呼ぶ小さな寝息が耳に心地よくてシュノもまた、小さな体を抱きしめて甘い夢に落ちていくのだった。

スミレの人 2

小屋を出たシュノを待っていたのは、小さな人間との邂逅と再びの殺人だった。
それが妹で、家族と呼ぶ相手だったと知ったのは、村から遠く離れた旅の道中でだ。
文字の読み書きが出来ず、そもそも言葉を多くは知らないシュノに他人は知識を与えた。
シュノの生まれた村がかなりの寒村で、閉ざされた場所だった事を知ったのもその時だ。
年の半分近くを雪で深く閉ざされる、そんな場所だった。
白く、全てを塗りつぶしていくものが雪なのだと。
勿論他人のそれは親切などではなく、シュノの美貌に絆されての事だった。
年端もいかない少年、とシュノを呼ぶ他人が、多くは女が、時に男がシュノを寝床に誘った。
あわよくば、既成事実を作って囲って貰おうとして。
シュノは見た目、儚さの残る少女な面立ちと男になろうとする身体の両方を持っていた。
均整の取れた体躯は成長の邪魔にならない程度に筋肉が付いていて、知識を応用する頭も持っていた。
だから大人と呼ぶそれらが、女が、シュノに惚れたり抱かれたいと願うのも当然の事。
一度だけ商売女らしい女と寝所を共にしたが、とくに惹かれたりはしなかった。
生理現象ならば一人で十分。
他人の体温に嫌悪感を覚える質なのだと知れただけ上々。
元々流れ者の旅人なので、その日のうちに街を移った。
よくある事だった。
唯一違ったのは、商人等が使う道を歩いていたら首襟を掴まれ、視界が流れる速さで森の奥へと引き込まれたことだった。
相手は女で、口元にニヤニヤとした笑みと、苛ついた歯ぎしりを同時にする緑に黒が混じった髪をしている。

「カッカッカ、やっと見付けたぞ? 随分謳歌しておったようだなぁ。己が何かも知らぬ癖に、己が何かも知らぬからこそ」
「……そういうアンタは何だ? 人間だとしたら呪われてるのか」

随分と場違いなほど明るくからかい蔑む黒緑のそれに、シュノは眉を潜めた。
緑と黒の髪が半々、なんて可愛らしいオシャレではない。
元が緑の髪の毛を黒がにじみ、侵食し、決して混じらず刻一刻と全体の印象を変える。
これが完璧に別たれた色だったなら、呪いなどと思わなかったろう。

「ほう、ほうほう? 呪いとな、いやはやまさにそれよ。我が身に巣くうのは堕神の毒でな、本来のワシの有り様さえ思い出せず、覚えて居らず、果たせぬ状況よ」

はあやれやれ、と仕方の無い子に説き伏せるように、それは言う。
声を聞くと普通のそれの筈なのに、鋼が擦れた様な微かな異音が耳障りだ。

「んん、お前様、のうお前様? お前様は自分が何かを知っているかえ? 勿論しらなんだろうな、うむ。ワシと共に来るならば、教えてやろう」

一息のうちにそこまでを言い切り、未だ己が土の上に腕を捻って拘束しているシュノに対して目線で問いかけた。
無論、答えは――。

スミレの人 1

白が降る。
俺に、世界に、足下に。
静かに、音も無く。
見上げていたら、何かが顔に触れた。
痛みにも似た感覚で、けれどそれとは違うもの。
少しの時間立っていただけ、周囲から色が抜け始めた。
全ての景色が、白に埋め尽くされていく。
あったはずのものを呑み込んで、全てを無かった事に変えていく。
目の前に倒れ伏す、もう動かない小さな身体すらも。
結局、何と呼べば良いのかすら分からなかった相手。
それを手に持ったもので切り捨てた俺。
何の感情も思い付かない事に、嫌悪を覚えた。

多分、一生、この色を忘れることはないだろう。



シュノが育ったのは、山間にある小さな村だった。
窓のない部屋には常に一人きり。
一日に一度、食事を持ち込む時にだけ母と名乗る人が来た。
それ以外は誰も来ない、灯りもない薄暗い部屋。
母だという人に部屋を出るなと言われたからそうしている。
恐らく、扉にカギなど掛かっていなかっただろう。
出るなと言うわりに、結構な頻度様子を見に来る事も、ずっと居て監視をすることも無かったから。
もしかしたら、出て行って欲しいという気持ちがあったのかも知れない。
今となっては、あの人が何を考えていたのかは分からないし、確認する術もない。
ただ、子供の遊び道具などない部屋の床には、人が書き散らかした絵姿だけ。
どれもが破られていて、無事なものは一つも無い。
それを一つ一つ、眺めるのがシュノの毎日だった。
とくに変化もない風景。
唯一の違いは、人が来た時だけ。

「シュノ、居るの?」

人が呼ぶ声で、自分はシュノという名前なのだと知った。
人との目線の遠さで、自分との違いを知った。
「お母さんね、今日はシチューを作ったの。沢山食べてね」
甘える様な絡みつく声と、様子を窺い鋭く絡みつく視線に違和感を知った。
そして、シュノが身動ぎをする度に跳ねる肩に、恐怖と怯えを知った。

