あの後、黒いモンスターは黒葉の詩によりどこかへと飛び去ったらしい。
らしいというのは、鶴丸と国永は熱を出して三日間寝込んだしまったせいだ。
その間にユクモ村というイザナ村と協力関係にある場所へと、黒葉は嫁入りが決まった。
そうして決まった時には即日送られていて、二人は別れも言えなかったのだ。
黒いモンスターは狂竜ウィルスというモノを含んでいるらしい。
イザナ村の人間はそのウィルスに掛かった事のある者が祖である影響から、等しく狂竜症というモノに掛かっているんだとか。
その影響で、鶴丸と国永はΩやαとして発情してしまい、国永はこの日、愛している弟の鶴丸を抱いた。
鶴丸はまだ13歳の頃だった。
自宅の部屋に放り込まれ、持て余す身体の熱を発散する事が出来なかった。
そうして鶴丸はその熱持った身体を兄の国永に委ねる事を思い付く。
鶴丸は小さい頃から兄である国永の事が好きだった。
母や父や友人も好きだが、それらとは違って国永の事を考えると胸が苦しくなり、熱くなる。
幼いながらも自覚した恋心は、愛しさを積み重ねて愛になろうとしていた。
身体が苦しい状態も、国永になら何をされても良いと純粋に思って助けを求める。
二人の影が重なった部屋で、月明かりを頼りに二人は口付けを交わした。
「ん、ちゅ……はぁ、ん、くにに、もっとぉ……」
「はぁ……つる、煽られると止まらない……君の匂いが、甘くて」
すり、と首筋を撫で上げられる事にぞくぞくとした快感が背中を走る感覚に鶴丸は思わず情けない声を上げる。
その声を聞いてくすり、と口の中で笑うと国永は鼻先を埋めてすんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
吐息の当たる感覚と匂いを確かめられている、という事実に鶴丸は慌てる。
「くにに、だめ。今、汗臭いから」
「どうして? こんなに甘い匂いがするんだ、食べて欲しいって言う証拠だろう?」
「あ、やぁ……もっと、ちゅうしたい……!」
暗闇に光る紅い瞳に、くらくらと脳を揺さぶられながら首を振って逃げようとした。
その首に吸い付かれて痕を残され、舐められる事に震え上がる。
愉しそうな国永の忍び笑いを聞き、口に当たる柔らかい感触に吸い付けばそれは国永の唇で。
お互いに舌を絡め、吸い付き、もっとと強請れば優しく頭を撫でられながらついばむ鳥のようなキスの雨が降ってくる。
それに耐えきれずに鶴丸がいやいやと首を左右に振れば、国永のキスは徐々に下がっていって鎖骨を軽く噛みながら胸へと降りていった。
触られる度に熱くなる身体に見知らぬ快感で震え上がりながら、国永の愛撫を受け入れていく。
愛しい兄が与えてくれる熱に溺れ、涙を浮かべて声を漏らしながら頭を抱き締めた。
「ん、つる、くるし……」
「あ、はん、ごめ、くにに……あ、や、そこ、だめぇ」
「ん、ちゅ……はむ……きもひい? つるの乳首、触ってって腫れてる……」
胸を揉むように愛撫しながら、起ち上がった乳首に吸い付き指で挟んで潰したり掻いたりと様々に刺激を与える。
そのもどかしい刺激に上手く快感を拾えず、涙を流して首を振る鶴丸を見て国永は苦笑をした。
手でヘソの辺りを刺激しながら反応している鶴丸自身を手で包み込み、口に含む。
「ひゃ、あぁん!? くに、らめ、しょれ、れひゃう、れひゃうよぉおおッ!!」
「ぐぷ、ん、ちゅぶ、くちゅ、らひていいよ。ぐじゅ、ちゅぶ、ぢゅうううう」
「ひゃぁぁああああんッ!!!」
ビクビクと身体を跳ねさせ、ぎゅうっと足先を丸めながら国永の頭を抱くように丸くなり、射精した。
