勘のいい人ならば15年前の事件の真相は序盤で気づくかもしれない。
しかし真相の真実までは、さすがに中盤までは無理だろう。
15年前の冤罪に気づき、刑を終えた男を見つけ、更に関係者に近づいて…命を落とす元刑事。事故か?殺人か?
真実を突き止めることは正義かもしれない、しかし必ずしもそれが幸せとは限らない。
関係者家族はそれぞれに事件に関わる秘密を抱えて、ずっと苦しんできた。
それでもずっと支え愛し合ってきた。
娘は二人の父とそして母に護られて成長して、父の愛した海を守っている。
そこへ現れた退職刑事。
秘密を娘を護る為に元刑事の死は必要だった。
湯川センセは元刑事の死のトリックは、早い段階で気づいていたようだ。
しかし湯川センセにも護りたいモノがあったから、トリック暴きだけでなく「なぜこの事件は起こったか?」について岸谷に調べさせることになる。
少年と湯川センセの出会いは電車の中。
少年の車内携帯通話を注意するのかと思えば、意外な展開。
少年は尊敬の眼差しを持って湯川センセを「博士」と呼ぶ。
子ども嫌いの湯川センセにじんましんが出なかったのは、結局ウマが合ったのか?
「理科なんか嫌い、役にたたない」と言う少年に、意地になって(しかし楽しみながら)ペットボトルロケットを作ったり、少年と何度も飛ばして実験をする湯川センセ。
この場面だけ切り取れば、素敵な夏休みの思い出に他ならない。
しかしこれによって科学に興味を持った少年が気づいてしまったこと、疑念を抱いた事が終盤に少年を苦しめる。
「自分は(知らなかったとはいえ)とんでもないことをしてしまったんじゃないか?」
そんな少年の疑問の答えを知っているのは湯川センセと叔父家族のみ。
娘を護る為に何も知らない甥っ子を巻き込んでしまった叔父。
少年を護る為に仮説の実証をしなかった湯川センセ。
悩む少年に湯川センセがかけた言葉は、
「君はひとりじゃない」
これは自分も含め少年(とその未来)の事を考えているという、温かい言葉。
やがて真実を知るであろう少年は何を選択するか?娘は少年をどう支えるか?
ずっと護られてきた娘は、どんな風に少年を護るか?
それは未来の話。
少年が夏の一週間を過ごした、開発計画に揺れる海町。どんな選択がされて、どんな町になるか?
これもまた未来の話。
15年前の冤罪も今回の事件も娘を護るという無償の愛ゆえ。
だから、
真夏の方程式の解は、`愛`だと思う。