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夢種設定 緋翠

緋翠 ヒスイ 真名(水祈 緋翠)
一人称 俺
二人称 お前
年齢 外見23歳(中身は平安から生きている為、不詳)
身長 163cm
容姿 緋色の長髪に翠の目、又は白金髪に橙色の目
職業 審神者、陰陽師
武器 刀、札、式神、祝詞
性格 長く生きてきたからか自分の考えを曲げない事が多い、己の物は何が何でも手放さない、大事なモノも手放さない
自分のモノ、大事なモノへの他人の手入れを酷く嫌い許さない傲慢性、己を顧みない自己犠牲
補足 力の強い野狐と巫女の半妖で霊力を持て余し気味だったのを、安倍晴明に貰われて修行を付けられた
普段は人間の部分を強く残してあやかしの部分を式神に明け渡しているが、物忌みの時は逆転する白面金毛三尾の狐
妖気が大妖怪級なので並みの刀剣は近寄れず、石切丸に加持祈祷、太郎太刀に短剣太刀の守をして貰う
三条で一番神気の高い三日月は普通に近寄る事が出来、狐の眷属性か小狐丸がネコにマタタビ状態になってはびこる


祓言葉や大祓

布留の言 一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部
(ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ)
然るべき十種神宝を用いながら唱えれば死人さえ生き返る、というほどの呪力を発揮
急急如律令 急ぎ律令の如くせよ
茅の輪くぐり 大きな輪をくぐるか身体に茅の輪をくくりつけて穢れを遠ざける法、茅の輪は長く身に持たない方が良い
人形代 人形代に息を吹きかけ、身体の調子の悪い所を撫でて穢れを遷した後に川や海に流す


式神 十二天将 安倍晴明から譲られた

前一 騰蛇 トウダ 周囲に鬼火を浮かばせている羽の生えた蛇、十二天将随一の神通力を秘めた炎の凶将
前二 朱雀 スザク 冠尾の生えた紅い霊鳥、知恵や美しさを象徴し陽気ばかりで陰気が不足する凶将
前三 六合 リクゴウ 調和や信用・交流などを司る、調和に対しての力は十二天将随一、慈雨を招く穏やかな吉将
前四 勾陳 コウチン 金色の蛇の姿、四神の中心を守護する聖獣、雲を呼ぶ闘争心の旺盛な軍神、凶将
前五 青龍 セイリュウ 緑の鱗をした龍、龍族の中で唯一人間が龍神化した種、天帝を補佐する清廉潔白な吉将
天一 貴人 キジン
十二天将の主神、吉将
並の妖魔なら近づくだけで燃え散ってしまう程の力があるが、攻撃力というものを持たず癒やしの力に秀でている
貴人は相手の怪我、病気、痛みを自分に移し身代わりをする術をもち、自らの体内で癒やして消し去る事が出来る
後一 天后 テンコウ 天帝の后であると同時に群臣の慈母、多くの娘を引き連れ楽しみごとに縁のある吉将
後二 大陰 タイオン 少女、物質よりも精神を重視し善に対しては吉意を与え、邪心には霜雪を司り粛正を与える吉将
後三 玄武 ゲンブ 亀に蛇が巻き付いた姿、知恵・知識・技工を示すが水の陰の極まるところ、万物の終焉を司る凶将
後四 大裳 タイモウ 天帝に使える文官、四時の善神とも呼ばれ、福楽や衣食に関する事を象徴する吉将
後五 白虎 ビャッコ 白い猛獣の姿、虎ではなく500年の時を経ている百獣であり移動や変化や刃物に関する凶将
後六 天空 テンクウ 十二天将中最も卑雑な性質を持つ、常に虚無感を漂わせており霧や黄砂を呼ぶとされる凶将

騰蛇 → 名前、たまに主 男 倶利伽羅に似てなれ合う事を良しとしない
朱雀 → 主 男 次郎太刀に似て陽気な所が有り加州のように己を着飾る、女言葉
六合 → 主人 女 江雪に似た長髪パッツン美人で物静かな敬語口調、額に第三の目がある
勾陳 → 御前 女 乱藤四郎や鶴丸国永のように元気で悪戯好き、戦好き、自分のパワフルを抑えきれない
青龍 → 御前、又は主人 男 過ちがあるなら主ですら切る不動の性格、ちょっと細かい小姑
貴人 → 主殿 男 一期一振りのように落ち着いて、三日月のように泰然としている、ただ六合より華奢な身体
天后 → 主上 女 主至上の考えで常に付き添いたい長谷部的、ただ褒められても浮ついたりはしない生真面目
大陰 → 主様 女 丸っきり少女で五虎退のように気の弱い子、物陰や人に隠れがちで大人が苦手
玄武 → 主 男 鶯丸のようにつかみ所が無い、基本無口
大裳 → 主様 女 元気な女性っ気の強い光忠的な性格
白虎 → 主、又は名前 男 薬研のような兄貴的な性格、面倒見が良い
天空 → 主殿 性別不詳 主の写し、そっくりだが色が違う 天空は空を績める者、主人の半身

夢種設定 夜&涼

夜季 ヨキ 真名(緋勇 夜季)
一人称 夜季
二人称 君
年齢 16歳
身長 148cm
容姿 骨喰藤四郎のようなショートボブに黒髪、金混じりの碧目、睫毛の長い大きな眼に小柄な身体
職業 手入れ師
武器 籠手
性格 情に厚く素直、動物好き、武器も好き、刀が特に好き、綺麗なものが好き
補足 記憶喪失、心臓の真上に金色の龍の刺青、刀を武器として使おうとすると鬼憑きのため厳禁


涼蘭 リョウラン 真名(無し)
一人称 私
二人称 名前
年齢 18歳
身長 156cm
容姿 左右に飛び跳ねたロングの赤髪、紫目、
職業 クラフター、鍛刀師
武器 刀、刃物全般
性格 好奇心旺盛、見た事がない物は口に入れてみる、戦闘大好き、脳筋
補足 クラフターの性能からマイクラ系の精錬方法から資源を手に入れられる

