12年前。特務機関ゼルフェノアは相次ぐ謎の放火事件の捜査を警察と共にしていた。犯人が怪人である線が強いためだ。当時のゼルフェノアは、警察と一緒に怪人案件を解決していたのもある。
この当時、暁陽一は本部隊長だった。暁陽一は暁晴斗の父親。

この放火事件はだんだんエスカレートしていく。
当時の本部司令・北川は防犯カメラの分析映像と被害者の証言からするに、犯人は怪人であると確信。犯人の怪人をさらに事件を起こす前に捕らえたい・殲滅したいと思っていた。


「暁、最近放火事件が多発しているから注視しろよ。防犯カメラを分析したら怪人が犯人である可能性が非常に高い。これで7件目だ…」

「司令、わかっています」
「ところで…晴斗くんは元気かい?」
北川はいきなり話題を変える。

「元気ですよ。今日も途中まで悠真に送られて学校に行きましたからね」
「陽一は都筑家とは家族ぐるみで付き合っているんだっけか?」
「家も近いですし、悠真さんはまるで晴斗の姉のような存在ですよ。彼女、高校生で部活や勉強で忙しいはずなのに、時々晴斗を弟のように可愛がってくれていますし」


当時の暁晴斗は小1。当時の都筑悠真は高2。家が近所ということもあり、暁家と都筑家は家族ぐるみで付き合っていた。
晴斗はまるで姉のように悠真を慕っている。「悠真姉ちゃん」と呼んで。


「司令、この放火事件…だんだんエスカレートしていますよね…。最初はボヤ騒ぎだったのに、最近は怪我人まで出てる。次は死亡者がいつ出てもおかしくないですよ」
「怪人の目撃者もほぼ皆無なのも、捜査が難航している要因だからなー。しかし、この放火エリア…見事に住宅地しか狙ってない。犯人が怪人だとわかったのも最近だぞ。人間態でのうのうとしているのが腹立たしい」
北川は苦虫を噛むような表情を見せた。それだけこの件が許せないのだろう。


北川は陽一に地図を大型モニターで見せる。放火事件は全て閑静な住宅地でそれは起きていた。
「君の家周辺の住宅地はまだ何もないが…嫌な予感がするな。暁、異変があったらすぐに報告しろよ」
「了解」

陽一は司令室を出た。


某月某日。この日は週末。晴斗は近くの公園で悠真と遊んでいた。晴斗は無邪気に遊んでる。晴斗の母親・朱美も公園にいた。

「悠真姉ちゃん、今日は部活ないの?」
悠真はブランコに乗っている。晴斗もだ。朱美は2人を優しい表情で見守っている。本当の姉弟みたいだねという風に。

「ないよ。たまには晴斗と思いっきり遊ばないとね。晴斗はさぁ、大きくなったら何になりたいの?」
悠真の何気ない質問に晴斗は最初、もじもじした。
「怪人倒す隊員になりたいっ!お父さんのようになりたいの!」
晴斗は目をキラキラさせながら言った。晴斗の父親はゼルフェノアの隊員。晴斗からしたらヒーローだ。

悠真はニコッと笑う。
「カッコいいね。晴斗なら叶うかもよ」
悠真はブランコから降り、空を見上げた。空は快晴。気持ちいい。

「いい天気だねー」
晴斗は悠真を本当の姉のように慕っていた。
「悠真姉ちゃん…」
悠真は振り返る。
「どうしたの?」
「悠真姉ちゃんがどこかに消えそうな気がしたの、よくわからないけど…」
晴斗は感じたことを何とか伝えようと必死。悠真は「?」としてる。

「そろそろ帰ろっか」
悠真は晴斗の手を繋いだ。朱美はこの微笑ましい光景に安心している。
晴斗の姉のような悠真ちゃんがまさかああなるなんて…。


この晴斗の嫌な予感は的中してしまう。


それは突如起きた。ゼルフェノア本部ではアラートがけたたましく鳴り響いていた。
「暁!今すぐ出動してくれ!また放火だ!消防隊も向かってる!」
「場所は!?」

北川はモニターで地図を示す。また住宅地。このエリアは…まさか…!?陽一は動揺を隠しきれずにいた。
「お前の家周辺だ!今すぐ向かえ!早く!怪人の姿を見たら殲滅しろ!」
「了解!」

陽一含む隊員数名が現場に急行する。果たして間に合うか!?


一方、暁家。

「お母さん、なんか外ウーウー鳴ってるよ。なんだろう」
朱美は窓の外を見た。この音はサイレン!?火事が近くで起きてる!?外が騒がしい。

「晴斗は中にいなさい。ちょっと見てくるから」
朱美は嫌な予感がし、険しい表情で外へ急いで出た。
「お母さん!?どこ行くの!?お母さんっ!!」
晴斗は1人になるのが嫌で、母親の朱美を追って外に出てしまう。


火災現場は都筑家だった。

朱美は絶句。晴斗は母親の呆然とした表情を見て戦慄する。
「悠真…姉ちゃん?」

激しく燃え盛る炎に包まれた都筑家に晴斗も絶句するしかない。晴斗はその光景に愕然とした。


次なる怪人の魔の手による、放火のターゲットは都筑家だった。この火災で家は全焼・都筑一家は全員死亡と伝えられた。
その後の捜査で都筑一家は怪人に襲撃された後、放火されたらしく逃げたくても逃げられない状況だったと判明する。
犯人の怪人が見つからないまま、時だけが無情にも過ぎる。事件は未解決のまま。

この悲劇とも云える放火事件から12年後。
高校生になった暁晴斗は偶然にもある人物と関わることにより、止まった時が動き始める。


異質を放つ仮面の隊員・紀柳院鼎。彼女との出会いを通じて、晴斗は怪人との戦いに身を投じることになる…。