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神域第三大戦 カオス・ジェネシス80

「…じゃあ、通信が繋がらないのもそのせい?」
「そうかもしれねぇな。呪詛なら呪いってことだろう、後で春風に見てもらうか」
「………また凪子さん頼りになっちゃったな」
「?」
どこか意気消沈したように呟いた藤丸を、クー・フーリンは不思議そうに振り返った。マシュも似たような表情を浮かべているものだから、何か凪子が話題になっていたのだろう、と察したクー・フーリンは子ギルに目を向けた。
子ギルはクー・フーリンの視線に気が付くと、困ったように笑って肩を竦めた。
「今までの色々が彼女の力に頼ってばかりであることに負い目を感じているそうですよ」
「……へぇ、そうかい。相変わらずだなぁ、マスター」
「わっ」
クー・フーリンは呆れたように、だが柔らかい笑みを浮かべるとわしゃわしゃと藤丸の頭を撫でた。きょとんとする藤丸に、ニッ、と口角をつり上げて見せる。
「たまたまあいつにしか出来ないことが続いたってだけだ。それに、あいつがいたから巻き込まれた側面だってあるだろ。今回の特異点は色々と妙なんだ、こういう時は戦えるやつに任せときゃいいんだよ」
「キャスター…………」
「あぁ!そう、今回の特異点はイレギュラーだらけだねという話もしていたんだよ」
「?そうなのか」
クー・フーリンの言葉に全て納得したわけではないにしても、胸のつかえがおりたような顔を浮かべる藤丸に、ぽんぽんと頭を叩いてやる。そしてそこへ、思い出したようにマーリンが口を開いてきた。
尋ね返すクー・フーリンに、マシュが慌てて頷いて見せる。
「現地召喚されているサーヴァントのお二方がどちらもイレギュラーな召喚だ、と。子ギルさんは元より、マーリンさんも…」
「そういや、死んでいないのにおかしい、みたいなこと言っていたな」
「話を聞けば、レイシフトも異常だったそうじゃないか。だから一旦通信しよう、となったんだが、ご覧の有り様でね」
「ふん……で、ヘクトールはどうした?」
「なんだい?」
「うぉっ起きてた!?」
成程、と頷きながら話を聞いていたクー・フーリンだったが、ずっと寝続けるヘクトールが流石に気になり尋ねてみると、意外にもヘクトールから返事が返ってきた。
驚いた藤丸の声にぱちりとヘクトールの目が開き、彼はへらっ、と笑った。
「流石に疲れちゃってねぇ、魔力の回復に務めてたのさ。通信機にしても俺に出来ることはなさそうだったし」
「あ、じゃあずっと起きてた…?」
「安全とも限らないところで、そんな本気で寝るわけないでしょ」
「あー…なら大丈夫なんだな、ルーの攻撃まともに食らってたからその損傷でもあるのかと」
「…………あの、少しいいかい?」
やんややんやと言葉を交わすクー・フーリン達を見ていたリンドウが、ふ、と口を開いた。面々は口を閉ざし、リンドウを振り返る。
「…彼女は確かに、雷神タラニスと光神ルーともめた、とは言っていたけれど…彼らを味方として助けたからには、他に敵なる存在がいるということだ。それを彼女ははっきりと私には言わなかった、誰なんだ?」
「………あー…………」
クー・フーリンはリンドウの問いかけに、曖昧に言葉を濁した。凪子がわざわざ言わなかったことを、ここで言ってしまっていいのか分からなかったからだ。凪子が傷付くことを厭わずに前に出ることを悼んだ姿を見ていたから、なおのことに。
リンドウははっきりとしないクー・フーリンに僅かに目を伏せ、だが、その場に腰を下ろしてしまった。
「彼女が言わなかったことを気にしているのなら、気にする必要はない。それでも貴方が言わないというなら、占いで見るだけだ」
「…あんたがあいつを悼んだように、あいつもあんたを思っているから、とは思わねぇのか」
話さずとも暴くという、一見強引な手段を口にしたリンドウにクー・フーリンは眉間をひそめたが、リンドウは怯むことなく彼の目を見返してきた。
「そうだとして、どうせ私には残りの命がほとんどない。言っただろう?放っておいて死ぬ方が心残りになると。……私の死を厭い、神殺しを決意するような子だ。安らかに死ぬことに邪魔なのだと言えば、分かってくれる」
「それは………」
「彼女に対する甘えだと?それとも、卑怯だと思うかな。確かにそうかもしれないね、けれど、私は彼女に誠実なまま、死にたいのだ。この時代の…行方不明の彼女の為にも。私は彼女に対してだけは、誠実にあり続けたい。それが友として彼女に出来る、最期のことだから」
「…………わぁったよ、話してやる。あいつが説明で省いたことも全部な。その代わり、その事であいつを責めてやるなよ。お前に怒られたとき大分しょげた顔してたんだぜ、あいつは」
「…そうか。いいだろう、承知した」
リンドウの根気に負けた。クー・フーリンは長くため息をつくと、リンドウに向かって座り直した。
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