満ちる月夜の神隠し



神隠し


妖や得体の知れない何かが人間を攫ってしまう事。
神隠しされた人間は二度と見つからないという。


ただし、神様に呼ばれた場合


その者は…


存在自体が無かったことになるらしい。





「はぁ…寒いなぁ…」
夜着に鮮やかな羽織を着た金髪の青年が暖かなハニーミルクの入ったカップを手に持ち、自室に戻る廊下を歩いていた。
すると角から誰かが出てくるのが見えた。
「三日月?」
「おぉ、主も月見か?」
三日月はにっこり笑って月を見上げた。
そして薄く笑ってこちらを振り向く。
その様子が余りにも美しくて、目を奪われる。
「主、今宵は部屋から出ない方が良かろう」
「どうして?」
瞳に三日月を浮かべたその人は主である青年を部屋に押し込めて笑った。
「今宵はなぁ、月が良く見えるだろう?」
そう言って三日月は襖を閉めてしまった。
この本丸の審神者であるレイリはぼんやりと格子窓から見える空を眺めていた。
今日は見事な満月だった。
「そっか、今日は誰も居ないんだっけ」
涼蘭は薬研率いる第2部隊と一緒に池田屋に出陣している。
夜季は資材集めのために黒月と第3部隊を引き連れ遠征に。
長谷部率いる第四部隊も遠征で出払っていた。
シュノは定期報告の為に3日程政府に赴いていて暫くは戻らない。
「三日月もああ言ってたし、今日は早く寝よう」
レイリは行灯の火を消して布団に潜り込んだ。
いつもはシュノが抱き締めてくれるのに、隣にシュノが居ないだけで妙に寂しくなる。
それに先程から妙な違和感 を感じる。
誰かに見られてるような、そんな感じ。
だけど、その正体が判らない。
おそらく三日月が先程言っていた事なのだろうと理解した。
こんな時にレイリは必ずある人物の元を訪れた。
「少しくらい、平気だよね…」
レイリがこの本丸で一番信頼している初期刀の元に。


