ダンサー・イン・ザ・ダーク

ダンサー・イン・ザ・ダーク

死ぬまでに絶対履修したかった映画のうちのひとつ。
日本での上映権が今年の6月で終了する、と映画館に着いてから知った。すごいタイミング。
以下感想。













職業が警察官の夫。国を守り、みんなの平和と秩序を守る警察官で、愛すべき妻を守る夫。
一度守ると決めた大切なものに、優先順位など付けられない。そして法と秩序の及ぶ範囲内で、愛すべき妻との平和と正義を守りたかった。
そしてものの見事に成し遂げた。

なら妻が強欲な黒幕なのか?妻はただ、ドラマや映画のような、普通のアメリカ家庭らしい生活をしたかっただけだ。普通の稼ぎ、普通の生活を、夫に求めることの何がいけないのか?

「昔見たアメリカの映画で、箱いっぱいのキャンディが入ってるのを見て、アメリカは素敵だと思った」
アメリカは豊かなはずで、アメリカの男性は強くたくましく、女性は優しく感性も豊かなはず。だから、共産主義の故郷を追われ、親のために送金している、貧しいシングルマザー、という正しい弱者に、思いやりから自転車を与えるのは当然。可哀相な正しい弱者に施しをしないのはアメリカ人らしくない。

だから、理由の分からない犯罪をおかした正しくない弱者は、許してはいけない。議論の余地もない。死刑にするしかない。そうするのが正しいアメリカだから。
(と、登場人物の8割方が思ってそう)

ただ、豊かな夫婦と貧しい主人公とを比べて決定的に違うのは、貧しい主人公には息子がいて、豊かな夫婦には子どもがいないこと。どう見てももう若くないはずだが。
富める者が何かしら努力をしても得られないものを、貧しい者が元から持っている。
あの妻にはそういう嫉妬もきっとあっただろう。あの鮮やかな豹変ぶりからして。

鮮やかな手のひら返しの理由としてはもうひとつ、あのままだと「あそこの旦那は警察官のくせに移民女に浮気して、痴話喧嘩のすえ30数カ所もなすすべなく刺されて死んだ、残念なマヌケ」呼ばわりされて、後ろ指さされる人生で終わってしまう。
妻もセルマと同じように、「自分はこんなところで終わるレベルじゃない」「自分の人生ステージはこんなものじゃない」と夢見ていたはず。

セルマは
「見るべきものは全て見た(から自分の幸せはいらない)」と言った。
けどそれは、見るべきものではなく、「見たいものは全て見た」だろう。
病状が進めば進むほど、誰も見たくなかったもの、知りたくなかったものが見えてくる。知りたくないものは、目で見えなくても、耳で聞こえて肌で感じて分かってしまうものだ。特に自分の心にだけ湧き上がる想像と恐怖は。

「私は母親なのに強くなれなかった」
清く正しく美しい母親、旦那、アメリカ人。
意地汚く、非論理的な、醜い母親、旦那、アメリカ人になってしまったら、どうしたらいい。
誰もが、清く正しく美しい女、男、アメリカ人、日本人を演じてるにすぎない。汚く正しく美しいはずの女、男、アメリカ人、日本人という役を与えられた自分、それをうまく演じられてホッとしている。

play a roll = 役を演じる

どんなRPGにも、勇者もいれば村人も、怪物もいる。
勇者でも村人でもない、怪物でもない、名前もなくいカテゴリー不明の何かがいるRPGなどない。

母親、移民者、障害者、非共産主義者、被告人、被害者、囚人、死刑囚、女性、アメリカ人、人間…どれでもない「何か」はさっさと画面から消えなくてはならない。

役のない者は、社会という舞台から降ろされるから。人間を降板させられるから。
目は見えてても、見えてない。誰もが。

あとは…これ、息子生きてる…??
息子、手術無事受けられて視力も回復して、眼鏡要らなくなった……っていう通りだったらいいんだけどさ…。
「息子に遺伝の話を?」
「(あっやべ)いえ…(言っちゃった)」
→もともと不登校&母死刑囚&失明する将来に失望→自殺→眼鏡は実は遺品。「外に来てる」は室外のことではなく天国のこと。

だって、序盤の時点で母親と同じ分厚さの眼鏡掛けてたんだぜ…。進行性の病気、いくら遺伝でも親と同じスピードで進行するわけがない。母親の診察のシーンはあったけど、息子の診察のシーンはなかった。もう既に、手の施しようがない段階まで進んでたとしたら…。
あの2056ドルは、無理やり手術をキャンセルしたのではなく、もう手術する意味がなくなって、浮いた分だったのでは…。
そして将来鬼ハードモード確定の息子は自ら命を絶った。母親から「何か言葉をかけて」あげなければ無念すぎる。

ということだったりして…。

2月に読んだ本

平山夢明の本

タイトルがヤバいので自重します。
これで、死ぬまでに絶対読みたかった本全部読み終わった。
これからはセカンドステージです。
あとウマ娘1周年おめでとう!
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