「もう行っちゃうんですか?」

堂々としているのか、照れ屋なのかわからない二人は、その後エンとティカルを食事に誘ってくれました。
なんでも頂き物のおいしいシチューがあるのだそうです。
たしかにとてもおいしくて、ティカルは言葉が話せたらおかわりしていただろうなと思うほどでした。

そしてエンは、服が乾くとティカルを肩に乗せて二人に別れのあいさつを言いました。

「村までは時間がかかるぞ。暗くなればヲーンも危険も高まるし。
明日の朝に出発したらどうだろう」

服が乾くまでといった張本人のハルも心配そうです。
しかしエンは首を横に振りました。エンがそう言うならティカルもいっしょに首を振って見せます。

「当てのない旅だけど、空豚と遭ってからは何かに不思議な力に引っ張られているような気がするんです。

どこに行くつくかは、わからないけれど…」

少し不安げな顔をしたエンですが、すぐに笑顔にもどりました。



カイは車椅子に乗り換えて、ハルとともに庭先まで見送りにきてくれます。

「エンさん、空豚くん」

ではさようなら、と背を向けようとしたエンたちをカイが呼び止めます。
彼は身を乗り出して、今にも立ち上がりそうになりながら、言いました。

「二人が行きたいところに、たどり着けるよ!いつか、きっと!」

「・・・」

いままでカイの印象は「ほんわかした青年、ハルの庇護者」だったエンですが、その印象がガラリと変わるほど力強い声でした。
ポカンとしてしまったエンたちに、カイはポポポと顔を赤らめます。

「あ、あの、ごめんなさい…。なんだか、口が勝手に動いちゃって」

そう言って恥ずかしそうに口を押さえるカイの肩を、微笑みながらハルがポンポンと叩きます。
二人の姿を見て、エンとティカルは、彼らは行きたいところにたどり着いたんだなと感じました。

「はい。たどりついてみせます!いつかきっと!」

「ピキぃ!」

そう言って今度こそ、森の中の小さな家に背を向けて、一人と一匹は歩き始めたのでした。



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ちょっと短いですが、書ける時に書いていこうと思います〜