今日からコミケだそうですね。
近い方も遠い方も道中お気をつけて!
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キンという綺麗な男の人を雲の上の城から連れ帰って早3日経ちました。
ジクはどこにいくにもキンがついてくるので、いいところを見せようと、いままでよりいっそう働き者になったようです。
「ジク…ちょっといい?」
朝のこと、ご飯を食べ終わって外に出たジクの袖を、キンがくいくいと引っ張りました。
どうしたの?と振り向きますと、彼は何やらもじもじしています。
「あ、の…」
「うん」
「う、産まれそう…」
まじめな顔で聞いていたジクはキンの言葉に「へ?」と間抜けな声を上げました。
咄嗟にどういう意味かわからなかったのです。
キンは頬を赤くして続けます。
「連れてきてくれるときに10個も産まされたから今まで大丈夫だったみたいなんだけど、
もともと私は、一日に3個は必ず産むんだ」
卵が産まれそうなのだとようやくわかりました。
元々彼はニワトリです。人の姿になりましたが、その習性は残されていたのです。
「それで、どこか産める場所はないかなと思って…。ちいさな小屋でいいから」
流石に屋外では恥ずかしいのでしょう。かといって家はジクのお母さんがいます。
そこでジクは家の裏にある、物置につかっている小屋に案内しました。
物をすみっこに寄せて、簡易スペースを作るとそこへ毛布を運びました。
「さぁできた。キンおいで」
そして人間の服に慣れていないキンがズボンを脱ぐのを手伝います。
いよいよなのか、キンは苦しそうにふうふう言っていました。
「キン。僕は外に出ていた方がいいのかい?」
脱がせながら、ジクは聞いてみました。本当は見たかったのですが、キンが嫌がるなら外に出て行こうと思ったのです。
しかしキンは首を横に振りました。
「こ、ここにいて…?ひとりだと怖いんだ」
ジクの胸がキューンと高鳴りました。ブンブンと大きく首を縦に振って了解し、キンをそっと抱きしめました。
「ふぅ…ッぁあ…っ!」
ジクがひいた毛布にキラキラとしたものが落ちました。卵です。
続いてもう一個。二個…。
しばらく産んでいなかったからか、結局キンは5個も卵を産みました。
「やっぱり金色なんだね」
産まれたてほやほやの、まだ温かい卵を手に乗せてジクはしげしげと眺めました。
「これを砕いて砂のようにすると、人間にはとても人気があるって聞いたよ」
産んですっきりしたのでしょう。キンがほほ笑んでそう話します。
そしてキンは自分ではどうしようもないので、卵を全部ジクにあげました。
「ありがとうキン
他に、僕にできることはない?」
嬉しくなって、ジクは胸を叩きながらキンに言います。
するとキンは少し考えて、見上げていいました。
「とても危険だとわかっているんだけど…、実は一人、助けたい人がいるんだ」
キンの視線の先には、今も空に向かってまっすぐ伸びる豆の木があります。
「大男の家にいるの?」
「うん。竪琴の妖精で、唯一の友達なんだ」
突然キンがいなくなったので、大男につらく当たられているのではないかと心配しているのです。
ジクはキンと同じように見上げました。
大男はできれば二度と会いたくなかったのですが、他でもないキンの頼みです。
ジクはキンの手をぎゅっと握って頷きました。
「わかった。キンはここで待ってて」
「そんな…、ひとりでなんて…!」
自分も行くつもりだったのでしょう。キンが目をまんまるにして驚いています。しかしジクは首を横に振って、久しぶりに高く豆の木を登り始めました。
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キンがさらっと、見られてないと不安とかいいましたが、気のせいです★