「お父さんはね、騎兵隊の一員だったのよ。とても強いサムライだったの。とても強かったの」
「……」
「シュノはお母さん似だけど、男の子だからきっとお父さんみたいに強くなるわ」
「……どうし――」
「ひぃいぐう!?な、なに!?何なの!?何が言いたいのよッ!!!」

ただ、どうして、と聞きたいだけだった。
けれどシュノが声を出すと、目の前の人は、母は、それまでの表情を一変させて怯えた。
顔中の筋肉を硬直させ、痙攣させ、目をぎらつかせ、異形の何かに変わったのではないかと思うほどだった。

「私に何をする気なの! あの人まで奪って、この人殺し!!」
「……」
「何よ、何とか言いなさいよ、どうせあんただって私を殴って押さえ付けて……殺しなさいよ!
さあさあ、さあ!!殺してみなさいよ、この化け物!!!」
「……」
「殺しなさいよぉ……あの人の所に、行かせてよぉ……」

ひとしきり奇声を上げた後は、大抵泣いていた。
殺せと言われても、その方法を知らなかった。
あの人と言われても、誰の事か分からなかった。
だから、何もせずに見つめていた。
そのうち我に返ったのか、母は恥ずかしそうに笑って顔を逸らした。

「ごめんなさい、駄目ね……お母さんたら。ねえシュノ、シュノ、私の可愛いシュノ、聞いて?」
「……」
「お母さんはね、シュノが可愛くて、大好きで、大切で、愛してるの。愛しているから、さらわれないように閉じ込めてるのよ」
「……」
「嗚呼、シュノ……貴方が生まれた時、本当に嬉しかった。あの人も貴方を抱いて、泣いていて……幸せだったの」

語る母は恍惚とした表情で、もはやシュノの事はどうでも良いのだろうと分かった。
母にとって大切なのは、生まれたばかりの自分と母と誰か。
幸せ、という言葉に夢を見るように、母は部屋を出て行く。
そうして再び一人になった部屋には、静けさだけが残った。
シュノが知っている事は、多くはない。
シュノは男で、母という人は女で、父という人はキヘータイでサムライをしていた。
シュノの世界はこの部屋の中だけで、母はシュノを化け物だという。
外を知った後なら、納得出来る要因になるほどと言える。
けれどこの頃は、あの人が言うならそうなのだろうと、漫然と受け止めていた。
泣きもせず、笑いもせず、怯えもせず、我が侭もせず、ただ存在しているだけの子供。
好い子にしなさいと怒られた訳でも無く、泣かれると困ってしまうと困惑された訳でも無く。
最初からそれらを知らず、そして必要としていなかったから覚えずに。
そんな子供を抱えていたからか、他に要因があったのか。
ある日彼女は、シュノの髪より深い色合いの着物を肩に羽織り、その下に刀を持ってやって来た。

「シュノ……ねえシュノ、シュノはお母さんを置いていったり、しないわよね?」

常とは違い、微笑みながら、常と同じまとわりつくような甘い声だった。
何かがあったのか、無かったのか。
どちらにせよ、限界だったのだろう。
ただ、いつか来るその日が今日だっただけ。
肩に掛けた羽織が腕を上げた拍子に床に落ちて。
上げた腕には、手には短刀が握られていて。
シュノは、驚くでもなく平素と同じようにそれを見上げていた。

「シュノ、愛しているわ」

その微笑みと甘い声は、まるで睦言のようで。
自己陶酔をする母より、絵筆を持つしかしなかった女より、自分の方が"ソレ"を上手く使える。
そう、思った時には手が伸びていて。
初めて自分の中に生まれた欲求が、母を殺めた。
どこを斬るつもりだったのか分からない手から刃物を奪った時には、返す手で母の首を切っていた。
やはり、自分の方が上手く使えたと自覚した時には赤く温かい液体が噴き出してシュノを濡らす。
初めて知った他人の熱は温く、気持ちの良い物では無いと思った。
物言わぬ人となった母を、彼女の着物で液体を拭いながら見る。
悲しいとも、厭わしいとも、ただの物と化したそれに何も感じない。
同時にここに居る理由も失って、シュノは羽織を肩に掛けながら小屋を出た。

カーニバル




さぁさぁ始まるカーニバル
蠱毒のメリーゴーラウンド、

狂る狂る廻った、嬉しい?楽しい?寂しい?



