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なんでもない君 13

しばらく間が空いてしまいました。
一気に行きます!

*****



足元が揺れる。
さっきなどは大きな柱がモン目がけて倒れてきて、正直肝が冷えた。

「ウノ!!」

どうにか食堂に辿りつき、扉を蹴破りそうな勢いで中に入る。
しかし返事はない。

モンはすぐに厨房へ足を向けた。
昨日、ウノに「なぜ一度で帰したのか」と問われ、あまりの可愛さについ襲ってしまった場所。


そうだ。可愛いのだ。

すぐにどもってしまう癖も、無意識なのか上目遣いになるところも、
こんな自分にほんの少しでも情けをかけてくれた彼が、

愛おしくて可愛い。

「どこだ!返事をしろォ!!」

吠えるように叫びながら、厨房へ入る。
そこでは、制御を失った火が天井につきそうな勢いで燃えていた。

鍋や、皿が散乱し、割れている。
モンはそれらをガシャガシャ言わせながら奥へ行き、そして、

床に倒れ伏している彼を見つけた。

「ウノ!おい、大丈夫か!?」

駆け寄り、抱き起こす。
頭を打っているなら動かしてはいけないのでは、など、考えつきもしないほど動揺していた。

しかし、転んだだけだったのか、瞼を震わせゆっくりウノが目を開く。

「ん…っ
モン、さん…?」

ほっと息を吐き、モンはウノの頭についた小さな瓦礫や砂を払った。

「出るぞ。この屋敷はじきに崩れる」

「え?!そんな…!」

「理由は後だ。ぺしゃんこになってからじゃ、遅いからな」

慌てるウノの膝に大きな腕を差し入れ持ち上げる。とっさに首に抱きついてきたウノに、こんな時だがモンは嬉しさを感じた。

「裏口はないのか」

「あ、あっちに…、アッ」

煙のせいで視界は良くなかったが、周りの物からウノが方向を示す。
そして、ふとモンに視線を移したとき、彼の向こう側が、つまり天井が崩れるのを見てしまった。

「危ないッ」

「ぅわ!!」

急に飛びついてきたウノに、流石のモンでもバランスを崩す。
後頭部に細い腕が回されるのど、ガラガラという激しい破壊音が聞こえたのは同時だった。




「う、っ…?」

「あ、アレ?」

てっきり、終わったと思ったのだが、思ったより体は軽く。衝撃も痛みもない。
そして二人が恐る恐る目を開ける前に、ウノに取っては聞きなれた、高飛車な声が聞こえた。

「何やってんの!抱き合ってる暇じゃないだろ?」

「スレト…?」

「まったくもー。せっかく生き残ったってのに、先が思いやられるよね」

「ロトワ…、みんなも…?」

まだ状況がわかっていないウノは、突然現れた少年たちにただ首を傾げる。
いや、少年たちもあの紳士と同じく、もはや人の形はしていなかった。

淡く光る、ぼやけた輪郭のようなものが、4つ宙に浮き、ウノとモンを落ちてきた瓦礫から守っている。

「早く行って!これ以上は持ちこたえられないよッ」

「ウノ、来い」

「でも、みんなが…ッ」

再び、モンがウノを抱きかかえる。茫然とするばかりのウノに、いつもの調子の、しかしどこか優しい声が降った。

「僕らの分まで、たくさん生きて、楽しんでね。ウノ」

「待って…!みんなっ」

モンが走り出す。
後ろから「お仲間のこと、ごめんね」と軽い調子で誰かが言ったが、本格的に崩壊を始めた屋敷に、モンは振り向くことができなかった。



「・・・・・・・・・・」

崩れた屋敷を、モンに抱かれたままウノが瞬きも忘れて見入る。
しばらく、モンは声をかけずに待っていた。


やがて小さく、ぽつりとウノが呟く。

「ご、ご主人さま…」

「ウノ…、あの男は…」

真実を話そうとしたモンに、ウノは首を振ってそれを止めた。
そして、掻き消えそうな声で、「知ってます…」と言ったのだ。

ウノは、気付いていた。
紳士が、4人の少年たちが、人であることをやめてしまったことを。

そして、だんだんとその存在が薄く、消えて行きそうになっていっていたことも。

「僕も、いつかそうやって、消えていくと思ってた…

どうして…?
