仙蔵はかわいそうだったどんまい☆←
留文で指名厳禁やってみたかった
細かいとこうろ覚えなので初っ端から設定あやふやですが目ぇ瞑ったってくださいー
「影武者、ですか」
文次郎が学園長から伝えられた忍務の内容は、とある城の若君に成り代わることだった。城主が城の外へ出なければならない用事ができ、その間後継ぎが命を狙われかねない状態にあるらしい。それでその城主と知り合いである学園長のもとへ依頼が来た。城主がいない間、若君は学園の方で匿うらしい。なるほどそれは安全だろう、忍務の内容を理解した文次郎は早速某城へと向かった。影武者と言ってもそう畏まる必要はないらしい。変装でもしようと思ったが、若君とはいえ彼は政に忙しくそうそう外へ出る方ではないとのことで(今回は謂わば彼の羽休めも考慮にあるようだ)、行動範囲は自室ぐらいに限られる。城主がいない数日、部屋を訪ねて来る者程度をやり過ごせれば良いとのこと。慢心は許されないが、それほど苦労する忍務ではないと、文次郎は考えていた。考えて、いた、過去形である。
若君が入れ替わっていることを知っている御家老に通された部屋にいた人物に、文次郎は口の中で苦虫をいっぱい噛み殺した。
「若様、今回の護衛の者です」
何処で誰が聞いているともしれない、流石に年の功御家老の演技は違和感もなく素晴らしい。反して文次郎は御家老が手で示す先に疑わしい視線を送るしかなかった。
「食満留三郎です。忍術学園の方からあなたの護衛を頼まれて来ました」
素知らぬ顔で人当たりの良い笑顔を見せる彼の顔を、これでもかと殴りつけてやりたいと思った。
「いや先に護衛役として俺が選ばれたんだがな、誰と組みたいと聞かれてお前指名しちゃった」
しちゃった、じゃない。
くれぐれも喧嘩するなよと先生に釘を刺されてしまったあはははは。赤くなった左頬も気にせず朗らかに笑う留三郎に、右も殴ってやろうかと文次郎は拳を握った。
「何故お前も潜入している情報が俺に伝わっていない」
「そんなことは学園長に聞けよ」
ふたりで考えた末、伝え忘れたか単純に面白がっているな、という結論に達した。本当のところは、分からない。
「とにかく数日、お前は俺が守ってやるからな」
嬉しそうに笑い掛けて来る留三郎に、文次郎はムッとして睨めつけるように視線を上げた。
「俺は守られる質じゃない」
何より何がそんなに嬉しいのか、先程から始終浮かれた調子の留三郎に忍務だぞと戒める気持ちもあって、文次郎は瞳に鋭さを込めた。
そんな視線の中にあっても留三郎は変わらない。むしろ予想していた通りの言葉が返ってきてふはっと吹き出した。言うと思った、自分のことは自分で守れるって。
「でも今は忍務中だ。だったら与えられた役に徹しろよ。お前はおとなしく俺に守られてろ」
言い方が、むかつく。
「人を弱者扱いしやがって」
「誰もんなこと言ってねぇだろ」
苛々とささくれ立ったように不満を零す文次郎を、宥めるように留三郎は言った。
「お前が強いのはよく分かってるっつーの。だから普段守られせてくれねぇ分今日くらい、堂々と守らせろよ。」
宥めるというよりは、あやすような甘さである。
「たまにはお前の前で格好つけたいだろ」
な、と他意のない柔らかい微笑みを向けられては、文次郎はこれ以上何も言えなくなる。自分が、こんなふうに微笑う彼が苦手だということを本人は自覚しているのだろうか。だったら、質が悪い。熱が集中した顔を悟られたくなくて俯けば、留三郎がその動きを追いかけてきた。頬に添えられた手に促され、…ばかたれと観念したように顔を上げる。満足気な笑みがいっそう距離を縮めてきた。
「貴様っ護衛役の分際で、若様に手を出したな!」
「なあ!?」
背後から射抜くように飛んできた声はあまりに突然で、ふたりはびっくりしてすぐさまあわあわと距離を取った。
ヤヤヤヤバイ!
ふたりのうちより慌てているのは留三郎の方で、彼の脳内では既に、若様に毒牙を掛けた護衛人な自分は武士でもないのに切腹を迫られ、早くもその一生涯を終えてしまった。そんなんダメに決まってんだろ…!!自分の妄想にツッコミを入れ、すぐさま背後に翻る。
「申し訳ありません!でも誤解なんですっ、まったくの誤解!!」
何がどう誤解なのか、まさか若様ではなく相手は影武者を任されてる恋人なんですなんて正直に言えるわけもないのに、今使える言葉を使って留三郎は無実を訴えた。
「貴様がしてきたことに無実を訴えるなら、文次郎への気持ちも偽りだったということか?」
「…へ?」
鼻に掛けるような得意気な笑い。そしてよくよく聞けば聞き覚えのあるこの声音。
留三郎が顔を上げるのと同時、文次郎が彼の名を唱えた。
「仙蔵!」
どうしてここに。言外に込められた疑問に、袴姿の仙蔵は丁寧な調子を続けて答えた。
「小姓の立花仙蔵です。言い付けられれば何なりと」
一転、声が落ちる。
「さぁ今すぐ命令しろ、殺れの一言でこの息の根、確実に止めてやろう」「おいおいおいおい」
笑顔でおっそろしいこと言うな!標的にされている留三郎は、げんなりと顔を歪ませた。
「案ずるな文次郎。ここでの数日、留三郎からは私が守ってやろう」
「え、ああ、?」
いまいち仙蔵の過保護さを理解していない文次郎だった。
誰かこいつから俺を守ってほしいよ、なんてね。
ドラマCDだった気がするんだけどなんかの厳禁でこんな仙さまの台詞なかったっけ??
どの話か忘れた´`