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子豚な王子様50

拍手へのお返事ができず、皆様すみません。
長く停止していたのに、見てくださる方々がいてくれて、嬉しいです!

というわけでそろそろ子豚が佳境に入ります!こちらがひと段落したら子竜の続きに移ります〜


*****


闇の沼から抜け出すと、そこは古めかしい廊下でした。
ティカルはぞわっとしました。なんだかここは今までの場所とは違うように感じたのです。
エンも同じように感じているのでしょうか、廊下の先を見据えて、じっと黙っています。

「!」

廊下の向こうに何かの影が見えて、エンはぱっと柱の影に隠れました。ティカルはエンに抱えられたままだったので、いっしょに隠れます。エンが息を止めているようだったので、つられてティカルも息を止めていました。

誰かが、廊下をスタスタと歩いていきます。後ろ姿しかよくみえませんでしたが、おでこに何か、あの煉鬼という人からも生えていた角があったように見えました。

十分に通り過ぎて、エンが「あいつは…」と小さく呟きました。もしかしてエンは、角の生えた人を知っているのかしらとティカルは思います。

エンはゆっくりと、誰かがいるような誰もいないような廊下を、さっきの角の人の後を追うように進んでいきました。ティカルも鼻を鳴らさないように気をつけながらついていきます。途中で、中からうなり声のする扉を通り過ぎて、ティカルはぶるっとしてしまいました。

しばらく進むと、大きな扉から出てくる角を見つけました。そしてこちらに背を向けて、去っていきます。とても大きな扉です。ティカルは、プラムの部屋の扉も大きかったなぁと思い出して、そうすると、この扉も偉い人のいる部屋なのかしらと思いました。
エンは扉の前まで来ましたが、なかなか開こうとしませんでした。手を握ったり開いたり、ドアノブに手を伸ばしたかと思えばひっこめたり、迷っている様子です。

ティカルが、また角の人が来たりしないかな、とヒヤヒヤ周りを見渡していると、なんと、扉がひとりでに開きました。
「!!」
「ブヒっ」

「これは珍客だね。なぁルエド?」

部屋には男の人が二人いました。細身の男の人はこちらを見て微笑んで、奥で窓の外を見ている人を「ルエド」と呼びます。

「呼んでいないから、客ではない」

ルエドと呼ばれた男の人は面倒そうに振り向きました。ティカルは首をかしげて、どこかで見たような人だなぁと思いました。
エンは部屋に入ったものの、一言も話しません。
「ひどいな。じゃあ僕も客じゃないってことかい?」
細身のほうがクスクス笑って、ルエドという人に「そのとおりだ」と言わんばかりの視線を向けられていました。

「ではお邪魔そうだから、帰るとしよう。くれぐれも未来の自分を、消さないようにね」

ティカルが、えっと思う暇もなく、細身の人はクルンと回って、いなくなってしまいました。

未来の自分とは、どういうことなのでしょう。


*****

子豚な王子様49

最近になって、マ○ベル映画を見ています。楽しいですね〜


*****

そわそわしながら待っていると、しばらくしてそろりそろりとエンが戻ってきました。ティカルが真っ先に駆け寄っていきます。

「ずっと心配そうだったよ空豚くん」
「ごめんな。空豚」
「ぴぃ!」

臣という人の言葉に、エンがにっこり笑って頭を撫でてきたので、ティカルも嬉しくなって大きな声で鳴きました。

「あなたの世界にも、人とは違う何かがいるんだってね」
「はい。今はほとんどいないらしいんですが…」

エンはみんなの輪の中に入って座り込み、話し始めました。

「俺の世界には、魔王という悪の親玉みたいなヤツがいて、悪事の全ては魔王が取り仕切っていたんだそうです。
二百年ほど前に滅ぼされたので、今はいません…。

でもそれなら世界が平和なのかというと、そうじゃない。山賊にも出会うし、凶悪な事件も起こってる。

聞いた話だと、魔王は悪意のよどみから生まれるそうです。滅ぼされてもまた人の悪意のよどみから魔王は生まれるんだって。俺は、それがいつなのか、見たいんです

「それって…?」

唯一の女性が尋ねます。

「…魔王が生まれる瞬間を」
「不思議…。エンさんが言うと魔王が怖い人に思えないんだもの」
「そうですか?」
「うん。魔王が生まれたら、すぐ倒してやるぞー!って言ってるようには見えなかったわ」

ふふ、と笑いながら、「ね」と臣に同意を求めます。

「そうだね。オラ達に似てるのかも。煉鬼様やシロウくんは普通の人からしたらとっても怖い存在だけど、深く知っていた今では意味なく怖がることはないから」
「怖がられたら困るな。なんたって今は、その鬼の嫁だ」