「切国…まだ、起きてる?」
そっと光の漏れる襖に声を掛けると、すっと襖が空いた。
「アンタはいつになったら独り寝が出来るようになるんだ?」
「違うよ、今日は違うの。
何だかモヤモヤするって言うか、何かに見られてる気配を感じるんだ
僕怖くて…三日月も今日は部屋から出るなって…」
「三日月…?
三日月は長谷部とと遠征に行ってるだろ」
そう言われて初めてレイリは三日月が今朝方遠征に出掛けたのを思い出した。
第四部隊の見送りをして、三日月が遠征に向かうのをしっかり確認したはずだ。
何故、今まで気が付かなかったのか。
部隊編成はすべて自分がやっていたと言うのに。
急に恐ろしくなったレイリは山姥切の夜着をつかんだ。
「どうしよう…僕…話しちゃった」
震えながらレイリは泣きそうな声で山姥切にしがみつく。
妖の類は会話をすることで相手に自分の存在を植え付けて認識させる。
そして真名を奪う。
「真名は?」
「大丈夫、思い出して無い」
レイリは特殊な能力と莫大な霊力を持った極めて異質の審神者で、本来刀剣男士以外戦場には赴けない筈なのにレイリの加護を受けた者なら刀剣男士同様戦場に赴き、必要なら戦うことも可能だ。
そんな特別な審神者は歴史修正主義者は勿論、妖の類からも狙われていた。
だから"隠す"必要があった。
敵の手に落ちない様に、レイリの真名は特殊な方法で封じられていて思い出すことが出来ず、真名を知るのはレイリの監視者であるシュノと、レイリに封印を施した陰陽師の末裔であり、レイリの数少ない友人のヒスイだけだ。
その事は本丸の誰もが知ってる。
「石切丸も太郎太刀も遠征に行ってる
青江の所に行って対策を練ろう」
「うん、切国…僕…」
不安そうに見上げて来るレイリは雨に打たれた子犬のような眼差しで山姥切を見ていた。
頭の緩い主の初期刀であり、この本丸の総隊長を務める山姥切国広は何かを察して自室の外を伺うと、レイリの手を掴んだ。
「切国!?」
「妖は三日月に化けて部屋から出るなと言った
奴らは既に身辺調査を済ませている、あんたが誰の言葉なら疑いもしないのか」
ようやく事態を把握したのかレイリは山姥切の布を掴んだ。
山姥切は薄く灯のつく部屋の前に立つと声を潜めた。
「青江、居るか?」
「やあ、総隊長。どうしたんだい神妙な顔して」
山姥切はレイリを青江の部屋に押し込んだ。
「"侵入者"だ。奴は姿を変えて主に接触してきたらしい
俺は近侍の髭切に報告して遠征に行った石切丸達を呼び戻す」
「ふーん、君は僕を疑ったりしないのかい?」
青江がにんまりと笑うと山姥切は布の間からしっかり青江を見てから言った。
「俺は仲間を見間違ったりしない
写だからと侮るな、主を頼む」
青江はレイリを自分の後ろに隠すように立ちはだかると山姥切の後ろを目を細めて笑いながら頷いた。
「主のことは任せてよ。
君もくれぐれも気をつけてね?」
「切国、あの…」
「あんたは青江の言う事だけ聞け、余計なことはするな」
そう言うと山姥切は部屋の襖を閉めてどこかに行ってしまった。
恐らく遠征部隊を呼び戻すための鳩を使う為に近侍の髭切の所に行ったのだろう。
備品使用の際は近侍の許可が必要になるからだ。
「さて、君は今どんな状況なのかな?」
「さっき三日月に、今日は部屋から出るなって言われた。
だけど、三日月は今朝遠征に行って…」
「うんうん、それで?」
「部屋に居たら妙な視線を感じて、怖くて切国の所に…行って…それから…」
今にも泣きだしそうなレイリを抱きしめて背中を撫でると、青江は本体を握りしめた。
「大丈夫、切国くんの判断は正しい。
石切丸と太郎くんが戻るまでは僕が君を守るからね」
レイリは青江にギュッと抱きついた。
しかしながら青江は自分の部屋の周りに漂う嫌な気配に神経を尖らせた。
先程、青江は切国の背後…中庭の辺りに人影を見た。
それはゆらゆらゆらゆら、ただそこにあるだけだった。
本丸は本来審神者の霊力で結界が張られた異空間。
妖の類が容易に侵入できるものではない。
「全く君は本当にモテるんだねぇ」
「あっ…妖にモテても、嬉しくないよぉ…」
最早半泣き状態で青江にしがみつくレイリをとりあえず布団に横にならせる。
「君は少し休みなよ、僕を信じて」
「青江の事は信じてるよ、でもやっぱり怖い…シュノも居ないし…」
こんな不安定な状態のレイリはやっかいで、ちょっとした事ですぐに取り乱してパニックになってしまう。
「こんな事で泣いてたらまたシュノさんに呆れられちゃうよ?」
「……うん、青江…ここに居る?
どこかいかない?」
幼い子供みたいなレイリににこりと笑いかける。
「うん、行かないよ。
だから君はもう眠るんだ。
そして、もし目が覚めても声を出してはいけないよ。」
レイリは声を出さずに頷くと、布団に潜って目を閉じた。
青江は刀をきつく握り、背後でカリカリと襖を引っ掻く存在に神経を尖らせる。
「残念だけど主は渡さないよ」
「レイリ、開けてくれて、レイリ、レイリ…」
小さな声で、襖の向こうの何者かがレイリを呼ぶ。
レイリは布団の中で怯えていたが、その声に反応して飛び起きた。
「主、だめだ!」
「シュノ…なの?」
最愛の恋人の声にレイリは青江の制止も聞かず襖の向こうに声をかけた。
「ああ、ただいま。
お前が心配で帰ってきたんだ、ここを開けておくれ。
青江が俺を疑って開けてくれないんだ」
シュノの声に安心したのか、レイリは襖に近づくと、それを少し開けた。
「……ひっ!?」
その隙間からは瞳を赤くさせ、耳元まで避けた口元は三日月のように歪んでいる三日月が隙間から爪の伸びた手を差し込んできた。
「主、伏せて!」
青江が襖ごと三日月に切り掛る。
「レイリ、レイリ、こっちにおいで」
三日月はシュノの声で尚もレイリを呼ぶ。
レイリは畳に伏したまま虚ろに二人を見上げている。
「主、しっかりなよ!」
「何の騒ぎだ?」
青江の掛け声に隣の部屋の歌仙が部屋から出てきて、異様な三日月の姿に驚き、刀を抜いた。
「歌仙くん、手伝って!
主が魅入られてるんだ」
「何だって!?」
歌仙は迷わず三日月に切り掛るが禍々しい波動を纏っていて押し返される。
「いけない悪い子は、斬っちゃうよ?」
どこからとも無く声がして、三日月の片腕が飛んだ。
「髭切!助かった」
「妖相手は我ら兄弟が引き受ける。
2人は主を祈祷部屋に運んでくれ」
髭切の背を庇うように膝丸が顔を出し、歌仙と青江はグッタリしたレイリを背負って離れにある祈祷部屋に向かった。
『ニガサナイ、レイリ』
「君の相手は僕等だよ、余所見する暇なんか与えてあげない」
髭切の一撃が三日月の身体を掠めていく。
寸前で避けるが、ソレは確実に三日月のようにダメージを蓄積させている。
月夜に輝く二身一具の宝刀は剣舞でもしている様に確実に追い詰めていく。
『ウゥ…… レイリ…ホシイ……
オレノ、モノダ……』
妖はそう言って姿を消した。
「兄者、辺りに気配はない。
主が心配だ、合流しよう」
「……うん、そうだね」
髭切は妖が消えたあたりをじっと見ていた。
確に強い怨念を持った妖の様だが、果たしてあの妖1人にこの強固な結界が破れただろうかと考えた。
「兄者?どうかされたか?」
「いや、考え過ぎだろう。
行こうか、弟丸」
「俺の名前は膝丸だ」
2人はその場をあとにして祈祷部屋に向かった。



祈祷部屋では石切丸と太郎太刀が祈祷の準備をしていた。
そして後ろには山姥切と今剣と長谷部。
入口には青江と歌仙が立っていた。
「どうだ、石切丸」
「……封印の一部が突破されてる
奴らは主の内側に入り込んで封印をこじ開けようとしている
主の真名に辿り着くのは時間の問題だろう」
祭壇に寝かせられたレイリは虚ろな目をしたままピクリとも動かない。
「あるじさま…」
今剣が心配そうに自分の本体をレイリにきつく握らせた。
「あるじさま…ぼくはあるじさまだけのまもりがたな。
ぼくがあるじさまをかならずおまもりします」
今剣が寄り添うようにレイリの手を握る。
「シュノ様は明日戻られる。
それまで持ち堪えられるか?」
長谷部はまだ明けそうにない夜空を見上げた。
「根本を斬ればいいだろう。
その方が話が早い」
山姥切が壁に持たれながらつぶやいた。
「それはそうですが、それは同時に主を危険に晒すことにもなります。
今の不安定な状態の主を敵の前に晒すのは如何なものかと」
太郎太刀がレイリを見下ろしながら口を開いた。
「だが、そうこうしてるうちにも…」

