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猫の日と聞いて!2015


まさかまさかの3話目です。昨年の2月と11月に書いた猫の日犬の日の話の続きになります。
期待してくれてる方がいたら嬉しいなぁなんて!



*****

犬頭の獣人、イギュは驚きの声を上げた。

「俺がマヤの忘れものを城に?」

「そうなのにゃあ。今日はお城でいろんな人の採寸を取るらしくて、それにしてもどうも遅いと思ったら、愛用の巻尺を忘れていってるんだにゃあ。持って行ってくれないかにゃあ」 

親方はすまなさそうにしながら、息子、猫頭の獣人マヤの巻尺を、早くもイギュに握らせている。
服の職人にとって巻尺はなくてはならないものだ。帰ってこないところをみるとおそらく予備はあったのだろうが、勝手が悪いのだろうと想像できる。

しかし、イギュの顔は険しかった。
イギュは、かつての罪であまり堂々と城に出入りできないのである。
罪とはつまり、捕虜だった時代の人間クエナに対しての狼藉。親となった今では、どうしてこんなひどいことが出来たのだろうというようなことをしてしまったのだ。

そういうわけでイギュは、クエナに姿を見せたら覚悟しておけと獣王直々に言われていたため、城勤めもやめてしまった今では行き辛くてしかたない場所だった。

しかも今は第2子を妊娠中なのである。もし偶然会ったりしたら、こんなボテ腹では咄嗟に隠れられるかどうかわからない。

「にゃあが行きたいのは山々にゃんだが、こっちの仕事で手いっぱいなのにゃあ」

しかし義理の父にそう言われてしまえば仕方なく。
イギュは、城についたらそこらへんの兵士に預かってもらおうと考えて、第1子プローを連れて出発した。




「おかあ!おしろ!おしろ!」

「な、中には入らねぇぞ?ってこら!プロー!!」

父が仕事をしているとよく話に上る城に、初めて訪れたプローは目を輝かせた。そして母の制止も聞かずに城の庭の方に走って行ってしまう。
本格的に母を振り切ろうと思っているわけではないらしいが、身重のイギュには、ちょろちょろ逃げ回るプローを捕まえ切れない。

しかも間の悪いことに、それが起きてしまった。

「う、痛てててて…」

「おかあ?!」

腹を抱えてうずくまるイギュに、それまでが嘘のようにプローが寄ってくる。経験で流石にわかっていたイギュは、心配させまいと子供の頭を撫でた。

「大丈夫だ。少し休めばまた歩ける。いてて…」

そうは言っても家まで持つだろうか。誰かに声をかければ、マヤに連絡してもらえるだろうが、王妃に会う確立があがるようなことはしないほうがいい。
そんなことを考えていたイギュは、突然の息子の泣き声にはっとした。

「うえーッおかあー!しんじゃやだー!!」

「し、死なねぇって!大丈夫、だから…っ」

抱きよせて撫でても、おんおんと犬顔の息子は泣き続ける。痛みも治まらない。
ほとほと困ったころに、庭の向こうから軽い足音が聞こえてきた。

「ははーえ!こっちこっち!」

プローと同じくらいの年の子供と、少し遅れて獣人より背の低い二人組。イギュは慌てて顔を片手で隠れるだけ懸命に隠した。 

「大丈夫ですか?泣き声が聞こえたものですから」

聞き覚えのある声だ。たしか世話をするために残った人間チュヤだったか。そうなると一緒にいるのはもちろん王妃クエナということになる。

「大丈夫です。お騒がせしまして申し訳ありませ、うぅ〜っ」

最後の苦しげな呻きで、大丈夫さは皆無だなとイギュでも思った。人間二人ももちろんそう思っただろう。
クエナらしき落ち着いた声が聞こえる。

「とにかく中に入りましょう。さぁ手を」

「いや!本当に!大丈夫です。きっとすぐ治まりますから!そうしたらすぐに帰りますから」

「でも、いきなり立てなくなるほどの痛みは危険です。城なら設備も整ってますから、ここで産んでいったら」

痛いし、プローは泣きやまないし、顔を隠しているせいで視界も効かないし、イギュはちょっとヤケになった。 

「だめなんスよ…。俺、王妃様に顔を見せちゃいけない者なんです。この意味、わかるでしょ?」

クエナとチュヤは、少し黙ってやっと合点がいったのか、同時に「あっ」と叫んだ。
チュヤのほうはオロオロしている雰囲気が伝わったが、クエナはじっと、イギュを見ている。とても居心地がわるかった。