臣は頬を染めて、煉鬼の膝をペチと叩きました。
ティカルは自分なりに考えてみて、もしかして魔王という人も、煉鬼のように悪い人ではなかったのかも、と思いました。

「納得するまで、見極めろ。
大事なことなんだろ?お前にとって」

煉鬼の言葉に、エンは顔を上げると大きく頷きます。
そしてふと、ティカルを見ると、そのお腹を両手で掴みました。

「ありがとう。行って来ます」
「ピ?」

エンは何を言っているのかしら?と思っていたら、ティカルの足元がぐにゃりとなりました。いつもの、あの吸い込まれる闇の沼です。わたわたしていると視界の端で、はじめにエンとやりあったトウジという青年がぱっと動きました。

「履物を忘れてるぞ!気をつけてな!」

「ありがとう!」

ヒュッと投げられた靴を片手で受けとって、エンが笑います。トウジも気の合う友人に向けるようにニヤっと笑いました。
皆もようやく、エンとティカルがどこかに行ってしまうのだと理解して、口々に「気をつけて」「また来てね」と言っています。それに大きな声で返して、エンはティカルの足元にできた闇の中に吸い込まれていったのでした。


*****



子豚な王子様48

お久しぶりです。皆様お元気ですか?
びっくりするほど間が開いてしまいました。稚文がさらに大変なことになっていると思いますが、子豚を書いてゆきます〜


*****


「あの、鬼っていうのは何なんですか?人とどこが違うのですか?」

珍しい食べ物と、珍しい飲み物をいただいたところで、エンはずっと気になっていたことを聞いて見ました。
見たところ人とは何も変わらないのです。しかしあの跳躍力は確かに人間離れしていました。

「…知らねぇのか?」
「煉鬼、エンたちはどうやら鬼とか地獄がない世界からやってきたらしいぞ」

平たくて小さな器に、先ほどの酒というものを注いでいた煉鬼は、ふぅん、と言ってエンを見つめます。

「この姿は仮の姿だ。何なら見せてやろうか?」
「煉鬼さま・・・」
「大丈夫だ臣。心配するな」

煉鬼のことを「うちの人」と言った男の人が、不安気な顔をします。立ち上がりながらその肩を撫でて、彼は庭に出ました。
エンとティカルが追いかけていくと、月明かりが照らす庭で、煉鬼のいる辺りから火がぽっと揺らめきます。
よく見てみると、口の中が真っ赤に燃えているのです。

「ぴギっ」

思わずティカルが声を上げると、炎をちらつかせた煉鬼はニヤリと笑ったようでした。そして次第に腕が、足が、胴が、どんどん長さと太さを増して、見上げるほどの大男になったのです。
極めつけに、彼の額には角が生え、未だに炎が上がる口には大きな牙が見えていました。

「お前の世界に、こんな生き物はいたか?」
姿が変わったからか、声もどことなく違って聞こえます。

「…俺の世界では、魔物と呼ばれるものが、似ているかもしれない。
小さいころに角の生えたヤツに遭った事がある」
「ピぃ…?」

ティカルは以前、エンから「この世界には昔、魔王や魔物がいたが、今はどちらもいない」と言われていたので、エンの言葉に驚きました。

「ほぅ…。そいつらは何をしている?」
「悪いこと全般、かな…?」
「ははは、気が合うかもな」
「でも、魔物はそれほど知性がないから、貴方は魔王に近いのかも…」

王と言われてまた煉鬼は笑い、そして次の瞬間には、元の人の姿に戻っていました。

「王なんてガラじゃねえな。窮屈そうだ。
誰かの自由を奪えば、それだけ自分の自由も奪われるってもんだ」
「・・・」

エンは煉鬼の言葉に何かを感じたのか、庭から動かなくなりました。ティカルが心配して鳴いてみましたが、じっと遠くを見つめています。

「空豚くん、そっとしておいてあげよう?何か、大事な考え事をしているみたいだから」
「ぴぃ…」

臣という人に抱えられて、ティカルは家の中に戻りました。

エンは何を考えているのだろう。答えが出る考え事なのでしょうか。
ティカルには、エンの考え事はわかりませんが、無事に答えにたどりつけるといいなと思いました。


*****

子豚な王子様47

こんにちは!前回の46話を読み返してみたら、とても読みにくかったので少し手直ししました!

*****


「おかえりなさ・・・わぁ」

木の壁と枯れ草のような屋根でできた不思議な家の前で、シロウは止まりました。
エンとトウジはひょいと飛び降りて、エンに抱っこされたままのティカルはまだ体が揺れているような感じのままのような気分です。

そこにはいくつかの小さな明かりとともに男の人と女の人が待っていました。
「先に行くぞ」と言っていた大きな男の人と子犬はいないようです。

エンも、先ほどの人がいると思っていたのでしょう。面食らった顔で「あっ、こんばんは」といつもより小さな声で挨拶します。
はじめは家にいた二人も困惑している様子でしたが、エンよりも早く立ち直ってクスクスと笑いあいます。