勢いよく出たはずのそれを国永は苦しむ様子も無く吸い取り、口に含んだ分を手の平へと出す。
国永の口から出た白濁液に、自分が悪い事をしてしまったような羞恥心に襲われて、鶴丸は涙を浮かべた。
その様子を見た国永は一瞬考えるように動きを止め、
「つる、今からちょっと痛い事をするけど……我慢出来るかい?」
「いたい、こと?」
困ったような顔で微笑む兄に、不思議な事を言っているなと首を傾げる。
普段、国永は鶴丸が嫌がる事、痛い思いをするような事はしない。
他人がそれを強要しようとしても、止めに入るような人だ。
だからこそ、それを国永が鶴丸にしようとする、という事が理解出来なかった。
けれど、国永のする事で鶴丸が嫌な思いをした事が無いのも事実だ。
「……すまない、気にしないでくれ。……まだ苦しいかい?」
「ん、あっつい……くにに、おれ、くににぃがしてくれるなら、平気だよ? くににぃの方が、つらそう……」
「つる……ありがとう、ごめん。俺も、我慢が出来そうに無い。気持ちよくなるようにするから……受け入れて?」
頬を空いている手で撫でられ、苦しそうに顔を歪める国永に鶴丸は微笑んで頷いた。
国永が、愛しい兄がしてくれる事なら怖くない。
普段は甘やかされてばかりの自分が頼られているようで、嬉しかった。
答えは最初から一つしか用意していない。
「うん、うん、おれ、くににぃだったらいいよ。くににぃにぜんぶ、あげる。くににぃが好きだから」
嬉しさが伝わるように精一杯の気持ちを伝え、首に手を掛けて抱き着いた。
気持ちが少しでも伝わるように、ちゃんと国永に分かって貰えるように。
花が綻ぶような笑顔を浮かべる鶴丸に、国永も嬉しくなって微笑み返した。
そうして頬にちゅ、と音を立てて口付けを落とす。
「つる、俺は愛してるよ。ずっとずっと、好きだったんだ、嬉しい。けど、告白は起きてからもう一度、な?」
「うん! いまは、くににぃいっぱいちょうだい?」
国永の告白が嬉しくて胸が温かくなりながら、鶴丸は頷いて国永に強請った。
身体の熱が引かない事が苦しくもあり、国永の言葉に身体の奥の疼きが増したからだ。
早く早く、一杯になるまで満たして欲しい。
国永のモノになるのだと、身体に刻み付けて欲しくて本能的に足を絡めた。
一度精を吐き出して楽になったはずの自身が起ち上がり、とろとろと蜜を垂らし始めている。
国永は一瞬にして顔を赤面させると鶴丸の首元に顔を埋めて隠した。
「その言葉は反則だ……可愛すぎて、加減を忘れそうになる……」
近くなった兄の香りに愛しいと抱き着きながら、足の間を触られる感触に鶴丸は驚く。
けれどここには鶴丸と国永の二人だけで、自分がしていないなら国永だろうと顔を覗き見た。
内腿の間、後孔へと伸びてきたソレに震えながらも大人しくしていれば、くちゅりと粘ついた音が部屋に響く。
その音の出所が兄の指だと理解したと同時に、鶴丸は先ほど自分が出したモノの音だと気付いた。
「あ、や、くににぃ、はずかし……ッ!」
「大丈夫、恥ずかしくないよ。つる、かわいい。いとしい、食べちゃいたい」
言葉と同時に熱い吐息が首に掛かり、後孔を解す指を締め付ける。
それは鶴丸の好い所を掠めたようで、背中を走る快感に仰け反った。
「あッ!? はぁ、くにに、だめ、しょこ、やぁ」
「うん? ここかい?」
「あひぃッ!! あ、あ、あぁんッ! しょれ、らめぇ、びくびく、しゅるぅ」
「つーる、ここはつるの好い所だよ。だめじゃなくて、気持ち良い。言ってごらん?」
片手で兄に頭を撫でられて落ち着くようにされながら、二本に増やされた指が鶴丸の好い所をぐりぐりと挟んだり潰したりと刺激する。