「すみません。夫の忘れものを届けに来ただけなんです。
許して下さい…。帰らせてください…」

目が熱い。声を震わせた母に、プローがまた「しなないでぇ」としゃくりあげて泣く。
すっと誰かがひざまづき、優しくイギュの手を取り、どかせた。明るくなった視界に、少し涙でにじんでいるが微笑むクエナの顔が映った。

「チュヤ、私はこの人を知らないが、知っているか?」

「え…?」

キョトンとするイギュに、クエナの後ろにいたチュヤが、やけに大声で「いいえ!知りません!」と答える。
クエナはチュヤを見て、満足そうに頷くと「誰か呼んできてくれ」と頼んだ。

「はいただいま!」

「王妃様…!だめ、だめです俺は、あの時の…っ」

どっと涙をこぼすイギュに、クエナは思い返すように少し首を傾げる。

「確かに犬顔の獣人もいたけど、あなたとは似ても似つかないので、違うと思います」

だからそれは俺だってば!となおも言おうとするイギュにクエナはそっと呟く。

「とても、変わったんですね。嬉しいです」

「…ッ王妃さ、ま…!」

感激のあまり、呻きながら泣くという器用なことをイギュは始めた。クエナは背後に回って、そっと腰を擦ってやる。

一方、泣きやまないプローに向かって、獅子耳を生やした少年がビシっと指をつきつけた。

「おい。おまえが泣いたらだめだ!おまえがははーえをまもらなきゃいけないんだぞ!」

「ひっく、ひぅ…、ぼくが?」

「そうだ!だから泣いちゃだめだ」

大きく頷く未来の王を見て、子犬の獣人はひときわ大きくずびっと鼻をすすると、涙をごしごし拭った。

「おかあは、ぼくがまもる!」

「よし!!」

子供同士の微笑ましいやりとりを見て、イギュはようやく体の緊張が解ける。
そしてようやく医療担当の獣人と、どこからか聞きつけたのか、夫マヤがやってきた。

「い、イギュ!大丈夫にゃ?!」

「え?夫って」

クエナは、顔を見せられないと言ったとき以上に驚いている。 
それもそうかもなぁ、とイギュは苦笑いしながら、しかし心は晴れやかだった。

とりあえず、マヤに言いたいことがひとつ。

「大事な商売道具忘れんな、バカ亭主」


*****

子豚な王子様22


週末に更新できるかあやしいので、子豚を書いてゆきます!

*****



次の朝、ティカルが目が覚ますと、プラムの顔がすぐそばにありました。

「・・・」

ずっと抱きしめてくれていたのでしょう。プラムはティカルを足の間に座らせて眠っていました。
うっとりと、目をつぶっていても端正な顔を見つめます。

首飾りがないと子豚の姿になってしまうこと、子供の時に実は会っていたこと。ずっと黙っていたそれらを知られてしまいましたが、プラムは優しく受け止めてくれました。とても心があたたかくなって、くふりとティカルは笑みを浮かべます。

そして、何気なく首飾りを見下ろしたティカルは、はっとしました。
なんと、裸だったのです。

「ぶ、ぶひっ…!」

子豚から人間に戻ったとき、あまりにティカルは感動していたものですから、服が脱げていることにも気付かなかったのでした。
慌てふためきながら、しかしできるだけ慎重に、プラムを起こさないように、抱っこの腕から抜けだします。

一晩中こんな姿でいたのかと思うと、顔から火が出そうです。落ちていた服を拾い、彼が目を覚まさないうちにと身につけていきます。

しかしまだお尻が隠れきっていない状態で、プラムが起きてしまいました。

「…ティカル?」

それもお尻をつんとプラムに向けていたものですから、ティカルはどっと耳まで赤くなります。
起き抜けでしたが、プラムはティカルが何を考えてそんなに赤くなっているのかをわかったようです。まだ少し眠そうに、とろりと笑いました。

「ひぇ!ブヒィっ」

堪らなく恥ずかしくなったティカルは、慌てて服を引き上げ、朝の挨拶もせずに部屋を飛び出しました。



「どうしよう。プラム怒ってないかなぁ…」

お昼過ぎ、お茶の入ったカップをいじりながらティカルは呟きました。反対側に座っているのは、ファファです。

「行って、聞いてみればいいじゃないか。仲いいんだからさ」

一方ファファは眠そうに欠伸を噛み殺しながらお茶を飲みます。実は、オクの指示で一晩中反省文を書いていたそうなのです。
なんで僕がよその国の、しかも王でもない側近の命令を聞かなきゃいけないんだと、はじめは噛みついたファファでしたが、「父王に今回のことをばらしてもいいのか」と言われ、しぶしぶ従わざるを得なかったのでした。

