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子豚な王子様19


前回のタイトルを、思い切り間違えていました。
「〜王子様」って私世代はどうしたってあの名作を思い出しますね。くそう気を付けていたのになぁ。前回のこっぱずかしさが半端なかったので、そのせいです。

というわけで(?)そろそろハラハラ展開にシフトします。

拍手お返事と、サイトの更新は次、頑張ります〜。

*****



「どうだった?祭り」

「うん…すごかったよ」

「だろー?この国でも一番盛り上がる祭りだからな」

「うん…すごかったよ」

「ティカルは箱入り息子だもんなぁ。にぎやかでびっくりしただろ!」

「うん…すごかったよ」

「・・・」

ツツムは、洗濯用の桶の向こう側でぼんやりとしているティカルを見つめました。
昨日のお祭りで何があったのかわかりませんが、ティカルには相当な衝撃だったようです。

王様がいたんでしょうから、あの広場での恒例行事には参加していないと思いますが、もしかしたら色っぽいお姉さんがいるお店につれていかれたのかもなぁとツツムは思いました。


ちなみに、花火が終わったあとは、城に帰ってきてはずなのですが、ティカルは帰り道のことをほとんど覚えていませんでした。プラムが何か声をかけてくれていたのはわかりましたが、頭がぼーっとなってしまって、プラムもそれがわかったようで、目隠しもされずに帰ってきたような気がします。

どうしてプラムは顔を隠す布をしていなかったのでしょう。ティカルのようにキスをしたことがないわけではないでしょうし、しかし事実としてプラムは布をしていませんでした。
ただただ邪魔だったのかもしれません。唇と布が擦れて痛かったのかもしれません。

フワフワしすぎている頭で考えても、結局わかりませんでしたが、何よりティカルが嬉しかったのは、目を閉じる前にみたプラムの目でした。彼の目には、驚きの色はありありと浮かんでいましたが、嫌悪の様子はなかったのです。

思い返せばプラムははじめから、ティカルの鼻を見ても動揺しませんでした。歓迎こそしてくれませんでしたが、初対面ではティカルは顔を隠していたのでそのせいではありません。

お酒を持っていくようになって「生まれつきか?」と尋ねられた事はありますが、答えにくそうにすると、しつこく聞いてくることもなく、さりげなく秘密の抜け道のことに話題を変えてくれさえしました。

やっぱり、プラムは優しいのです。本人はそんなことないと言いたそうでしたが、やっぱりあの子豚の時代に、ぎゅってしてくれた男の子の本質のようなものは、月日が経っても変わらないのだと思いました。

はふぅ、とティカルがため息をつくとツツムが桶の向こう側で「やれやれ」と苦笑しました。


「ティカル!王がお呼びだ」

お昼のことです。ひとりの兵士が足早に近付いてきました。

「ぶひっは、はい…!」

今日の夜、どんな顔でお酒を持っていこう、恥ずかしくて顔が見られないかもと悩んでいたティカルは、まさかこんなに早く呼ばれるとは思わず、あたふたしながら兵士についていきます。

王のところに行く前に、どういうわけか着替えるようにいわれ、ここに来たときの服を久しぶりに着ました。
不思議そうな顔をして兵士についていったティカルは、思いがけない人物を見て、また鼻を鳴らします。

「ブヒュ!ファファ?!」

「お兄様!あぁ、会いたかった…!!」

お客様を迎える部屋にいたのは、なんと弟のファファだったのです。軽やかに駆けてきて、ぎゅっとティカルに抱きつきます。久しぶりの家族の姿にティカルも嬉しくなって、抱きしめ返しました。

「ファファ王子、我が王の前で勝手な行動は慎んでください」

しかし、どうしてここにいるのとティカルが尋ねようとすると、側近のオクの少し険しい声が飛びました。ティカルは彼の、いつもの無表情しか見たことがなかったので、怖い顔をしているのを見て驚きます。

また自然と、オクを従えるように椅子に座っているプラムとも目が合います。ドキンと心臓が煩くなって、ティカルはお辞儀をするふりをして、そろろと目をふせました。

一方ファファは面白くなさそうな顔をして、「申し訳ありません」と謝ると、ティカルから離れてプラムの正面に立ちました。
疑問符をいっぱい浮かべるティカルに、プラムが手招きして呼びます。また胸がきゅっとなりましたが、ティカルはおそるおそるプラムの横に行きました。

するとプラムはファファを立たせたまま、ティカルを自分の隣に座らせました。ファファは驚いて目を丸くして、ティカルはよくわからないまま、言われた通りに腰を下ろしました。

プラムがティカルに向かって話しかけます。

「ファファ王子も、社会勉強がしたいそうだ。数日ここにいることになった」

「そうなの?ありがとうプラム。兄弟そろってお世話になっちゃって」

「気にするな。知り合いもいない中、一人でがんばっていたんだ。同じ国の人間と話すのもたまにはいいだろう」

プラムの言葉にティカルは嬉しそうに微笑みます。
まだまだ恥ずかしい気持ちはありましたが、プラムが柔らかく話してくれるので、ティカルはなんとか普通に受け答えできました。

「今日からしばらく、仕事も休みにするといい」 

「ありがとう。そうするね。
ね、プラム。ツツムにお休みすることを謝っておきたいから、もう行っていい?」

「あぁ行って来い」

お礼を言ったティカルは、まだ座ったばかりでしたが、すぐに立ちあがって、「ファファ!またあとでね」と笑顔で去って行きました。
バタンと扉が閉まると、急に部屋の温度が下がったような気がします。

プラムはついさっきまでティカルを見ていた柔らかい眼差しを、スっと冷ややかな色に変えて、ファファを見ました。

「ティカルに迷惑をかけるようなことはするな。ここは俺の国だと肝に銘じておけ」

プラムの力強い目に、ごくりとつばを飲み込んで、ファファは小さく「わかりました」と答えます。そして、おずおずと自分の手紙のことを切りだしました。

「プ、プラム王…。僕が送った手紙のことですが、実はとても、僕にはどうしようもない事情が…」

「それはもういい」

しかしファファが言い終わる前に、ズバっとプラムが遮ってしまいます。そして外に控えていた兵士を呼び込み、戸惑うファファをさっさと連れていかせました。

プラムとオクだけになった部屋で、オクが静かに尋ねます。

「いいのですかプラム様。手紙のことを話そうとしていましたが…」

「向こうの理由など興味ない。こちらはティカルで満足しているからな」

オクが背後で「満足ってどういう意味ですか?」と尋ねたいのをどうにか我慢しているのを、気配で感じつつ、プラムは昨夜のキスでぽーっとなっていたティカルを思い出して、そっと微笑むのでした。


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