『レイリ……』

微かな鈴の音と共に消えそうな声が響き、全員が刀に手をかけ、今剣がぎゅっとレイリに抱きつく。
『レイリ、どこだ……レイリ…』
その声に呼応するかのように、レイリがピクリと反応する。
「あ、あるじさま!」
「……はい、ここです」
レイリが一言応えると、急にものすごい衝撃を受けて全員がその場に蹲る。
身体の小さな今剣は必死にしがみついていたが、余りの衝撃に弾かれて石切丸にぶつかった。
片腕を失った三日月が禍々しいオーラを纏いながらふわりとレイリのそばに現れた。
『可哀相に、かようなところに閉じ込められては本来の力も発揮できまい。
これではまるで人柱…
かわいそうに、かわいそうに…』
ふわふわと漂いながら三日月はレイリを腕の中に閉じ込めた。
『俺が連れて行ってやろう
あの方もさぞや喜ぶ事だろう』
「うちの主をどこに連れていくつもりだ」
山姥切が三日月に切り掛る。
三日月は片方しかない手でそれを弾く。
『ジャマヲスルナ…』
三日月の体がぐにゃりと歪んで辺りが瘴気に包まれる。
「払い給え清め給え…」
石切丸がすらりと刀身を一振りすると辺りの瘴気が一瞬で吹き飛ぶ。
「我が一撃は暴風が如し
交わせるものなら交わして見せなさい」
太郎太刀の重撃がもう片方の腕を弾いた。
『グゥ…』
もはや形を無くした黒い靄に姿を変えたそれはレイリの体に尚も纏わり付く。
『タベタイ、タベタイ、オレノ…』
「それはいかんなぁ…」
唐突に白刃が靄を裂いた。
靄は悲鳴をあげて消えていった。
「黒月か、いい所に来た。助かった」
「禍々しい気配を感じて来てみれば。
我らの審神者は禍事に好かれるなぁ…」
刀を鞘に収め、駆け寄った太郎太刀がレイリの体を祭壇に載せて残った禍を払い清める。
レイリは眠っているのか目を覚まさない。
「とりあえず主を休ませよう」
レイリを部屋に運ばせて布団に入る頃にはすっかり夜が明けていた。
石切丸と今剣が付きっきりでレイリのそばについて、髭切と青江が交代で部屋の見張りをする事になった。
「親方様、どうかした?」
夜季が遠征の報告に来た所を青江に問いただした。
「帰ってきたら黒月がどこか行った、
何があった?」
「まぁ、シュノさんが戻るまでは待ってよ」
「兄様?今は総隊長といる」
夜季が首を傾げると丁度山姥切と長谷部がシュノを連れてきた。
「石切丸、レイリの様子は?」
「ああ、もう心配ない。今は眠っているだけだ。
だが封印が一つ破られてしまった、外側だね。」
そうするとシュノは少し考え込んだ。
「ヒスイに何かあったか…
こんのすけ!」
シュノはこんのすけを呼び出し、事情を説明すると政府発行の通行手形でヒスイの本丸を訪れた。
事情を話すとヒスイはこの日物忌で自室に籠っていたらしい。
結界が弱まったのも、封印が剥がされたのもその影響かもしれないと、後日物忌が明けたら治しに行くからそれまでレイリから離れるなと言われて、仕方なく本丸に戻った。
その日から数日、レイリは昏睡したままで、今剣がレイリに付きっきりで離れようとしないため、入口の見張りを本丸にいる全員で交代制で行い、その間の出陣、遠征は一切中止になった。
「悪かったな、まさかコッチの物忌まで調べているとは…」
「敵は事前に下調べを完璧にしていたらしい」
ヒスイは本丸を訪れるなり結界と封印を厳重に修繕していった。
「これで大丈夫、早くレイリを起こしてやれ。
あと、まぁ気休めにしかならんと思うが無いよりマシだろ」
そう言ってお札を何枚かシュノに手渡して帰っていった。
「レイリ、起きろ」
眠ったままのレイリに声をかければ、レイリは暫くして目を開けた。
「……シュノ…と、今剣?」
「あるじさま!よかった、めをさましたんですね!」
今剣がレイリにぎゅっと抱きついた。
「ありがとう、ずっと守ってくれたんだね」
レイリは身体を起こして今剣の頭を撫でた。
「とうぜんです。ぼくは審神者レイリのまもりがたなですから!」
誇らしげに胸を張り、今剣はみんなに知らせてきますと言って部屋を飛び出した。
「修行に出てから変わったね、今剣。」
「そうだな、強くなった。
それに比べてお前は…」
シュノはレイリの肩に半纏をかけて、体を冷やさないように気を遣いながら抱きしめた。
「俺の声、聞き間違うなんてな。
これから二度と間違わない様にお前の耳に焼き付かせてやる」
レイリの体を布団に押し倒して、体の芯まで貫く声をレイリの体に刻みつけた。




「結局失敗したの?」
黒い着物を纏い、鮮やかな赤い打ち掛けを羽織る青年は別段悔しがるわけでもなく上座に座って煙管をふかした。
「そうみたいね」
「ふーん。まぁ無くても困らないけどあっても困るわけじゃない。
タンクは多いに越したことはないからね。あの子に伝えておいて、次は必ず粉々に壊して連れて来いって」
青年は巫女服を着た鋼色の髪の女性にふわりと黒い折鶴を飛ばした。
女性はそれを受け取ると部屋から出て行った
「さぁ、始めようよ
どちらが正しいか、賽は投げられた」
楽しそうに笑いながら青年は1人、人知れず一筋涙を零した。


共に歩む道






何やらカチャカチャと食器を用意する音がして、まだ眠い目を開ける。
作業場のベットに横になっていた事に気が付き、おかしいなと首を傾げる。
昨夜は確かいい宝石が手に入ったから加工に夢中になっていてその後の記憶が無い。
作業机には完成した装飾が施されていたので、その後寝落ちしたのだろうと思い当たりベットから起き上がる。



