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神域第三大戦 カオス・ジェネシス78

「…もう一つの星、あるいは星の内側があの固有結界だというなら、確かに…ひっくり返して存在証明を果たすような芸当が出来るのも不思議ではないが…」
クー・フーリンはどこか恐る恐ると言ったようにそう言い、視線を凪子に向けた。凪子は視線を落とし、目を見開いたまま、視線をさ迷わせている。
ルーはそんな凪子の様子に目を伏せ、垂れてきていた前髪を再度かきあげた。
「…ただ、そうだな。最初にも言った通り、これはあくまで推測の域を出ない。信じる信じないは好きにしろ」
「…………お前が話せる程度の確信を持ってるようなことなら、早々違うことはないだろうが」
「それでも今回はものがものだ。確定的な証拠はないに等しい。さて、推測の話はここまでだ。今後の話にしたいが、いいか、春風凪子」
「おいルーよ、もう少し時間をやっても……」
ルーはあっさりと話を切り上げてしまうと、話題の転換を提案してきた。今だ混乱している様子を見せる凪子を気遣うようにダグザが待ったをかけたが、すぐにぶんぶんと凪子は首を横に振った。
まだ受け止めきれてはいないし、混乱もしているが、だからといってずっと混乱していたところで意味もない。凪子はばしん、と頬を手で叩いた。
「…いや、配慮はいらない、大丈夫だ。ただ、今後の事となるなら、カルデアが同席している場にしたい。というより、今後の話をするというなら、手を組んでくれるってことか?」
「その決定も含めてだ。…それくらいの譲歩はしてやろう」
「それはありがたい」
手を組むかどうかを考慮にいれる、という譲歩を見せたルーに、凪子は素直に礼を述べた。初めは提案しないうちから断ってきたルーだ、同盟を考えてはくれるというだけでも、大層な譲歩だろう。
クー・フーリンも僅かに胸を撫で下ろし、ダグザも小さく何度か頷いた。
「…とはいえ、お互い全快はしていない。私は今の状態で出るとリンドウに怒られちまう、とりあえずキャスター、リンドウたちにルーが目覚めたことを伝えにいってくれるか?」
「あぁ、分かった」
「………そういえば、タラニスも目覚めないのか」
クー・フーリンが凪子の言葉に頷き、出ていった後にルーがポツリと呟いた。確かに、やいのやいのと隣でルーと凪子が散々騒いでいたというのに、タラニスは目覚める兆しを見せない。
ううむ、とダグザが小さく唸る。
「思いの外、タラニスの受けたダメージの方が強かったようじゃの」
「自己回復が出来ないといっていたし、固有結界内でも動いていないのに息が短くなっていっていた。毒のようなものでも食らったのか……」
「ま、この泉に入っておれば徐々に回復するであろうよ。…しかし、きゃつも賢しくなったものだ。今は休むことだルーよ、お主がいなければ始まらないのたからな」
「……承知している」
ルーはダグザの言葉にざぶん、と身をより水に沈め、一端の会話の終わりを察した凪子も水に自身の身体を沈め、目を閉じた。

―――

「…ええと、確かこっちだな。………ん?」
一方、リンドウと藤丸たちにルーの目覚めを伝えるべく洞窟を出たクー・フーリンは、記憶にあるリンドウの家を目指す途中で森に誰かが倒れていることに気が付いた。
「!おい、ドルイド!」
一応警戒しつつ近づけば、倒れていたのはリンドウだった。ぎょっ、としたクー・フーリンは慌てて駆け寄り、彼を抱き起こした。
「………ん?あ、あれ…あなたは……」
「おい、どうした!?敵襲でも受けたか!?」
「あぁ、いや、違うんだ……げほっ、ぇほっ」
「!」
抱え起こせばすぐにリンドウは目を開いた。すわ敵襲か、と問えばリンドウはすぐに否定し、だがひどく咳き込んだ。慌てて背中をさすってやれば、リンドウはありがとう、と小声で礼を述べた。
「お前が出てってからわりとたったぞ、ずっと倒れてたのか」
「いやぁ、不甲斐ない…私の命はもう残り短くてね」
「病か?」
「病…であれば対処しようもあるのだけれどね、どちらかというと限界であるように感じる」
ふらり、と立ち上がったリンドウをクー・フーリンは支えるように腰をもった。リンドウは困ったように笑いながら、素直にその助けを借りた。
「………いいのか、お前、最期の時をこんなことに費やして」
「私の友が巻き込まれていることだ。彼女を放っておいたまま死んでしまうことの方が、よほど悔いが残るというものだ」
リンドウは僅かに掠れる声で、だがしっかりとそう言った。
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