D01 秘密が見える目の彼女
最初は薄いパステルカラーですっと物語の幕が引かれるような感覚でしたが、メグミちゃんと中居くんの登場で一気に話に弾みがついて読み進めてしまう。二人の「めぐみ」と中居くんの会話や態度の差がもう年頃の子らしくて微笑ましかったです。探偵面白そう(笑)

D02 神の庭
しっとり、どっしりと、こう絨毯を広げるようにして世界観と物語が広がっていく。その上で語られるリュミエレとディノの絶妙な距離感の良さよ…そしてそこに何かしらの秘密も潜んでいそうで、ナイスファンタジー…(親指を立てて溶鉱炉に沈みながら)

D03 couturiere
息を詰めるような、しんと静かな空間が夜に沈んでいるような。そこで聞こえるのは針と人の動きの音のみ。針に、服に、仕事に、迷信に、かつての自分に、と向き合いながら生まれ変わっていくドレスが綺麗。決意のような指の痛みを忘れないようにと戦う姿がかっこいい。

D04 子どもを助けたら勇者と呼ばれた件について
「俺」目線で淡々と語られるんですが、どこか色をなくしたような、それこそが彼にとって平凡な日常だったってことでしょうか。二人旅をしていくうちに彼の目にも、聖女様の表情にも色がついてきて、最後には色彩に溢れた世界で「二人」が出会うように見えました。

D05 夢を視ないという夢
これ読み手は自分のおばあちゃんを思い出してしまうのではないでしょうか。私は思い出してちょっと涙した。半ばのホラー展開で心臓がキュッとなりましたが、おばあちゃんの存在が偉大すぎて。皺だらけの暖かい手が今も守ってくれているんだなあ。好き。

D06 ヴォストーク・デイ
ああ、これいいな。緩やかに滅んでいく。爆発的な環境の変化に抗いきれない。非常事態の中にあっても日常の延長のように見えてしまう緩やかな言葉で語られるから、ペンギンのくだりは胸が塞ぐような感じがしながらもホッとしている。ちょっと映画を思い出しました。

D07 オズ─知識の光をもたらした魔女─
こちらは滅びに向かって猛進していくような勢い。過ぎたものを手にした人は、どうなるのか。オズの魔法使いのオズ王国かなあ…魔女はオズに該当するのだろうか。願わくば、と希望をもって今度こそ、と祈りを込めて渡したものを。

D08 嗚呼 美しき兄妹愛哉
冬哉さんも怖いが存外克巳さんも怖いのでは。しれっと出来てしまう気遣い、冷静な判断力。さすがおっさn…お兄さん。短い話の中で兄妹と克巳さん、その仕事とこれ一本読むだけで魅力が全部伝わってくる。言葉選びや動きが上手いんだろうなあ…羨ましいなあ…

D09 てとてとて
最初、テトちゃんの視線の高さをどこへ持って行こうか考えながら、合間合間に出てくる言葉でその位置が調整されて、明らかになっていくテトちゃん。絵本のようにふんわりと優しくちょっと切ない。リュックを抱いているテトちゃんがめっちゃかわいいんですよこれがまた。

D10 吾輩はルンタくんである
自称が「吾輩」なところから、ヘルプミー!なところも効果音も意気揚揚と出陣してオーナーのために奮闘するところもやたら畏まった話し方もどこもかしこもかわいい。はーかわいい…ルンタくんの声が松重豊さんの声で再生される…かわいい…