2017-1-7 16:54
ギルガメッシュが凪子を追うように迷いなく魔方陣に飛び込めば、すぐさま別の場所に放り出された。着地した途端、ずずん、と大きく大地が揺れる。
それに顔をあげれば、遠くに見えていた赤い巨人がかなり近くに見えた。巨人の足元近くに飛ばされたらしい。
ぐるり、と周囲を見渡せば、少し離れたところに凪子を見つけた。凪子はギルガメッシュを見つけると、ちょいちょい、と手招きした。
「こっちこっち。こっちからならよく見えるよ」
「………」
凪子に促されるまま、少し小高くなっているところを登ると、切り立った崖の上に出た。確かに、そこからなら赤い巨人の戦いがよく見えた。
周囲を赤い巨人よりかは小さい三体の白い精霊が飛び回り、時間差で攻撃を与えている。赤い巨人の正面には、時臣が「歩く者」と称した黒いかたまりは、足と胴体と口しかない巨人のようで、赤い巨人に体当たりしては噛みつき、巨人の動きを止めている。海の男神という青い巨人は海からは出られないのか、巨大な銛のようなものを赤い巨人の背中めがけてぼかすか投げて突き刺している。
「…なすすべがないとはまさにこの事よな」
ギルガメッシュの口からあきれたようなそんな言葉が漏れる。
全くその通りである。赤い巨人には、もはやなすすべがなかった。このまま消滅するのも時間の問題だろう。
「さてあちらをご覧ください」
「?」
凪子の言葉にギルガメッシュは視線を崖下に向ける。そこには、赤毛の仲間とおぼしき魔術師の姿が何人かいた。だが悲しいかな、ギルガメッシュを襲った魔物や周辺の村の騎士に襲われているらしい。防御結界は張っているものの、それでも多勢に無勢、こちらも長くはもつまい。
「なんだぁ、派手に魔術妨害とかしてきたわりには大したことないなぁ」
つまらなそうに凪子はそう言う。ギルガメッシュも同様につまらなそうに目を細めた。
「余興にすらならんな。あの村の男どもの道化の方がまだましというものよ」
「ははっ。まぁ、世界の防衛力は大したものだろう?」
「…抑止力や守護者のことか?」
「ん?まぁ、似たようなもんかね。まぁ、世界というものは自分の存在証明を自動で行うもんだってことだね、例えそれが作り物の世界であっても」
「…確かに、固有結界でありながら正確には貴様の世界ですらない、というのはお笑い草よな」
凪子はギルガメッシュの言葉に困ったように肩をすくめた。
オオオ、と雄叫びのような音が響くのと同時に、赤い巨人が崩壊していく。
「思いの外あっさり終わっちゃったな、ここの人たち逞しーい」
「…、貴様、最近大聖杯に関与したか?」
「へっ!?」
ふ、と。ギルガメッシュは思い浮かんだ可能性を、無意識のうちに口にする。
気にするまいと思いながらも、どうしても気にかかる時臣の言葉。ぐだぐだ引きずるのは絶対にごめんだが、どうにも解決の糸口も見えない。
そこでふ、と思い当たったものが、あった。
ギルガメッシュが凪子の方を見れば、凪子は仰天したようにギルガメッシュを見ていた。
「………なんかあった?」
「時臣がな。妙なことを言っていた。“この世界の時臣”であるならば知り得ないことを、だ。貴様はそもそも知らない話な上に貴様の仕業でもないことは先程確認した。となれば、思い当たるのはアレくらいよ」
「…何言われたか知らんけど、大聖杯なら知ってることなの?それ」
「我が肉を得て今もいるのはアレのせいのようなものだからな。知っていても不思議ではなかろうよ。で?関わったのか、関わっていないのか、とく答えよ」
「関わったよ。身体の調子戻すのに行った。あそこ、冬木の一番強い霊脈みたいなもんだから」
「そうか」
ではそのせいか、とギルガメッシュは呟き、あきれたようにため息をついた。