もちろんティカル本人にも、先ほど「昨日はごめんなさい」と頭を下げて謝ったのですが、当の本人はそれよりも、今朝プラムに挨拶もせずに出て行ってしまったことが気がかりなのでした。

「で、でも、恥ずかしいよ…!」 

ファファは眠い目をしょぼしょぼさせながら、しかし昨日のこともあってティカルを放って、また反省文を書かされるのは堪らないので、頑張って話し相手になるのでした。




夜になります。ティカルは、どうにか勇気を出して、いつも日課のお酒を持ってプラムの部屋を訪れていました。

「ティカル、来たのか」

「あ、あの…、うん。今朝は、挨拶もせずに出て行ってごめんなさい」

「あぁ、それは…気にしなくていい」

しかしどうしてか、今日のプラムは昨日のような優しいおおらかな態度ではなく、何かを気にしているようです。おびえているわけではないようですが、しきりに窓をチラチラ見ています。

「どうしたの?プラム」

「いや。ティカル、すまないが今日は…」

酒はいらないと、やんわり帰そうとしたプラムでしたが、ティカルの背後に現れた人物を見て、諦めたように言葉を飲み込みました。

「こんばんわぁ」

「ブヒ?!」

二人しかいないと思っていた空間での、突然の第3者の声にティカルは飛び上がって驚きます。お酒の瓶を取り落としそうになりながら振り向くと、そこにいたのは女の人でした。

ティカルよりも背が高く、胸の大きく開いた真っ黒な服を着た、どことなく迫力のある女の人です。
どっどっと心臓を煩くしながら、ティカルはいつからそこにいたのだろうと、怖々その人を見上げました。


プラムが苦そうな顔をしながら、女性に話しかけます。

「ニータ…。どうしたんだ急に」

「昨日、カーテンを閉めていたでしょう?何をしていたの?
約束でしょう?夜は絶対カーテンを閉めないって」

二―タと呼ばれた女の人は、真っ赤な唇を三日月のようにして笑っているのですが、ティカルにはどうしてか、怒っているようにも見えました。
知らず知らずのうちにプラムのほうへ後退りしてしまいます。

「あぁ、昨日はうっかりしていたな。疲れていて、早く寝たんだ」

平然とそう返すプラム。 女の人はなおもニコニコ笑いながら「そう」と頷きました。
カーテンを閉めていたらどうして悪いのかわかりませんが、納得したらしい二―タは今度はティカルに視線を向けます。

「貴方、最近出来たプラムのお友達ね。
私は二―タ。どうぞよろしく」

そして品のあるお辞儀をしてみせるので、ティカルも慌てて正式なお辞儀を返しました。
二―タは、じっくりと頭からつま先までティカルを見て、そして鼻をじっと見つめます。

「とても強い呪いね。
私の国の管轄外だけど、わかるわ。

無事に呪いが解けるよう、お祈りしているわ」

ティカルは、鼻をぱっと隠して、何と返していいかわからないと言う顔をしました。呪いが解けるとは、つまり鼻が人間らしくなるということでしょうか。
そもそもこちらの国の人は、ティカルの鼻を呪いだとは思わなかったのに、一目でわかってしまうこの人は一体何者なのでしょう。

わからないことが多過ぎて、ティカルは困ったようにプラムを見ました。
プラムもティカルに何か言おうと口を開きかけましたが、しかし発せられたのは二―タの楽しげな声でした。

「さぁ、悪いけど今日は帰ってもらえるかしら?
これから夫婦の時間なの」

「えっ?」

「ニータ。俺たちは夫婦ではない」

夫婦という言葉に困惑するティカルに、即座に訂正するプラム。しかしニータは豊かな胸に流れる豊かな髪を、ひと房、指に絡めて笑います。

「そう遠くない未来に夫婦になるのですもの。いいじゃない」 

「・・・」

ずいっとニータがプラムに押し寄せてきます。ただ近付いただけなのに、威圧感を感じて、ティカルはプラムのそばを、その女の人に渡してしまいました。

「キスして、プラム。いつものように」

囁くように、しかしティカルに聞こえるように、ニータはプラムの頭を引き寄せます。
これ以上見てはいけないとわかっているのに、ティカルは縫い付けられたようにそこから動けませんでした。

「・・・」

同じように動かないプラムに、じれったそうに、ニータが首をくねらせます。

「愛しい人、私のお願いを聞いてくれないの?」

プラムが、とても暗い目でニータに顔を寄せました。ニータが一瞬、視線をこちらに向けて、にっこりと笑います。

「!」

二人の唇が合わさるのを見た瞬間、ようやくティカルの足は動くことを思い出したように、プラムの部屋から出ていきました。 


*****

甘々かと思わせつつの、この展開!

