2016-8-1 21:52
「(………としたら、あんなものを産み出そう、なんて思ってる奴を放置していいのか…)」
すぅ、と凪子は目を細めた。言峰は恐ろしい勢いで麻婆を平らげ、凪子よりも先に店を出ていった。残った麻婆をちまちま口に運びながら、そんなことを考える。
「(…、人理に介入するのは、嫌なんだけどなぁ…逆に、この思惑にすら気が付かない魔術協会大丈夫って感じだけど……)」
「冷めるぞ?」
「えっ、あっ、おっおぅ??」
自分はどうすべきなのか、っていうか魔術師ども気が付けよバカー、などと考えていると、不意に呆れたような声が上から降ってきた。話しかけられることがあるなどと思わなかった凪子は驚いたように声を主を見上げた。
「わぉ英雄王。何してんの中華料理屋で」
そこにいたのは、なぜかギルガメッシュだった。ギルガメッシュはつまらなそうに凪子を見ながら、なぜかその向かいに座った。
「何、言峰を見かけたついでに覗いてみれば貴様がいたからな」
「あら、お仲間なのにどこで何してるか把握してないの?」
「俺とあやつは仲間ではない。一々あれがどこにいるのかなど知らんし、興味もない」
ギルガメッシュはそういって足を組んだ。以前見たときと比べて表情はつまらなそうで、その物憂げな表情は美形に磨きをかけている。
「ふぅん。じゃ、そちらさんは何してたの」
勿論、凪子にはそんなことどうでもいいことなのであるが。
ギルガメッシュは肩をすくめた。
「聖杯戦争にろくな動きもないからな、退屈している」
「まぁ、まともにバトルやってんのランサーくらいだもんねぇ」
「た・い・く・つ・だ」
「?……え、あ、何、私に紛らわせろって?」
「また相手をせよと命じたであろう。我を興じさせるには足りないともな」
がっ、と、ギルガメッシュの手が凪子の顎をつかむ。凪子はもぐもぐと咀嚼を続けながら、困ったように眉間を寄せる。
「…、そう言われてもいつバトルがあるか分からんし」
「貴様の都合など知らん」
「どいひ」
「………、だがそうだな。それが気になって我の相手が出来んというのなら、明後日だ」
「明後日?木曜日?」
つい、とギルガメッシュの手が離れた。ぐい、とコップの水を飲み干してそう聞き返せば、ギルガメッシュはぼすん、と背もたれに体を預け、腕を組んだ。
「その日は何もない」
「なんで分かる………え、まさか千里眼持ち?」
「まぁな」
「うわずっるぅ…」
「わざわざ教えてやったのだ、くだらんものだったら許さんぞ」
「おお怖い」
ぱくり、と凪子は最後の麻婆を口に含んだ。ようやく食べ終わった。
「その辺はご心配なく、楽しめそうな方法は考えてあるよ」
「ほう?」
ごちそうさまでした、と、ぱちんと手を合わせる。ギルガメッシュは意外そうに凪子を見た。
「ついでに今日明日何があるか教えてもらえたりする?」
「たわけ、そこまで気前よくはないわ」
「残念。じゃあ木曜日、どこに行けば?」
「教会にくると面倒だな。…よし、新都の公園にこい」
「前回の決着場所?」
「そうだ。昼にいく、我が行くまでには準備を整えておけよ」
「ん、オッケー。たのしみにしといてね」
ギルガメッシュはそれだけ言うとさっさと店を出ていってしまった。
凪子も支払いを済ませ、店を出る。
「…っぁ〜辛かった……。まぁでも、ないとは言わなかったから、何かしら今日明日はあるんだろうな」
学校の結界は、基盤を壊されている様子はあるが発動しそうな気配はない。あそこはまだ動かないだろう。
「…、やっぱ寺張ってるのがいいのかなぁ?うーん、分からんのう」
凪子はごそごそ、と鞄を探った。中華料理屋、泰山に入る前に買っておいた、折り紙を取り出す。
「ま、だったら午後は使い魔折り鶴作って適当に散開させておいて、何かあるまで寝よう!厄日は寝るに限る!」
凪子はそういって、新都のホテルへと足を向けた。