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穏やかな朝の。

「……暑い」

隣から小さく聞こえた声にふと意識を寄せれば、腕に包んだ気配が熱を持っている事が分かった。
眠りから閉じていた目を空ければ、やはり猫のように丸くなった金髪の少年が己の腕枕に収まっている。
暑いなら離れてしまえば良い、とは思わない。
汗を流しながらも、無意識につぶやくほど暑いのだとしても、離れようとしない恋人は可愛い。

「レイリ」
「んー……」

男二人が寝ても余裕のあるベットの上、脇に置いてあるテーブルの上に水差しはない。
涼めるモノはないかと考えながら男、シュノは白い手を幼さの残る額に滑らせた。
二十歳を越える頃になっても、シュノの見るレイリは可愛い。
金髪に柔和な笑みを浮かべれば幼さはなおも引き立つ。
それをレイリが気にしているところが面白く、しかし侮られる原因となっているのは気に入らない。
体温のあまり高くないシュノの手は涼やかだったらしく、レイリの眉間に籠もった余計な力が抜けていく様が見えた。
眠っているのに表情がころころと変わる様を楽しみ、

「レイリ、起きろ」

耳朶に直接吹き込むように囁きかける。
肩をふるりと震わせて、碧い瞳が金糸の間から光をのぞかせた。

「……しゅ、の……」
「嗄れてるな、水飲むか?」
「ん……離れるの、や」

眠さを理由に、目を覚ましてなおも甘えてくる恋人の額に口づけを落とす。
そうして足裏に手を入れて背中を支えると、危うげな身振り一つ見せずに抱き上げた。
穏やかな夏の日の出来事。

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