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瞼にゃ逆らえない

「好きだ」
ずっと眉間に寄ってた皺が途端に解かれた。何を言われたか、理解が遅れたその毒気を抜かれた間抜けな顔は、この言葉を告げたらどういう反応をするか想像していた内のひとつだったから、まぁ、予想の範囲内だ。ちょっと想定外だったのはまさかこんな大事な言葉を喧嘩の勢いだけで言っちまった自分のバカさ加減である。あーもう本当俺のバカ。しかも何でよりによって組敷いちまってるんだ俺。地面に転がる文次郎に覆い被さって。さっき殴ったので鼻血出てんぞこいつ。それすら興奮する俺ってどうなんだ。
とりあえず妄想としては最高のシチュエーションだがこの体勢で告白ってのはただの変態だよ、あーもうバカ。それで告白した手前今更ここを退くわけにはいかんと思ってる自分も本当にどうかしてると思う。思ってはいるがやはり退けはしない。
いや分かってるんだけどよ、次の言葉は。

――は?何言ってんだ?
――正気かてめえ
――気色の悪いことを言うな
――いい加減退け変態
――俺に触るな

……こんなところだろうか。自分で想像して泣きたくなってきた。
文次郎は時間が止まったように大きく目を見開いて固まっちまってるが、それも時間の問題だ。もう一寸もしたら文次郎の頭でやっとこさ鼓膜と脳は繋がり、俺が投げた言葉の意味を理解するんだろう。そして拒絶されるんだ。分かってる。自覚したときからこの気持ちが叶わないことなんて十分分かるってんだ。
そう、覚悟は決まってる筈だったんだが。
でもやっぱり実際聞く勇気は乏しい。文次郎の次の言葉を待つ間の沈黙が辛くなってきて。だけど俺から何か言おうものなら更に悪化させちまうんじゃねえかって言葉が出てこなくて。何も出来ずただただ文次郎に覆い被り奴の顔を見下ろしているのは、やっぱりどっか、おかしかった。この状況から早く抜け出したいのに、分かりきってる文次郎の次の言葉は聞きたくないから耳を塞ぎたい。

「好き、とは、どういう意味だ」

だけど文次郎の口が紡いだのは予想に無かった言葉だった。
「どういう、って」
どういうも何も無い。好きと言ったら恋愛である。恋情である。
「傍にいたい。触れていたい。抱き締めたい。お前が欲しい」
「……」
あ、ヤバい。文次郎の眉間に皺が戻った。
「何だそれは、お前、俺が好きなのか?」
「鳥頭かてめえは。そう言ってんだろ」
「友愛ではなくて」
「恋慕だ」
「殴り合いが挨拶みたいな俺相手に?」
「お前がいいんだ」
「お前、俺相手に口付けなんぞ出来るというのか」
テンポ良く進んでいた会話に「出来るに決まってんだろ」と言い返すことはせず。「出来るに決まってんだろ」は、行動で示した方がよっぽどいいかなって。いや詭弁だ。単に体が動いちまっただけ。喧嘩っ早くて手が出る早さも自覚してるが、これはちょっと短絡的過ぎたんじゃね。いやいやそもそもそんなこと聞いて来る文次郎が悪くねーか。
己の唇を押し付けた文次郎の唇は、めちゃくちゃ柔らかかった。





眠いです寝ます。
六いの日も六ろの日も六はの日も結局何も出来なかったよ馬鹿野郎。
いやこれは単なる留文だけど。続けばいいね。
六年月間おめっとさん
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