キッチンから気配と朝食のいい匂いがして来たので向かってみるとサイフォンで珈琲を入れているエルスがこちらに気付いてにこりと笑った。
「おはようございます、ヒスイさん」
「ああ、おはよ。」
エルは白い手袋をしたまま、ワンプレートに纏められた朝食を席に置いた。
「丁度呼びに行こうと思ってたんです。
今朝は新鮮な卵を貰ったのでキッシュにしてみました」
キッチンのカウンターには卵が入ったバスケットが置いてあった。
「へぇ、美味そうだな」
「ヒスイさん程じゃないですけど、今朝はうまく焼けたと思います」
騎兵隊からエルスを預かってからだいぶ経つが、こうしてエルが料理をするようになったのはごく最近だ。
その身に受けた呪いでエルは触れるものを腐らせてしまう。
食材など触らせることも出来なかったエルに特別に誂えた手袋を付けさせた所、漸く人並みの生活をおくれるまでになった。
「そう言えば隊長からお手紙が来てました」
「レイリから?
また面倒事じゃないだろうな」
エルが差し出した白い封筒。
裏にはちゃんとクライン家の家紋の蝋封がしてあり、騎兵隊隊長からの直々の手紙だというのがひと目でわかる。
内容はエルのその後の様子はどうかと、魔術関連の品を保管することになったのだが古いもので扱いが分からないので見てほしいとのことだった。
ついでにエルの検査もしたいから2人で来いと明記してある。
「仕方ないなぁ」
古くからの友人の頼みを無下にもできず、エルに関する発展があるかもしれないと思いコーヒーを飲みながら手紙をポケットにしまった。
「エル、今日は午後から王都にいく」
「え?はい…
隊長から呼び出しですか?」
「まぁな。ちょっと厄介そうな案件だから行ってやるよ。
お前も顔見せろって。」
「俺もですか…?」
きょとんとして首を傾げるところは年相応だなぁって思う。
あと、騎兵隊に居た頃より感情豊かになった気がする。
「ティアが新しい抗体をつくったから試したいとか。」
「そうですか、じゃあお供させてもらいます」
プレートに盛られた朝食を食べ終わると、エルが食器を洗い始め、終わったら洗濯を始める。
決まった1日の流れを繰り返すのも最近は悪くないと思ってる。
けれどやはり人生は楽しまなきゃ損だと思うので落ち着いた生活は俺には向いてない。

昼過ぎ、王都に向かう頃にエルがこちらに走ってきた。
「ヒスイさん、もう出ますか?」
「そうだな、そろそろ出るか
忘れ物は無いな」
そう言うとエルは頷いて、そして恥ずかしそうに手を握った。
別に二人分飛ばす事くらい造作もなかったが、エルの接触恐怖症克服のために始めたらだんだん嬉しそうな顔をするようになったエルが可愛くて仕方なくなった。
俺達の関係は曖昧だ。
お互い好意を持ってるものの今一歩踏み出せずにいる。
この関係を崩したくない様な、一歩踏み出したい様な。
「ヒスイさん?」
なかなか出発しない事に不審に思ったのか、首を傾げるエルに胸を高鳴らせながら俺は王都に向かった。


王都の中央広場に転移すると、騎兵隊の隊舎に向かう。
広場から繋がる大通りを王宮の方に向かって行くと隊舎がすぐに見えてきた。
「ヒスイさん!」
見なれた顔がこちらを見つけるなり手を振って駆け寄ってくる。
「お待ちしてました、エルスもお久し振りです
元気にしてました?」
「はい、お陰様で」
エルはまだどこか距離を取りながら、レシュオムに笑いかけた。
「レイリから、何かヤバそうな魔術品があるって聞いたけど…」
「はい、ご案内しますね」
エルは入口付近でティアのところに行ってくると言い、繋いでいた手を離した。
「隊長、ヒスイさんがいらっしゃいましたよ」
「えっ、ちょ…ま、うわぁぁぁぁ!!」
中から物凄い音と友人の悲鳴が聞こえ、恐る恐る扉を開いた。レシュオムが。
「た、隊長?大丈夫ですか?」
中に入ると、床には沢山の書類が霧散しており、中央のテーブルの横にレイリが蹲っていた。
「い、いたい…おでこぶつけた…」
涙目で立ち上がったレイリはこちらを見るなり小さな木箱を渡してきた。
厳重に封がされてあるが、箱越しにも禍々しい気配が伝わってくる。
「これは…」
「ちょっと訳アリの場所に保管されてたんだよね。
現地には今シュノとゼクスを派遣して調査をしてる。」
レイリは応接用のソファーに腰を落とし、俺にも座るように促す。
席に付くとレシュオムが部屋を出ていく。
「今、シュノ居ないのか?」
「うん。居ないよ。どうして?」
きょとんと首を傾げるレイリに、お前の歳でそんな事しても可愛くないと素直に告げながら箱を開封する。
「いや、お前等っていつも一緒のイメージだから」
「否定はしないけど、あの一件以来騎兵隊の見方が変わってね。
シュノも過保護になってきて僕は滅多なことが無い限り王都から一歩も出られなくなったんだよ」
ついこの前まで泣き喚きながらシュノと喧嘩していたレイリは、大分隊長らしい顔付きをするようになった。
「ヒスイはどう?
エルは良くしてくれてるって手紙に書いてあったけど、進展はあった?」
「日常生活位は出来る様に抑えてはいるが、どうだろうな。
結局の所あいつ次第なんだよな」
「違うよ、そっちじゃなくて。
好きなんでしょ、エルの事」
「はぁっ!?」
レイリは楽しそうに笑ってこちらを見ている。
「素直になればいいのに。
エルはいい子だし、年下だけどしっかりしてるからいい旦那さんになると思うよ」
「な、何言ってんだよ!
お前らこそ早く結婚しろ!」
するとレイリは少しションボリした。
「結婚できるならもうしてるよ。
それよりも、これお願いね」
箱の中身は縁に細かな装飾が施された鏡『魔境』だった。
「……おい、こんな見掛け倒しは初めてだ。
これならお前が『触れる』事で浄化出来ただろ」
箱から感じた禍々しさは、封を開けることによって薄れてしまった。
文字通り霧散したようだ。
長い月日をかけ、弱まった呪いの類が散り散りになったのだろう。
「俺を呼ぶほどの事じゃないのにわざわざ俺を呼んだのはなぜだ?」
「君は僕をかぶりすぎ。
僕は、僕自身に被害が及ばないと効力を発揮できないからね。
危ない箱は君が開けてくれて、何かあってもすぐに対処できるだろ?
シュノは物理には強いけど、解呪は得意じゃないんだって。
はいこれはお礼。エルと二人で行ってきなよ」
レイリは魔境と何かを押し付けてきた。
「ありがとうヒスイ」
笑って見せたものの、レイリはどこか寂し気だった。


