E01 銀の御手のサジタリウス
無音の物語。ずっと押し殺したような沈黙が傍にある。語る声も、草の揺れる音も、鏃の飛ぶ音も、一角獣が倒れた時の音さえも、この世界を壊さないようにと抑えているような。でもプロメが現れると音が活き活きとする。サジを通した世界の形。だからプロメの声や姿はいつも暖かい。

E02 五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま
おっと今度は緑の手だ。薔薇の庭を手入れするこうちゃん。「内緒」という言い方にそこはかとなく漂うエロスだわ〜よいわ〜このじわっとくる感じ。薔薇の存在感と、五月の暑さと麦茶と氷と、と舞台の道具が妙に艶めかしい。「僕」はどうなのだろう。どこまで続くかわからない二人だけの楽園に、最後吹き込む五月の風がとてもさわやかでした。

E03 機械細工職人と機械義手
冷たい手が紡ぐ奇蹟のような細工。は〜説明を読んでいるだけでも実際に見てみたくなる。教室通いたい。雑然とした工房の細かな様子や、クリフォードの目を細めて笑う姿など彩りに事欠かない。素敵。加齢臭とか細かいなあ(笑)ライザと共に冷たい手を追いかけて、そして最後にストン、と落とされてしまう瞬間があってめっちゃびっくりしました…でも余韻は不思議と暖か。これがライザの眼差しなのかなとか。

E04 飲み干す残滓
おーおお、びっくりした。どきどきしたー!冒頭のモノローグは孝之のものかな。二人の時と親がいる時とで呼び方が変わるとあるけど、食卓で「咲希」と呼んでいるのは孝之だよな…ということはこの時点でもう覚悟を決めていたりしたんだろうか。お父さんだったらすみません。残滓は家族の形、それを飲み干して手に残るものは何だろう。

E05 キズアト
漢字にカタカナのルビ振り。よいSFの匂いがするぞ→最後まで読みました→よいミリタリーと恋愛の匂いもする…すげえ贅沢セット。恋愛や男女の繋がりが規制された未来、そこで発禁図書として扱われる名作の数々を見ているとニュー・シネマ・パラダイスを思い出して涙が…きっと映画も音楽も熱や色を失った世界なんだろうなあ。その中でクレアが人らしさを取り戻し、彼女の名前の本当の文字が明らかになっていくと彼女自身の本能も明らかになっていくような。自力でこじ開けていくクレアつよい。

E06 幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手
好きなものを追いかけるのに年齢は関係ないよね…立ちっぱなし、腕ふりっぱなし、声だしっぱなしで最終的には満身創痍、その後の回復に時間がかかるところに年齢を感じるけどさ…澤良木さんの「年甲斐もない」という呟きは「それでも好き」な熱を感じる。ハプニングに対して澤良木さんと一緒に動転したり、思いがけない同士を見つけて喜んだり、冷や汗を流したり。握手した手の冷たさは喜んでいいものと思いたい。

E07 楽園の手
は〜〜……いい読後感。いい落としっぷり。いい残酷さ。手が妙に官能的。それを食べるという行為もどこか背徳的。だけど手の描写は美味しそうなんですよね。最初、仏手柑で想像していたんですがそれではこの話の「手」には物足りない。それこそ人の手のような…と思っていたらの、楽園の姿。「僕」がどうしてこの楽園で過ごすことができているのか、が紐解かれてぞっとする。最後、ぷつっと手を収穫する音で楽園の姿が消える、そんな気持ちで読了しました。ファーストインプレッションでここに投票されていてありがたや。

E08 それは手記にも似た
そういう…そういうあれかー…ああ。不定形な「私」の語りが続いていく。動物なのか、植物なのか、あるいは生き物ですらないのか。触れる「何か」の形がわかった瞬間、ぱっと風景が開いていくようでした。だけどそれはどこか霞がかっている。こんなにも沢山の記憶と感情とを込めて綴られたのは「手記にも似た」もので、想いの塊で、そしてそれを綴る「私」の姿は…と読み終えて最初の呟きに戻る。そういうあれかー…同じような形で繋がっていると思っていたらそうじゃなかった時の断絶感。でも彼女にとっては確かな繋がりだったんだよな。

E09 夜の谷で
\(^o^)/
ファースト推理でも最終推理でもほぼ色んな人が書いてそうな塩梅でお名前入っているのに驚いた。

E10 夢の異世界ダンジョンへGO!
最後にwwwこれwww手がそうくるかと爆笑。いいね、下心を山積みにして入り込んだ夢の世界。そこでの姿がもうw描写が「スケート界の皇帝似」で体は洋風棺桶姿とかなので、今度からあの方の顔を見る度に棺桶もセットで思い出しそうです。ついでにすね毛触手も思い出しそうでもうまともに見られない。そして最後にたたみかけるようにやってくるうりんこ(両前足は人の手)はもはやプレイヤーの姿ではないのではというこちらの思いは余所に猪王へと突進していくので、第二話お待ちしております。


Eブロック、地を這うようなテンションの話が続くなあと思ったら最後に天元突破でぶち抜いていった。振り分けの妙ですね。しかもここまで物語の構成が似たものが揃うんだなあ。