また久々に。長いです注意。
物書きさんに贈るバトン
物書きなら、求められれば書かなければなりませんよね?そうですよね?
気が向かない、こういうのは好きじゃない、何て、言い訳になりません!読者のニーズに応えるのが物書きの役目!
ですから、ここで特訓してみましょう、貴方の文章を!Let's try!!
〜初級編〜
1.朝の風景を朝・日・光・鳥の言葉を使わずに表して下さい
布団の中で微睡んでいると、独特のリズムを刻んでバイクがやってくる。新聞配達のバイクだった。この音を聞くと、また眠くなるのだから不思議である。
がたん、という音と共に朝刊が投げ入れられる。台所から漂う味噌汁の芳しい匂いが、目覚めの一手を担った。
さあ、起きよう。
「おはよう」
2.授業中の様子を会話文なしで表して下さい
背中で静かな喧騒を感じ取る。手紙を渡したり、小声で話したり──そうら、また一人眠ったぞ。
3.美少女を、美しい・可愛い・麗しい・可憐など、一言で表せる言葉を使わずに表現して下さい
ただ存在しているだけで衆目を引いた。彼女の持ちうる全てのものは、一種の造形美に近い。
だから、誰もが心奪われた。さながら、美しい絵画に出会った時のように。
4.“笑”という漢字が付かないもので笑顔を表現して下さい
空気が華やいだ。
5.時刻を数字・日の光(空の様子)を書かずに表現して下さい
もう少しで自分が変わる。そんな確信はあった。時計を握りしめ、じっと待つ。
短針が「その時」を指した。飛び起きて、ドレッサーの鏡を覗き込む。
「成人おめでとう。あたし」
〜ちょっと難易度上がったよ編〜
1.まずは軽く、一人称で相手を会話文織り交ぜつつ説明して下さい
じっと見ていると、向こうも睨み付けてきた。こっちが気に入らないわけじゃない。ど近眼だ、と笑いながら分厚い眼鏡を見せてくれたのは、初めて会った時だった。
「……本当に売ってるんだな、ビン底眼鏡って。おれ初めて見たよ」
「一種の遺物だな。凄いだろう、拝んどけ」
一応、拝んでおく。だって本当に珍しい。
「これで着物でも着れば、立派な文豪風だな。髪も染めてねえし。ってか切れ」
「冬場だし寒いんだよ。伸ばしとけば暖かい」
しかし、見た目には鬱陶しいことこの上ない。後ろ髪は伸び、更にバサバサと伸びた前髪を見かねて、女の助手さんがヘアピンを貸してくれたらしい。おかげで、奴の頭には可愛らしい小花が二つ咲いている。
しゃれっけがないのに、不思議と似合うのだから妙なもんだ。
やっぱり、眼鏡の下の隠された美貌ってやつだろうか。今は表に出されているが。
「いい加減シャツ洗えよ。そのスラックスも」
「お前、おれの小姑かよ」
「せめて、舅。ものぐさ作家を真っ当な道に戻してやろうっていう、編集者の優しい心遣いがわからんかねー」
「ものぐさにさせたのは締切なんてあるからだ」
「それを破るから、こうしてホテルに缶詰にされてんだろ。ほら書けさあ書け」
「お前が見つめるから、うっかり禁断の愛にでも目覚めたのかと思ったじゃないか」
「目覚めてもいいから、とっとと書いて俺を家に帰らせてくれ」
「本気?」
「は?」
しまった。いくらなんでも言い過ぎた。これ以上、最悪な文句はない。こいつはバイなのに。
長いので追記へ
2.次に、三人称で二人の仲の悪さを会話文なしで説明して下さい
例えば、宮古の気配を関知するレーダーが氷見の中にあるとすれば、その範囲と威力には絶大なものがあった。そして、それには逆のことも言えたのだ。
同じ建物にいれば気分を苛立たせ、鉢合わせになろうものなら、冷戦から悪口雑言飛び交う大戦まで自由自在である。だから、互いの気配がする時には極力会わないようにすることも出来たが、努力が実らない時もあった。
宮古が磁石のS極ならば、氷見はN極。宮古が火なら、氷見は油。とにかく、魂の底から二人はそりが合わなかった。
3.オノマトペ(擬音語、擬態語)を用いて晴れている日の街並みを表して下さい
ざわざわと人のひしめく街中へ、何日かぶりの太陽がさんさんと光を注ぐ。
ふと、その暖かさに気づいた人が足を止めると、頬をふわりと風が撫でるのだ。季節は夏に変わろうとしていた。
4.オノマトペを用いずに雨が降っている日の街並みを表して下さい
いつもの街並みに灰色のカーテンを薄くかけたようだ。
行く先々で、様々な色の傘が花を咲かせている。そこへ彩りを添えるが如く、銀糸のような雨が降っていた。
5.水溜まりを題材に、普段貴方が書く文体で短文を作って下さい
雨の後や雨の中、水溜まりというものは至るところに出来ては、人々の足を止め、その先を躊躇させる。今は立派な靴もあって、気にせず踏んでいくのだが、その水溜まりへ人々は何かを落としていっているのではないかと、嵐は思うのだった。
──何が、ってのはわからないけど。
瞬間の感情、あるいは腹に溜め込んでいたもの、もしくは本人にもわからない何か。
水溜まりを踏むと、なぜか後ろめたくなる。淀んだそこに何があるのか知っているからか、そこへ己が何を落としていくのか、わからないからか。嵐はおそらく両者だと考えた。
そしてそれが、いつか自分を追いかけてくるのではないかと──雨はあらゆるものを見えにくくするのだから。
もし追いかけてきたら自分は、と考えて、嵐は笑った。そういうものとは長い付き合いである。やって来るようなことがあれば、久しぶりとでも言ってやろうと決めた。
嵐は一度止めた足を持ち上げ、ぱしゃん、と水溜まりを踏んだ。
→いつもの通りってのがよくわからん……(´∀`;)話によって違うので。嵐に出張してもらいました。
お疲れ様でした。
最後に、このバトンを回す人の名前を必ず入れて文章を書いてみて下さい。
「なんだって!」
受話器に向かって叫びながら立ち上がると、周りが顔を真っ青にして、こちらを見る。
「届け先がわからないだと!?」
皆がざわついた。
「なんてことだ……」
「またあの伝家の宝刀を使わなければならないというのか……」
「くそっ、また失敗か」
「仕方ない。成功は失敗の母というからな……腹をくくりましょう」
「そうだな。まったく腹立たしいが……これはフリーということになる」
「学習という言葉を知らない奴がいると、いつもこれだ」
「これはいよいよ、我々が表に出る時ではありませんか?」
「いいや」
その場が沈黙する。
「我々はあくまで縁の下なんだ。裏で三つ指ついて支え、何があろうと支援し続けることに意義があるものを……表に出ることで壊してどうする!」
「……っ」
「……いや、すまなかった。お前たちの気持ちも汲まずに……」
「いいえ、俺たちが間違ってました。今は目が覚めた気分です……!」
「お前ら……!」
「課長……!」
この時、ばらばらになりかけていた心が一つになったのだった。
完
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遊びました。楽しかったです。