レイリにすっかりいい様にされ、腹立たしい気持ちで受け取った封筒をあける。
中身は海上レストランのチケットと、ドレスコードのレンタル券だった
洒落た店での食事なんてと思ったが、どうやら立食パーティで庶民向けのかなり気軽なものらしい。
ティアから開放されたエルに話した所、興味ありげに目を輝かせてこちらを見た。
エルは、手袋をする事で物に触れていいと知ってからだいぶ前向きになった。
しかも皆仮装をしていて誰が誰か判らない。
エルの事を悪く言う奴も居ない。
俺はエルの好奇心に負けて会場に行く事にした。
入口で着替えの為にエル別れ、着替えが終わったら迎えに来るから出口で落ち合う約束をしてドレスを選ぶ事にした。
普段動きやすさを重視しているせいか、久しぶりに着るドレスは窮屈で仕方なかった。
真紅のドレスに黒い蝶の仮面で顔を隠し、髪にリボンと花のコサージュを添えれば、まぁそれなりにはなった気がする。
はやくエルに合流したくて出口に向かうと、出口で燕尾服に顔を半分隠す仮面をつけたエルがコチラに気づいてニコリと笑った。
「ヒスイさん!」
駆け寄るエルは突然ぎゅっと抱き締めてきて、暫くそのままだった。
「エル?」
「あっ、ごめんなさい
ヒスイさんがすごく綺麗で、あの…」
エルは唐突に口篭る。
疚しいことがあるのではなくて、単純に褒め方を知らなくてやきもきしてる様だった。
「ごめんなさい、なんて言ったらいいか…
でも、綺麗です。」
「あ、りがと…」
なんだか面と向かって言われるとこちらまで照れる。
こんな時どうしたらいいのか思考を巡らせ、辿りついたのは先ほどの友人達の姿。
レイリはいつもシュノの腕に自分の腕を絡めて、頭をシュノの方に寄せている。
エルも喜ぶだろうかと思ってそっと腕を絡めて体を密着させる。
「ひ、ヒスイさん?」
戸惑った様子のエルがおかしくて、クスクスとわらいながらパーティの中央のダンスフロアに誘う。
「ヒスイさん、俺ダンスなんてしたことな…」
「うるさい、いいからやる!」
そう言って腰に手を回させ、右手を繋ぐと左手をエルの肩にそっと添える。
「あとは適当に回ってりゃいいだろ」
エルは戸惑った様子でぎこちなくくるくる周り出してそれが愉快でたまらない。
「お前、ほんっと不器用だな」
「これはヒスイさんが悪いです。
俺ダンス初めてだって言うに」
少しむくれたエルといっしょにテラスに移動する。
海風が頬を撫でていき、潮騒が華やかな世界から現実に引き戻す。
水面には三日月が反射して水鏡になっていた。
「楽しかったか?」
「はい、珍しいものばかりで楽しいです」
子供のようにエルは目を輝かせる。
こんなに喜ぶなら窮屈なのを我慢して連れてきた甲斐があった。
今度レイリにクッキーでも焼いてやろうと思った時に、不意にエルがぎゅっと手を握ってきた。
「あの…これからも、一緒にいてくれますか…
俺、まだ頼りないけど、いつかヒスイさんに認めてもらえるように頑張りますから」
「なんだよ突然、プロポーズのつもりか?」
唐突にそんなことを言われて焦ってしまったのか、エルは言葉の意味がわからなくてキョトンとしていた。
「ぷろ…ぽーず?」
「あ、いや何でもない。忘れろ」
「忘れません、ヒスイさんの言葉は全部俺の宝物ですから」
そう言ってエルはにこりと笑うと、頬に触れるだけのキスをした。
「……え?」
「こうすると、ずっと一緒にいられるんですよね
前に隊長が言ってました」
突然のことに頭が回らなく、顔から火が出るように熱い。
「ヒスイさん?顔が赤いですけど…大丈夫ですか?」
「…ああ、すこし、あついかも…」
「何か飲み物持ってきますね」
エルは近くの椅子をそっと差し出して会場の中に戻って行った。
「くそ…余計な事教えやがって。
反則だろ、あんなの…」
心の中でクッキーはなしだと決めて海風で火照った体を鎮めるのだった。