どうして僕を連れだしたの?」


「…わかんねぇさ。お前も昨日そうだったろ?」

涙が溜まっている。モンはいろいろなところがチクチクと痛むのを感じた。
どうすればいいのかわからない。こうして誰かが自分の腕の中にいるなど、いままでなかったのだ。


「ただ、お前に朽ちてほしくなかった。

それだけだ…」

「モン、さん…」

モンの顔は、ほとんどひしゃげているため、表情が解りづらい。しかし彼の耳が、葡萄酒も真っ青なくらいに赤く染まっているのをウノは見た。

何か言おうとしては、口を閉じてしまうモンをじっと見上げて待つ。



モンは、何度か唾を飲み込んだあと、ようやく一言ウノに告げる。

「一緒に来い…」

ひどく緊張しているのは、腕の硬直具合でウノにはわかっているだろう。それはとても恥ずかしかったが、いい返事をもらうまでは離すまいとモンは決めていた。

じっとモンを見ていた視線が外れて、下へ動く。
そして小さく頷いた。

「はい」

どっと、全身に血が巡っていくようだった

「俺のことは、モンでいい。
さん、なんて付けるな」

「はい」

「あと食事は…、
俺からだけにしろ」

「はい…、はい」

「泣くな…」

すん、と鼻を啜って、ウノは目を細めてほほ笑んだ。
その笑顔がまぶしすぎて直視できずに、慌ててモンは上を見上げる。

あっさりと食事を、つまり他の誰かから精をもらうことを禁止したが、思えばなんと丸出しの独占欲だろうとモンは思った。

「だがもし…、俺のことが嫌になったり、使い物にならなくなったら…」

「僕、モンさん以外からは絶対にもらいません!!」

モンが言いきらないうちに、ウノがしがみついてそう言い切った。
どぎまぎしながら、抱きしめ返すと、嬉しそうに頬を摺り寄せてくる。

「何十年も経って、モンさんが死んでしまっても、
僕は精が切れて死ぬまで、モンさん以外の精はいりません」

強い決意を込めた言葉に、モンは「そうか」と答えるしかできなかった。
胸がいっぱいすぎて、話せなかったのだ。

こんな自分と何十年も一緒にいてくれるという彼に、自然と抱きしめる腕に力がこもる。


「…行くか」

「はい。モンさん」


呼び方はそうすぐには治らないようだが、今はそれでもいい。
時間はあるのだ。

彼は淫魔である。精が尽きないかぎり、生き続けられるだろう。
ならば長生きをしなければ、とモンは強く思う。



魔物のような男と人間のような淫魔は、固く手を繋いでくずれた洋館を後にした。



〜END〜
*****

長々と続いてしまいました★
うっく、もうひとエロ入れたかったんだけど、ど、どうして…?!←力不足です

お付き合いありがとうございました!

いつもありがとうございます!


拍手や、さらにはあたたかいお言葉までいただき、いつもありがとうございます!
お返事を返さないのが大変申し訳ないです。すみません!


なんとかぎりぎりで週末が終わる前に更新できました!
やばいよ眠気ふっとんじゃったよ!この後寝ないといけないのになんてこと!
グルがんばれ!私もがんばる!!

ハロウィン!


今日がハロウィンだと思いこんだ結果、ワサビのところに双子が生まれてしまいました!

そうですね。ハロウィンは31日ですね。祝ったことがないので、慌てたぜ★


拍手おコメントにて「蜘蛛は益虫なので殺さないであげてください」と頂きました。
う…ん。彼らがもう少しびっくりしない登場の仕方を覚えて、
全体的なフォルムをもっといいかんじにしてくれたら、なんとかなるかと思います。
ごめんなさい…!


グルとチュヤのほうも週末中に更新できると思います!
ちょっと時間が飛びますので、ご注意をば!





寒くなりました!


お久しぶりです!寒いですね!
こんなときは、どういうわけか我が家には暖を求めて、大きめのクモが出ますまじ勘弁!!

そんなこんなですが、更新です。懐かしい場面が出てきて、ホクホクしました。
そうか、こんな会話していたのかこいつら★

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