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子豚な王子様52

暖かくなってきましたね!子豚を書いていきます〜
メール、そして拍手にてコメントくださった方々、本当にありがとうございます!お礼が遅くなってすみません。


*****

闇の中を飛んでいるのか沈んでいるのか、わからないまましばらく、ティカルは下のほうからグイっと引き寄せられる力を感じました。
「空豚?!」
エンもこの移動方法に慣れてきていて、油断していたのでしょう。つるりと手が離れて、ティカルだけまっさかさまに落ちてしまいます。

「ぴぎ!ピーィ!」

ポッチャン、と思っていたより大人しい音が聞こえました。どうやらティカルはまた水の中に落ちたようです。
一番最初にエンと出会ったときは、高いところから水に落ちたため、その衝撃で気を失ってしまったティカルでしたが、今回は目を開き、キョロキョロとあたりを見回しました。
かなり深く、そして澄んだ水の、円形の泉のようです。しかしそろそろ息が苦しくなってきて、ティカルはわたわたと水面に上がろうともがきました。

もう少しで水面、もう少しで空気、と思ったときです。ティカルはどうしてか、そこから先に進めなくなりました。
空がそこに見えているのに、見えない壁があるようにティカルがどんなに鼻を押し付けても、小さな蹄で引っかいても、上がれないのです。

だんだん体が動かなくなってきました。

(いや、嫌だよ…。プラム…!!)
咄嗟に、脳裏にプラムの顔が浮かびました。ニータの呪いを解くために、首飾りを渡したとき、もう一生会えなくなることは覚悟していました。
それでも、このまま死んでしまうと思った瞬間に、それは嫌だと、また彼に会いたいと強く思ったのです。

霞む視界の中で、ティカルの両脇からにゅっと二本の腕が伸びて、見えない壁を叩くのを見ました。ふしぎと柔らかい感触の透明の壁は、驚いたようにすーっと動いていきます。足をばたつかせると思いがけず力強く水を蹴ることができました。ぐんぐん水面が近づいて、

「ぷはぁっ!!」
ようやくティカルは空気にありつけることができました。岸が見えたので、くらくらする頭でどうにかそちらに近づき、手にふかふかの草の感触を感じて、どうにか這って、上半身を陸に上げます。

「プラム…」
生きていれば、また会えるかな?そんなことを考えながら、ティカルは意識を手放しました。

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