うっかり11月1日にスル―してしまったので、11日に滑り込ませます!
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「うわぁあ〜かわいいですねぇ〜!」
「あぁ、いつまでも見ていられそう」
犬頭の獣人イギュは頭を掻きながら「ありがとうございます…」と家にはない見事な装飾が施されたゆりかごを見た。
中に入れられているのは、先日産まれた第三子リンクス。
なんと待望の、猫頭の子供である。
イギュももちろんマヤに似た猫頭の赤ん坊にメロメロだが、彼以上にメロメロだったのが、夫であり城お抱えの服職人マヤと、彼らの息子たちプローとキオンだった。
城での採寸中で、もしくは学校で、やんややんやと末っ子がかわいいと連呼する彼らに、王妃と世話係が見たいと言いだして、イギュの回復を待って今日城にやってきたのである。
「これはプローたちが大騒ぎするのもわかるなぁ」
「あっ笑った!かわいい〜」
呼ばれていたクエナの子ロウとチュヤの子ハクも目じりを下げて覗きこんでいる。当のマヤや兄たちはここにいると末っ子自慢が止まらなくなるので、イギュによって家に置いていかれていた。
そうは言っても、さすがにマヤは連れてくればよかったかなと、王妃を前に言葉が続かないイギュ。
しかも昔、このクエナという人間が捕虜だった時代に彼に無体を働いたことがあったため、どうにも居づらい気持ちがした。
「イギュさんはどこでマヤさんと出会ったんですか?」
「え?!えぇと…この、城で、」
突然のチュヤの質問にイギュは困ったように答える。生活圏内での話にもちろん人間二人が食いつく。
「そうなんですか?」
「はい。まだ新人だった彼が、クエナ様のお部屋がわからずに迷っていたんです」
その頃の記憶を辿っているのか、クエナが「そう言えば道に迷って少し遅れた職人がいたなぁ」と天井を見て呟いている。
「それから?城でよく会うようになったんですか?」
母親につられたのか、今度は獣人の子供一の美人と名高いハクが興味深そうに尋ねてきた。
イギュは「あ〜」と視線を彷徨わせるが、ここで嘘をついてもいずれ、もしくはすでに、夫によって真実が明かされてしまいそうだと思い、正直に答える。
「いえ、俺が…、店まで行きました」
「「へぇ!」」
「「へ〜」」
反応がそっくり同じところはやはり親子なのだなぁと変なことろで感心しつつ、恥ずかしそうにイギュはまた頭を掻いた。
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「つかれた・・・」
「おかえりにゃ!」
「お疲れ様ニャ〜」
「リンクスもお帰りにゃ!」
城から帰ってきたイギュは、夫と息子たちに迎えられて、抱えていた赤ん坊を預けた。兄弟が取り合うように赤ん坊を抱っこするなか、マヤがイギュのところにやってくる。
「大丈夫ニャ?」
「元職場とは言っても、やっぱり勝手が違うな…。
皆かわいいって言ってくれて、嬉しかったけど」
店はもう閉店後なので、一階にはマヤたちの家族しかおらず、イギュはくったりと、マヤが引いてくれた休憩用の椅子にもたれた。
「緊張したかにゃ?少し寝るといいにゃ」
「あ〜そうする。・・・でも」
「にゃ?」
早くも眠そうに目をシパシパさせながら、しかしイギュはマヤを見てトロリと笑う。
「こうして、王妃様に会えて、話が出来てよかった。
マヤのおかげだ。ありがとな」
昔の罪の事は、マヤも知っているため、そのことを察してマヤは神妙な顔でイギュの頬を撫でた。
「にゃーのおかげじゃないにゃん。イギュの愛のおかげにゃ」
「んな恥ずかしいこと言うなよ」
眠そうにクスクス笑うイギュに、ちゅっちゅと口付ける。
「愛してるニャ。イギュ」
「ん、俺も」
そう言ってウトウトと眠りに落ちたイギュを見つめて、マヤは背後でリンクスを奪い合っている兄弟を振り向いた。
「プロー、キオン」
「「ん?」」
「リンクスを頼むにゃ。しばらく一階で遊んでてくれニャ。
あと、仕事道具には触らないように」
普段は仕事中にしか見せないキリっとした顔の父に兄弟は気持ち背筋を伸ばす。
「わかったにゃ」
「まかせてニャ」
大きく頷きあうと、マヤはトロトロと寝てしまっているイギュの背とひざ裏に腕を差し込んで、掛け声もなく、ひょいと持ち上げた。
そしてふらつくことなく、同じくらいの身長のイギュを抱えて、生活スペースである二階に上がっていく。
「・・・」
「・・・」
そんな父と母を見送って、弟は末っ子の頬をつつきながら尋ねた。
「おとうとおかあ、寝たのかニャ?」
兄はうーんと腕を組む。
「おとうがああいう顔をするときは大体、明日のおかあは起きてこないんだニャ」
「にゃんでにゃ?」
「にゃんでかにゃぁ」
首を傾げる兄弟につられて、猫頭の赤ん坊も「にゃ?」と首を傾げたのだった。
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マヤは実はすごく力持ちです。大きい巻いた布とか扱うのでね!
プローとキオンが星座からもらったので、リンクスも「やまねこ座」からもらいました。