国永に言われた通り、身体を跳ねさせながら気持ち良いと言えば快感が増した気がした。
首筋を舐め上げられ、耳を舌で舐られながら身体を震わせて快感を飲み込む。
国永に触られる場所全てが気持ち良いと思いながら身を任せた。
「くにに、きもひぃ! きもひぃよぉ……」
「ん、嬉しそうで俺も嬉しい……つる、痛いかもしれないけど、俺も良い? も、我慢が限界……」
首元に顔を埋めながらの苦しそうな言葉に、鶴丸は何度も頷いて示す。
国永が与えてくれるのなら、それが痛みだろうと嬉しいと感じて抱き締める手に力を込めた。
「くににぃ、きて……いっぱいにして?」
鶴丸が了承の言葉を呟いて微笑むのと同時、後孔に当てられた硬い何かが貫いてくる。
確かに痛みを感じはしたが、それ以上に充足感で胸が苦しくなった。
お腹を内側から押し潰すそれが国永のモノなのだと、本能的に理解出来たから。
入れた瞬間から苦しそうに歯を噛みしめる国永の様子だけが不安だった。
「くににぃ、くるし? だいじょうぶ?」
「ん……ああ、君の中が気持ちよくて……。つるは、平気かい? いたみは?」
「ちょっと……でも、くににぃと繋がってるのが、うれしい」
ふにゃりと微笑んでみせれば、国永は息を詰めて言葉を失う。
顔を伏せて熱い吐息すら呑み込もうとする様は儚げで、鶴丸は国永の頬に手を当てた。
自分では満足出来ないのかと不安になった所で、国永の首筋を流れる汗に気付く。
呼びかけようとした声は、それより先に向けられた熱の篭もった紅い瞳に遮られた。
まるで野生の獣のように熱を持て余す瞳に釘付けになり、呼吸すら忘れる。
その瞬間に腹の中の熱が大きさを増した事に気付き、次の瞬間には好い所を擦られて突然の快感に鶴丸は跳ねた。
そんな弟の様子を気遣う事もなく、国永は欲のままに腰を突き動かす。
「ひ、あ、あ、ああ、ん、ひぃ、くにに、やぁあ、きもひぃ、きもひぃよぉおおッ!!」
奥を突かれる度、中を擦られる毎に喘ぎ、声を上げる鶴丸。
国永は我を忘れたように手で鶴丸の細い腰を固定し、己の腰を突き動かした。
腰骨が勢いよく尻たぶに当たり、ばちゅんばちゅんと濡れた音が響く。
「あ、はぁ……つる、も、いく、だすッ!!」
「ひゃあ、あん、おれも、いっちゃ、いっちゃうぅうううッ!!!」
二人同時に果てながら鶴丸は腹に、国永は鶴丸の中へと精を出した。
二度目の快感に慣れない疲労を感じながら鶴丸はベッドにくたりと倒れ込み。
しかし我をなくして獣の様にまぐわおうとする国永は鶴丸の身体をひっくり返すと後ろから襲いかかった。
「ひん、あ、あぁん、らめぇ……おりぇ、おかひ、おかひくにゃるぅううッ」
尻だけを突きあげた体勢で国永に押さえ込まれ、慣れない快感に喘ぎながらも身体はもっと欲しいと熱くなる一方で。
うわごとのように鶴丸を呼びながら一方的に動く国永に、それでも喜びの声を上げて受け入れてしまうのだった。
ひくひくと、突かれる度に跳ねる身体を持て余し、ついには鶴丸は意識を飛ばしてしまう。
意識が無くなる寸前に見た国永の漆黒に染まった髪と狂喜に笑う顔を記憶に残して。
「アハハハハハッ!! つる、かわいい、あいしてる、たべたい、おれの……」
いつもの優しい兄が居なくなってしまうという恐怖に目を開ければ、太陽の昇りきった空が窓から見えた。
隣には情事の様子を残さない、桜色に髪の毛を染めた兄が熱にうなされて寝込んでいる。
自分もまた身体に熱が篭もっているらしく気怠さを感じながら、全部夢だったのかと疑って起き上がろうとした。
しかし腰に走った痛みと着衣を付けていない事に気付き、鶴丸は嬉し恥ずかしの思いをするのだった。