子豚な王子様21


*****

ティカルが光に包まれて、プラムとオクは一瞬、いなくなってしまったのかと思いました。
彼の服だけが、そこに残っていたからです。

しかし、そうではないと、服の中でもぞもぞ動く何かをみつけて、そっとプラムが近付いて、ティカルの服を捲ってみました。

「!」

「ピ、ピキィ…」

プラムも、そして少し後ろにいるオクも目を見開きました。なんと子豚が出てきたのです。
子豚、つまりティカルは、プルプル震えながら、プラムを見上げました。

「ティカル、なのか…?」

その問いに、ファファが「そうですよ。プラム王」と答えます。

「兄さんは、この首飾りがないとその姿になってしまうんです。呪いをかけら…」

「お前に聞いているのではない!!」

プラムの迫力のある声に、ファファは口をパクっと閉じました。しんと静まった部屋で、プラムはそっと子豚に両手を差し伸べます。

「覚えて、いるか…?」

ティカルの少し手前で手を止めて、尋ねます。子豚はおろおろとその手と、プラムを交互に見ました。
一方プラムは、ティカルがとても怖がっていることがわかりました。なので、できるだけ怖がらせないように、ゆっくり優しく話しかけます。

「昔、会っただろう?
もう一度、会いたいと思っていた。

ティカル、こっちにおいで」

「ピィ、」

そろりそろりと短い足を動かして、大きな手に前足を乗せました。そっと持ち上げて、プラムは胸に子豚を抱き締めます。

「怖がらなくていい。

俺は、お前の心の美しさを知っているのだから」

あの、幼い日の思い出が胸に迫ってきます。あの時と同じで、とてもドキドキして、そして、ポカポカして、体に力が入りません。

やっぱり、やっぱりプラムは優しかったのです。
ティカルの心を見てくれていたのですから。

「ぴきぃ」

「オク、首飾りを」

素早くオクが動いて、ファファから首飾りを取り上げると、恭しくプラムに渡しました。
ファファはあんなに優しい声を出すプラムに、驚きすぎて固まっています。

プラムは「かけるぞ」と声をかけて、腕の中の子豚に首飾りをかけました。
途端に先ほどと同じ光が部屋を満たして、そして腕の中の質量が大きくなっていきます。


「…プラム…」

手に触れているものが、滑らかな肌の感触になった頃、呼びかけられてプラムは目を開けました。
プラムの胸にひっついたティカルは、ほろほろと泣きながら小さく「ありがとう」と呟きます。

心を見てくれた彼に、優しく抱きしめてくれた彼に、胸が張り裂けそうです。言葉にこそできませんでしたが、プラムへの大好きが溢れていました。

プラムも、ティカルの細い体をぎゅっと抱きしめて、頭を撫でます。

「苦しかっただろう。もう俺には何も隠さなくていい。

どんなお前も、受け入れてやる」

「ふぇ…、ブヒっ、えぇ〜ん」

子供のように泣くティカルの背を、あやすようにポンポンと叩きながら、ちらりとオクに目配せをします。
オクは心得たように頷き、ささっとカーテンを引くと、ファファを連れて部屋を出ていきました。


二人の抱擁は、ティカルが泣きつかれて眠ってしまっても、しばらく続いたのでした。


*****

とりあえずひと段落。
しかしまだ書きたいことがあるので、まだまだお付き合いください!



誤字と誤字


ししし知りませんでした。
おじさんの漢字に使い分けがあったなんて!はずかしー!

父もしくは母の兄は「伯父さん」で、弟の場合は「叔父さん」なんだそうです。
なのでユーヤはチュヤの兄になるから、伯父さんなんですね。勉強になりました。

また、10ページのハクが服を着る描写が来るになってました。

お恥ずかしながらちょいちょいやらかしてしまうので、気付いたかたは遠慮なく教えてくださると嬉しいです!

ご報告下さったかたありがとうございました!

おじさーん!!


更新しました。
ユーヤ伯父さんを出したかったのでこれで一安心!
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