「・・・うちの人が急に「酒と肴を見つけてくる」っていうから、どうしたのかと思ったけど…」

「煉鬼兄ちゃんたら、肝心なこと言い忘れたんだわ。お客さんが来るって言ってくれないとねぇ」

「あげてもいいか?」

トウジがそっと尋ねると、タミと呼ばれた女の人は微笑んで頷きました。

「どうぞ。あ、その不思議な履き物は脱いでくださいね」

家に入るときは履物を脱ぐのかと関心しながら、エンはもぞもぞと靴を脱ぎ、ティカルも逃げ回って汚れた足をきれいに拭いてもらいました。

その後は、待っていた男の人が、何も言わないトウジに「怪我をしてるね?診せなさい」と言い、遠慮するエンまでまとめて傷を清めたり、薬を塗ったり貼ったりをしていると、ようやく大きな男の人が帰ってきました。

「おかえりなさい煉鬼様。何かありました?」

「そこの稲荷から酒と饅頭を失敬してきた。シロウ、後でよろしく言っといてくれ」

片手に丸い入れ物と、片手に大きな草で包まれた何か…まんじゅうという何かを掲げて、煉鬼と呼ばれた人が入ってきます。稲荷が何なのかわからないティカルとエンでしたが、どうやらシロウの親戚か何かのようです。

「おぬしが話せばよかろうに」

「いたんだろうが、居留守を使われたんだよ」

クツクツと笑って、煉鬼は丸い入れ物の中身を小さな器に注ぎ始めました。ほわりと甘い匂いがします。

「飲めるか?」

「少し。でも俺の知っている酒とは違うみたいだ。空豚には水をもらえますか?」

「「「空豚?」」」

いっせいに不思議そうな声をあげられて、エンは面白そうにティカルを掲げると「この子豚、実は空から降ってきたんだ」と言って聞かせました。

「まぁ、空から?」「よく助かったね」「ただのウリボウじゃないとは思ったが、面妖な生き物がいたもんだな」と口々に感想が飛んで、それをきっかけに新たに増えた人たちとも打ち解けることができたのでした。


*****
ヤマもオチもないけど書ける所まで書いていきます〜。
臣に煉鬼のことを「うちの人」と呼ばせたかったのです。

子豚な王子様46


*****


「空豚!この人たちすごいぞ!紙から火とか水とか変な動物とかでてくるんだ!」

「ぴ、ピキぃ…?」

二人ともあちこち土だらけ、しかも傷だらけなのに、ウキウキとしています。圧倒されながらエンの隣を見ると、先ほどの青年も「すごい!何もないところから火とか水とか雷が出る!」とティカルを連れてきた大きな男の人に言っているようです。

「まぁ落ち着けよお前ら。とりあえず手当てしに家にいくぞ」

大興奮の報告を遮って、大きな男の人はちらっと空を見ました。

「ブヒっ」

またあのひとっ跳びをするのかと短い4本足をピーンとしていると、その人はそれに気づいたようです。
ずい、とエンの目の前にティカルを突き出して、「先に行ってるぞ」というと、子犬だけ連れて、またポーンとどこかに行ってしまったのでした。

「はー、あの人もすごいな。この村は超人の集まりなのか?」

エンは、あっという間に小さくなった彼を見送って、ケンカしていたはずの人を振り向きます。すると、耳の生えたほうの人が進み出て、クツクツ笑います。

「あれは人ではない。鬼じゃ。あんなのがうようよいるのは地獄だけで十分よ」
「地獄?」
「死後の世界のことじゃ。それも知らぬとは、つくづく不思議な人間よのう」

この人も最初はどこからともなく現れて、一緒にケンカしていたように思えたのですが、怪我をしている様子はありませんでした。

「シロウ、行けるか」
「二人乗せるくらいならどうとでもなろう。急ぐこともあるまいて」

そう言われて、シロウという男の人は、着ていた不思議な服の異様に幅の広い袖をブゥンと一振りしました。するとどうでしょう。次の瞬間に、大きな狐になったのです。

「おー!!」

エンは見るもの見るものが真新しく、楽しいようで、手を叩いて喜んでいます。エンの相手をしていた青年はその背にヒラリとまたがり、後ろに乗れといいました。

「いいのか?」
「尻尾と足には触るでないぞ。走りにくいのでな」
「わかった!!」

珍しい生き物に興奮しているのか、エンは嬉しそうにティカルを抱っこして、青年の後ろに器用に乗りあがります。
掛け声もなく、シロウが駆け出し、ティカルは青年の背中と、エンのお腹に挟まれる形だったのでよく見えませんでしたが、「急ぐこともあるまい」と言っていたのに、景色がどんどん変わっていくので、これは相当早いのではと思いました。

走っている途中、ふとエンを見上げると、彼はどこか懐かしそうに目を細めて呟きます。

「ウンザに遊んでもらったのを思い出すなぁ」
ウンザというのは大きめのペットだったのかしら、でもペットに遊んでもらうって不思議な言い回しだなぁとティカルは思ったのでした。


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