城への帰り道、王様と王妃は今後のことを話しあいました。

「…私達に、出来ることはないのかしら…」

「あの子の外見にとらわれず、心を見てくれる誰かが、いてくれたらいいのだが」

その為には今よりももっと、いろんな人と出会って、話をしてみないといけません。
しかし城に戻って、二人はそれはとても難しそうだと感じました。

例の、ティカルにボコボコにされた大臣が、城の従者たちにティカルに振るわれた暴力をそれは大袈裟に言って回っていたからです。 
あんな非道な者が、次期王になってはこの国は終わる。
騒動の真相を知らない従者たちは、それを鵜呑みにしてティカルを恐れてしまいました。

もちろん他の大臣たちが、事実を伝えようとしましたが、あの大臣のひどい怪我の前では、何を言ってもティカルのほうが不利です。 

内々にそれを聞いた王様は頭を抱え、王妃はがっくりと項垂れました。
そして、ひとつの決断を下したのです。

次の日、王様はティカルの部屋に向かいました。

「お父様…、昨日は、ごめんなさい」

ティカルは、自分でもあんなに乱暴なことをしてしまったことが恐ろしくて、膝をかかえてベッドのすみにいました。
そんなティカルの頭を撫でて、王様は静かに言いました。

「ティカル…、プラム王のもとへ行きなさい。

この国では、悲しいことだがお前のことを外見で判断する者がいる。そして一度起こってしまったことは、もうなかったことにはできない。

新しい場所で、心からの友人や、大事な人を、自分自身で探すんだ」

「お父様・・・、でも、さ、寂しいよ。
この国ならお父様やお母様がいます。でもプラム王のところは、誰も味方がいないんだもの…」

ティカルはそう言ってポロポロと泣きだすのです。しかし王様は許しませんでした。この国に留まっては、ティカルはずっと自分たちの影に隠れて暮らしていかなければなりません。生きてはいけるでしょうが、それでは愛する人を見つけることはできません。

子豚の呪いを完全に解く方法の事は、本人は知ってはいけないので、突き放すしかありませんでした。

ティカルは渋々頷きましたが、昨日に引き続き、この日も大声で泣くことになりました。



ティカルは数日後には、プラム王の待つ隣の国へ向かうことになりました。

「兄さん…、気を付けて」

馬車に乗ったティカルに弟のファファがすまなさそうに握手してきます。ティカルはまだ本心では、この城を離れたくなかったのですが、これでファファが助かったのだと思うようにして、無理矢理笑顔を作りました。

「ファファ、お父様とお母様をよろしくね」

「はい。兄さん…、先に謝っておきますね。ごめんなさい」

「え?」

ファファの言っている意味がわからず、ティカルは首を傾げましたが、ファファはそそくさと見送りの列にもどってしまいました。

王様と王妃とも挨拶を終え、とうとう馬車が走り出します。不安顔のティカルを乗せて。


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やっとプラムがでてくるよぃ!