「それじゃあ行ってくるね?」
隊長としての正装に身を包んで腰に愛用のレイピアを挿す。
国王から直々に依頼が下るのは珍しい事ではないが、それほど頻繁にあることでもない。
まして、謁見の間に呼ばれての直々の勅命となれば普段着でおいそれと行くわけにはいかなかった。
「おう、行ってこい。帰ってきたら作戦会議だから寄り道すんなよ」
「判ってる」
レイリは慣れた様子で騎兵隊の隊舎をでて、徒歩で向かう。
時間は何度も確認している。
天気のいい日で頬を撫でる風が心地よかった。
王宮につくとすぐに門番の兵士に話しかけると中に通される。
「レイリ・クライン様、こちらで少々お待ちください」
そういって通された控室の椅子に座り、今日は何の依頼だろうかと考える。
ここ最近はあちこちで魔物の大量発生が頻発している。
個別に部隊を組んで討伐に向かっているし、傭兵ギルドの力を借りることもある。
レイリ自身、隊を率いて何度も魔物の討伐に向かってその数は着々と減ってきてはいるはずだった。
「それでもまだ無ではないもんね。どんなことがあろうと陛下の憂いは晴らさなくちゃ」
その覚悟を決めて気を引き締めた所でこんこんとノックされてメイドらしい女性がぺこりと頭を下げて戸を開けた。
「クライン騎兵隊長、シグルド陛下がお会いになるそうです。謁見の間までお越しください」
「はい、判りました」
謁見の間に通されたレイリは少し息をのんだ。
何度訪れても苦手だ。
国王であるシグルドの玉座の脇には執事やら大臣やらが顔を並べている。
そしてレイリのいる場所の左右には騎士団の兵士がずらりと頭を並べている。
今日は珍しく騎士団団長も来ている様だった。
「レイリ・クライン騎兵隊長。此度の戦見事だった。」
「はっ、お褒めに預かり光栄でございます」
レイリは膝をついて深く頭を下げた。
「それゆえに、特別な褒美を取らせよう」
……褒美?」
いつも穏やかに微笑んでいるシグルド王の顔が、僅かに歪んだ気がした。
何か、とてつもない不安を感じて思わずレイリが後ずさるといつの間にか騎士団団長ともう一人、見慣れない人物がレイリの腕を確りと掴んでいた。
「ななにを……陛下、これは一体?」
「なに、ちょっとした確認だ。すぐに済む」
そういってシグルド王は自分の腰から剣を抜き取るとレイリの腹部を深く貫いた。
「ぐあっなん、で……?」
苦悶の表情を浮かべながら心底判らないと大きなサファイアの瞳が訴える。
信じていた、自分が忠誠を誓っていた人物に今腹を刺されている。
君ならすぐに治るだろう?」
え?」
剣を深く押し込み、内臓を抉る様にぐりぐりと突き上げる。
ボタボタと腹部からあふれる大量の血と肉と臓器の欠片。
蒼いコートがじわじわと赤く染まって錆びた鉄の匂いが広がっていく。
「あ、ああああああっ!!!」
あまりの激痛にレイリが悲鳴を上げるが、剣を伝って零れ落ちた血を杯に満たしていく。
何とか逃れようと抵抗してもレイリの華奢で細い身体では鍛え上げられ、重厚な鎧を纏った屈強な男二人に叶うわけなく、暴れれば暴れるほどレイリの体を傷つけて痛みで気が遠くなる。
どれ程出血して、臓器を傷つけられたのか判らない。
開かれた腹からは何か良くわからないものが垂れている気がするが、もはやレイリにそれを確認する気力は無かった。
シグルド王が持つ杯がレイリの血肉で溢れんばかりになった頃、剣は雑に抜き払われ、床を血で汚した。
「はぁ、あ、うへい、か……どうして
レイリの傷口はどんなにレイリが力を抑えようとしてもどんどん修復されて行ってしまう。
それをじっと見つめ続けて、シグルド王はチラッと隣にいた執事をみた。
何も言わずに彼が腕を差し出すと、そこに遠慮なく剣を突き立てる。
深々と突き刺さった剣を引き抜けば大量の血がこぼれていく。
……これはお前の血が入った杯だ」
「や、やめて!!」
レイリはそれをとめようとするが、一足先に杯の血が腕にかかる。
するとそこには何事もなかったかのような腕があるだけだった。
レイリは真っ青になった。
がくがくと体が震え、呆然とそれを見ているしかできなかった。
「やはりレイア・クラインの血筋に寄生していたか。
あの時は取り逃してしまったが、子孫にアニマを継承させていたとは」
「おめでとうございます陛下、これで陛下の神性を取り戻すことができます」
「残念だったな、クライン家の末裔。
大人しくしていれば助かったものを、自ら名乗りを上げて陛下の器となってくれること、感謝する」
周囲の声が、何を言ってるのか理解できない。
脳が理解するのを拒否しているみたいに。


「おかえり、シャリテ。手間をかけさせて….
これでようやく研究がすすむよ」


「あ、おおとうさま
口から出たのは、レイリの声ではなかった。
か細く震える少女の声だ。
「連れて行きなさい、絶対に逃がさない様監視しておくんだ。
レイリ・クラインは今日謁見の間には来なかった」
嘲笑うようなシグルド王の言葉を最後に、レイリの意識はぷつりと切れた。


さわごうカーニバル
真っ赤なメリーゴーラウンド。
堕ちてグチャグチャの自分を笑おうよ

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