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神域第三大戦 カオス・ジェネシス86

「貴方が思うようになさればいいですよ、キャスター。あの御方とは、それがちょうどよいです」
「…?ちょうどいい、ってのは……」
「慣れない思いやりをしてみたり、考えを読もうとしたりすると、あなた方は裏目に出る。そう占いに出ています」
「つまり自己中で殴りあった方がいいと」
「…君はもう少し表現を選ぼうね??」
リンドウのアドバイスにクー・フーリンは驚いたように目を見開いた。やいのやいのと面前でじゃれ会う凪子とリンドウのことは目にも入っていないように、そのまま虚空を見つめている。
「きゃ、キャスター?」
恐る恐る話しかけた藤丸にびくり、と肩を跳ねさせ、藤丸に視線を向けたあと、彼はへにゃ、と呆れたような笑みを浮かべた。その呆れは自分に向けたものか、それともルーに向けたものか。
「そうだな!知ったこっちゃねぇってもんだ!…俺はルーの方に行きたい。構わねぇか、マスター」
「うん、いいよ」
「は、おいおい、もうちょっと迷ったらどうなんでぇ。…ありがとよ」
「……。よし、じゃあそういうことで。なら一旦、お互い作戦会議と行こうか」
切り替えの早さは戦士ゆえか、生来の帰来ゆえか。リンドウの言葉にあっさりと覚悟を決めたクー・フーリンに凪子は僅かに驚きつつも、それならそれでいいかと自分も話を先へ進めた。異論はなかったようで、面々が頷きで同意を返してくる。
ひょっこり、と、ホログラムのロマニの後ろからダ・ヴィンチが顔を覗かせた。
『こちらとしてはそのバロールの情報をできる限り得ておきたいところなんだが、いただけるかな?』
「あー。この通信機、マイク複数あったりする?」
「あ、予備のものなら、一応」
「じゃあこれこうしてー…音声魔力で接続してー…売り物にならない石を土台にしてー……それから色々して、あちちんぷいぷい」
ルーが戻ってしまった以上、ルー側の打ち合わせは泉でやることになるだろう。だが通信機は泉のある洞窟の魔力密度に耐えられない可能性が高い。
そこで凪子は、ダ・ヴィンチからの打ち合わせに同席したい、という打診に答えるべく、通信機の予備のパーツをマシュから貰い受けた。鞄から売り物にならない端切れのような石の欠片と土台とする木の板、魔術加工用の水銀を取り出すと、手早くマイクに細工を施す。
時間にして凡そ3分、クッキング番組もかくやというスピードで目的のものを組み上げた凪子は、テレレレッテレー、と自分で効果音を口にしながらそれを掲げあげた。
「はい、マイクをあの泉に耐えられるくらいの強度にしたし、石を介して同じように通信が作用してホログラム照射されるようにしたよ。サファイアで目がわりのものも作ったから、そっちの画面には分割で映ってんじゃないかな」
『わ!!まさにその通りだが…いや君、薄々思っていたがとんでもなく器用だな!?』
凪子の言うとおり、破片のなかでも一番大きい石が瞬いたと思うと、逆円錐の形にホログラムが投影され、そこにダ・ヴィンチの姿が浮かび上がった。同行している面々はもはやこの程度で驚きはしないのか、半ば感心したように、半ばもはやいっそ気味が悪いとでもいうように凪子と即席通信機に目をやっていた。
ふふん、と凪子は鼻をならす。誉められるのは嫌いではない。
「そらまぁ、基礎を覚えたら後は応用やるしかないから器用にもなりますよ。悪い気分ではないがな!さて、それでそっちはそっちで通信して打ち合わせてくれ、OK?」
『あぁ助かる。じゃあ対バロールの打ち合わせには私が、深遠の、の打ち合わせはロマニに任せるとするね』
「よし、それじゃあまた後で!戦いは嫌だけど頑張ろうか!」
「それじゃ、行ってくる」
「いってら〜」
カルデア側との役割分担も簡潔に済ませると、簡易通信機を手に、ルーの戦闘補助に加わるとしたサーヴァント3名は姿を消した。
家に残されたのはリンドウと凪子、ヘクトール、藤丸、マシュとなった。ヘクトールらからは少し離れたところに座っていた凪子は、一旦3人の近くに移動して座り直した。
「よし、じゃあまずはアレのおさらいから行こうか。リンドウにもばれちゃったことだし」
「!!あの…隠しておきたかった、ことだったのでしょうか」
ばれた、という言葉にマシュが恐る恐るといったように問う。話してしまったのはクー・フーリンではあるが、止めなかったという意味で同罪だ、とでも言いたいのだろうか。
凪子はそんなマシュの視線に気が付くと慌てて手を振った。
「ん?いや、責めてないよ!?まぁ確かに話す気はなかったけど、その気持ちも話してなかったし、占われたらばれた話だし。それにそんなみっともない話ばらされて困るのこの時代の私だしな!はっはっは」
「……凪子さんて、怒ってるのか怒ってないのか、よくわかんない人ですね」
「ま、マスター…」
怒っている、と思われていたのだろう。意外そうに、そして困ったように正直な言葉を口にした藤丸にヘクトールは脱力していたが、凪子はコロコロと楽しそうに笑った。
「ふふん、よく言われる、よくわからんて。まぁでもそんなもんでしょ、他人って理解できないもんだし」
「その、リンドウさんを巻き込みたくないだろう、と思っていたので…」
「…まぁ、うん、そりゃあ」
マシュの言葉に、リンドウからじとりとした視線を向けられているのを感じながら、凪子は曖昧に言葉を紡いだ。
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