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子豚な王子様17


*****


それからプラムは、ティカルの隣国へ工事の責任者や、その土地に詳しい人などを集めて、あっというまに工事の段取りをつけてしまいました。

あっという間といっても数ヶ月かかりましたが、何年も水不足に悩んでいた国は、何もせずに攻撃するばかりだったかつての王族よりも、プラムを支持しているそうです。
それらの話は、毎晩、ティカルがプラムにお酒を持っていった時に聞かせられました。

他にもこの国の祭りの話をしたり、逆にティカルの国のことを話します。
プラムの話は面白く、退屈しないので、町に連れて行ってもらえるのがいつか、はっきり言われなくてもティカルはずっと待っていました。

そしてある晩、プラムが突然「明日、町に行くぞ」と言ってきたのです。

「ブヒ、明日?」

「あぁ、夜だけどな。明日はこの前話したとおり、収穫祭だ。お前の見たがってた露店もいっぱいある。
それとも明日は、都合が悪いか?」

いたずらっぽくそう言って笑うプラムに、ブンブンと首を振り、ティカルは「大丈夫だよ!行くよ!」と鼻息荒く頷きました。


翌日、ツツムへ夜に外出することを言うと、ツツムは「ははぁん」と言って笑いました。

「誰と祭りに行くつもりだ?ん?」

「あ、えと、だめ!秘密なの!」

秘密と言っている時点で、名前を言えないような人物と言っているようなものでしたが、王様と毎晩楽しく語らっているというのはツツムも知っていたので、わからないふりをしてあげました。

「そうか、気を付けて行けよ」

「うん!」


夜になり、ティカルはプラムの部屋へ行きました。すると、旅人風の服に身を包んだプラムが待っていて、さっそくティカルにも服を押しつけます。

「これに着替えろ。それから、悪いが抜け道を通るまでは目隠しをしてもらう」

「うん。いいよ!」

ティカルはいそいそと準備された服を着るべく、勢いよく使用人の服を脱ぎました。それを一瞬、プラムがぎょっとした顔で見ましたが、男同士でどうして驚くことがあると自分に言い聞かせ、旅人風の衣装の着方がわからないティカルを手助けしてあげました。

最後に、本来は旅人たちが砂や埃から顔を守る頭巾で目だけを露わに顔をすっぽり隠してしまえば完成です。

「僕、ちゃんと旅人みたいに見える?」

「あぁ、お前は普段から顔を隠しているから、違和感がないな」

「ふふ、プラムは顔を隠してても、目が王様ってかんじだね」

プラムの青い目はいつもキラキラしていて、力強い輝きを宿しています。それをそのまま言うと、プラムは黙ってしまいました。

「ぷ、プラム…、大丈夫?」

そっと胸を押さえるような仕草をして、プラムは「大丈夫。ばれないように気を付けなきゃな」といい、ティカルに目隠しを渡しました。
布で視界を遮られたティカルは、プラムに手を引かれてそれからしばらく歩きます。

秘密の抜け道は王様の部屋から繋がっているようで、故郷のお父様の部屋にもあるのかなぁとティカルはぼんやり考えていました。
そして、ティカルの耳に賑やかな音楽が、よく利く鼻にはおいしそうな匂いが感じられるようになり、ティカルは考えを中断させて、祭りに胸を高鳴らせます。

「ついたぞ」

抜け道は誰も住んでいないどこかの小屋に繋がっており、ティカルはそこで目隠しを外しました。そしていよいよ、ティカルはお祭りの町に繰り出したのです。

「すごい!夜なのにこんなに明るいよプラっ」

「し、俺の名前は呼ぶな。今日はヴィッツと呼べ。俺の仮の名前だ」

「ブヒ。そうだね」

口をパシっと塞がれて耳元でプラムが注意します。直接耳にあたる息がくすぐったくてティカルはちょっとゾクゾクしました。
こくこく頷くティカルにプラムもこっくりと頷き返して口を解放します。

「はぐれるなよ?」

「うん。わかったよヴィッツ!」

確認のように名前を呼ぶティカルに、プラムもくすぐったそうに笑って、町の人でごった返す大通りを歩きはじめました。

初めての外の町は、ティカルには別世界のように感じられました。
皆、着るものこそ綺麗ではありませんが、誰も彼も輝くような笑顔です。今年はとくに豊作だったようで、例年より盛り上がっていると誰かが歌っていました。

町を飾る明るい提灯やかがり火が、大道芸人や、音楽を奏でる人、そして踊る人たちを愉快に照らします。
途中で、踊る人たちを眺める輪にいたティカルまでも、大柄なマダムにひっぱりこまれてしまい、見よう見まねで踊ってみると、これがまた楽しくて仕方がないのでした。

「プラっ…ヴィッツも踊ろ!」

本当はこの踊りは男女で踊るものなのですが、ティカルは知りませんでしたので、お構いなしにプラムの手を引きます。 プラムは驚いていましたが、苦笑しながらも一緒に踊りの輪に入ってくれました。

踊りながら、プラムが尋ねます。

「楽しんでるか?」

「うん!こんなに楽しいの初めてだよ。遠くから見てるより中に入った方がずっと楽しい!」 

ティカルが興奮で頬をぽっぽと赤くしながらそういうと、プラムは満足そうに「そんなに喜ばれると、連れてきた甲斐があるな」と言ってティカルの手を取り、器用にターンさせました。

目立ち過ぎるのはいけないので、1曲で踊りを止め、露店のあるほうに戻りましたが、ティカルの心はずっと踊っているときのように弾んでいました。

すると、露店商人ではない町の少女が、カゴにいっぱいの花を入れて、人々に配っているのが目に留まりました。

「あの子はどうしてお花を配っているの?」

そっとプラムに尋ねると、プラムは面白そうに「もらえばわかる」と言います。頷いて少女に近付くと、彼女はにっこりと笑って「何色にしますか?」と色とりどりの花を見せました。よく見ると、本物の花ではなく、紙に色を付けて花のように折り上げたもののようです。

「えと、じゃあ青を!」 

「俺も青を」

すると少女はいたずらっぽく笑って、「お祭り楽しんでくださいね。旅人さん!」と言って花を渡しました。
握っていると紙がふやけてしまうので、プラムが器用に、茎になっている部分をボタンの穴に差してくれます。プラムはポケットの中に入れたようでした。
さっきプラムは、「もらえばわかる」と言いましたが、わかるにはもう少し時間がかかるそうです。 

数え切れないほどある露店を見て歩きながら、ティカルとプラムは町の中で一番の広場のほうへ行きました。


*****

「ちくっと刺さる


棘が痛い」と歌ってしまいそうになりつつ、王子と白い子を更新しました!

前回の更新で、獣王とクエナのエロエロ展開かと思わせておいて、ちがうんかい!という展開です。
ネタバレになっちゃうけど、今日の側近とチュヤもそんなかんじです。王子とハクがメインのお話なので、ご容赦を。

次はもっと成長する予定です。さて、ハクはワシ頭にするか否か…。
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