ある小さな国の小さな城で、大変大きな事件がありました。
その国の若い王様とお妃さまの間に、子供が産まれたのですが、
なんと王子が、子豚の姿で産まれてしまったのです。
お妃さまは泣き叫び、従者たちはおろおろしました。
誰の目にも、それは王様を快く思っていない者の呪いだとわかりました。
偉い魔法使いを呼びよせて直させようとしましたが、呪いの力が強くて、人の姿に出来ません。
そうしている内に、お妃さまは子豚を殺すように王にお願いしました。
もう、見ているのが辛いのです。あんなものを産んだことを忘れたいのです、と。
王様は悩みました。それというのも、実は、王だけは呪いをかけた人物がわかっていたのです。
その晩、こっそりと城を抜け、王様は森にある一軒の家に向かいました。戸を叩くと、中から深くフードをかぶった女性が出てきました。
「お願いだ。息子にかけた呪いを解いてくれ」
王様は懇願しましたが、女性は頷きません。王様は食い下がります。
「このとおりだ。
あの子には何も罪はないじゃないか」
頭を下げてそういうと、ようやく女性が口を開きました。とても冷たい声でした。
「罪ならあります。あなたが他の女と結ばれて産まれてきたという大きな罪です。
あなたは、私と結婚してくれると約束してくれたのに、あの美しい女と結婚した」
「それは…っ」
王様が何か言う前に、女性はぱっとフードを脱ぎました。女性の顔は、目の大きさが左右とてもばらばらで、鼻はとても上を向いていて、正直にいうと、美しいという言葉はとても当てはまりませんでした。
「私がこんな顔だから、あなたは嫌だったのでしょう?
それなら結婚しよう、なんて言ってほしくなかった!!」
王様は辛そうに顔を歪めました。
「確かに君を裏切ったことになる。でも、聞いてくれ…」
「帰って!」
そういうと、女の人は戸をバタンと閉めて、奥に行ってしまいます。
王様は悩みましたが、しかし諦めて、またこっそりと城に戻って行きました。
そうして、お妃をなんとか宥めて、子豚の王子を彼女の目に触れさせないようにすると約束し、王子を殺すことをしませんでした。
子豚王子は一応「ティカル」と名付けられ、城の、一番奥にある光のあまり入らない部屋で、ひっそりと暮らすことになりました。
知っているのはほんの少しの従者だけ。国の住人たちには「王子は重い病気である」と嘘をつきました。
ティカルは何年経っても、大人の豚になることはなく、ずっと子豚の姿のままでした。
彼を王子として扱ってくれるのは、侍女のピテだけです。
ティカルが産まれた2年後に、また男の子が産まれましたが、彼には何人もの侍女がいて、教育係や専属の医者までいました。まるで正反対です。
それもそのはず、弟王子はまともな人の姿をしていて、それもとびきり可愛らしい子供だったのです。皆はファファと名付けられた弟王子に夢中でした。
「ティカル様。今私は、いくつのリンゴを持っていますか?」
「ピィ、ピィ!」
「大正解ですわティカル様!やっぱり王子は子豚の姿だけど、人間なんだわ。
あぁ、ティカル様にもちゃんとお勉強を教えてくれる方がいらっしゃればいいのに…。
学のない私では足し算引き算が精いっぱいです…。ごめんなさい王子」
そういってシクシクなくピテの膝をつんつん突いて、ティカルは「泣かないで」と慰めるのでした。
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どんななるんだこの話!!