鏡花水月8






シュノは仕事を終えて客を大門まで見送り、店に戻ると不機嫌の絶頂だった。
「シュノ、店先でそんな顔するなよ。
客が逃げるだろ」
どこかの帰りなのか、煌びやかな着物を着たレイアがニヤニヤと笑いながら煙管をふかしていた。
「あの色ボケジジイの相手で疲れてるんだよ、放っとけ」
「暫く休みにしてやるからそう怒るなよ」
レイアはそれだけ言うと大きな紙袋を抱えてどこかに行ってしまった。
中身は恐らくシュリへの土産だろう。
「……レイリ」
甘味屋で会った時は何て事をしてくれたんだと恨み言を言いたくて仕方なかった。
あれからロウゲツは事ある事にレイリの話題を口にした。
完全に目をつけられてしまった。
お陰で気を逸らすために普段より濃密に抱き合ったせいか身体中の倦怠感が酷い。
それ以上にレイリに早く会いたかった。
会って、抱き締めて、癒されたい。
「レイリ」
部屋までの距離がけだるい身体には遠く感じる。
「レイリ」
部屋の襖をすっと開くと、綺麗に着飾ったレイリがちょこんと正座していた。
そしてレイリの横には茶器が置かれ、目の前には座布団が一枚敷いてある。
レイリはじっとシュノを見つめていた。
座れと言われているのかと思い座布団に座るとたどたどしい手付きで茶を入れてシュノに差し出す。
シュノはそれを受け取り、作法通りに茶を口に含む。
抹茶の程よい苦味が疲れた体に染み渡る。
器にわけられた茶を飲むと、すっと茶器を差し出した。
「結構なお手前で」
そう言ってレイリをぎゅっと抱き寄せた。
「ローゼスに習ったのか?」
「うん、他にも習ったの。
シュノに見て欲しい。」
レイリが上目遣いでシュノを見上げる。
「ああ、見せてくれ」
するとレイリは懐に入れていた扇子を取り出した。
「舞を習ったのか?」
「…うん、まだうまくできないけど」
そう言ってレイリは習った通りに舞を披露した。
客前に出す物なら全くダメだが、これはシュノだけの為の舞であり、一朝一夕にしてはよく出来ていると思う。
遊女の息子なだけあって、郭事には才能があるようだった。
「どうだった?」
シュノの為に可愛らしく着飾り、茶や舞を披露するレイリが愛しくて、疲れも忘れてレイリを抱き締めて夢中で口付けた。
「んむ、ふ…ふぁ…」
レイリの手がシュノの着物を掴んで、縋るように身体を寄せる。
「んっ、は…しゅの、しゅの…」
おずおずと舌を絡めるレイリを畳に押し倒し、貪るように口付けた。
「くそ、我慢出来ない」
着飾った着物を乱雑に脱がして行く。
「シュノ、待って!
あの…まだシュノにしたい事があるの」
珍しく抵抗するようにシュノを押しのける。
今すぐにでもレイリを抱きたい気持ちを押さえつけて、レイリから離れると、レイリは布団を敷き始めた。
敷布団を敷くと、寝ろと言わんばかりにシュノを見る。
レイリは袖を紐で縛り、何かをする気だ。
「うつ伏せになって」
言われるがままうつ伏せになると、小さな手が強ばった身体を優しく揉みほぐしていく。
それは自分の欲を満たすためにシュノに触れる男達の手とは違い、シュノの身体を丁寧に隅々まで癒す様に優しく触れる。
「上手いじゃないか、もっと上の背中のあたりたのむ」
「ん、わかった」
レイリが懸命にマッサージしてくれるのが疲れた心も体も癒してくれる。
「ん、あ…そこ、気持ちいい」
「ここ?」
「違う、もう少し左…んっ、は…あ、そこっ」
「こう?」
「そうそう、もっと体重かけろ。
あー、気持ちいい」
すっかりリラックスしたシュノにレイリの笑みがこぼれた。
「お前才能あるな
今度から客と寝た後はお前にマッサージしてもらおう」
「うん」
レイリが嬉しそうに笑ってシュノの腰に手を回した。
シュノに跨るように腰を落とすと、しゅるりと帯を解いた。
向きを変えてレイリに跨られたシュノは楽しげに口元を細めた。
「一人前に俺を誘惑する気か?」
レイリはどこか蕩けた様な顔で着物を脱いでいく。
襦袢一枚になったところでシュノの着物をはだけさせる。
程よく筋肉のついた身体にぺたぺたとレイリの手が触れるのがくすぐったい。
「お前に初めて抱かれた時みたいだな」
「シュノ…僕で気持ちよくなって…」
レイリが途端に泣きそうな顔で下を向いた。
シュノの身体には客に付けられた赤い花が無数に散りばめられていて、色白なシュノの肌に良く映えた。
客と触れ合った所をレイリがちゅっと口付けて上書きする。
見える部分は全て上書きした所で下肢に手を伸ばす。
下着を脱がせてそっとシュノの性器に触れるとおずおずと小さな口に含んで奉仕する。
「んっ、そんなのまで、教わったのか?」
ぴちゃぴちゃと音をたてながら這う様に舐めたり、口に含んで先端を吸い上げるレイリの拙い奉仕は高ぶったシュノを高みに追いやるには十分だった。
「もう、いいからっ…」
「ん、ふ…出して…」
レイリが髪を耳に掛けながら上目使いでシュノを見上げた。
お世辞にも上手いと言えない口淫もレイリがシュノの為に懸命になっていると思うとそれだけでイきそうだった。
「っ、レイリ…もう…はなせっ」
レイリは首を振ってシュノをそっと手で扱きながら口淫を続けて、堪えきれなくなったシュノが背を反らせながら口元に手を当てて声を出さない様にしながらレイリの口内に果てた。
「んんっ、ふ…」
突然口内に出されたものに驚いたレイリはそのまま口を離してしまい、白濁した液が少し幼い顔を残した。
「は、ふ……んっ」
口内に残されたものをシュノが吐き出させようとする前にレイリは喉を鳴らして飲み込んでしまった。
「ばか、飲むな」
「……気持ちよかった?」
硬い表情のままレイリは首をかしげた。
どこか緊張している様だ。
「お前、ローゼスにそんなことまで習ったのか?」
「…これはティア姐さんとリラ姐さんが…」
「……やっぱりあの2人か…」
何となく予想はしていたが、シュノが不在の間、レイリは随分変わったらしい。
「どう?気持ちよく、無かった?」
不安そうなレイリに、シュノは身体を起こしてレイリを抱き締めた。
「すげぇ良かった。客にされてもイッたこと無いのに。
だから俺も教えてやるよ、本当の口淫ってのをな」
レイリの脚を開かせると、下着はつけておらず、幼い性器は既に硬く勃ち上がっていた。
「い、いやぁっ…見ないでっ…」
顔を真っ赤にしたレイリがシュノから逃げようと身体をよじるが、シュノは慣れた手つきで脚を固定してレイリの性器を口に含む。
「ひぃあああっ!!
んっ、あっああん、しゅの、だめっ、だめぇ…」
少し触れただけでビクンビクン反応するレイリが面白くてつい苛めたくなり、激しく上下に喉奥までレイリを口内に収め込む。
「やっ、ふぁ、あっあっ…だめ、も…
ひっ、ああああああああああっ!!」
まるでシュノの中を犯しているような錯覚を覚える気持ちよさに、レイリは呆気なく果てた。
シュノは中にはき出されたレイリの精を飲み下すと、そっと秘部に触れた。
クチュリと卑猥な音を立てて指がすんなり内部へ侵入する。
「ヤる気満々だな、もうトロトロになってるぜ」
「シュノ、お願い、僕にさせて。
シュノに僕で気持ちよくなってほしいの」
レイリが懇願するようにシュノを押しのける。
「…よしよし、じゃあ俺はお前の客だ。
お前の全部で俺を気持ちよくさせてくれ。」
シュノが頭を撫でると、レイリは嬉しそうに頷いた。
シュノを押し倒して自ら慣らしておいた秘部にゆっくりとシュノを受け入れてく。
懸命にシュノを悦ばせようとする姿に愛しさがこみ上げた。
「んっ、あ…シュノの…熱い…」
潤んだ瞳でシュノを根元まで受け入れると、ゆるゆると腰を上下に振った。
「あっ、んぅ…しゅの、ねぇ…きもちい?ぼくのっ、なか…気持ちいい?」
トロトロの媚肉がシュノの挿入を悦ぶ様にからみ付く。
レイリは蕩けた顔でぎこちなく笑った。
着物も肌蹴て殆ど引っ掛かっているだけの状態で、柔らかな身体を揺らし、シュノを快楽に導く。
「気持ちいいな、もっと気持ちよくなりたい」
シュノはレイリの腰を掴むと、グンッと勢いよく突き上げた
「ひあぁああああっ!!?」
あまりの衝撃にレイリは身体をビクビクと震わせ、果ててしまった。
「……ひっく…ぐす…」
レイリが急にボロボロと泣き始め、ぎょっとしたシュノは身体を起こしてレイリを抱き締めた。
「ごめ、なさい…先にイッちゃった…
僕、上手くできなくて…ごめん、嫌いにならないで…」
レイリが何に怯えてるか、シュノには理解出来なかった。
ただ、レイリが自分に好かれようと慣れない郭事の真似事をしたのだと思うと愛しくて堪らなかった。
「どうして嫌いになるんだ?
俺は今でもお前が欲しくて堪らないのに」
そう言ってレイリを押し倒すと、脚を抱えてより深く繋がった。
「ふぁあっ!?」
「今度は俺がレイリを気持ち良くさせる番だ」
シュノは激しく腰を打ち付けて、レイリは揺さぶられるままにシュノにしがみついた。
「レイリ、可愛い、愛してる」
朧気な意識の中でレイリはシュノに愛される悦びに打ち震えた。





