「どうして、…いっかいで帰したんですか」
「・・・」
人のものではない心臓がドクドクと脈打っている。しかしモンは、顔をそむけて答えない。
「ぼ、僕はそんなに…っ、だめですか?」
「だめ、って、お前な…」
必死に理由を聞きたがるウノに、モンは溜息をついた、
それが呆れているようにみえて、ウノはよろ、と後ずさる。
標準装備であるはずの色気すらない淫魔など、誰が相手してくれるだろう。
そう思い、へたりこみそうになったとき、とうとうモンが口を開いた。
「別に、駄目ってわけじゃねぇよ」
「え?」
「…よかったぜ」
「ほ、ほんとうですか?」
「何度も言わせるな。あの後俺が、どれだけ苦労したと思って…」
そこまで言って、モンははっとした顔になった。言うつもりはなかったのだ。
案の定、ウノは首を傾げてモンを見上げている。
「一回では、…足りなかったってことですか?」
「・・・」
「じゃあ、どうして、ですか??」
さっきからずっと疑問詞ばかりだと思いながらも、ウノは知りたいという欲求を、どういうわけか抑えられなかった。
一度、モンが舌打ちをする。
そしてぬっと大きな手がマントの下から現れ、ウノの手首を握った。
「あ、あの…?」
そのまま、食堂の奥へぐいぐいと引っ張られながら、彼が厨房を目指しているのだと察する。
普段はウノくらいしか立ち入らない場所だ。
乱暴にドアを開け、モンは壁に顔を押しつけるようにウノを抑えつけた。
「あっ…!」
尻を探る手に、ウノがびくりと震える。
丈の長い服をたくしあげ、下に履いているものを蹴り脱がしながら、モンは時折、「ちくしょう」とか「なんでこんなに…」と誰かにむかって悪態をついていた。
「ひゃっ、あぁ…ッん、ん…」
ちゅくりと下穴に唾液で濡らした指が差し入れられる。ウノの首元を、こらえられない快感が走った。
「んぁッ、はあァー!ッん、あんッ」
グツグツ、と太い指が出入りするたびに、ウノはつま先立ちになって壁に縋る。
しばらくそれが続き、モンが指を引き抜いたとき、ウノは自力では立っているのもやっとだった。
しかしその姿勢のまま、モンは挑んできた。
「ひきぅッ…、あぁっ、あん!あぁーッ」
きゅんきゅんと穴が引き締まる。そのたびに中にあるものがビクと脈打つのが、嬉しいとウノは思った。
「悪くねェよ…最高だ」
突き上げを止めないまま、突然モンがウノの耳の後ろで話しだす。揺さぶりが激しくて振りむけないウノは開きっぱなしの口をどうにか閉じて、彼の声に耳を傾けた。
「一晩中だってやっていたかったさ…。でもよ、お前はあの男が好きなんだろ?」
肩が跳ねる。それが快感なのか別の意味なのか、確かめることをしないまま、モンは話し続けた。
「好きなやつのいる相手に、何度もできるか…
それに、自分の顔のひどさは俺が一番わかってる。
これを売り物してる女でも、泣いて嫌がるんだ。
最中に、吐いた奴もいやがったな…、あの時は本当にまいったぜ」
まだ、二人のどちらも達していなかったが、モンは動きを止めた。
ず、とまだ熱いそれが抜かれ、ウノはゆっくり振り向く。
モンは虚脱感に包まれて、ただ立っていた。
人の子とは思えない顔の男が、奥の方にある目でウノを見る。
ウノがその目が、青がかっていることに気付いたとき、
彼はモンの、半分ひしゃげている口に、キスをしていた。
*****
いろいろ諦めてるモン。