帰ってきた紳士は、出迎えにきた少年たちの向こうで気まずそうに立っているウノを見つけた。
「ウノ、どうしんたんだ?」
「あのね、昨日ウノは、あの旅人に食事させてもらったの」
ウノが答える前に、少年の一人が答える。紳士は「おや、」と少し驚いた顔をした。
ますますうつむくウノに、他の少年が「でもねぇ」と呆れた声を出す。
「あの旅人、やっぱり変だよご主人様
たった一回でウノ、帰されちゃったんだってさ」
「ウノの色気が少ないんじゃないの?」
少年たちはその後しばらくきゃっきゃとはしゃぎながら、ジトリやテトラのことなども話し、やがてそれぞれの男たちのもとへ戻って行った。
「ご主人さまっ、僕…」
「さっきの話、本当かい?」
ようやくゆっくり話せるようになり、ウノは急いで紳士に近寄る。
問いに頷くと、紳士は「ふむ」と顎に手を当てた。
「あの、っ僕、自分から行ったわけでは…」
「よかったじゃないかウノ」
自らモンの元に行ったのではないのだと言いたくてウノは口を開くが、途中で遮られ口をポカンと開ける。
紳士は、嬉しそうにウノの頭を撫でた。
「あの方は見かけより、ずっといい人だ。
よかったじゃないか」
「い、いい人…?」
紳士の言っている意味がわからず首をかしげている間に、ろくに話せないまま彼は自室に入って行ってしまった。
「・・・」
ウノは紳士に、彼以外の男に抱かれたことを釈明して、嫌いにならなかったか確認したかった。
同時に、昨日のことを「大変だったね」と慰めてほしい気持ちだったのだ。
それが、どういうわけか「よかったね」と言われてしまい、茫然とする。
しゅんと肩を落としながら、ウノは仕事をしに、厨房へ向かった。
「・・・」
日が昇り、食堂にまず姿を現したのはやはりモンだった。
「・・・」
気まずい空気のまま互いに一言も話さず、ウノは機械的に給仕をし、モンもそれをもくもくと食べる。
あっというまに平らげ、モンはぐっと茶を飲み干すと、ようやく口を開いた。
「今日…」
びくりとウノの肩が跳ねる。呼ばれると思ったらしい。
モンは呆れたように溜息をつくと、続きを話した。
「出発する。あとの二人は好きにしろ」
「え…?」
昨日の夜ぶりに、視線が絡んだ。モンは少し何かを押し殺すような顔をして、別のほうを向く。
また沈黙がしばらく続いた。
ウノの頭の中に、先ほどの少年の一言が思い出される。
―ウノの色気が少ないんじゃないの?
そうなのかもしれない。客から精をもらわず、ずっと紳士だけだったので、他の4人に比べたらずっと色気は足らないかもしれない。
しかしそうなると、紳士にも同じように思われているのではないかと不安になった。
「ど、どうしてですか…?」
「あ?」
ガラの悪い声にすくまりそうになる肩を叱咤して、ウノは勇気を振り絞った。
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こんなに長くなるとは思ってなかったんだ。ホントだよ★