「ん…」
意識を失う手前でシュノが自制を効かせ、レイリは漸く解放された。
後処理を手早く済ませたシュノは布団に横になり、レイリの身体をぎゅっと抱き締めた。
たった3日会えなかっただけなのに随分会わなかった気がする。
「シュノ…僕、ちゃんと出来てた?
ちゃんとシュノを気持ちよく出来た?」
執拗にそればかり訪ねるレイリに、何かあったかと思い頭を撫でる。
「ああ、客とするより何倍も気持ち良かった」
するとレイリはふにゃりと顔を綻ばせた。
「……良かった」
「どうしていきなりあんな事したんだ?」
「……シュノが…お客さんと…身請けの話してたの、聞いちゃって…
シュノがどこかに行っちゃうと…」
シュノに身請けの話など初めてでも無ければ毎日の様に来ていた時期もあるほどだ。
それはレイリもよく知ってる筈だし、断っているのも知っている。
「離れに来たのか…
客に見つかったらどうするんだよ。
お前は可愛いからすぐ目付けられるぞ、実際あの色ボケジジイはお前に興味あるみたいだったし…」
「ごめんなさい…目が覚めたらシュノが居なくて、寂しくて僕…隙間から少しだけシュノの姿を見たら帰るつもりだったの…」
レイリから帰ってきた返答のあまりの可愛らしさにシュノは目一杯レイリを抱き締めた。
「お前、可愛すぎだろ…」
「ごめんなさい、その時シュノがお客さんに抱かれながら身請けの話してるの聞いて…
僕じゃない誰かにシュノが抱かれてるのとか、身請けの話とか、それがすごく嫌で…」
レイリは涙を零しながらシュノに抱きついた。
「部屋にいたらお腹のそこがグルグルして、気持ち悪くて、どうしたらいいかわからなくて…
朝になってローゼスが一緒に寝てくれて…シュノはお仕事なんだって思ってもお客さんと一緒だと思うと不安で…
だからローゼスが皆と遊ぼうかって言ってくれて…」
それからの話は大体予想していた通り、レイリは幽離籠の太夫達と仲を深めた。
レイリに好意的でなかった太夫達もレイリの事情を聞くとその境遇を理解してくれたらしく今の幽離籠にはもうレイリを貶める輩はいなくなった。
新造の様に可愛がられたレイリは他の太夫達から男を喜ばせるためのいろはを習ったらしい。
「何をしててもシュノの事ばかり考えてた。
シュノは喜んでくれるかな…とか。」
「ああ、嬉しい。
お前が俺のために一生懸命やってくれてと思うと愛しくて堪らない。」
「良かった…」
レイリは嬉しそうに微笑む。
「レイリ、眠い…
一緒に寝よう、一人じゃ寒くて寝れねぇ」
頷いたレイリを湯たんぽ代わりに、シュノは疲れた身体を癒すのだった。


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